第十九話です。
それではどうぞ。
紅魔館で働き始めて数日後、今日は仕事が休みなので直子さんと買い物に来ていた。すっかり寒くなってきて今晩は鍋にしようと思う。生憎俺の家には炬燵やストーブが無いが、俺の能力で部屋を暖める事ができるので寒さには困らない。ちなみに能力で暖められるのは部屋だけでなく体温まで上げられるので寒がりの俺には持ってこいだ。マジでありがてぇ...。
直子「これで全て揃いましたね」
龍騎「ああ、早く帰って飯にしよう」
直子「そうですね。姉妹揃ってお腹空かせてると思うので」
そう言って俺達は帰ろうとすると、
?「あやや!龍騎さんじゃないですか!」
聞き覚えのある声が聞こえた。
龍騎「...お前か、文」
直子「射命丸さん...」
直子さんも文の事を知っていたようだ。
文「どうもお久しぶりです!少しお時間を...、って何ですかこの霊は!?」
龍騎「お前見えるのか?」
文「見えるも何もバリバリ見えますよ!」
直子「射命丸さんは『鴉天狗』なので幽霊である私の事が見えるんですよ」
直子さんが小さな声で俺に教えてくれた。成る程ね、つまり妖怪なのか...。
文「...ごほん、気を取り直して、龍騎さんに少し相談したいのですがよろしいでしょうか?」
龍騎「相談?」
文「はい、これは取材とかじゃなくて真面目な話しなんです。お願いします」
文が頭を下げて頼んできた。
龍騎「...何で俺に頼む?俺以外でも良いだろ」
文「相談の内容が男性に関わる事なので、龍騎さんに是非お願いしたいと思いまして...」
...この相談、只事では無さそうだな。
龍騎「...分かった、話しは聞く。だけどこっちも用事がある。その後で良いか?」
文「!ありがとうございます!それでは後ほど!」
文は嬉しそうな顔をして空高く飛んで行ってしまった。
直子「良いんですか?相談に乗って...」
龍騎「さっきの文の目...、あれはいつもの目じゃなかった。兎に角本人に直接話しを聞いてみよう、その前に腹ごしらえだ」
そう言って俺達は帰宅した。その後昼食を済ませて、外で文を待つ。数分後、文がやってきた。
文「お待たせしました」
龍騎「別に良い、それより中に入れよ寒いだろ?」
文「お気遣い感謝します。でも連れが居まして」
龍騎「連れが?」
文「はい、連れの居る所まで行きましょう」
そう言われたので俺は文に着いて行く。着いた場所は甘味処で其処には短めの白髪に犬みたいな耳と尻尾が付いている少女が居た。
?「あ、文さん...、そちらの方は?」
文「お待たせしました。彼が例の男性です」
龍騎「...文、彼女は?」
文「紹介します。彼女は犬走椛《いぬばしり もみじ》私の部下である白狼天狗です」
...えっ?白狼天狗?その椛って少女が?イメージしてたのと全然違った...。(第十二話参照)
龍騎「...それで?相談ってのは文じゃなくてその椛って事か?」
椛「い、犬走椛と言います...」
龍騎「...俺は霧影龍騎だ」
軽く自己紹介をして、本題に入る事にした。
龍騎「...それで?相談ってなんだ?」
椛「じ、実は...」
そう言って椛は俺に一通の手紙を渡した。俺は黙って手紙を読むと、
『愛しき椛さん、僕は君を愛している』
と、書かれてあった。
龍騎「ラブレター、では無さそうだな...」
文「やはり龍騎さんもそう思いますか...」
龍騎「普通いきなり愛しているなんて言わないだろ...、明らかに『貴女の事見てますよ』って事だろうな」
文「そうですか...」
龍騎「...これはいつ貰ったんだ?」
椛「二ヶ月ぐらい前です。それから毎日のようにずっと届いて来て...」
うわっ...、これは完全にストーカーじゃねぇか...。
椛「最初は誰かの悪戯だと思ったんですが...、毎日手紙が届いて来て...、怖くて仕事に集中出来なくなったり、まともに寝れなくて...」
龍騎「この事を上司には?」
文「報告済みです。今も捜索しています」
龍騎「...それで?俺にそのストーカーを何とかしてほしい、と?」
文「...お願いします。私の大事な部下なんです」
椛「お、お願いします!」
二人は頭を下げてお願いしてきた。...そんな事言われたら断れないじゃないか...。
龍騎「...分かった、力になれるか分からんが、協力する」
椛「!本当ですか!?」
龍騎「ああ...」
文「ありがとうございます龍騎さん!」
椛「ありがとうございます!」
俺って本当にお人好しだな...、人間でも無い相手に協力するなんて...。
龍騎「確認するけど、二ヶ月前にストーカー男に手紙を毎日貰ってる、って事だよな?」
文「はい」
龍騎「仕事は大丈夫なのか?」
椛「今は有給を取ってます」
龍騎「まぁ当然だな、今の状態で仕事したら仲間に迷惑を掛けるだろうし、それにメンタルもやられてるんだ。少し休んだ方が良い」
椛「そう、ですか...」
龍騎「...ちなみにこれからどうするんだ?」
椛「どう、とは?」
龍騎「そのまま家に帰るのか?それだとまた手紙が来るんだろ?」
椛「そ、それは...」
文「あ、だったら暫く龍騎さんの家に住むってのはどうでしょうか!」
龍騎「は?」
何言ってんだこいつ?
文「そうすれば椛の手紙に悩まされなくて済むし、龍騎さんの女性恐怖症の改善にもなる。一石二鳥ですよ!」
龍騎「馬鹿かお前は。そんなんで椛が認める訳...」
椛「わ、私は...、龍騎さんなら良いかなって...」
なん...だと...、お前は羞恥心というのが無いのか...。いや、若干顔が赤くなってるから恥ずかしいのだろう。
龍騎「...無理はするな。嫌なら嫌だって言え」
椛「い、いえ!無理はしてません!それに、毎日怖い思いするのはもう嫌なんです!」
俺が無理はするなと言うと、椛は近づいて来て反論した。ちょっと近いよ!?
龍騎「わ、分かった...、そういう事にしておく。えっと...、じゃあ暫くうちに住むって事か?」
椛「は、はい。今日からよろしくお願いします」
龍騎「...えっ?今日から?...まぁ良いか、えっと...、よろしく」
文「それでは龍騎さん、椛をよろしくお願いします」
それから文は仕事に戻り、椛は泊まる準備をしに行ってしまった。俺も家に帰り、この事を皆んなに報告する。
直子「そんな事が...」
龍騎「という事で、暫くうちに住む事になったから、そこんところよろしく」
直子「はい」
紫苑「分かった」
女苑「まぁ、事情も事情よね」
それから皆んなで色々対策を考えてみたが、中々良い案が浮かばなかった。暫く考えているとコンコン、とノックする音が聞こえた。俺は玄関を開けると椛が荷物を持って立っていた。
龍騎「よく来たな...、まぁ上がれよ」
椛「お、お邪魔します...」
椛は恐る恐る中に入る。
直子「あ、どうも」
椛「ゆ、幽霊!?」
椛は直子さんの存在に驚いた。まぁ伝えて無いし驚くよな。
龍騎「...取り敢えず荷物置け、自己紹介はそれからだ」
そう言って椛は一旦荷物を床に置き、座布団の上に座った。
龍騎「...あー、改めて俺が霧影龍騎で、この家の家主だ」
紫苑「知ってると思うけど、私は依神紫苑。この家で居候してる」
女苑「依神紫苑の妹の依神女苑よ、よろしく」
直子「私は間遠直子と言います。今は地縛霊です」
椛「...もしかして、女性の霊が出る噂のですか?」
直子「はい、私の事です」
椛「そうなんですか...、文さんから聞いてはいたんですがいまいち信用が出来なくて...」
部下にも信用されていないマスゴミ、ざまぁないぜ!
龍騎「まぁ、別に被害が出てる訳じゃないし、そこまで警戒する必要はないぞ」
椛「は、はい...」
まだ緊張してるようだな。仕方ないかさっき知り合った男の家に暫く住む訳だし。
龍騎「...取り敢えず晩飯にするか」
紫苑「夕飯は何?」
龍騎「今日は寒いし、鍋にしようと思う」
女苑「おお!それは良いわね!」
椛「鍋...ですか?」
直子「もしかして苦手な物があるんですか?」
椛「い、いえ!多人数で食事をするのは久しぶりなので...」
女苑「そういえば今までどう言った食事をしてたわけ?」
椛「ストレスの所為か...、食欲が無かったので...」
これは相当参ってるな...。道理で痩せ細ってる訳だ。
龍騎「...じゃあ準備するか」
それから皆んなで鍋の準備をする。俺は調理担当、紫苑はテーブルを拭いて女苑は食器を並べる。直子さんは椛に部屋の案内をさせている。鍋が完成し、テーブルの上まで持っていって蓋を開ける。
紫苑・女苑「「おお!」」
椛「美味しそう...」
直子「醤油鍋ですか、良いですね」
龍騎「やっぱり王道を征く醤油だろ」
直子「はぁ...、地縛霊ですから食べれないのが悲しいです...」
まぁ死んじゃってるからね、しょうがないね。
龍騎「んじゃ食べますか、いただきます」
「「「いただきます」」」
俺がいただきます、と言うと皆んなが後に続いて言った。
紫苑「〜〜っ!あっつ...」
女苑「慌てすぎよ姉さん」
椛「......」
龍騎「?どうした椛、もしかして口に合わなかったか?」
椛「いえ、とても美味しいです...、やっとまともな食事が取れると思うと嬉しくて...」
椛がそう言うと、目から涙が出てきた。どれ程辛かったか良く分かる。
龍騎「...今は何も気にせず食え、〆に残った汁でうどん入れるか」
紫苑「おおー!」
女苑「あんたやっぱり最高ね!」
依神姉妹は目を輝かせる。本当に食べ物に関係すると食い付きが良いよな...。それから皆んなで鍋を堪能して俺が片付けをしてる間に女性陣を風呂に入らせる。女性陣が風呂に入り終えた事を確認して俺も風呂に入る。風呂から出たら布団を引くのだが、
龍騎「やべっ...、一人分足りない...」
三人分しか布団が無い事に気がついた。まぁまた床で寝れば良いか....、能力が無かったら死んでたかもしれない...。
椛「あの...、良かったら一緒に寝ませんか?」
......え?( ゚д゚)?
椛がとんでもない事を言い出した。何言ってんのこの子は?
龍騎「...いや、流石にそれは駄目だろ。抵抗があるというか...」
椛「そ、それじゃあ龍騎さんは何処で寝るんですか!?」
龍騎「...床だな、能力で体温を上げれば風邪は引かないだろ」
椛「駄目です!半分退くので布団に入って寝て下さい!」
龍騎「それが駄目だから言ってんでしょうが!」
それから色々言い合いになって最終的に俺が折れた。何か面倒臭くなった...。それから電気を消して椛がいる布団の中に入る。少し経つと椛が俺の背中に抱きついた。
龍騎「ひぃ!?」
俺は思わず声を出してしまった。マジでびっくりしたんだもん。
椛「ご、ごめんなさい...」
龍騎「せ、せめて一言言ってくれ...、びっくりするから」
椛「あ、あの...、暫くこうしても良いですか?」
背中を見せてるからどんな顔をしてるか分からないけど、弱々しい声で何となく分かった。
龍騎「...好きにしろ」
そう言うと、椛が先程より強く抱きしめてきた。あ、これ耐えられないかも...。それから俺の理性との死闘が始まった。
いかがでしたか?
誤字脱字、アドバイス等よろしくお願いします。
次回もよろしくお願いします。