第三十七話です。
それではどうぞ。
幽々子「準備は良いわね?二人とも」
幽々子さんが確認すると、俺と妖夢はこくり、と頷く。
幽々子「では...、始め!」
幽々子さんの掛け声と共に、俺は妖夢に向かって飛び出した。妖夢も迎え打ち、お互いの剣がぶつかり合う。
妖夢「はあぁ!」
龍騎「くっ!」
カキンカキン、と金属がぶつかり合う音が響く。若干だが妖夢に押されている...。
妖夢「でやぁ!」
龍騎「ちっ!(このままじゃジリ貧だ...。一旦下がって体制を立て直すか...)」
俺は後退しようとした時、妖夢がニヤリと笑った。
妖夢「貰った!」
龍騎「!?やべっ!」
俺が下がってる途中に妖夢が斬撃を放ってきた。俺は身体を捻って避けようとするが間に合わず食らってしまい、後ろへ吹っ飛ばされた。
龍騎「ちっ、やりやがったな...」
妖夢「休んでる暇はありませんよ!」
妖夢が急接近して来る中、俺は一度剣を鞘に納める。そして妖夢が俺を突き刺そうとした瞬間、俺は思いっきり身体を捻って一気に剣を抜き、その勢いで妖夢の首を目掛けて振る。
妖夢「!?」
妖夢は予想外の展開に目を大きく開いた。俺はそのまま首まで剣を近づけて、首に触れる直前で剣を振るのを辞めた。
妖夢「......(何、今の...、何なの...)」
妖夢は冷や汗を流して、目玉だけを動かして俺の剣を見ていた。
龍騎「居合斬り、俺が考えたオリジナルバージョンだ」
妖夢「居合斬り...!?いつの間にそんな技を...」
龍騎「パチュリーに貰った本に書いてあったからやってみたけど、一発で出来て良かったぜ」
妖夢「...これは一本取られましたね」
俺は剣を妖夢の首から離れると、妖夢は俺から距離を取る。
妖夢「なら、此処からは本気でやらせて貰います。スペルカードや弾幕も使っても構いません」
龍騎「さっきまで手を抜いていた訳か...、舐められたものだ」
妖夢「そうではありません。あれで七割本気だったので」
そう言って妖夢はもう一本の刀を抜く。あれで七割?此処からヤバくなるんじゃね?
妖夢「女だからって手加減は入りません。出なければ師匠として最大の屈辱です」
龍騎「...元よりそのつもりだ」
俺はもう一度剣をかまえ、火属性を解放させて剣に炎を纏わせる。
妖夢「行きます...!」
龍騎「掛かって来い...」
妖夢が目一杯地面を踏み込んで、物凄いスピードで俺に接近してくる。俺は斬撃を放ち、妖夢が接近して来るのを阻止するが、簡単に避けられてしまう。
妖夢「はあぁ!」
龍騎「だあぁ!」
接近を許してしまい、お互いの剣がぶつかり合う。ギギギ、と音が鳴り、お互い後ろへ飛び、妖夢は一枚のスペルカードを取り出した。
妖夢「人鬼『未来衛劫斬』」
妖夢が素早い攻撃を仕掛け、俺はただ防御するのに精一杯だった。そして最後の一撃を食らってしまい、膝を着いてしまう。
龍騎「はぁ...、はぁ...」
妖夢「よく耐えましたね...、流石です(嘘でしょ?あれでまだ倒れない何てどれだけ頑丈なんですか...)」
龍騎「...まだ、終わっちゃいない、来いよ...」
俺は剣で支えながら立ち上がり、左手の四本の指を曲げて来いよ、と合図する。
妖夢「挑発のつもりですか?...いいでしょう、何を考えてるのか知りませんが、安っぽい挑発に乗りましょう!」
そう言って妖夢は、地面を蹴って向かって来た。恐らくチャンスは一度...、やるしかない...!
龍騎「行くぞ妖夢!これでも食らえぇぇ!!」
俺は剣に纏ってる炎を、フランのレーヴァテインのように大きくして、妖夢に向かって剣を振り払う。
妖夢「そんなもの!」
妖夢は高くジャンプして攻撃を避けた。だが、俺は思いっきり足に力を入れて強く地面を蹴飛ばして大きく飛び上がる。
妖夢「!?」
龍騎「オラァァ!!」
剣に纏っていた炎は消えてしまったが、それでも妖夢を斬れる距離まで詰められた。そして俺は妖夢に斬り掛かる。
妖夢「...忘れましたか?私が半人半霊であると!」
そう言って妖夢の半霊は俺の後ろに周り、妖夢の形になって斬り掛かろうとする。
妖夢「私の勝ちですね...」
龍騎「......お前こそ忘れてんじゃねぇのか?俺が.....火と雷以外の属性を使える事を!!」
そう言って俺は両足に風属性を解放して、ア◯ムのように半霊の後ろに回り込む。
そして、火属性と雷属性を同時に解放させて、剣に纏わせる。限界まで纏わせた剣は、まるで魔理沙のマスタースパーク並みの太さだった。
妖夢「!?ま、まさか...、この為に私を空中に誘導させた...!?」
龍騎「空を飛べても、地上の時よりスピードは出せないと思ってな!どうやらその通りみたいだな!」
妖夢「っ!ならば迎え打つ!」
龍騎「辞めておけ、こっちには何でも感電する電気があるんだ。それに仮に避けられたとしても服でも掠っちまえばどの道お前は動けない!」
妖夢「!」
龍騎「覚悟は良いな...、妖夢!」
そして俺は剣を振り下ろした。それでも妖夢は諦めずに俺に向かって突っ込んでくる。そして大爆発が起こった。
幽々子「妖夢...」
龍騎「はぁ...はぁ...、少しやり過ぎたな...」
俺は息を整えながら、倒れた妖夢の元へ向かう。属性の合体練習をしたお陰で魔力の量が増えたものの、やはりというべきか一回に二つの属性を使うとなると魔力の消費量が多すぎる。こればかりはひたすら特訓あるのみだ。
龍騎「...おい、大丈夫か?」
妖夢「うっ...、うぅ...」
妖夢に声を掛けるが、どうやら気絶してしまったみたいだ。
幽々子「...えぇ〜と、これは龍騎くんの勝ちで良いのかしら?」
龍騎「そうですね...、そうなんじゃないですか?」
俺は妖夢をお姫様抱っこして、部屋に運ぶ。...え?何でお姫様抱っこかって?何となくだよ。それから妖夢を部屋に運んで、回復魔法をかけながら夕飯まで妖夢の様子を見ていた。
〜妖夢side〜
妖夢「...此処は......?」
目が覚めると、私は横になっていた事に気がついた。起き上がると身体に痛みが走る。
妖夢「いたっ...」
身体を抑えながら辺りを見渡すと、龍騎さんが両腕を組んで座りながら寝ていた。もしかして私を此処まで運んで来たのだろうか...。
妖夢「...寝顔可愛い」
つい心の声を口に出してしまった。でも本当に可愛いのだ、いつまでも見ていたいぐらいの可愛さなのだ。
龍騎「...んあ、...あ、起きたか...」
龍騎さんが眠たそうな顔で私を見て言う。
妖夢「は、はい...、ありがとうございます」
龍騎「お前が無事なら別に良い。それよりもすまなかった、結構やり過ぎちまった」
ぼりぼり、と頭を掻きながら謝罪する龍騎さん。
妖夢「いえ、私が本気になってくれと頼んだのですから、気にしないでください」
龍騎「そうは言ってもな...、お前が良くても俺は嫌なんだよ」
...本当に優しい人だ。あんな事があったのに私の事を心配してくれるなんて...。
龍騎「なんか俺に出来る事があるなら言ってくれ。幽々子さんの飯作ってくれ、でも何でも良いぞ」
妖夢「別にそこまでしなくても...」
龍騎「俺はお前に怪我をさせた、師匠である妖夢に、だ。幾ら師弟勝負でも正直の所、お前に勝っても嬉しくは無かった、少し後悔してた」
妖夢「後悔...、してた?」
龍騎「あの時は勝ちたいって思いが強かったけど、もっと効率の良いやり方があった、筈なんだと思う...。俺がやりたかった事が出来てないから、あんまり素直に喜べないんだ」
妖夢「......」
龍騎「まぁ、そんなとこだ。別に何も求めてないんじゃそれで良い」
そう言って龍騎さんは立ち上がり、部屋から出ようとする。
龍騎「んじゃ、飯の準備してくるからお前はまだ休んで『待ってください』ん?」
私は龍騎さんを呼び止めた。
妖夢「そ、その...、さっきのお願い...、本当に何でも良いんですか?」
龍騎「...俺が出来る範囲だったらな」
妖夢「で、でしたら...、その...、
今日一緒に寝てくれませんか?」
龍騎「......はい?」
龍騎さんはポカーン、とした顔で問い返す。
妖夢「そ、その言葉通りです...、い、一緒に...、寝てください...///」
私は恥ずかしさのあまりに、顔が赤くなってる事に気がついた。男の人と一緒に寝るとなると緊張してしまう...。
龍騎「......確認するが、俺で良いのか?」
妖夢「は、はい!寧ろ龍騎さんじゃないと駄目と言うか...、何と言うか...///」
龍騎「...お前がそれを望むなら、そうするよ」
妖夢「!良いんですか!?」
龍騎「ああ、相手の意思を尊重する、それが俺だ」
私は嬉しくて小さくガッツポーズをした。龍騎さんと一緒に寝ると思うと嬉しさが止まらない。
龍騎「まず寝る前に飯食って風呂入る事だな。準備してくるから待ってろ」
そう言って龍騎さんは部屋を出てしまった。龍騎さんが出て行くと、私はもう一度横になって微笑む。良かった...、勇気出して良かった...。それに胸がドキドキする...、余程嬉しかったのだろう。それから龍騎さんが戻ってくるまで胸の鼓動が治らなかった。
そして、夕食を終えて幽々子様とお風呂に入ってる途中...、
幽々子「妖夢は龍騎くんの事どう思う?」
妖夢「!?///」
幽々子様に背中を洗って貰ってる時に突然その言葉を言い出した。私はボンッ、と顔が赤くなる。
妖夢「な、何を言ってるんですか幽々子様!?///」
幽々子「そのままの意味よ♪妖夢が龍騎くんの事どう思ってるのか気になってね」
どうって言われても...。
妖夢「...凄い、人だと思いますよ。家事だって出来るし、私より強いし、そして何より自分の事を後回しにして他人を優先してくれる優しさが...、私は好きです///」
正直に話すととても恥ずかしくなる。早くお風呂に上がりたい...。
幽々子「それは一人の男性としてかしら?」
妖夢「......」
...正直な所、分からない。私が龍騎さんの事を一人の男性として見ているのだろうか...。恋愛には縁が無いと思っていた私は考えてみたが頭がごちゃごちゃしてくる。
幽々子「...じゃあ妖夢、もし龍騎くんに恋人が出来たと考えてみて」
妖夢「恋人...?」
幽々子「そう、龍騎くんと恋人が人里で一緒に歩いていると想像して。勿論手を繋いで...」
妖夢「......」
私は幽々子様の言われた通り、目を瞑って想像してみる。人里で龍騎さんと恋人...、手を繋いで...、そして私に見せられなかった龍騎さんの笑顔...。
妖夢「...っ」
少し考えただけで胸が一気に締め付けられる。とても不愉快だ...、龍騎さんに恋人が出来たとなると怒りが込み上げてくる。
幽々子「...妖夢、これで分かったでしょ?」
妖夢「...と、言いますと?」
幽々子「貴女は龍騎くんに、恋してるのよ。それはもう、博麗の巫女や守谷の巫女と同じぐらいに」
妖夢「!」
幽々子様の言葉に私は大きく目を見開いた。そうか...、これが恋なんだ...。
幽々子「じゃあ妖夢、さっき想像していた事を妖夢に置き換えてみて」
私が龍騎さんの恋人...、想像しなくても分かる。私が恋人だと思うと嬉しいし、楽しいし、とても幸せだ。
幽々子「(あらあら、妖夢ったら嬉しそうな顔しちゃって可愛い♪)どう?素敵でしょ?」
妖夢「...はい、恋って素晴らしいですね」
幽々子「そうでしょう?でも、ライバルが多いからね、頑張りなさい妖夢。私は貴女の味方よ♪」
妖夢「ありがとうございます!幽々子様!」
幽々子(若いって良いわねぇ〜...、もし私が生きていたら恋人になっくれたかしら...)
それからお風呂を出て、自室で待機している龍騎さんを呼びに行く。龍騎さんの居る部屋に行くと、龍騎さんは本を読んでいた。
龍騎「ん?出たか...」
妖夢「はい、お待たせしました」
龍騎「気にするな、俺は気にしない」
妖夢「なら、今日はもう休みましょう。夜も遅いので」
龍騎「ああ...」
そう言って龍騎さんは本を閉じて床に置き、一緒に私の部屋に向かった。そして同じ布団に入る。お互い背を向けてるのに緊張してるのか、胸がドキドキする。
数分後、私は眠りに付かなかった。それもその筈、初めて男性と寝てるんだ、直ぐに寝付ける訳がない。
妖夢「...あの、龍騎さん。起きてますか?」
龍騎「...どうした?」
どうやら龍騎さんも直ぐに寝付けられないみたいだ。
妖夢「その...、ありがとうございます。私の我儘を聞いて貰って...」
龍騎「...言ったろ、俺は相手の意思を尊重するって。気にする事は無い」
妖夢「そう、ですか...」
私はその言葉を聞いて少しホッとする。もしかして無理してるんじゃないかと思ったから心配していたのだ。...この際聞いてみても良いかもしれない。
妖夢「一つ...、聞いても良いですか?」
龍騎「...何だ?」
妖夢「...龍騎さんは、幻想郷の女性に告白された事ってありますか?守谷の巫女以外に」
龍騎「!?どうしてそれを?」
龍騎さんはビクッと身体を跳ねた。やっぱり...、それもそうか。龍騎さんならあり得なくは無いと思っていた。
妖夢「...あのですね、私...、恋をしまして...」
龍騎「...へっ?」
妖夢「いつから恋をしたのか分かりませんが...、いつも好きな人の顔が頭に出てきて...、その人の顔が全然離れないんです...」
龍騎「...それ程そいつの事が好きなんだろうな」
妖夢「はい、だから...、勇気を出して告白してみます」
私は龍騎さんの背中を抱きついた。
龍騎「え?ちょ、ちょっと妖夢!?」
妖夢「霧影龍騎さん、私は貴方の事が好きです」
龍騎「はあぁ!?」
龍騎さんは驚き叫ぶと、慌てた様子で手で口を押さえた。結構声が大きかったのか焦ったのだろう。
龍騎「ちょ、お前本気か!?」
妖夢「はい、本気です。どうしようもないぐらいに好きです」
龍騎「いや、別に好きになってくれるのは嬉しいんだよ?でも何で俺なんかに...」
妖夢「守谷の巫女と同じ意見です。自己満足と言いながら他人に優しく出来る貴方が好きなんです」
龍騎「......」
妖夢「もし、まだ女性に慣れていないのなら...、それまで待ちます。それまでに私は一人前の剣士になって、龍騎さんに認められる女になってみせます」
龍騎「...ほんと俺って屑野郎だな、五人に告白されてるのに逃げてばっかりで...、ほんと情けねぇよ...」
妖夢「...龍騎さん?」
龍騎「どうして...、どうして俺なんかに好きになるんだよ...。お前達には俺以外にも良い奴が居るだろうに...」ポロポロ
私は龍騎さんが泣いてる事に気がついた。もしかしたらこれが龍騎さんの本音なのだろうか...。
龍騎「どうして...、どうしてそんなに俺を優しくするんだ...。どうして俺の味方になるんだ...。どうしてなんだよ...、俺が何したっていうんだ...」ポロポロ
妖夢「......それは龍騎さんが誰よりも強いからですよ」
龍騎「......え?」ポロポロ
妖夢「龍騎さんには、龍騎さんにしか無い優しさを持ってるんです。それが龍騎さんの強さであり、皆んな龍騎さんの事が好きになってるんです。勿論、私も」
龍騎「...それは違う、俺は強くなんか無い。それに、そんな優しさを持ってたら自分じゃなくなる...」
妖夢「では龍騎さんは何で此処まで来れたんですか?」
龍騎「!?」
妖夢「龍騎さんは何の為に戦って、何を守ろうとしてるのか、自分は何の為に剣を習って、何で剣を習いたかったのか、分かりますか?」
龍騎「......」
妖夢「それは龍騎さんが自分にとって大切な何かを守りたかったからじゃないんですか?」
龍騎「大切な、何か...?」
妖夢「私は幽々子様をお護りする為に剣を振っています。龍騎さんも何か守りたいものがある筈なんです」
龍騎「......俺は」
龍騎さんが黙ってしまうと、直ぐに口を開いた。
龍騎「俺は...、守りたい...。霊夢や、早苗や、皆んなを...、
その言葉を聞いて、私は安心した。最後に『自分の命なんていらない』なんて言ったら引っ叩いてやろうと思ったけど、その心配は無かった。
妖夢「私も微力ながらお手伝いします...」
龍騎「すまん...、こんな俺なんかの為に...」
妖夢「気にしないで下さい。私が好きでやってるので」
龍騎「...ありがとう、妖夢」
妖夢「えっ?///」
龍騎「......」
それから龍騎さんは眠りに付いてしまった。初めて龍騎さんにありがとう、と言ってくれた。それだけで私は嬉しかった。朝には龍騎さんは地上に帰ってしまう...、せめて何かお礼をしよう。そんな事を考えながら私は眠りに付いた。
いかがでしたか?
誤字脱字、アドバイス等よろしくお願いします。
主人公の二重人格くんの名前も募集してますので、よろしくお願いします。