玉葱の英雄   作:衛鈴若葉

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ジークマイヤーさんの救いが欲しい。
カタリナへの救いをくれい。


プロローグ

「お父様っ」

 

ジークリンデのバスタードソードがグシャリと音を立ててジークマイヤーの体を抉る。

 

「まだ、ですか」

 

ジークリンデの悲痛な叫びは灰の湖の白い景色に吸い込まれていく。

父の亡者は変わらず篝火に座っていた。

すぐに立ち上がり、玉葱のような丸い兜の中から視線が飛んでくる。

ザッ、ザッ、という足音がジークリンデの耳に届く。

何度も聞いた足音であった。

左手のピアスシールド、右手のバスタードソード。

強く握り、父の姿を強く見つめた。

恩人の姿を想起させ、あの人には手を下させまいと剣を振るう。

 

父は優れた戦士である。

祖国【カタリナ】においても実力は指折りであった。

家族のことを考えられる、好い男でもあったのだ。

母が死に、それを伝えに来たは良かった。

こんな結末になるなど、想像したくもなかったのだ。

偉大な父の特大剣の一撃は重く、鋭い。

弾き(パリィ)で流し、致命の一撃を入れる。

幾度も続けたこの行為に迷いなどなかった。

 

「リ、ン」

 

心臓を穿った一撃。

殺したと思った時に父の声が聞こえた。

そして、倒れ伏して灰と化さなくなる。

兜が少し外れ、そこから亡者となった父の姿が見えて手が震える。

 

「‥‥‥」

 

ザッ、ザッ、と別の足音が聞こえた。

鎧の擦れる音、カタリナの鎧とは違っていた。

 

「父は、この亡者はもう、動きません」

 

震える声を何とか絞り出して恩人に報告をする。

何度も父を、私を助けてくれた相手だ。

無口だが、非常に良い人だ。

 

恩人は祈りを捧げて、篝火に少し座る。

そうすると奥に進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

棺桶から一人の男がモゾモゾと立ち上がる。

丸っこいフォルム、玉葱のような鎧、トゲの生えた小盾、それにツヴァイヘンダー。

カタリナ騎士【ジークマイヤー】が灰の墓所にて再び起き上がった。

 

「‥‥‥む?」

 

状況がよくわからずに首をかしげる。

墓所らしい陰鬱な雰囲気、【灰の湖】とは似ても似つかない場所だ。

それに、見覚えもない。

ロードランを訪れて、もちろん行ったことのない場所もあったが見たことはない。

 

記憶通りならば、既に死んでいるはずだと頭を悩ませる。

【灰の湖】にて力尽きたはずなのだ。

彼特有の癖といえるもの、立ったまま腕を組んで考え始める。

少しして、考えるのをやめた。

何もわからぬことを考えても意味はないとカチコチに固まった体を解しながら歩き始める。

あとはどことも知れぬ、安全も確立されていない場所で眠るわけにもいかなかったのもあった。

 

歩く先にいるのはただの亡者。

キノコや銀騎士など、手ごわい敵はいなかった。

唯一、大食らいの結晶トカゲ、ジークマイヤーにとっては初めて接敵するいつもは逃げるのみであった結晶トカゲが大きく成長した姿には焦り、少し苦戦したが。

カタリナの鎧は重いがその分防御性能もよいのだが、大食らいの結晶トカゲの様な大きく、重い一撃を食らってしまってはひとたまりもない。

それでも、ジークマイヤーは熟達した騎士である。

故国カタリナの名誉ある騎士であった。

故に鎧を脱ぐことはなく、負けることもない。

アノ―ル・ロンドに到達した数少ない戦士が弱いわけがない。

彼も、彼の娘であるジークリンデも、賢者ローガンも、太陽の戦士ソラールも、抱かれ騎士ロートレクも、そして不死の英雄も。

彼らは強く、同時に誇りも譲れない目的や思いがあったのだ。

 

篝火を、ジークマイヤーは見つけた。

彼は引き込まれるように篝火のそばに座った。

つまり、それが意味をなすところは、彼も察した。

不死、変わらず自分は不死なのだとそうわかってしまったのだ。

懐にある、完全に中身が満たされた緑色の瓶、エスト瓶もまた、その事実を証明していた。

 

遠くに見えるのは塔のような建物。

何のしがらみもない旅ができると喜び半分に思った。

もう半分は不安と夢のような感覚。

この先に何があるのか、覚悟を決めて先に進む。

 

変わらず、脅威にならない亡者が行く手を阻んだ。

ツヴァイヘンダ―で叩き潰し、無傷で門にたどり着いた。

門の向こうには広場、中央には剣が突き刺さった鎧の男が一人、膝をついていた。

剣の形状は形容するなら螺旋の剣。

戻れはするが、霧の壁により鎧の男を無視できない状況であった。

アノール・ロンドに至るための試練、センの古城の奥で対峙するアイアンゴーレム。

それと同じような感覚をジークマイヤーは感じる。

篝火の核を担っている螺旋の剣、ジークマイヤーは一旦ツヴァイヘンダーをソウルに還し、剣を抜いた。

 

目覚めてすぐの大ボス。

ここを超えれば使命は背負うものの、旅ができる。

螺旋の剣をソウルに還し、ツヴァイヘンダーを顕現させた。

心を奮起させ、腹をくくり、そして冷静になる。

ジークマイヤーという男は強い、灰の審判者は英雄であった時ならいざ知らず、今では彼に勝てるなどあり得なかった。

 

弾き(パリィ)】は当然、習得している技術だ。

自分以上の巨躯に対しての戦い方、人型との戦い方も当然わかっているし経験もそれなりに積んでいる。

鎧ならば関節部に剣をねじ込む、とか。

 

亡者と化した審判者はジークマイヤーに攻撃を仕掛ける。

緩慢ではなく、苛烈。

距離を取れば近づいてくる。

様子見、理性は存在していないように思えた。

ピアスシールドはお世辞にも盾受けに適してはいない。

攻撃のできる盾、特大剣を武器とするジークマイヤーにはありがたい、信頼の置くサブ武器だ。

カタリナの防具と同じような丸っこいピアスシールドは、攻撃はもちろん、パリィにも適している。

審判者の突きは、ピアスシールドによって流され弾かれる。

亡者の、全力の攻撃、体勢が揺らいだ。

致命の一撃が審判者に下される。

特大剣、ロードランにて最大にまで強化された致命は人の膿を吐き出される前に、審判者は息絶えた。

 

 

 

 




あ、プロローグはまだ終わらないゼ!
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