東方機械幻想記~紅きハンターの幻想入り~   作:赤バンブル

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今回は少し長めです。


100万ゴリラパワー!!

ゼロの体から危険物である回路を取り出すため、河童の住処では連夜で明かりが灯り続けた。

 

しかし、彼を生み出した科学者は、過去に幾度となく世界を脅威に追いやった悪魔の科学者と呼ばれていた男。いくら技術者として優秀なライノックスでもそう簡単に取り除くことはできなかった。

 

「問題のプログラムを司る回路の場所は分かった。けど、そのまま取り外したらゼロの能力の大半が機能しなくなってしまうんダナ。それどころか、記憶障害になる危険性もある!」

 

彼は、図面を見ながら頭を抱える。にとりたち河童もここで技術屋としての実力を見せようとあの手この手と方法を考えるが最後に体を改造している間、意識ユニットをどこに移しておくかで行き詰った。

 

「じゃあさ、意識を一時的にコンピュータに移してその間にボディを改造、それをスキャニングしてプロトフォームに読み込ませるなんて言うのはどうかな?」

 

「確かにそれが一番の方法だけど、ここのコンピュータの容量じゃ彼のメモリーをすべて移しきれない。圧縮してやる方法も考えたんだけどそれだと後でバグが起こって機能不全に落ちちゃうんダナ。」

 

「「「う~ん~~~」」」

 

一つの課題をクリアしたかと思いきや別の課題にぶつかり、彼らは目に大きな隈を作って悩み続ける。一応ゼロに関しては応急処置を施して、この山の上にある「守矢神社」で休んでもらっている。アイリスは、心配しながら帰って行ったが何日も結果が来ないことに恐らく不安になっているだろう。

 

「・・・・・そう言えば、この時代ってライノックスのご先祖様たちが外の世界にいるんだよね?」

 

にとりは、ぐったりと顔を持ち上げて聞く。それに対し、ライノックスは力のない声で答える。

 

「そうだね・・・確かこの時期は大昔のサイバトロンとデストロンが戦っていた時期だ。ただ・・・早苗が教えてくれたけどどうやら誤差が生じているのか、僕の知っている歴史ではサイバトロンが勝っているはずなんだけどまだそこまで行っていなかったんダナァ・・・・・ん?と言うことは『アーク』のマザーコンピュータ『テレトラン1』はまだ機能しているはず・・・・これだ!!」

 

何か思いついたのかライノックスは、突然大声を上げる。その声に寝ぼけていた河童たちは河童たちは敵が攻めてきたと勘違いして一時大パニックになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二日後、ライノックスからの報告を受けてゼロは、数週間世話になった守矢神社をでることになった。本殿の前では彼を見送るために巫女である東風谷早苗、神である八坂神奈子と洩矢諏訪子が立っていた。

 

「すまないな、世話になって。」

 

ゼロは、迎えに来てくれたアイリスと共に頭を下げる。

 

「いいってことさ、別に私らも元は余所者だったからね。似た者同士、遠慮はいらないよ。」

 

そんな二人に対し、神奈子は気楽に答える。隣では彼女より一回り小柄の諏訪子が肩を回しながら欠伸をしている。

 

「ふあぁ・・・しかし、驚いたね。まさか、早苗が好きだったゲームのロボットがこの幻想郷にやってくるなんてさ。ここに来てもう随分経つけど、本当に飽きが来ないよ。」

 

「それはこっちの台詞だ。まさか、外の世界で俺とエックスが主役のゲームが存在しているなんてな。俺だから何とか受け入れられたがエックスだったら多分怒るどころじゃすまないぞ?」

 

ゼロは、表情を引きつりながら言う。

 

「そうですよね。私も初めて会った時、信じられなかったし。でも、ゼロさんたちに会えるなんて夢にも思っていませんでした!感激です!もらったサイン一生大事にします!!」

 

早苗は、未だに衰えぬ興奮を押さえながら答える。

 

この神社の巫女である彼女は、少し前までこの幻想郷の外の世界で暮らしており、神社にはその当時買っていた本やゲームが蔵に保存されている。彼女は、その当時流行っていた『ロックマンX』シリーズの好きで特にゼロの大ファンだった。無論、イーグリードの案内でやって来たときはここぞとばかりにサインを求めてきた。

 

(ゲームとはいえあのコロニー事件の後、よく俺生きていたなぁ。でも、ここに来なかったらあんな感じになっていたのか?エイリアの同僚を止めて、引きこもったエックスの分も戦うことになって、シグマが唐突にいなくなるだもんだが、俺がいなくなってエックスの奴、大丈夫なのか?後、何年か後に引きこもっちまうようだが。シグマの奴も復活するそうだし‥‥)

 

そんなことを気にしながらも早苗から熱い握手を受けてゼロたちは、神社を後にした。

 

 

 

 

<ハンター移動中‥‥>

 

 

 

 

 

しばらく下って河童の住処へ行くと久しぶりにぐっすり寝てすっきりしたのか隈がきれいにとれた河童たちが出迎えてくれた。

 

「来たね来たね!にとりたちなら中で待っているよ!」

 

モブ河童の一人に言われてゼロとアイリスは、中へと入る。中ではプロトフォームが収まった救命ポッドが作業台に置かれており、待っていたとばかりにライノックスとにとりが出迎えた。

 

「待たせてごめんね。でも、これでようやく君の不安の種を取り除くことができそうなんダナ。」

 

彼は、ゼロを隣の作業台に寝かせて体にコードを繋げ始める。

 

「ライノックス、本当に俺の体からあの回路を取り除くなんてことできるのか?」

 

「時間はかかったけど性能は幾分か落ちるかもしれないけど何とか代用のシステムを構築することに成功したよ。でも、それには体そのものを分解して、再組立て。その後、それをプロトフォームにスキャンさせなくちゃいけないから君の意識を一旦、外の世界にある『テレトラン1』のデータベースに送る。」

 

「そんなことできるのか?」

 

外の世界にあるコンピュータの中に送ると言う話を聞いてゼロは不安そうに聞く。

 

「大丈夫だよ。この幻想郷と外の世界は曖昧な境界線で繋がっている。この洞窟の機器もそう、かつて僕の船の残骸から回収してきたもので地球上のサイバトロンのコンピュータは全て、『テレトラン1』に繋がっているダナ。だから、君が思っていた以上に早く終わるよ。」

 

「ならいい。よろしく頼む。」

 

「あいよ。じゃあ、『脳みそ繋げる君』セットと。」

 

ゼロの後頭部に太いケーブルが突き刺される。同時にゼロの意識が途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ここは妖怪の山の麓近くにある仙人『茨木華扇』の屋敷。

 

ここには彼女以外に大鷲、虎、龍、果てには雷獣などがペットとして飼われている。そして、最近また新しいものを拾ってきたのか庭を一面見渡せる廊下にやや人よりも大きいは猿が座禅を組んでいた。その体は黒い体毛に覆われており、目を閉じながら何かを悟りでも開こうとしているように見える。

 

「・・・・」

 

「また、瞑想をしているのですか?」

 

そこへ屋敷の主である華扇が人里から帰ってきた。ペットであるはずの猿に何故声をかけるのか。

 

「あぁ、この地に来てから何度もマトリクスへの対話を行おうとしているがやはり、この体に戻った影響なのか今だに繋がらない。」

 

なんと猿は、普通に会話をしてきた。しかし、当の華扇は何も気にすることなく隣に座る。

 

「人里で最近貴方に似た存在の噂が広がってるようです。しかも一人ではなく、何人も。」

 

「恐らくライノックスとダイノボットだろう。二人のスパークはここに来た時から感じている。そして、デストロンのスパークも。」

 

「彼らに会いに行ってはどうですか?お仲間なんでしょ?」

 

華扇の言葉に対して猿は、首を横に振る。

 

「いや、ここで会うのはまだ早い。何故、我々がこの地へ来たのかそれは私自身も分からないんだ。」

 

猿は、自分の手を見ながら気難しい顔をする。

 

「オラクルの手によってフォーマットを書き換えられたはずのこの体がこの地で目を覚ました時、何故か以前の姿へと戻っていた。そして、未来から過去へ。これもマトリクスの導きなのか、それとも偶然なのか。それに私がこの地に来たということは共に星の核の中へと消えたメガトロンも生きているのかもしれない。それが何であれ不安でならないんだ。」

 

「そうですか。では、私は他の子たちの世話に行きますので。」

 

そう言うと彼女は、その場から離れて行った。猿は、座禅を組みなおすと再度瞑想を始める。

 

(何か・・・・何かが動き始めた・・・・スパークではないが強い意思が。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・うっ、うぅ。」

 

ゼロは、真っ暗闇の空間で意識を取り戻す。

 

「ここが・・・・コンピュータの中の世界か?思っていたよりも暗いな。」

 

かつてイレギュラーハンター本部のマザーコンピュータが暴走した時、エックスが自分の意識を送り込むという方法でコンピュータの世界に入ったことがあるがあちらは過去のデータを基に構築された世界が広がっていた。

 

「・・・・まあ、俺の時代と比べて技術が遅れているのだから仕方ないか。」

 

彼は、この現象が恐らく技術力の差の問題だと判断して辺りを再度見回してみる。よく見ると自分の周囲にパネルのようなものが浮いているのが分かった。

 

「これは・・・・もしかして俺の記憶か?」

 

念じてみるとパネルの一枚が近づいてくる。そこには青いボディの後輩と自分の姿があった。

 

「これは・・・エックスがまだハンターになって間もない時期のものだな。そう言えばあの頃はシグマもイーグリードたちもみんないたな。しばらくしてこの終わりの見えない戦いが始まるなんてあの時想像もしなかっただろうな。」

 

更に別のパネルを近づけてみる。

 

「コイツは、VAVAの時に自爆したものか。こっちは、イレイズ事件の時のやつか。」

 

過去の記憶の一つ一つがこの場でアルバムのように収められている。そんな中、一部のパネルはノイズが走って見えないものがあった。

 

「ん?コイツはなんだ?」

 

僅かに何かが映っているものを見つけ、ゼロは念じてパネルを近づける。そこには、多少姿が変わってはいるもののセイバーを持った自分と壊されたエックスらしきものが映っていた。

 

『何故・・・・ダ・・・・僕・・・は・・・・英、雄、じゃなかったのか?』

 

「なんだこれ?」

 

『今、少しだけ思い出した。アイツはお前みたいに単純なヤツじゃない、いつも悩んでばかりの意気地なしだったさ。・・・・だからこそ奴は英雄になれたんだ。』

 

自分にこんな記憶はない。増しては、エックスを破壊するなど以ての外だ。一体この記憶では自分は何をしていたというのか。

 

「どういうことなんだ?この記憶は・・・・」

 

『おっと。それ以上自分の未来の可能性を覗き見するのは感心できんな、ゼロ。』

 

「!?」

 

背後から聞こえてきた聞き覚えのある声にゼロは思わず身構える。ここはコンピュータの中。奴がいても不思議ではない。

 

「シグマか?どこだ、どこにいる!?」

 

『ムッフフフ、いくら身構えたところでここでは無意味ッス!』

 

別の声が聞こえた瞬間、彼は全身が蜘蛛の巣のようなもので身動きが封じられていることに気づく。

 

「こ、これは!?」

 

「ムフッ!いないなぁ~~い~~~ばあっ!!」

 

目の前に巨大な蜘蛛が目をニヤニヤとしながらぶらりと姿を現す。

 

「よい子のみんな~~~!元気だった~?ワンワ、じゃなくてタランスッスよ~!!ムヒョ、ムヒョヒョヒョ~!!」

 

大蜘蛛タランスは、笑いながら自己紹介する。その後ろでは見覚えのあるスキンヘッドの男が立っている。ゼロは思わずその名前を叫んだ。

 

「シグマ!?」

 

「クッククク、『テレトラン1』に異物が入ったかと思いきやまさか貴様から来てくれるとはな。歓迎するぞ。」

 

シグマは、腕を組みながら拘束されているゼロを見る。

 

「貴様・・・どうしてここにいる!?ここはサイバトロンのコンピュータの中のはずだぞ!」

 

「ムフフフフ、もうここはアタチとシグマの旦那の手の内ッス。そして、ホイホイネズミみたいに入って来たのがチミと言う訳っス!」

 

タランスは、複数の目でゼロに近づきながら撫でまわすかのようにジロジロと見る。

 

「うひょひょひょひょ!旦那の言った通り中々のイケメンッスね~!観察のし甲斐があるッス~!!」

 

「クッ、俺を変な目で見るな!」

 

変態染みた彼の目つきを見てゼロは、巣を破ろうと体を動かす。

 

「あまり抵抗しない方が身のためだぞ、ゼロ。何しろここでは貴様は単純に言ってウィルスのようなものなのだからな。」

 

「クソ!俺をどうするつもりだ!?」

 

歯を食いしばりながら彼は、シグマを睨みつける。

 

「なに、心配する必要はないっス。チミのデータを隅から隅まで調べて、後はあんなことやこんなことやってゆっくり調教♂して、アタチと旦那の操り人形になってもらうッス!!ウシャ、ウシャシャシャシャ!!」

 

タランスの狂気に満ちた目が迫る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゼロ!ゼロ!!目を覚ますんだ!!」

 

現実ではライノックスが意識が戻らないゼロの体に呼びかけていた。

 

ボディの改造は終わり、ポッドのスキャニングシステムを作動したことで既にプロトフォームは再形成を始めているのだが、肝心の意識が何故か戻らず、警報を出し始めていた。

 

《警告!“スパーク”並ビニ“意識ユニット”確認デキズ!60サイクル後マデニ確認デキナイ場合、コノ“プロトフォーム”ハ、消滅シマス!!》

 

何時までも意識が戻ってこないことでその場にいる一同は焦り始めていた。

 

「ライノックス、もしかして転送中に消えちゃったんじゃ?」

 

「いや、『テレトラン1』のセキュリティには意識データを削除する機能はない。つまり、何かが意識を戻すのを妨害しているのかも!?」

 

確信とは言えないものの彼は、接続用のケーブルを準備し始める。その様子をアイリスや途中でやって来たダイノボットたちが見守る。

 

「どうするの?」

 

「こうなったら仕方ない。僕らも『脳みそ繋げる君』を使ってゼロの意識を連れ戻しに行くしかないんダナ!」

 

「アホかぁ!?帰ってこなくなったらどうするつもりだ!?」

 

「ここまでやって来たんだ!今更失敗なんてできない!」

 

彼の行動に対し、ダイノボットはツッコミを入れるが他に方法がない。ライノックスは道具箱をひっくり返して同じタイプの接続コードを拾い上げる。

 

「行けるのは三人まで。僕とダイノボット、イーグリードの三人なんダナ。」

 

「ダァア!?俺もかよ!!」

 

「元を辿ればおめえも原因の一つだろうが!悪いと思うなら助けに行くんだ!」

 

彼は、二人にコードを手渡す。

 

「ダアァ・・・・コイツを付けるのか?」

 

「そうだよ、準備はいいかい?」

 

ライノックスとイーグリードの二人は、後頭部に接続する。ダイノボットは、コードを見ながら少し困った表情をする。

 

「俺・・・・こういうの苦手なんだよ。」

 

「そんなこと言っている場合か!あと少しでゼロが消えるかもしれないんだぞ!」

 

そんな彼に対し、イーグリードは活を入れるように言う。こうしている間にも時間がなくなっていく。

 

「ダイノボット、急いで!もうすぐ僕たちの意識を『テレトラン1』に転送する!早く!!」

 

「ダァァ・・・・・やるしかねえか。」

 

ダイノボットは、意を決してケーブルを後頭部の接続部に繋げようとする。

 

 

 

 

 

 

「待って!」

 

その直後、今まで見ていたアイリスが突然声を上げて止めさせる。彼女は、コードを奪うように取ると不安な表情をしながらも勇気を振り絞って口を開く。

 

「わ、私も・・・一緒に行かせてください!!」

 

「アイリス!?」

 

彼女の決心にライノックスは、目を丸くする。一方のイーグリードは、彼女の前に来て注意をしようとする。

 

「無茶を言うな!オペレーターの君が行ったところでなんになる!自分から危険に飛び込んで行くようなものだぞ!!」

 

「分かってます!けど・・」

 

「君にもしものことがあったらどうする?それこそゼロに申し訳が立たないんじゃないのか?」

 

「それは・・・」

 

「そもそも彼の意識が戻るのを妨害する輩なんだ。非戦闘用の君が行ったところで足手纏いになるだけだ。」

 

「・・・・・」

 

彼の手厳しい言葉の数々にアイリスは、黙り込んでしまう。無論、イーグリードも悪気があって言っているわけではない。

 

「イーグリード、少し言い過ぎじゃないかい?」

 

「分かっている。だが、これから得体の知れないところへ向かうんだ。行かせるには、厳しすぎる。」

 

実際、彼は任務で何名もの部下と生き別れたことがある。そのほとんどは内部火器を装備していないレスキュー要員ばかりで、自分がシグマの反乱に加担する前も見せしめに目の前で破壊された。それ故に、知り合いの大事な人を危険な目に会わせたくないと言う気持ちが強かった。

 

周囲を重苦しい沈黙が支配する。

 

しばらくしてアイリスが顔を上げる。その顔は、きつい言葉を言われて泣きそうになりながらも必死に堪えていた。

 

「た、た、確かに私は強くないし、兄さんやゼロのように戦えない。・・・でも、そんなことで後悔したくない!!戦えないからいけないとか、足手纏いになるとか、それだけの理由で何もしないなんて私にはできない!!折角、ゼロと和解できたのに何もしないまま別れるなんて・・・・そんなの、嫌・・・絶対に嫌!!」

 

「!?」

 

彼女の強い想いにイーグリードは、一瞬目を大きく見開いて驚く。普通のオペレーターでここまで言う輩は早々いない。大抵は、自分たちのことも考えて安全な場所で指示をするのが当たり前だ。しかし、アイリスは失敗したとはいえ元はロボットの再来を目指して開発されたレプリロイドの片割れである。その心と言い、普通のオペレーターとはわけが違う。

 

「・・・・行かせてやれ。」

 

しばらく沈黙を守っていたダイノボットは、悟ったのか特に文句を言う様子もなく引き下がる。嫌がっていたとはいえ、意を決すればトコトンやる彼が身を引いたことにライノックスは口を開けてポカーンとする。

 

「貴様、彼女を危険な目に合わせる気か!?」

 

「コイツは、自分の意志で助けに行くと言ってんだ。嫌々俺が付いて行くのとはわけが違げえ。そんな奴の決心を踏みにじることなんざ・・・できねえ。」

 

「しかし・・・・」

 

「それに武器がねえなら持たせればいいだけのことだろ。聞いた話じゃ、この女は軍に所属している。ってことは自分の身を守る訓練ぐらいはしているはずだ。それなら問題ねえだろ?」

 

「・・・・・」

 

流石のイーグリードも参ったのか何も言わなくなる。そんな彼の肩をライノックスは、苦笑しながら軽く叩いた。

 

「この言い合い、どうやら君の負けのようなんダナ。」

 

「そうだな、ここまで固い決心するレプリロイドを見たのは初めてだ。恐れ入るよ。」

 

「ダナ。じゃあ、急いで行こう。にとり、悪いけど後のことを頼んだよ。」

 

「任せて!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クウ・・・・」

 

シグマたちに捕らえられたゼロは、抵抗を試みるもののハッキングが行われ、力を失ったかのようにクモの巣に張り付いていた。そんな彼をニタニタと見ながらタランスはパネルを操作する。

 

「ムフッ、もう少しの辛抱ッスよ。もうすぐチミの体のプロテクトが全て解除される。そうすればチミの体の隅々が丸見えになるッス・・・ヘヘヘッ。」

 

「・・・おい、そんな考え捨てろ。この変態グモ。俺の身体なんて碌なものがないぞ。一つのものを滅ぼすために作られた存在なんだからな。」

 

ゼロは、弱気になりながらも皮肉を込めて言う。しかし、タランスは特に気にしている様子はない。

 

「なぁに~技術は使い手によって変わるもの、後で応用を効かせればいいだけのことっス。アタチはね、そんな思考の人間が作ったものを見るのが好きなんでね~!!ヌフフフッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「それはもう病気を通り越して手に負えないほど重症なんダナ!」

 

「「!?」」

 

背後からの声にシグマとタランスは振り向く。そこには両腕にガトリングガンを装備したライノックス、イーグリード、ライフルを構えたアイリスが立っていた。

 

「わあぁ~~~~!?出たぁ~!!!」

 

「ほう、これはこれは懐かしい顔ぶれではないか。」

 

驚く振りをするタランスに対し、シグマは笑みを浮かべながら対峙する。

 

「シグマ・・・・」

 

「久しいな、イーグリード。こうして直に会うのは貴様が私に敗北した時以来だな。・・・・それとアイリスだったかな?まさか、お前のような小娘までここに来るとは・・・そんなにゼロと共にいたいのか?」

 

「ゼロを!彼を放して!!」

 

アイリスは、緊張しながら銃口を向ける。しかし、シグマもタランスも特に動じることはなく、臨戦態勢を取り始めた。

 

「タランス、変身!ウヒャヒャヒャ、ヒャ~!!」

 

タランスは、クモから本来の姿のロボットモードとなってクモの足からマシンガンを発砲する。

 

「散れ!」

 

イーグリードの叫びと共に三人は、散り散りに別れて応戦を始める。

 

「ストームトルネード!!」

 

彼は、腕をバスターに変形させると竜巻を放つ。二人は、竜巻に吹き飛ばされるがタランスは、銃から糸付きのアンカーを発射してイーグリードの腕に絡ませる。

 

「うっ!?」

 

「邪魔をするのは感心できることじゃないっスよ、トリさん。その羽根をひん剥いて串焼きにして食べちゃうッス!ウヒョヒョヒョ!!」

 

「誰が!!」

 

イーグリードは、勢いのままに糸を振り回し、タランスを地面に叩きつける。

 

「ありゃ!?」

 

一方、アイリスとライノックスは、発砲しながらシグマへと向かって行く。

 

「ダナダナダナダナダナダナ!!」

 

「ヌオッ!?」

 

シグマは、たちまち体を蜂の巣に晴れて吹き飛ぶ。

 

「このままゼロを助けるんダナ!」

 

「はい!」

 

ゼロの前に付くとアイリスは急いでプログラムを停止させようと動く。

 

「急げ!後、18サイクル以内に戻らないと・・・・」

 

「急がないと何かね?」

 

「!?」

 

背後からの声に彼が振り向くと両手に鋭いかぎ爪を装備したシグマが斬りかかってきた。ライノックスは、咄嗟に押さえる。

 

「さっき倒したはずなのに!?」

 

「フッフフフ、ここは私のテリトリー。つまり、いくらでも復活することができるのだ。」

 

「そんな馬鹿なことが・・・・ダナ!!」

 

「グオッ!?」

 

馬鹿力で態勢を変えるとその勢いで地面に叩きつける。すると少し離れた場所に今度は死神の鎌を持った別のシグマが現れる。更にその背後から別のシグマが続々と現れる。

 

「頑張りすぎだよ、コト〇キヤさん・・・・」

 

一方アイリスは、どうにかゼロの拘束を解除することに成功する。解放された彼は、ぐったりとそのまま抱えられる。

 

「ゼロ、大丈夫?」

 

『ゼロのことより自分のことを心配した方がいいのではないかね、アイリス?』

 

「えっ?」

 

彼女は、ゼロを抱きかかえたまま自分の足元を見る。そこには、巨大なシグマの顔が浮かび上がっていた。

 

「キャアアアアア!!」

 

『でやぁああああああああう!!!』

 

アイリスは、顔を真っ赤にしながらライノックスが落としたガトリングガンを拾って発砲する。アースシグマは、絶叫を挙げながら消えて行くが今度は地面が盛り上がってシグマヘッドが出てきた。

 

『ここに入ったからにはもう二度と出られぬぞ?』

 

「そんな・・・・」

 

周囲を見回すと数の暴力で倒れるライノックスとイーグリードの姿が見えた。

 

「クウゥ・・・・まさかこれほどの数とは・・・」

 

「あぁ・・・・万事休すなんダナ・・」

 

二人とももう戦える状態ではなかった。シグマ軍団は、続々とアイリスとゼロの前に迫ってくる。ガトリングガンを構えるもののこの数に対しては無力に等しい。

 

「うぅう・・・・」

 

「「「「「クックク、覚悟はできたかね?」」」」」

 

「ゼロォ・・・・・」

 

彼女は、抱えているゼロを渡すまいと力強く抱きしめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ん?」」」

 

その時、何を感じたのかシグマ軍団は、一斉に上を見上げる。

 

「ありゃ?なんスかね、あれ?」

 

頭上には何かがやってくるのか空間が渦巻き状に歪み始めていた。

 

「次は何が起こると言うんだ?」

 

イーグリードは、満身創痍の状態で歪みを見る。すると歪みから光が出始め、その光は徐々に一つの形にまとまっていく。

 

「あれは・・・もしかして・・・・」

 

ライノックスは、嬉しそうな顔を浮かべる。

 

やがて光が消えるとそこには座禅を組んだ黒い体毛に覆われた見覚えのあるマスク顔のロボットの姿が露わになった。

 

 

 

 

 

 

「デタッ!!ムチャゴリラのコンボイっス!?」

 

タランスは、驚きのあまりに声を荒げる。コンボイは、目を光らせると肩と両腕のキャノン砲を展開してシグマ軍団に向けて一斉に放った。

 

「「「グオオッ!?」」」

 

「「グワッ!?」」

 

「「「のわぁあ!?」」」

 

攻撃でシグマ軍団が怯んでいる隙にコンボイは、二人を回収し、ライノックスの元へ飛んでくる。

 

「コンボイ!こんなところで会えるなんて・・・人生、棚からボタニカとはこんなことなんダナ!!」

 

「マトリクスと繋がろうと瞑想し続けていたらまさか、こんなところに来るとは私も驚いているよ。だが、今は引き上げるのが先決だ!」

 

「「「おのれ!!」」」

 

態勢を立て直したシグマ軍団は、ぞろぞろと向かってくる。

 

「ライノックス、彼らを連れて早くここから出るんだ!」

 

「コンボイはどうするの!?」

 

「私なら心配無用だ。ムン!」

 

一同を後ろに下がらせるとコンボイは、目を光らせる。

 

すると彼の体が大きく発光し、複数の光に別れる。

 

「「「ぬっ!?」」」

 

シグマ軍団は、また良からぬことが起こるのではと身構える。別れた光は別々の形となり、立ちはだかる。

 

「メタルスコンボイ!」

 

「パワードコンボイ!」

 

「リターンズコンボイ!」

 

「「「「分身!」」」」

 

四人に別れたコンボイを見てシグマとタランスは、唖然とする。視線は唯一ゴリラ顔のリターンズコンボイに集中していたが。

 

「・・・一体だけ普通のゴリラが混ざってるッス。」

 

「「「一番端のゴリラは在庫が残りそうだな。」」」

 

その声が響いたのか、リターンズコンボイのみショックを受けたような顔になるが今はそれどころじゃない。

 

「「「「いくぞぉおおおお!!!」」」」

 

四人のコンボイは、一斉にシグマ軍団へ向かって行く。数的には圧倒的に不利だが、一体一体が元々戦闘能力が高いこととコンボイ自身が『ビーストウォーズ』を通じて戦闘経験を積んでいたこともあり、互角の戦いとなっている。

 

「ここはコンボイに任せて僕たちは逃げるんダナ!」

 

ライノックスは、ビーストモードになると二人を乗せてその場から撤収する。それに合わせてイーグリードも撹乱用に口から小型の鳥メカニロイドを発射してから飛んで逃げる。

 

「逃がしはせんよ。ここで全員・・・・・ん!?」

 

逃走したゼロたちを捕らえようとした瞬間、シグマは一瞬動きを止める。

 

「旦那?どうしたんス・・・・」

 

「うぉおおおお!!」

 

「あれ~~~~!?」

 

パワードコンボイの砲撃でタランスは遥か上へと飛ばされ、地面に激突する。

 

「今回、扱い酷いのねん・・・・・」

 

「よし、撤収!!」

 

コンボイは、タイミングを見計らって元の一人に戻り、出てきた歪みの中へと消えて行った。全員逃げたことを悟るとシグマは自分の分身たちを消し、伸びているタランスを起こしてあげた。

 

「旦那・・・・突然、フリーズするなんて分身作りすぎじゃないスか?」

 

「いや、どうやらサイバトロンたちが『テレトラン1』をいじり始めたらしい。下手に暴れまわると私の動きが察知されてしまうのでな。だから、動きを止めた。」

 

「そりゃないですぜぇ・・・・・ん?」

 

何かが呼んだのかタランスは、シグマの背を向けて通信を入れる。

 

「はい、タランスでぇすっ。・・・・・・はい、はい。わかりました。直ちに戻って計画を進めます。ではでは。」

 

通信を切ると彼は、ビーストモードに戻り、リモコンを取り出してボタンを押す。すると目の前にワープホール状の

穴が出現する。

 

「あのお方からのご命令っス。旦那は、しばらく司令官ごっこをしていろだそうッスよ?」

 

「ほう。では、またしばらくゼロにちょっかいは出せんと言うことか。」

 

「ボディが慣れていないんだからしばらくの辛抱ッス。では、アタシはこれにて。何より面白いデータが手に入ったんでね、ウフフッ!」

 

そう言うとタランスは、穴の中へと入って消えて行った。

 

「さて、私も戻るとしよう。」

 

シグマも体を分解させ、姿を消す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウオッ!?何とか帰れたんダナ!」

 

意識が戻ったライノックスは、周囲を見回しながら帰ってきたことを確認する。すぐ傍ではイーグリードも意識が戻ったところだった。

 

「ゼロは・・・・アイリスは無事なのか?」

 

「何、僕たちが無事に戻って来たんだから大丈夫だよ。そうだね、アイリ・・・あれ?」

 

ライノックスは、同じく目を覚ましているはずのアイリスに声をかけようとするが当の本人は眠ったままだった。

 

「目が覚めてない。」

 

「おかしいな途中、別れるまでは一緒だったはずだが。」

 

同時に救命ポッドからブーブーと警報が鳴り響く。

 

<警告!“意識ユニット”、複数確認!!システムエラー!システムエラー!“分解”ノ恐レガアリマス!!>

 

「・・・・もしかして、二人揃ってポッドの方に行っちゃったんじゃ・・・・」

 

ライノックスは顔を真っ青にして言う。ポッドは、ガタガタと震えながら警報を鳴らし続け今にも爆発しようとしていた。

 

「なんとなならないのか、ライノックス!?」

 

「こればっかりはどうにもできないんダナ!みんな、逃げなサイ!!」

 

叫び声を聞くと一同は急いで洞窟の外へと逃げる。

 

<オーバーロード!オーバーロード!危険!危険!>

 

洞窟を出ると同時に爆風が追い付き、彼らは勢いよく外に放り出される。

 

「ダナ~~~!?」

 

「ダァアアア~~~!?」

 

「うわっ!?」

 

「きゃあっ!?」

 

その爆発は、人里からでも見えたのかしばらくすると霊夢と魔理沙の二人組が飛んでくる。

 

「うわぁ・・・随分と派手に吹き飛んだなぁ。」

 

「少なくとも普通の爆発じゃなさそうね・・・・ちょっと、アンタたち。何をしていたわけ?」

 

脅すつもりはないものの霊夢はややドスの効いた声でにとりに問い詰める。

 

「別に悪いことじゃないんダナァ・・・ただ・・・」

 

「ダァア・・・なんてことダァ。折角うまくいくと思ったのによぉ。こんな悲しい終わり方、アリかよぉう。」

 

「ゼロ・・・俺たちが付いていながら・・」

 

三人の反応を見る限り、ゼロのみに何か起こったと理解したのか魔理沙も複雑そうな顔を浮かべる。

 

「おいおい、マジかよ。まだ、付き合い短いのによ。」

 

「ごめんよ、ゼロ。僕がしっかりしていなかったばっかりに・・・。」

 

一同は暗い空気に包まれながら洞窟から出る煙を見つめるのであった・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って、おい!勝手に人を死んだことにするな!!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

洞窟からの声に彼らはまさかとばかりに目を向ける。すると中から所々炭で汚れたゼロとアイリスがせき込みながら出てきた。

 

「ゼロ!アイリス!!」

 

ライノックスは、驚きながらも二人に近づく。見たところ、焦げていることを除けば異常は見られない。

 

「君たち・・・体に異常はないのかい?」

 

「ケホケホ、取り合えずな。だが、一体どうなっているんだ?意識が戻りなり、中は荒れ放題で俺はともかくアイリスも二人になって・・・・」

 

「何がどうなっているのか・・・」

 

二人は、困惑しながらも答える。しかし、どうあれ無事に戻ってきたことにライノックスは安堵の表情を浮かべた。

 

「どうしてこんなことになったのかは分からないけど・・・・でもよかったんダナ!二人とも戻ってこれて!!」

 

「このバカ野郎!!ダァア・・・・心配させやがって!!」

 

「ふう、やれやれだな。」

 

彼らは、改めて二人の生還を喜んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの~コンボイだけど。みんな、私のこと忘れていないか?」

 

少し離れたところで立っているコンボイを除いて。




???「コン・ボイ・ワー、イボンコ」
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