そして不死人は例の如く喋りまくります。そして本編との設定の繋がりはあんまりない物と考えてください。
それは、もしかするとあり得るかもしれない…ちょっとばかし先の話。
何だかんだ無事にIS学園の1年目を終えて2年生となった一夏と【彼】は、今年度の一年生のIS実習を遠くから見学している。担当している教師は我らがショウ・オブ・マスト・ゴーオンこと山田真耶先生だ。
「今年の1年生も動きが良いなぁ…専用機持ちは」
「今なんつった、今年“も”?
俺達はここに来て2年目だったハズだがな」
なんだか随分遠回しな言い方をするようだが、用は「(初めて後輩の操るISを見るのに)何で何回も見た様な言い方をするんだ?」と言いたいだけである。あらゆる意味で面倒な男だ。
そういう【彼】は、携帯端末と実習風景をせわしなく見比べている。
「んな、言葉の綾ってもんだろ?気にすんなよ。
――――というか佐々木、何やってんだ?」
「算数のお勉強だ」
「…?」
彼の理解しかねる発言に、一夏は首を傾げて目を細くそして眉を寄せた。とは言え【彼】は生まれた時代の差もあってか少々、いや、かなり奇行が目立つ男だ。あんまり深く考えると疲れるだけなのは一夏も身をもって承知している。
そして急に【彼】はISを頭部のみ部分展開し、しばらく窓の先を見つめた後に直ぐ収納…この一連の行動は更なる謎を呼んだ。
「150~155…そんなものか」
「だから何やってんだよお前」
「気にするな。
…というよりお前、箒は大丈夫なのか?呼んでたぞ」
「ああ、それならさっき話した…また買い物に付き合ってくれってさ」
「…報われんな」
「ん?なんて?」「何も」
また朴念仁を炸裂させた一夏へのため息と、それによって長年の悲願を達成せずにいる彼の幼馴染の無念に対する同情をたった一言で済ませつつ、【彼】はまた携帯端末に情報を打ち込んだ。
そこからまた難しい事を要求されたのか、より難しそうに眉をひそめた顔を見せる彼に一夏はそろそろ無視を決め込むことにした。
「それよりも…佐々木こそ、シャルロットと大事な話がどうとかって言ってたけど。アレどうなったんだ?」
「随分プライベートへと踏み込むな。
まあ…将来の話さ、そろそろ考えたっておかしくもないだろう」
「将来、か…」
この年代にとって、それは一番敏感になる事柄である。
特に…過去から続く暗い枷に今まで囚われていた者や、昨日まで信じていた未来が狂わされた者にとっては一番悩ましいとも言えるのではないだろうか。
とはいえ【彼】の言うシャルロットの“将来”とは、通常のそれとは少々方向性が違うものである。何ならまだ解決さえしていない…何せ彼女の心に深く張り付いた鎖*1だからだ、時間がかかる。
もし早急な解決を望むのであれば、今【彼】が行っている事を一から説明すればほぼほぼ一瞬だろう…が、それによって失うもの(=信頼)が大きすぎる。というかもっと様々なものを失いかねない上に、想定する最悪のシナリオが2%以上の確率で起こるのだ。100回やって2回は捨てるには大きすぎる、飛行機が事故を起こすのでさえもっともっと低いのだから。
何はともあれ、友として…“火消し”として、そして何より“兄”として、彼女の可能性を何が何でも自由な状態にさせたい【彼】はこれが一番の悩みの種であった。
まあ、そんな難しい話は今は関係ない。
再びISを頭部のみ展開する。
「大体15か14に…10から12くらいか。
ポンコツめ、もっと詳しくやれ」
「…」
本当に何が何だか…まだやっているのかとため息をつく一夏は、ここでふと妙な事を思い出した。
確か【彼】はさっき150~155とか何とか言っていた。これは山田先生自身の身長と同じくらいだ…因みに一夏は172と彼女より二回りほど大きく、【彼】に至っては190オーバーとこの学園でもそうそう居ない程の巨漢だ。
…まあ彼曰く「自分が一番デカイというのは新鮮だ」との事。確かにロードランやドラングレイグにロスリックは巨人以外にも、やたら大きな人間が多かったが。
何はともあれ話を戻し、一夏はここで昔読んだ漫画を思い出した。その漫画では確かラスボスが自分の指の長さと主人公の身長を比較して両者の間の距離を測っていたのだが…今【彼】も同じことをしているのか?と僅かな疑問を抱いた。
しかし、それも全て、あらゆる計算を終えたのか満足した様子の【彼】の一言で吹っ飛んだ。
「…Iカップか」
「おい」
流石の一夏も察した、そしてすかさず彼の脇を小突いた。
何と言ったってこの男…なんと山田先生の胸のサイズを測っていたのだ。とんだ変態である。
因みに言うと、【彼】の計算はある時点で盛大なズレが生じていたというオチまで完備している…気が付く事は未来永劫ないのだが。
「入学以来の謎が解けた」
「何やってんだよお前」
「気になってたんじゃないのか?一夏も」
「んなわけ…いや、その…」
どうやらまんざらでもないようだ…箒と鈴音とセシリアに見せてやりたいとほくそ笑む【彼】はようやくベンチに腰を下ろしながら話を続ける。
「ふっ、これで朴念仁だと言うのだからな」
「え?何?僕人参?」
「あー忘れろ忘れろ、どーせ意味なんざ持つまい。
兎も角、これでゆっくり眠れる」
「寝ないだろ佐々木」
「そうだな…訂正するか。
これでゆったりとCoDが出来る」
「数学の課題、明日までだぞ?」
恐ろしくて残酷な事実を告げた一夏を【彼】はそれと同じくらい冷淡な目で睨みつける。そこには一切のシリアスは無く、存在するのはせいぜいシリアル程度であり、その彼の内心も「貴様なんて事を言うんだ!事実陳列罪だぞ!」くらいの下らないものである。
しかし年寄りとは何時の時代も頑固であるようだ。
「――――知らんな」
「おいおい…流石に留年するぞ?」
「知らん、知らん。
留年しようが退学させられようが問題な……うーん、無い」
「本当か?」
「まあ後1回ぐらい大丈夫だ、そうに違いが無い」
少しずつ、歴戦の不死人から自信が無くなっていく様はとても面白いものだ。
ともかく【彼】がくっだらない事をしている内に、一年生専用機組の放課後特訓が終わり、次にアリーナを使うのは【彼】らの番となった。きっとその時は今ISを解除した後輩たちが今の彼らのように見学をするのだろう。
「…どうする?今日は顔を立ててやろうか?」
「いいや要らない、全力で来い」
「そうか。
なら“かっこいい先輩”の名声は俺が頂くが…」
「それはどうかな?」
「言ってろ、青二才」
「見てろよ、じいさん」
この後【彼】が僅差で一夏から勝利を、予てから賭けていた【かつ丼超特盛券】と共にその手でもぎ取った。
因みに「こんなスケベはダクソらしくない」と叫ぶ方、石を投げる場合はグウィネヴィアや砂の魔術師といったキャラクター若しくは敢えて自分と違う性別でメイクした自キャラを遠眼鏡等で観察した事が無い場合のみその資格がありますのでご了承ください。