世を照らすのは日輪だけじゃない。   作:ポンタ ponta

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 全集中・捏造の呼吸、壱ノ型、育手捏造。
 オリキャラ出てきます。
 ちょっとキャラ崩壊。
 ほぼほぼギャグパート。
 ご注意を。

 無一郎が刀を握って二ヶ月で柱になったのは鬼への憎しみが半端なかったからじゃないかなーって思ってます。この話では兄が生きていたことにより憎しみがちょっと少ないので、それを補充するために濃い性格のオリキャラをブッコミました。今回の話、正直に言うと書いてて楽しかったです。

 後書きに次話について記してあるので読んでおいて下さい。


第3話 出くわしたのは、妖怪だった。

「………ここが」

「……兄さん」 

 

 俺たちはお館様の指定した育手がいる山へとやってきた。道案内は喋る珍妙な鴉がやってくれたが、その鴉は急用だとかで帰ってしまった。その鴉によると、俺たちの前にある山小屋が、(くだん)の育手が住む家らしい。

 

 俺たちはそろそろと小屋に近づいて、人らしき気配が無いかを探りながら足を進める。警戒し過ぎだと思われるが、それは鴉が帰り際、妙な事を口走ったせいだ。

 

『ジャアナ! セイゼイ鬼ニ喰ワレル前ニ喰ワレルナヨ!!』

『おい今なんて言った!!?』

『ケケケ。バイバーイ!!』

『職務怠慢じゃないのかよ!!?』

 

 結局鴉は戻ることはなく、気になることも聞けぬまま飛び去っていった。

 あの鴉次会ったら仕留めてやる。と山育ちの誇りにかけて誓う俺の傍らで、無一郎が不安げに瞳を揺らす。

 

「山姥とか出ないよね?」

「…………」

「兄さん!?」

 

 だが何故か家に人の気配がない。兄さん!? 兄さんっ!? とポカポカ叩いてくる無一郎を尻目に、とりあえず家の戸を叩いてみる。

 

「……ごめんくださーい」

 

 声をかけて確認してみるが、人が出てくる気配がない。仕方がないので近くで待とうかと、座れそうなものが無いかを探そうとして――――。

 

「―――あらぁ!」

「ふにゃっ」

 

 上から降ってきた何かが俺の背中を踏んずけ、そのまま碌な抵抗もできずに、俺は雪が残る地面に顔を突っ込んだ。

 

 痛みと息辛さに悶えながらどうにか顔を動かして、人様の背中に乗っている奴の顔を拝むと。 

 

「あらあらぁ! アタシの好みじゃないノォ!」

「……これは夢か?」

 

 目線の先に居たのは、一人の人間。だが片手を頬にあて舌舐りする仕草は新手の妖怪(ニューカマー)オネェサン。無一郎の言った山姥とはどっこいどっこいの怪しさ。踏まれた苛立ちなんぞ顔面の破壊力で塵へと返り、思わず夢かどうかを疑ったが残念なことに現実だった。

 

 こんな奴を俺たちの育手にするなんてお館様の正気を疑う。……やっぱりあまね様のことで根に持っているかも。

 

 次会ったらもう一遍謝っとくか……と現実逃避していたら、ズイッと顔を寄せられる。近くで見ると気色悪さ倍ドン。有一郎は吐き気がしてきた。

 

「んっフフ! 君がゆうくん? それともむぅくん? 教えてね♡」 

 

 語尾にハートが付いてそうな言い方にますます吐き気がする。それとゆうくん、むぅくんとか気持ち悪いあだ名を付けるな。というかさっさと退け。

 

「……俺は、時透有一郎。お館様の紹介で此方へ来た」

「アタシの名前は佐藤勇太。気軽にゆうちゃんって呼んでね!」

 

 キモい。誰が呼ぶか。コイツの名前は妖怪で十分だ。

 

 納得がいったのか妖怪は俺の背から足をどけ、俺もフラフラと羽織についた土埃を払いながら立ち上がろうとすると、妖怪はこちらに手を差し出してきた。俺は案外良い奴かもしれないと思い直して、その手を握った。

 

「おてて可愛いねぇ」

「離せくそ妖怪!」

 

 前言撤回。コイツ良い奴じゃねぇ。やめろ指を絡めてくるな頬擦りするな気持ち悪い。

 

「兄さんから離れろこのくそババジジイ!!」

「お前何処でそんなこと覚えた!?」

「兄さんが言ってた!!」

 

 なんてこと。時透有一郎は少女漫画ばりの白さで固まった。

 

 そして、しっちゃかめっちゃかな場に飛び込むひとつの黒い影。

 

「カァーー! イラッシャイラッシャイ! 歓迎スルゾ!!」

「お前さっきの鴉!!」

 

 道案内の鴉は妖怪の鴉だった。

 得意気に喋る嘴をへし折ってやりたいと、妖怪の肩に止まった鴉目掛けて足元に落ちていた小石を投げる。が、

 

「ヘイヘイヘ~イ!」

 

 余裕綽々に避けられ、更には煽られた。ムカつく。いずれ焼き鳥にしてやる。

 

 不穏なオーラを醸し出す有一郎の背後に、ピカーンと目を光らせた妖怪が迫る。

 

「捕まえたぁぁ!!」

「くっ離せ!」

「イヤよ。さぁ、二人とも中に入りましょう。寒いでしょ? ご飯はできてるわよ」

「兄さん助けてぇぇ!! 食べられるぅぅ!!」

 

 じたばたもがいて離して助けて食べられると叫ぶ二人をなんのその、両肩に担いで悠々と家に入るその姿は、傍目から見れば正しく人を喰らう山姥であった。

 

 

 

―――………

 

 

 居間にある囲炉裏から、パチパチと火が弾ける音がする。その囲炉裏を囲んでいるのは新手の妖怪プラス鴉。有一郎と無一郎は部屋の隅っこに居た。

 解放された二人は、互いにくっつきあって出来るだけ妖怪から離れようとしていた。家の中は狭いので物理的な距離は近いが、心理的な距離はこの数万倍はある。

 

 その姿を面白げに見る妖怪は、ニヤニヤ笑いながら鍋でぐつぐつと米と味噌汁を煮込む。中身は全く健全なものであるが、その顔の不気味さで、パステラルカラーの劇物を作っているようにしか見えない。

 しかし鼻を擽る匂いは実に芳ばしい香りで、二人の空腹を刺激する。

 

「ほら食べなさい」

 

 差し出された湯気を出す煮物。それを見て有一郎はぽつりと溢した。

 

「……毒とか入ってないよな」

「アンタの唇貰ってやっても良いのよ?」

「「いただきます!!」」

「た~んと召し上がれ!」

 

 妖怪の視線がどこ向いていたかは忘れることにする。

 

「食べ終わったら風呂行ってきなさい。アタシはちょっくら風呂の薪に火着けてくるわ」

 

 そう言い残して妖怪は外へと出ていった。

 

「兄さん、これから頑張ろうね」

「そうだな」

 

 箸を止めて小首を傾げる弟に、そう返して俺はご飯を掻き込んだ。

 

「ごちそうさまでした。無一郎、俺は先に風呂入ってくるからお前はゆっくり食べてろよ」

「うん。いってらっしゃい」

 

 箸を持った手でふりふり見送る無一郎を背に、俺は警戒しながら風呂への敷居を跨いだ。そして脱衣所の壁と天井をくまなく見る。

 

「壁に穴は無し。天井にも穴は無し。……よし次だ」

 

 覗き穴でもあったら塞いでやろうと、無一郎より早く来たのはこのためだ。

 脱衣所全てをくまなく点検し終わった後、俺は服を脱がずに浴場へと足を踏み入れる。檜風呂には既にお湯が張られてあった。手が早い。

 

「…………杞憂だったか?」

 

 風呂場もおかしな所は見当たらず、俺は脱衣所に戻って上だけ服を脱ぐ。そして一応風呂場に妖怪がいないかを確認してから下を脱――がずに壁に耳を付ける。

 

「………はぁはぁはぁ、あらかじめ風呂沸かしといて正解だったわ」

「やっぱ居たかこの妖怪め!! 鬼退治の前に妖怪退治してやる!!!」

 

 

 

 

 

 妖怪を縄でがんがらじめに縛り上げて、安眠を確保した次の日、本格的な修行が始まった。

 

「おはよう、ゆうくん、むぅくん」

「お前どうやって縄から抜けたんだよ……」

「ひ・み・つ・♡」

「「気持ち悪い」」

 

 口元に人差し指をあて、バチコンウィンクかました妖怪に毒を吐く二人。

 

「とりあえず、ご飯食べたら山頂にいらっしゃい。そこで修行を始めるわよ」

「「はい!!」」

 

 いよいよ始まる修行を前に、心臓はどくどくと鼓動を刻み、知らず知らずのうちに奥歯を噛み締めた。

 

 

 

―――………

 

 

「それじゃあ、いくわよ」

「「はい!」」

 

 少し霞がかかった開けた場所で、三人は向かい合う。

 妖怪が空を飛ぶ鎹鴉に目を向け、合図。

 

「ヨーイ、ドン!」

 

 鴉が号令を掛けると、弾けるように妖怪が走り出す。そして有一郎と無一郎がその後ろを追いかける。俗に言う鬼ごっこだ。

 

「アハハハハ~~捕まえてご覧なさ~い♡」

 

 しかし妖怪の気分は鬼ごっこじゃなく、さざ波が打ち寄せる砂浜の海岸でイチャコラしている気分。背景はもちろん茜色の空と夕日だ。

 脇をしめて軽く両手を握り、小指をピンと立てつつ腕を横に振って走る走り方(乙女走り)に、有一郎の殺意がこれでもかと湧いてくる。

 

「アハハハハ~~~~!!」

「くっ追い付けない……!!」

 

 そんな非効率な走り方でも元柱。有一郎と無一郎には迫られない。

 

 しかし。

 

(あの子たち随分と速いわね。流石優秀な血の持ち主ということかしら?)

 

 普通の人なら既に、息絶え絶えで座り込むほどの速さで走っているにも関わらず、二人はまだまだ走れる体力もあればこちらを罵倒する気力もある。

 もう少し速くしてみようかしら、と足の回転を速めた。

 

「まだ上があんのかよ……!!」

「ぜったい追い付いてやる!! 兄さん! 僕回り込んでみる!!」

 

 一段階速くしてもついてくる。まるで親の背を必死でついてくる子軽鴨のように。

 ………親、子?

 

(あらやだ、アタシったらいつの間に子を産んだのかしら?)

 

 とんだ方向に思考が転換した妖怪は、更に思い込みのアクセルを踏み込む。

 

(そうよ、アタシはあの子たちのお母さんよ!!)

 

 そんな思考が読み取れてしまったのか、うげっ、と有一郎の足が弛む。そして妖怪が振り返り、言った。

 

「アタシのことはお母さんとお呼びして! おふくろでも良いわよ!」

「気色悪いこと言うな! 俺たちのお母さんは一人だけだ!! それにもう死んだ!」

「こら! お母さんに向かって死んだなんて、酷いこと言わないの!! そんな子に育てた覚えなんかありません!!」

「こっちだって育てられた記憶なんてないぞ!! 昨日が初対面だよ!!」

 

 そのまま鬼ごっこから大乱闘スマッシュ口論(物理)へと修行内容が変わる前に、回り込んでいた無一郎が走る勢いのまま妖怪の背を触れた、というか突き飛ばした。

 

「ゴフゥ!!」

「触った! 触ったよ! 見た兄さん! 僕やったよ!!」

 

 背骨がありえん勢いで曲がった妖怪は、目をひん剥いてぶっ飛び、地面を削りながら沈んだ。ここで有一郎の願いであった妖怪討伐はなされたのだ。

 

「よくやった無一郎!」

「えへへ~!」

 

 方や妖怪が倒れて喜んで、方や目標を達成できて喜んでと、二人で喜んでいる内容が違う。

 しばらく勝利の余韻に浸っていると、妖怪が「我、復活!!」と叫んで飛び上がった。

 

「じゃ、次ゆうくんとむぅくんが逃げるほうね、今度はアタシが追いかけるから」

 

 さっきの場所で待ってて、と言い残した妖怪は、なにやら家がある方角へと姿を消した。何か準備があるのだろうか。そう考えながら、無一郎と先程の開けた場所で待つ。

 

「お待たせ~!!」

 

 幸いにも直ぐに妖怪は戻ってきた。何故かその手に女物の衣服を持って。イヤな予感しかしない。

 

「一応聞いておくが、それは何だ?」

「ふっふっふっ、これはね! アタシが隠の裁縫係(前田)に頼んで作って貰った服よ!! アタシが捕まえた方はこれを着て一日過ごして貰うから!!」

「「ぜったい嫌だ!!!」」

「アタシがルールよ、法よ、憲法よ!!!」

 

 アタシが絶対! と胸を張った妖怪を見て、有一郎と無一郎はできるだけ早く強くなってここを出ていくことを決意した。

 

「じゃあ始めるわよ~~」

 

 

 そして始まった妖怪による妖怪のための妖怪だけが得する鬼ごっこ。結果、捕まったのは、無一郎だった。

 

 白いふりふりのワンピースを着させた無一郎の耳元で、妖怪は悪魔のように囁く。

 

「僕は男「アナタは女」僕は男「無一郎は女の子」ボクは男「むぅくんは可愛い女の子」……ボクは「女の子」……女の子?」

「もう止めてあげて下さい!!」

 

 ぐるぐると目を回し、自分が女の子と認識し始めた無一郎を視て、有一郎は妖怪に向かってスライディング土下座をした。

 

 

 

 

 

―――………

 

 

 

 

 ―――月夜の下、霞と霞がぶつかり合う。

 

「いくぞ、無一郎」

「うん」

 

 妖怪の下で弟子入りしてからおよそ四週間。俺たちは既に霞の呼吸をものにし、来週に迫る最終選別を突破せんと、厳しい鍛錬を毎日のように課していた。

 今は無一郎と刀を向け会い、対峙している。

 

 有一郎と無一郎の口から漏れでる、フウウウウウ……という呼吸音が夜の闇に響く。

 

 そして間髪入れずに地面を蹴り、居合いの構えから流れるように無一郎の懐に入り込んだ有一郎は肆ノ型を振るう。しかし、無一郎は参ノ型を繰り出し、互いに振った刀がぶつかり合って火花を散らした。

 

「っ―――!!」

「ぐ―――!」 

 

 力の拮抗によってガチガチと擦れ合う刀。直後示し会わせたように互いに刀を弾き合い、距離を取る。

 チャキ、と構え直した無一郎の刀は微塵も揺れず、ひたすらに前を向く。

 

「はぁぁぁぁぁ―――っ!!」

「フッ―――!!」

 

 互いに繰り出すは弐ノ型、八重霞。風を斬りながら切っ先が進み、一撃、二撃、三撃と続き、最後の五撃目で互いに弾かれ合った。

 ザァァァ………と地面に二つの溝を掘りながら後退りする有一郎に、いち早く体勢を整えた無一郎が迫る。

 この距離で無一郎が出す技として、有一郎が想定するのは霞の呼吸唯一の突き技。

 

「フッ!!」

 

 壱ノ型、垂天遠霞。

 

「甘いぞ!!」

 

 有一郎が読み通りの攻撃を余裕をもって弾く。だがそれだけでは終わらせない。今度は俺の番だと、流れるように動作をつなぎながら、壱ノ型、参ノ型と続け、最後に伍ノ型を叩き込もうとする―――が、無一郎の口元が不意に緩んだ。その奇妙さに有一郎の体が一瞬硬直する。そして伍ノ型を繰り出そうとする腕を無理矢理止め、陸ノ型、月の霞消の要領で宙へと逃げた。

 

 眼下に佇む無一郎の口が動く。

 

 霞の呼吸 漆ノ型 朧

 

 と。そして広い場を霞が満たす。地面に着地した有一郎は視線を慌ただしく周囲に向ける。

 

(漆ノ型!? 何だ!? どこだ!? 見失った!! 見つから―――)

 

「兄さん、僕の勝ち、だね!」

 

 気付けば無一郎は有一郎の背後に立ち、その首に刀を添えていた。実戦であれば確実に死んでいることに、有一郎は両手を挙げた。

 

「……降参だ。随分と強くなったな。つい三日前までは俺の攻撃で吹き飛ばされていたというのに」

「頑張った!! 凄く頑張った!!!」

「最後の型は、自分で作ったのか?」

「うん! 妖怪から逃げるために!!」

「……そうか……うん、そうか」

 

 一応言っておくが、現在有一郎と無一郎の着ている服は、妖怪の趣味全開のフリルましましひらっひらのものだ。

 

「……戻るか」

「そうだね」

 

 剥き出しの刀を鞘に納め、無一郎と共に家に戻る。

 

「「ただいまー」」

「お帰りなさいのチュゥ!!!」

「死ね」

「ブボォ!!」

 

 扉を開けた途端に唇を突き出して飛び出てきた妖怪を流れるように仕留める。毎度毎度懲りないのかコイツは。

 

 

 

 

 

―――………

 

 

 

 

 

 数日後、俺たちは最終選別の藤襲山へと出発することになった。

 

 妖怪が用意したまともな服を身につけ、更に無一郎は白の刀身を、俺は藤色の日輪刀を腰に差す。最終選別用の携帯食料もちゃんと持ち、これで準備は万全だ。

 

「二人とも、ちゃんと帰ってきてよね。御馳走を用意して待ってるから」

「「はい」」

 

 何時ものふざけた雰囲気ではない。当たり前だ。これが今生の別れになるのかも知れないのだから。

 

「必ず、必ず帰ってきて。無一郎ちゃん、有一郎ちゃん。どれだけ惨めな姿でもいいから、必ず生きて、帰ってきて……!!」

「「はいっ!」」

 

 男らしいその大きな腕で、俺たち二人をその胸に抱きしめた。

 

「スゥゥゥゥゥ、ハァァァァァァーーー」

「「匂いを堪能するな!!!」」

 

 結局最後はこうなるのか、と期待を裏切らない妖怪を二人して蹴り飛ばして背を向けた。

 

 朝日は既に昇っている。

 目指すは最終選別の地、藤襲山。

 

「「佐藤さん! 行ってきます!!!」」

 

 二人で同時に振り返って手を振れば、佐藤さんは呆気にとられたような顔をして、そしてにこやかに手を振り返してくれた。

 

 

 

 

―――………

 

 

 

 

「綺麗だねぇ……」

「そうだな、鬼がいなけりゃ満点なんだがな」

 

 季節外れの藤は筆舌に尽くしがたいほど綺麗だが、ここに鬼が跳梁跋扈していると思うと、暢気に眺めてなんかいられない。

 

 麓から続く石の階段を上り、鳥居をくぐれば、ひときわ開けた場所に出た。

 そこには人がいる。俺とそう年の変わらない子供たちが二、三十人ほど。強面の者や童顔の者、他にも少数ながらも女子がいて、中には特徴的な蝶の髪飾りをしている女子もいた。

 

 俺たちが到着してからも、一人、また一人とやって来る。

 

 俺はそわそわと腰の刀の柄をなぞりながらも始まるのを待つ。

 

「刻限になりました。では、まずご挨拶を。皆さま、今宵は最終選別に集まっていただき心より感謝を」

 

 夜の涼しさのように凛とした声を発しながら姿を見せたのは、美しい白髪と漆のような瞳を持つ女性。無一郎的に言えば白樺の精。あまね様だ。

 深く腰を折ったあまね様は、一度周囲を見渡す。そして俺たちと目が合うと、少し微笑まれた。

 

「この藤襲山には鬼殺の剣士様方が生け捕りにした鬼が閉じ込められております」

 

 “鬼”という言葉を聞いた途端、場の空気が一段と張り詰める。誰かが唾をのむ音が聞こえた。

 

「ここから先は鬼が忌避する藤の花は咲いておりません。故に鬼共がその中を跋扈しています。この中で七日間生き抜く、それが最終選別の合格条件となります」

 

 

 

 

 

 

「―――それでは、いってらっしゃいませ」

 

 




 時透さんちの有一郎くん。
 鴉を射さんとばかりに狙う毎日のお陰で、予期せず投擲スキルが上がる。いつしかこれが役に立つ時が来る……かも?
 あの後あまね様にはちゃんと謝った。
 女装姿は活発系美少女。

 時透さんちの無一郎くん。
 兄が鴉に石を投げるのを見て、自分もやってみようと始める。兄からの悪影響がここにも出た。
 知らず知らず鍛え上げられたその腕は、いつしかの柱合会議で日の光を浴びる。
 女装姿は儚い系美少女。

 佐藤さんちの勇太さん。あだ名は山姥。乙女心を手にしたオネェさん(♂)。年齢は自称、永遠の十八歳。
 鬼殺隊元霞柱。持病が悪化し引退。名前は父親が、平々凡々な人から飛び出せるような勇気を持てるように、と願いを込めて付けた。父親の願い通り、鬼殺隊の頂点、柱に成れたのは良かったが、何を間違えたのか、当の本人は舵をヒャッハーと思いっきりとんでもない方向に切って、アクセル全開フルバーストで新手の妖怪へと変身してしまった。きっと天国で父親が泣いている。いや100%泣いてる。
 もちろんお館様の推薦が来るほどには実力がある。ただ性格はお察し。

 産屋敷さんちのあまね様。
 まだ一ヶ月しか経ってないのに時透兄弟が選別に来るとは思ってなかった。有一郎からの謝罪は快く許した。幾分か丸くなっているようでホッとした。(そんな訳ない)

 次は最終選別なんですが、手鬼と戦うこともなければ派手な戦いもないので、選別が終わったところから始めます。
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