あちらでもそこはかとなく書いておりますが、このオリジナルルートではモニカとMC…にデジタル的憑依した謎のウザいプレイヤーが半タイムリープ物の物語を繰り広げる事になっております。
因みにプレイヤーの正体に何らかの察しがついてもコメント欄等で言及するのは禁止です(する人居るとも思えないが…)。
あのプレイヤーは、ただ無限の中の狭間で、ただ息抜きにDDLCの世界に立ち寄った、もう独り身の超絶暇人男…ただそれだけです。
それと完成度には相変わらず期待するな。
【1、サヨリを待ちながら】
これは、ある時間軸での話。
この日のサヨリは、遅刻記録のレコード更新を果たしていた。
既に詩の交換は行われている…それでもまだ来ない。
…一応、過去の記憶がある“彼”とモニカはアイコンタクトで情報交換を行う。
主にどういったものかと言うと――――
(え、部長もうやっちゃった?スクリプト)
(いいえ…まだ何もしてないわ。恐らく只の寝坊…だと良いのだけれど)
――――といった感じのモノである。
「全く。朝寝坊は兎も角、部活にも来ないなんて…サヨリらしくも無いわね」
ナツキがやや苛立ち気味に愚痴を溢す。
…その直後に「そう言えば」と、跳ね上がる様に“彼”へと質問を投げかけた。
「あんた、いっつもサヨリと登校してるんでしょ?
何か知らないの?」
「いやぁ…今日ばっかりは俺も寝坊してなぁ。
――――前日、課題やって詩をどうにかヒリ出した後、徹夜でデッドスペースしてたんよ」
「あっそ。
…それとヒリ出す、って表現やめて。下品」
「俺から下品と攻撃性を抜き取ったらカスしか残らんぞ」
「アンタの場合そのカスで丁度良いくらいよ…一生友達出来ないわよ」
その一言で、突然「ひぃいッ…んぐうッ」と、彼が汚い泣き方を始める。
「小僧…それ以上は、何も言うな」
「はいはい再不斬再不斬」
「…ホントなんでジャンプ作品NARUTOだけ履修してんのよ貴公は」
「別に、人の自由でしょ?」「それもそうだ」
日常的に繰り返される、やや罵倒にも近いやり取りを終えた後“彼”は「ぬぁ”あ”~」と、また野太い………えっと、ため息と欠伸の混合物を吐き出す。
「本当に…【サヨリを待ちながら】ってか?
あーもーカフカじゃねぇんだからよ全く」
この一言に何か違和感を感じたのか、ユリが間髪入れずに「あの…」と、彼に問いかける。
「今の発言、もし【ゴドーを待ちながら】の事を言っているのならば、それはカフカでは無くベケットの作品です」
「…そマ?」
「はい。
戯曲【ゴドーを待ちながら】はアイルランドの劇作家サミュエル・ベケットが1952年に発行した作品で、当時はそのストーリー展開の異質さから悪評が目立ちましたが、公開から約5年後には20の言語に翻訳される程に――――」
しばらくユリの薀蓄が続くので中略させて頂く。
「――――それに、作品の結末は結局ゴドーが来ないというオチなので、少し不謹慎なようにも感じますが…。
…[PlayerName]さん?」
「…ユリちー流石の知識量やんな…小説は兎も角、劇の知識もあるなんて」
「え、ええ…。
…実は私も、カフカの【変身】から不条理系にのめり込んでいた時期がありまして…」
「あー、やっぱり始めはカフカか。
…こんな事なら不条理なヤツは全部カフカって事でもいいだろ」
この男、さらっと色々インパクトの凄い発言を残したのだった。
「す、すごいこと言いますね…」
「んまぁ…これもモテるために重要な“隙”って奴ですよ。
すき、だけにね。ガハハ」
「…最早それ、隙というよりクレーターよ。
自分ではモテると思い込んでいて、その実一番嫌がられるタイプだわ」
「部長めちゃくちゃ刺すやんか…」
結局、サヨリの大遅刻は「体育館の用具入れでうたた寝しちゃった」のが原因だそうだ。
…因みに【ゴドーを待ちながら】は“自殺の失敗”で締めくくられる。
【2、文芸の優劣】
静寂を切り裂くように、突如“彼”が口を開いた。
「…『タイタンフォール2…全ロボット好き及びタイタンパイロットの聖典。それが何故素晴らしいのか、それは、5・15事件を日本の能に照らし合わせ、その本質を論じたところにある。能とは、戦国の武士たちがあらゆる芸能を蔑むなか、唯一認めてきた芸事だ。それは、幾多の芸能の本質が決定された物事を繰り返しうるという虚像にすぎないのに対し、能楽だけが、その公演をただ一度きりのも――――――――』」
「え、何何何?
[PlayerName]、どうしたの!?」
幼馴染の豹変ぶりに、サヨリがパニックを起こす。
「いや、攻殻機動隊のクゼってキャラいてな。
ソイツのセリフをプラットフォームにすれば、まるで特定の作品について造詣の深い話が出来ている様に見せかけられないか?って試みよ」
つまり、所謂「叙述トリック」と呼ばれるソレの、非常に単純かつ中身のない部類に位置する事を“彼”はやっていただけである。ある意味では「箇条書きマジック」にも通ずるが、彼のは最早共通点すら見出していない。
当然の話だが、FPSゲーム【タイタンフォール2】と犬養毅暗殺及びばら撒かれたビラで有名な【5・15事件】とは何の関係もないだろうし、特に深い繋がりも無い。
「また下らない事してるわねアンタ」
「なぁに言ってんだナツキィ、これも文章や言葉によって何かを成そうとしているから立派な文芸ゾ。
お前の「漫画だって文芸」だという意見を反映するとなれば、俺のこのネットスラング染みた言葉遊びも受け入れる事になるだろうよ…それに下る下らねぇを語るとすりゃ、そもそも小説も漫画も大した違いがねえだろ」
今のやや引っかかるような発言にムッとしたユリが“彼”を睨むが、それを承知の上だった彼は「ステイ、ユリ、ステイ」と彼女を宥める。
「そも、昭和初期…あたりだったか?いやもっと前…明治辺りだ。女子供がよむちゃんちゃらしたモンって認識が一般的だったようだ。国の将来を背負う男子が嗜む、或いは仕事とするような物じゃねえて…まあ、まあその前後の時期の日本じゃ、小説19世紀後期から20世紀初頭なんて日本含めてどこの国も男尊女卑だったからこんなもんだろ。
それがどうだ?今じゃその“小説は低俗だ”とされた時代の文学が、国語って学びの一環に取り入れられているわけなのよ。夏目漱石とか授業でも滅茶苦茶擦られたし、なんならセンター試験にも出たりするだろ?」
「どうしよう、妙に説得力があるのが腹立つわ…」
「一応聞いておくけれど、結局言いたいことは?」
「――――結局、時代ってワケさ。
時代がそうと決めれば三文芝居も高尚って事。今ロシアが何かと世間騒がせてんだろ?あの国も100年もしない程昔にゃ、なんとアメリカと一緒にチーム組んでたんだしよ。
ソレに選ばれなければ…また数十年待ちましょって。人間生きてりゃ最低6つの時代は経験するもんよ」
「何だか上手く纏められてしまったような…」
因みにこの時のモニカ、やはり元ディベート部として彼の言う事の欠点を見ぬふりは出来なかったが…ここは「今後の部活動の幅を広げてくれた(あるいはそのヒントを示してくれた)」と、一先ず穴だらけの男を見逃すことにした。
それに彼女らには…これからまだやる事がある。
【3、ギターソロ】
ある時彼はサヨリの前でギターの演奏をすることになった。
使用した楽器はフォークギター、曲名はメタルギアライジングより【RED SAN】だ。
尚、テンポの都合上全て演奏後の感想を綴らせていただく。
「――――ふぅ。
…これフォークで弾いたの初めてだわ」
「おー!
本当にギター弾けたんだねー!?」
「やっぱり信じて無かったのか…」
彼は拍手と共にかけられた賞賛の言葉に、しかし内容が内容なので溜息を吐きながら、とりあえず彼女の続く話を聞いた。
「うんうん、こんなに音楽が上手だなんて思わなかったんだ~。
もしかすると軽音部も行けたかもね、[PlayerName]」
「かもな。
所で英語の歌だったが…歌詞の内容とか理解できたか?」
「いや、全く」
再び彼はため息を付く。
その歌詞の内容が肝心な活動だというのに。
「どういう歌詞だったの?」
「あ、あぁ…。
――――自然のままの空間に居る自分に幸せを感じて居る、みたいな内容さ。楽しい楽しい楽園の空には、真っ赤な太陽が昇り…」
「あ!だから【RED SAN】なんだね!」
「そう言う事だ。
そして歌詞の意訳の続きだが…その楽園にはあらゆる動物がいて、鷹や鷲は餌を求めて今日も飛び回り、蜥蜴が大地を駆け、そしてそれらの動物たちは鹿毛の動きに合わせて自らも移動する。
とはいえその楽園も何時かは機械の文明に飲み込まれて破壊されるかもしれないが、自分はこの楽園に吹く乾いた風を感じたまま戻りたくない…って感じだな。何あれ、自分の平和の中にいるんだ」
「へぇ~…いい歌だねー」
因みにこの意訳、そこまで嘘は言っていないが…語弊がたっぷり詰まっている。
そんな事実をサヨリはいざ知らず、譫言のように「いぃなぁ~」と言い放った…彼は歌詞の“本来の意味”と重ねて考えてしまい、一瞬ぎょっとした。
「な、何で…」
「それは、私もなりたいなぁって。
いつもいつも皆を照らせる【太陽】に…」
「今もそんなモンだろう」
彼の答えに…しかしサヨリは「うん…」と黙りこくって視線を落とし、表情を曇らせた。
「私の心にも、雨雲はあるよ…。
皆を幸せにしたいと思ってても、これじゃお日様とは無縁だよね」
「…。
俺はそうは思わん」
きっぱりと否定した彼の言葉に、信じられない事を聞いたようにサヨリが「え…?」と眼前の男を見つめ直す。
「知っているか?
雨雲が、自ら光を放つ方法を…」
「そんな事…」
できないよ、と言いかけた彼女の口を遮る様に…彼は上から下へと振り下ろすようなジェスチュアをして見せた。
「――――【雷】だよ」
「かみ、なり…?」
それはサヨリにとっては恐怖の象徴だった。
「ああ。
雷とは、雨の化身だ…あれは深い雨雲から生まれる」
「雨が…光に?」
「そうだ、どんなに地面見つめて歩いたって、お前はそのひた向きさで光を放つ事が出来て――――その光で輝ける“月”達がいる」
丁度ここにもな…と、彼は自分の
彼女と言う
それがまた、
「…心配する事ぁない。
お前はどうであれ“光”――――
それが彼女へと手向けるのに適切であるかは分からなかった。
けれども、サヨリ自身の心を削った真心へと報いる何かは必要ではないのか…決して人の心への理解があるとは言えないこの男の、せめてもの“感謝”だった。
…ともあれ(彼が要因かは分からないが)サヨリの心は一応晴れたようだ。
「…まぁ、ライジングに雷の意味は無いがな」
「――――あ、そうだったんだ」
「うん。
昨日ググったら無かったんだわ、全くこんなんだからお互い英語の補修受けるんだわな」
「えっへへ…二人して20点下回っちゃったね」
「うるっせ。
俺にとって英語なんてFコードの発音が完璧だったらそれでいいんだって」
「それ絶対よくないよ~!」
「おう、そうだな。
全くもって不健康――――だがしかーし!ぶっちゃけ生きてくうえでそんな不健康などその場のノリでなんとか、ぬぁーる!」
「うわーん!
[PlayerName]がどんどんダメ人間になっていく~!」
「さっきの演説がダメ人間のするものと思えるかってんだ!」
散々“それ”らしい言葉を吐き出した
二人はこの男の言葉が砕け切り、砂はおろか霧のように重みの無いものになるまで喋り倒したのだった。