でも捏造の呼吸は常中なので、ここ違うんだけど……となっても見逃してください。
次回、突っ込みたいネタがあるので遅くなるか長くなるかも。
また、新しくアンケートを設置しました。前回のアンケートの回答ありがとうございます。今回もご協力をお願い致します。
鬼舞辻無惨はその時、重鎮が集まる夜会に居た。
それは会社の要人やその妻を交えたもので、各々がグラスを傾け談笑していた。その内のひとり、鬼舞辻無惨は表面上和やかな笑みを浮かべて相手をしていたが、その内面では別の事を考えていた。
逃れ鬼だ。
(全くもって忌々しい)
逃れ鬼の中でも珠世が一番嫌いだが、それとは別に、最近では別の逃れ鬼が煩わしい。
逃れ鬼は嫌いだ。全て厭わしい。
あの夜、忌まわしいあの男から逃れるために、やむを得ず分裂した時、全ての鬼を縛っていた支配が一時的に弱まった。大部分がその場で切り捨てられ、頭一つ分の肉片しか残らなかったが、体が再生するにつれて支配力も元に戻った。しかし縛りが緩んだ隙に支配を解いた鬼には、支配が戻らなかった。そんな鬼を再び支配下に置くには血を与え直すしかない。
黒死牟が探し出して始末したり、連れ戻して再び支配下にしたが、それでも残っている鬼はいる。
珠世は言うに及ばず、支配から離れたのをいいことに唯我独尊で暴れまわる鬼には腹が立つ。
そんな鬼が最近、再び出始めた。
産屋敷は見付からず、青い彼岸花も見付からず、太陽を克服する鬼も出てこない。そこに来て再びの逃れ鬼。無惨のストレスもピークを迎えていた。
勝手に暴れまわるような狼藉者がいれば、鬼殺隊よりも先に狩った。
だがしかし、今回の鬼は中々捕まらず始末もつけられない。
鬼が出たという噂を聞きつけて現場へ向かえば、そこには既に鬼の姿は無く、足取りも掴めない。
一度猗窩座が姿を見たが、見ただけで殺せはしなかった。逃げられたのだ。空を飛んで。何故ならその鬼は鳥を操る。自らは操る鳥の背に乗り、獲物は配下にした鬼鳥に獲らせる。何度目かの調査でそれが判明し、それ以降は間合いが特段に広い黒死牟を向かわせている。半天狗もその特徴上適していたが、あれは酷く五月蝿い。怯えていては逃げられる。その点でも無惨は黒死牟を選んだ。が、前回は黒死牟が到着する前に逃げられ、無惨の白い顔にはビシッと血管が浮かび上がった。
さっさと見つけ出して始末するか配下に戻したいが、未だに願いは叶わない。そして今日、鬼になって格段に上がった聴力がその噂話を掴んだ。
夜会が終わり、無限城に戻った無惨は再び黒死牟を呼び出し、同じことを告げ向かわせた。
―――………
無一郎が霞屋敷に身を移して数ヶ月後、食事中に銀子から任務の報せが届いた。
「合同任務?」
「ソウ! キット相手ハ十二鬼月ヨ! 心シテ行クノヨ!!」
「十二鬼月か………」
全集中・常中も骨身に染み込み、身体能力も格段に上がった。身に付けてから既に幾つもの鬼を斃しているため、下弦相手でも後れは取らないだろう。
箸を止めていた手を動かして食事をかっこみ、出立の準備を整える。
てきぱきと支度を整える無一郎の肩に乗り、銀子が概要を話し出す。
数ヶ月前にひとつの村が消えた。残っていたのは人間らしき肉塊と夥しい血の跡だけ。鬼の痕跡は無かった。しかし数週間前、別の村が消えた時、遅れて到着した隊士によれば村の上空で鳥の大群を見たという。その目撃情報から上は下手人を鳥を操る鬼と判断。万が一にでも空へと逃げられないように多くの隊士を集め、一斉に叩けとのこと。
お館様の“勘”によると、次に狙われる場所は人気が少ない寂れた村。
「場所は山と山の間、と。………逃げられたら厄介だね」
丸を付けた地図を覗き込み、周辺の地理的な情報を見る限り空を飛ぶ鬼には有利な立地だろう。逃げられたら振り出しに戻ってしまう。
そういう訳で、柱と高階位の隊士を集めて配置しておくこととなったらしい。相手は大群の鳥鬼を率いる頭。備えは十分にしておくべきだ。
「銀子、住人の避難はもう終わってるの?」
「マダダケド、隠ノ人ガアレコレ理由ヲデッチ上ゲテ頑張ッテクレテルワヨ!」
「早く避難してくれればいいのに」
守る人間がいると戦いにくい。鬼が来る前に避難してくれればいいけど………。
「よし、行こう!!」
―――………
夜の帳が降りる頃、銀子の案内で到着した場所には既に多くの隊士が居た。
気を抜いて座り込んでいる者もいれば、談笑している者もいる。勿論柄に手をかけいつでも迎撃できるようにしている者もいるが、それは少数。
そんな談笑している者たちに向かって無一郎が一喝。
「なに座ってんの? なに無駄口叩いているの? そんな風にたるんでいたら死ぬよ? なに死にたいの? 君たちがそうやってくだらないことをぐだぐだしている間に何人死ぬと思ってるわけ?」
「なんだお前? 別にいいだろ。柱がまだ来てないんだから」
「それに柱が来るんだぜ。多少気が緩むのも仕方ないだろ」
「そうそう、てかお前もこの任務なのか? 見た所まだ十代前半だろ。そんな年齢で戦えるのか?」
「へへっ、そんなこと言ってやんなよ」
しかし一笑に付され、再び談笑をし始めた。
戦の前だというのに気を引き締めない彼らに、無一郎は無言で隊服を捲り鍵言葉を唱える。
「階級を示せ」
「あ? ……ッ!!!?」
「なんか文句でもある? ほら言ってみなよ聞いてあげるから」
「大変申し訳ございませんでした!!!」
浮かび上がった“霞”の一文字に、みるみる顔が青褪める。そしてはっと我に返った男らは直ぐに頭を下げた。
「少し考えればわかるよね? 自分の立場を弁えなよ赤ん坊じゃないんだから」
そして無一郎は、はぁぁぁ………と苛立ちを隠さない溜息を吐きだし、糞に群がる蠅を見る目で吐き捨てた。
「本来ならお前らは帰ってもらうが、今回は数が必要だから諦める。死にたければ精々役に立ってから死ね」
振り返った無一郎は他の隊士に指示を出し、最後にこう付け足した。
「君たちに上官命令、勝手な行動しないこと、持ち場を離れないこと、以上」
―――………
村の周りを隊士で囲み、いつでも刀を抜けるように柄に手を置く。
そんな状態が二刻ほど続いた時、異変を察知したのか無一郎の双眸が夜空を睨む。その直後、夥しい程の鳥の群勢が村へと襲い掛かってきた。鳥の種類も点でばらばらで、雀、鴉、燕、鳩、鵥といった街中でよく見かけるものもいれば、夜鷹、鷂、梟、鷲、隼と獰猛な猛禽類も混在し、本来なら天敵同士の鳥さえ構わず突撃をしてくる。しかし共通するものはある。それは強膜が赤く染まり、瞳が縦に割れていることだ。
白色の刀身に刻まれた悪鬼滅殺の四文字を煌かせ、己に襲い掛かってきた鳥鬼をまとめて斬り落とす。
無一郎が容易く行うその行為だが、全員ができるわけではない。
「うわぁっ!! 誰か!! 助けてくれぇぇぇ!!!」
息の合った連撃。息をさせないとばかりに攻撃してくる鬼鳥に隊士の一人が押し負け、刀を持つ手が血で濡れる。ただでさえ鋭い爪が鬼化している影響でさらに鋭く頑丈に変化し、鬼の攻撃を防ぐ隊服を容易く切り裂き、爪を赤く染める。遂には刀を取り落とし、その隊士は空へと持ち運ばれた。
「あああああああ!!!!!」
上空高く舞い上がり、無慈悲に宙に放り出される。水中を藻掻くように腕と足を動かしても、空を飛べるわけでもなし。そのまま何もできずに落下し、そして、
―――ベシャッ
上空から落とされた隊士は粘着質な音を立てて潰れた。刀を持っていなければ技を繰り出して衝撃を流すことも出来ず、叩き落され死んだ。
潰れた蕃茄のように血が流れる肉塊に、我を競って餌を啄むように雀や鴉が嘴を突っ込む。ぐちゃぐちゃと音を立て喰い、首から噴き出した血を行水のように浴び、その体を血の一色に染め上げた。
そんな現状があちこちで起こっていた。
包囲網が破かれつつある。
鎹鴉も鳥鬼に追われ、何羽かは地に墜ちた。これでは救援も呼べないだろう。
「あっハハハハハ!!!!」
甲高い声が耳を震わす。きっと睨みつけるように見れば、十尺(3m)はあろう鷲の背には、十寸(約30cm)程の小さい女が乗っていた。
「食べなさい! 力をつけなさい!! そして私に献上しなさい!!」
(あの鬼が頭か)
すぐさま刀を翻し、周囲の鳥鬼を切り伏せる。駆けるままに宙を飛び、舞うように繰り出された陸ノ型。ただそれは空を切り、頸を斬ることは叶わず。
すれ違い様に見たその瞳には十二鬼月の証が無い。十二鬼月ではないが、その割には気配が強い。長年の時を生き、数多くの人を喰らった気配だ。
着地した俺を、鬼は牙を覗かせ嗤った。
「ばーかばーか!! 届くわけなかろう!!」
「地に墜ちろクソが」
低俗な挑発には乗らず、足元に転がる石を幾つか拾った後、思いっきり投げた。
風を切る石は狙い違わず鷲鬼の翼に当たり、穴を空けた。勿論相手は鷲だろうが鬼。翼がもげても再生するが故に、無一郎は何発も石を放つ。
「ええぃ、お前たちやってしまい!!!」
劣勢と見なしたのか、鳥鬼はいささかやけになりながらも己の配下に命令を下した。そして始まる猛攻。
自らの安全を顧みない捨て身の攻撃。しかしその攻撃はひとつながりで、切れることがない。全方向から飛来する鳥鬼の爪や嘴を捌きながら、周囲の状況を把握。
(生き残りの隊士は………約八人。鳥鬼は未だ逃げる素振りを見せず高みの見物。なら)
「総員、俺に構わず頭を叩け!!!」
柱である無一郎を助けようとする隊士たちに命令を下し、自分は配下を片付けることに専念。
襲い掛かってくる鳥鬼相手に弐ノ型、八重霞。それに続けて伍ノ型、霞雲の海。計十羽の鳥鬼を斃したが、まだまだ後援が湧いてくる。思わず舌打ちが出る
(くそ、めんどくさい相手だ)
続々と湧いてくる鳥鬼たちの攻撃に、捌ききれなかった爪のひとつに肩を裂かれた。突然の激痛に一瞬体が硬直し、刀が止まる。その間にも鳥鬼たちは襲い掛かってきたが、どうにか斬り伏せる。次に同じようなことが起きたら瞬く間に食い荒らされるだろう。
鳥鬼たちの猛攻の嵐の向こう側に、こちらに駆け寄る一人の隊士。
口元を包帯で覆い首元に白蛇を巻く隊士は、独特な剣筋で鳥鬼たちを斬ってゆく。
(なにしてるんだ。命令しただろ。従えよ)
「俺に構わず行けと言っただろ!!!」
「分かっている!! だがここで一番強いのは柱であるお前だ!! お前を解放できれば頭を叩けるかも知れん!!」
無一郎を助けようとする伊黒小芭内。その一方で鳥鬼の頭へと向かった隊士たちは未だに頸を落とせてない。
「ほーれほーれここまでおいで、お馬鹿さん~」
命令を受け向かった隊士たちの攻撃を避け、調子に乗っているのか地面に近づいている。愉悦に浸るその目には、自身に迫る刃に気付いていない。
「諦めなさい、お馬鹿さんたちには一生かかってもわたしには届かな―――」
「隙を、見せたな」
「へっ?」
突然吹き荒れた刃の嵐。
轟音轟き、木々を切り裂き地を割った。
衝撃で立ち込める土煙、舞い散る木の葉に血肉の破片。
それは配下の鳥鬼だけではなく、頭へと向かっていた隊士も斬り伏せた。
隊士たちは絶命に至り、されど地に墜ちた鳥鬼たちのどれもが、絶命には至ってない。
天変地異、または地獄絵図のような景色を作り出した“なにか”は、軽やかな足音だけを立てて降り立った。
「に、逃げなきゃ」
「逃がしはせぬ」
気が付けば鳥鬼の頭の頸は斬られ、転がった。しかしこちらも、灰になる気配はない。なら、これは日輪刀で斬ったものではない。
「ひぃぃぃぃぃいいぃ!!!」
今宵の空に星は無く、また月も無し。
夜闇に濡れた世界だが、その姿は網膜に鮮明に刻まれた。
高く結われた総髪。その色は夜を吸い込んだような黒艶さ。羽織は夜明の空の色。墨を染み込ませたような漆黒の袴。
両の瞳は窺えない。だが、気配は人間のものと遜色無い。
ならば人間かと問えば違う。それの腰には刀があった。佩かれた不気味な鞘が、それを鬼だと教唆する。
醸し出される重厚な強者の気配に、ごくり、と唾を飲み込んだのは無一郎か、それとも小芭内か。いや、どちらもだ。
「た、助けて、殺さないで、お願いします!!」
異様な静かさに満ちたその場に、鳥鬼の叫びだけが木霊する。
「黙れ」
ひとつ睨みつけただけで、鳥のように煩い鬼の口を黙らせた。そして乱暴に鳥鬼の髪を掴み上げる。
「………お、お、おおおおおおおお!!!!」
斬撃の嵐を偶然生き残った隊士が、恐怖で震える声を上げ、これまた震える手で斬りかかった。それを鬼は歯牙にもかけず、袈裟切りにした。黒の隊服から飛び散るように、真っ赤な花が咲き誇る。
そして鬼の持つ刀に埋め込まれた眼球が、ぎょろりと一斉に俺たちを見る。
「邪魔者は殺す。………無論お前たちも」
十間(約18m)は離れていた筈なのに、気付けば後ろにいた。背中にかかる濃厚な死の気配に襲われ、無一郎と小芭内は動けない。動いたら死ぬと本能が警告し、振り返ることすらできやしない。
(落ち着け、落ち着け、気を静めろ)
背筋が震えるほどの恐怖を抑え、いざ振り向こうとした瞬間、
「だが、邪魔者ではないなら、用は無い」
突然消えた気配。恐る恐る振り返れば、そこには誰もいない。周囲にも視線を配り、誰もいないことを確認した二人は地面に崩れ、安堵に満ちた溜息を吐いた。
その後、地に転がる鳥鬼の配下たちを二人でトドメを刺し、仲間の遺体を出来るだけ集めて隠が到着するのを待った。
一通り片付けた後、気力で保っていたらしい白蛇の隊士は気絶するように眠りに落ちた。それに無一郎もつられてこくりと船を漕ぎ始め、銀子がこちらに向かっているのを目にしてから眠った。
あれは多分、いや確実に十二鬼月。それも上弦。直ぐに柱合会議を開いて情報を共有しなければ。
―――………
それから数日後、今までの功績が認められ、新たに蛇柱となった伊黒小芭内を加えて緊急の柱合会議が開かれた。
「鳥鬼を逃してしまい、大変申し訳ございませんでした」
「同じく、接敵しておきながら逃がすとは、誠に痛恨の極み。柱として未熟者。より精進致します」
二人並んで晒されたつむじの先は、お館様と柱たち。
彼らが謝る通り、柱と柱と同等の力持った隊士がいながら、任務を完了することができなかった。
本来ならばここで風柱もしくは音柱の激が飛ぶ筈だが、神妙な顔をして責めることはなかった。それはお館様も同じく、変わらぬ微笑みを保ったまま。
「無一郎、小芭内。顔をあげておくれ。私には君たちを責める気持ちは無いよ。むしろ無数の鳥鬼の配下相手に立ち回り、上弦の鬼らしき情報を持って帰ってくれたことに感謝しているよ」
風柱と音柱が何も言わないのはこれのためだ。
数百年以上生きる上弦の鬼。その時間の長さに反して情報が少ない。ゼロと言っても過言では無い情報の無さに、ここにきてそれらしき鬼の情報。持ち帰っただけで価千金の価値がある。
「かの鬼の武器は刀。姿は紫の羽織に黒の袴。黒の総髪で気配は人間と遜色無かったです。きっと街中に潜んでいても直ぐには分かりません」
「瞳には何の文字があったァ?」
「後ろ姿であったため見ることは叶いませんでした。ただ、気配の強さからにして上弦の肆以上かと思われます。……そもそも上弦とは会ったことがないので推測に過ぎませんが」
「南無……他に気付いたことはあるか?」
悲鳴嶼行冥に訊ねられ、無一郎と小芭内は記憶を掘り返す。
呼び出されたのは脅威な刃の嵐。
今思えば、あの刃の形は―――
「……繊月」
「繊月だァ? 月が何に関係すんだァ?」
「見間違えかも知れませんが、鳥鬼を襲った刃の形は繊月に似ていたかと」
刀を扱う鬼で、刃が月の形をとる。もしやそれは――
「オイオイ待て待て!! なら呼吸を使う鬼ってことか!?」
「だがしかし!! 月に関する呼吸など存在しない!! 聞いたこともない!! 十中八九血鬼術だろう!!」
「もし存在していたとしたら、それは鬼殺隊だったことになる。裏切り者か?」
白熱していくにつれて、皆がみな気を荒立てる。その様子を見た耀哉はすっ、と唇に人差し指を立てた。途端に頭を下げて静まり返る場。
ゆるりと見渡した耀哉はおもむろに口を開く。
「そこは私も調べてみよう。うん、では次に鳥鬼について議論しようか」
「「「「御意」」」」
頭を上げた柱の中で、一番始めに話し出したのは胡蝶しのぶ。無一郎と小芭内の方を向けば、翅羽織が畳を擦る。
「無一郎くんたちの話によると、その鬼は生きたまま連れ去られたんですよね?」
「はい」
「では始末されたか配下にされたかの二択。ここは慎重に考え配下にされたとしましょう」
「そうだな。だが空を飛ぶ相手にどう仕留めるか。……派手に柱全員で仕留めちまうか?」
しのぶの考えに、宇随天元が茶化しながら意見を出す。
「だがしかし! 柱全員集めたとしても、確実に仕留められる手段が無い限り無駄だ!!」
「そもそも今回の事件で、鳥鬼の手駒は底をついたのでは?」
「あり得るなァ。なら次に騒ぎを起こすのはまだ先だなァ」
「鬼に効く銃の製作も視野に入れるべきだと思います」
「刀鍛冶の人たちにお願いしなければ」
トントン拍子で話が進み、結果としては鬼に効く銃の製作、また最低でも柱ニ名以上で戦うこととなった。
―――………
向かわせた黒死牟から捕らえたとの一報を受け、鬼舞辻無惨はおおいに喜んだ。流石は黒死牟。必ず私の願いを掴みとる。
久しぶりの上機嫌で人間での仕事をちゃちゃっと終わらせ、鳴女に黒死牟を呼ばせた。
「黒死牟」
「はっ」
所変わって無限城。跪く黒死牟の前に立つのは鬼の始祖、鬼舞辻無惨。
跪く黒死牟の隣には、首だけとなった鳥鬼。自分の振る舞いでこれからの運命が決まるかと思えば、勝手な行動はできない。そう考えた鳥鬼は一言も喋らず、畳の上で置物の様にじっとしていた。が、じろりと無惨に見られ、ぶるぶる震える。携帯のマナーモードの様に震えた。
無惨はその様を一瞥し、唇から白い牙を覗かせる。
「今の私は気分が良い。貴様は私の配下に下らせる。自分の幸運に感謝するが良い」
「がっ……!!」
「鳴女」
「はい」
血を注入した鳥鬼の最後を見届けず、さっさと無限城の外へと追い出した。
「黒死牟。よくやった。下がっていいぞ」
「恐悦至極……失礼、仕まつる」
黒死牟が消え、無惨も消え、一人残った鳴女は胸に抱える琵琶を弾く。
無限城の名に相応しい広大な空間に、鳴女はひとり、琵琶の音を響かせる。
時透さんちの有一郎くん。
多分次くらいに起きる。
時透さんちの無一郎くん。
予想以上の鳥鬼の配下に襲われ、上手く立ち回れなかったことにしょんぼり。上弦の鬼に雑魚認識されてると思って更にしょんぼり。トドメにまだ兄が目覚めなくてしょんぼり。でも頑張らなきゃと奮起。
伊黒さんちの小芭内さん。
この度柱に就任。一応相手は柱なのでネチネチしてない。
鬼舞辻さんちの無惨様。
目の上のたんこぶが取れてハッピー。配下にした鳥鬼に奸鷄(かんけい)の名を与える。
鬼舞辻さんちの黒死牟。
本気を出していないため、無一郎からは上弦の肆らへんかな~て思われている。
鳥鬼改め奸鷄。
粛? 粛? 粛される? とぷるぷる震えるマナーモード。無限城から追い出された山で、せっせと配下を増やす。偶然か必然か、出会った下弦の伍と見詰め合い、恐怖が逆流し気絶。なりはちっこいし気も小さいけど、こう見えて実力は下弦以上上弦未満。性格は調子に乗るとボロを出すタイプ。
逃れ鬼の珠世さん。
無惨にダイナミック薬物投与をキメた烈女。現在進行形で逃亡中。逃亡先の浅草で利発そうな捨て猫を拾う。
大正こそこそ裏話。
前回無一郎の隊服について説明してなかったのでここで。以下無一郎と悪魔の小話。
無一郎が蝶屋敷から霞屋敷へと出立する前、当然のごとく部屋に居た悪魔に、無一郎はそういえば、と疑問に思ってたことを訊くことにした。
両腕を前に伸ばしてふりふり揺らす。
「ねぇ、どうしてこんなに袖が長いの? それに下は袴だし。サイズ合ってないよ?」
「が、がわい゛ぃぃ~~食べちゃいたいわぁ~~」
「聞いてる?」
「おっとごめんなさいね」
我に返った佐藤勇太は、前もって用意していた理由を言う。
(ガンバレアタシ、ここで間違えたら癒しが消える!!)
「ん゛ん、それはね、わざとぶかぶかにすることで手の長さや向き、膝の位置など体格をわかりづらくすることで、間合いや次の動作を敵にわかりづらくさせるためよ!」
「そうだったの? てっきりまた悪魔の趣味かと……」
無一郎の考えは半分正解。半分はゲスメガネの欲望も入ってる。
「じゃ、僕もう行くね」
「元気でね」
ひらひらと手を振り、無一郎の背中を見送った悪魔は、ふぅ、と一息ついた。
(やり遂げたわよ、同士(まさお)!!)
思い返すは前田との密話。
『萌え袖を作って欲しいの、勿論アタシも手伝うわ』
『ほぅ、萌え袖?』
『ええ、わざとぶかぶかの隊服を作ることで可愛さを爆上げするの』
『はいはい』
『もしこれが上手くいったら、女性隊士からも要望が来るかもしれない』
『なるほど……確かに』
『そこで、やって来た女性隊士をアンタが測る。てのはどうかしら?』
『いいでしょう』
悪魔は無一郎の萌え袖姿を見れて嬉しい。前田は女性隊士に合法的に触れて嬉しい。正にWin-Winな関係。
そんなわけで作られた無一郎の隊服。こんな裏話知られたら燃やされる。悪魔もろとも隊服が。ついでに前田も。誰に、とは言わないが、ヤベェ面の柱に。前田はちょっと漏らしたらしい。何が、とは言わないが。
まぁ、前田が女性隊士を測れるか、と言ったら土台無理な話だが。善良な隠に邪魔される未来しかない。