ジークリンデに殺され、亡者として死んでいった。
一瞬、絶対違うであろうがジークリンデ過去のジークマイヤーの嫁さん説を思い浮かべました。
審判者を踏み越え、その先にあったのはジークマイヤーにとってもなじみ深い場所であった。
火継ぎの祭祀場、姿は変わっていれど彼には分った。
ロードランにあった、あの場所だと。
となるとここはロードランであった場所なのだろう。
眠ってから随分と時が経ったのだろうと愛しい愛娘を思い浮かべてため息をついた。
会えるかもしれない、と少しだけ期待してたのだ。
彼女は不死人ではなかった、会うのは絶望的である。
篝火のそばには火防女がいた。
ジークマイヤーを灰の方と呼び、使命を教えてくれる、目をふさがれた火防女が。
篝火に螺旋の剣を突き立て、火をともすと疲れをいやすために座り込んだ。
そんなジークマイヤーに、語り聞かせるように黒衣の火防女は話し始めた。
ロスリック、薪の王たちの故郷が流れ着く土地。
そこで、貴方は王を倒すのです。
薪を手に入れ、火を継ぐための儀式を行うために。
「ああ、貴公と同じか」
恩人の、不死の英雄の顔を思い出す。
二つの鐘を鳴らし、神々の都に到達し、四王を倒し、火を継いだ英雄。
幾度となく助けられ、その時に英雄が口を滑らせていた。
不死院で助けられた上級騎士の最後の頼みを果たすために旅をしていると。
彼は為した。
少なくともジークマイヤーはそう信じている。
今度こそ、志半ばでは倒れまい。
火に向かってそう決めた。
カタリナの国は陽気者が多いけれど、頑固な者も多いのだ。
「あ?あんたは―――」
「アンドレイ殿?」
「おう、おれは鍛冶屋アンドレイよ。あんたは確か」
「私はカタリナのジークマイヤー。随分と長生きだな、アンドレイ殿」
「お?おお、古城の前で座り込んでたカタリナの!あんたも使命ってやつかい?」
再会、というやつだ。
ツヴァイヘンダーを最高まで鍛えてくれた鍛冶師である。
それも不死の英雄のおかげだ。
「うむ。いささか厄介なものでなぁ。アンドレイ殿、武器を見てはくれぬか?」
「断ると思うか?」
「ガハハ、頼む!」
「おう」
ロードラン時代に会ったことのある人物に会えて、少し安心した。
ジークマイヤーほどの戦士であるなら、なかなか危機も訪れないものであった。
ロスリックを巡り、ソウルを自分のものとして鍛錬を積み。
奇跡や魔術、呪術に闇術等、節操なくその身に打ち込んだ。
不死街の奥にて、カタリナの同胞に出会った。
名をジークバルト、ジークマイヤーと同じく使命のもとに旅をしているらしい。
多くは語らなかったが、自分と似たような人物であるとジークマイヤーは思った。
思い詰めている様子はなく、楽しそうに笑い、何よりどこでも眠る。
子孫のようだと心中に思い、その可能性を消した。
仮にそうだとしても何にもならない。
できることといえば手伝うことくらいしかできないのだ。
不屈のパッチという、ロードランより生き延びている不死人がいる。
ジークマイヤーの時代なら鉄板のパッチだろうか。
ジークマイヤーは地下墓地を訪れておらず、存在を知らなかった。
知っていたとしても初対面時はわからないだろう。
だって彼はジークバルトよりはぎ取ったカタリナ防具を着込んでいたのだから。
深みの聖堂にて、パッチとジークマイヤーは出会い、当たり前だが騙された。
仕掛けによって下へ下がっていく廊下と見下ろすパッチ、そして巨人が見えた。
騙された、そう歯噛みしてとりあえず危機を打開して戻っていく。
重い鎧と足を取られる沼地、病み村よりはましだと思えばそう苦ではなかったらしい。
「お、おう。確か、あんた初対面だよな?」
「いや、先ほど貴公に謀られたばかりだが」
怒りを滲ませてジークマイヤーは言った。
同胞の鎧を使い、人を謀るどころかたまねぎとまで言ってくれたのだ。
端的に言えばジークマイヤーはキレている。
「あ、ああ、そうだよな。思い出した。いや、あれは俺のせいというよりあの鎧の仕業でな」
愚かにもジークマイヤーはこの言葉を信じるとともに、彼のやっていることを察する。
責める気になどはならなかった。
こんな職業の人間は珍しくないし、物を売ってくれるとも言った。
予備にとラインナップにあったカタリナ装備を購入していった。
深みの聖堂を進み、清拭の小教会より外に出たらある井戸。
パッチに突き落とされたらしいジークバルトの助けを求める声が聞こえてきた。
もう一セットのカタリナ装備を落とすと感謝され、あとは自分で何とかすると言って声が遠ざかっていく。
少しの心配の後、ジークマイヤーも先に進む。
ジークマイヤーとジークバルトが次なる邂逅を果たすのは冷たい谷のイルシール。
下水道を超えた先にある、民家だった。
寒いこの土地で、休息にエストスープを作って休んでいたようだ。
「おお貴公!久しぶりだな」
座り、眠っていたジークバルト。
ジークマイヤーが訪れ、話しかけると目覚めた。
「ここまでたどり着くとは、貴公もやるのう」
「ああ!私にも使命があるからな」
快活であることには変わりない。
しかし、しかしだ。
最後に別れ、亡者の身で死に絶える、その時に見えたジークリンデのようだった。
覚悟の様な、悲しみの様な、恐怖にあるような。
「この街、イルシールのどこかに地下牢があり、そしてその下には罪の都が眠っているという。孤独な巨人の王、ヨームの故郷だ。貴公も、そこを目指しているのだろう?」
「薪の王が、いるならな」
「ガハハ!なら目的地は同じだな。―――まったく、約束とは悩ましいものだよ」
マイペースといえど、鈍いと言えど。
ジークマイヤーの目的はジークバルトにも分かっただろう。
しかし、そこにジークバルトは何も言わなかった。
むしろ、安堵しているようにも感じる。
ジークマイヤーも、ジークバルトの目的を察した。
どんな理由かなどはわからないけれど、きっとジークマイヤーと同じなのだろう。
巨人ヨームを、倒さねならぬのだろう。
「そうだ、貴公。ともに食事はどうだ?」
「食事?」
「おう。ジークバルト特製のエストスープだ。不死者とてたまには真似事もよいものだぞ」
「む、それもそうだな」
カタリナ二人、胡坐をかいて暖炉の前に座る。
「再会の祝杯をあげようではないか」
ジークマイヤーはジークバルトより、酒を受け取る。
不死人は酒を楽しめない。
故に工夫を凝らし酒と謳歌を手に入れたもの。
ジークマイヤーとて酒は好きだ、不死になってからは飲めないと少しだけ落ち込んでいたものである。
だからか、少しうれしかった。
「貴公の勇気と、我が剣、そして我らそれぞれの使命に、太陽あれ!」
「太陽あれ!」
ガハハ、とジークバルトが笑い、少し遅れてジークマイヤーも笑う。
似た者同士の二人だ、酒を飲めば眠りもする。
今まで、眠ってこなかったのだ。
ロスリックに来て、初めての眠りであった。
「―――むぅ、眠ってしまったか」
暖炉の前、鎧を取られていないことに一端の安堵の息を吐きつつ、立ち上がる。
ジークバルトの姿はもうなかった。
結果的に、ジークマイヤーの次にたどり着いた先は、アノールロンドであった。
ロードランの時の雰囲気はもうない。
銀騎士がいて、竜狩りの大矢に貫かれて。
その先にあった篝火より見えたのはアノールロンドの城である。
父の、最後に見た顔には陰りが見えた。
自分の体の限界と、不死であるがゆえに祖国に帰れない悲しみ。
自棄ではない。
どうせ死ぬなら冒険がしたいと父はそう言った。
不死の英雄にやらせるわけにはいかなかった、しかし恩人に経過を報告しなければならない。
いったあと、後を追ったのだ。
そして、殺した。
何度も、何度も。
お父様、そう叫んで父の亡骸を抱こうとする。
しかし、足音が聞こえた。
親子を助けた、不死の英雄の足音が。