なのはにそっくりなマテリアルSがスクライア族の落ちこぼれに出会った話。   作:あおい安室

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Q:そもそもマテリアルSって何?

A:劇場版リリカルなのはReflectionに登場したシュテルの元ネタ。
 PSPのゲーム一作目でボスを務めており、別名は星光の殲滅者。
 二作目でシュテル・ザ・デストラクターという名称がつき、劇場版のシナリオも二作目をベースにしてたりする。
 性格とか大体の設定は同じですがこちらは元がヴォルケンリッターみたいなプログラム。
 後ガントレットもないしバリアジャケットもなのはの色違いだったりと細かいところで差はありますが……。
 多分、そんなに気にしなくても大丈夫です、多分。


一つ目の記録

 小さい頃から星を眺めることが好きだった。

 

 正確に言えばそれしかやることがなかった、ともいうのだが。わたしはうまれながらにして才能がないどころか一般人にも劣っており家族や親族の役にはあまり立てなかった。どこにでもいる誰かで十分代わりが効いたし、どれだけ努力をしようとも一般人並みにはなれない。

 

 誰にでもできることを人一倍こなし、誰にでもできることを率先してすることでようやく自らの存在意義がある、と安心できるほどには生まれながらの無能である自分が情けなかった。

 

 そんなわたしが自らの無能に嫌気がさして生まれ育った故郷を捨てて一人で旅に出たのは何年前のことだったか?もはや思い出すことはできそうにないが流れ着いた先で日雇いの仕事を探し、死に物狂いで働いて一日を生き延びようとするくらいには生に対して執着はあった。

 

 旅の中でたどり着いた場所で、わたしは夜になるといつも外に出て空を眺める。

 

 夜空に輝く星を見つめていると不思議とわたしの心は落ち着くのだ。どこに行っても喜んで迎えられることはないわたしのような存在でも、この夜空なら受け入れてくれる気がした。

 

 

 見上げた星の中に一つくらいはわたしを受け入れてくれる星があるだろうか。

 

 

 そう考えていた頃が懐かしい。今となっては輝く星の一つに紛れ込むことを許してもらえればそれで十分だ。さぁ、今夜も星を眺めよう。

 

 


 

 

 

「──観測記録、2327、記録再開せよ」

 

『ラジャー、記録再開』

 

 手にした小さな手帳がどこか機械じみた声を返す。旅先で買って見よう見まねに修理したデバイスであるそれに搭載された人工知能が声を返した。売っていた爺曰く魔導士を助ける人工知能を搭載した画期的なデバイスカテゴリ、インテリジェントデバイスの第一世代、だとか。

 

「今夜の観測した星空はいくつかの星が増加していることが確認されており、これは別ファイル『仮称惑星ITD-05の変化』に記録した。残された期間はわずかだが調査はギリギリまで続けようと思う。この記録が後世の役には立つとは思えないが、暇つぶし程度にはなるだろう。記録を見つけた者はぜひ笑ってくれたまえ」

 

『今夜の観測した星空はいくつかの星が増加していることが確認されておりこれは別ファイル『仮称惑星ITD-05の変化』に記録した。残された期間はわずかだが調査はギリギリまで続けようと思う。この記録が世の役には立つとは思えないが、ひひひひひひひ──』

 

「また故障か、嫌になる。もう人工知能の修復パーツはないというのに」

 

『また故障か、嫌になる。もう人工知能の修復パーツはないというのに』

 

 舌打ちしつつ手帳を小突いた。第一世代と言えば値打ち物に聞こえるが実際は現行のストレージデバイス、人工知能非搭載型と比べればかなり劣る性能しかない。

 肝心の人工知能の性能がいまいちでデバイスその物の容量も魔法をまともに運用するとなればはっきり言ってあまり使い物にならない。特に戦闘に用いるとなると負荷が大きすぎて処理速度がかなり落ちるため、こんなポンコツを使って戦える人は誰もいないだろう。

 実際わたしもこれを戦闘に用いたことは一度もない。使えない、という意味もあるのだが。

 

「さて、明日は例の遺跡の状況を確認することにしよう。幸いまだ探査艇は動くからやれることはあるはずだ。最後までわたしは自分のやりたいことをするとしよう」

 

『さて、明日は例の遺跡の状況を確認することにしよう。幸いまだ探査艇は動くからやれることはあるはずだ。最後までわたしは自分のやりたいことをするとしよう』

 

 

 

 ──新暦65年、現地の季節は恐らく冬、正式な日付は不明。

 

 

 

 デバイスの復唱を確認すると記録を終了した。何度か不具合を起こして記録を中断し、もう一度記録を再開するという手間のかかる作業も今夜の分は済ませた。これまでの記録がちゃんと残っているのか不安はあるが全ての記録を確認することは面倒だった。

 この行為はただの自己満足なのだから記録ができていようといまいとどうでもいいから。

 

「さて、もう少し眺めてから寝るか」

 

『警告・この後気温の低下が予想される』

 

「風邪をひくぞとでも言いたいのか?」

 

『──―』

 

「答えを返せない質問をするな、ポンコツ」

 

 手帳の表紙にあしらわれた宝石、人工知能の思考回路であるそれの光が消えた。役目が終わったと考えて電源を落としたのだろう。微妙に利口な部分があるのは流石というべきか。

 

 ため息をつきながら空を見上げる。輝く星を見ながら残り少ないタバコに咥えて火をつけようとしたその時──空が輝き、一つの星が現れた。星は流れ星となって落ちていく。

 この惑星では何度か目撃した光景だが……流れ星が燃え尽きるようすがなかった。思わず咥えたタバコを噛み締めてしまったことを後悔しながらもポケットにしまい、同時に手帳の電源を入れつつ探査艇に乗り込んだ。

 

「とっととおきろ寝坊助!探査艇のCPUに直結してやる、数十秒後に訪れるであろう振動データから流星の着弾地点の予測を行うんだ!」 

 

『復唱、観測された振動データを基に探査艇CPUで流星の着弾地点の予測、開始します』

 

「急げよ……!このチャンスが次にあるかどうかわかったもんじゃないからぞ!」

 

 探査艇の操縦席に座りデバイスを探査艇のシステムとつなぐ。エンジンをかけつつ流星が着弾するのを待つ。1……5……10……20……40……っ!!

 

 ドォン、と音が聞こえた。安物の探査艇であるこの船でも外部の音を拾う機能くらいはあるのだ。問題は集音機能はあっても衝撃吸収機能はないから多少は揺れるのだが。

 

『──予測完了。ナビゲーションを開始します』

 

 デバイスの音声を聞くと同時にアクセルを踏み込み、操縦桿を握る手に力を込めた。荒れ果てた荒野に障害物はろくにないがこの探査艇の性能では全速力を出せば即事故だ。壊れかけのライトと己の記憶を頼りに出せる限界の速度で流星の落下地点に向かった。

 

 10分かかっただろうか、我武者羅に探査艇を走らせたわたしは流星の落下地点にたどり着いた。

 

「……落下地点に何か反応はあるか」

 

『計測中──計測完了。微弱な生命反応を確認。救護キットの使用を提案します』

 

「生命反応?生物が落ちてきたのか?あるいは元々いた生物の生き残りか?まあどちらにせよ救護キットの残量はろくにない。せめてフィジカルヒールの起動準備をしておけ」

 

『警告・マスターの魔力量では──』

 

「そういう問題じゃない。黙って準備しろ」

 

 もう少しまともなデバイスを買えばよかったか。今となってはもう遅いことだが。簡単な探索装備を身に着けて流星の落下地点へ滑り降りていく。落下地点の中心をライトで照らすと土に埋もれて衣服らしき物が見えた。黒い衣服。このデザインは──バリアジャケットか?

 わたしは魔力不足で一度も使ったことはないが昔出会った魔導士が似たような格好をしていた記憶がある。周囲をスコップで慎重に掘り起こしていく。まだこれの持ち主が生きているかもしれない。

 

 衝撃で舞い上がった土が持ち主に降りかかったのだろう。そんなに苦労することなく持ち主の全身を確認することができた。呼吸は──しているようだ。

 

「──あ、う、っ……」

 

 女の子。ようやく二桁になろうかという女の子だった。かなりの速度で落下したはずの彼女は体のところどころから血を流し手足があらぬ方向へ折れ曲がっているが、まだ生きていた。欠損部位はないようだ、治せるかもしれない。

 

「やるしかないか……フィジカルヒールッ……!」

 

 デバイスに準備させていた回復魔法を唱える。わずかな魔力量で彼女を回復させるのは神経を削るような苦痛とめまいを伴うがここで見捨てるほどわたしは外道ではない。

 魔力が切れて魔法が途絶える。息を荒くしながら胸を押さえていると女の子の目が薄く開いた。

 

「……だれ……です……か……?」

 

「た、だの通り、すがりだ……!すま、ない、これ、いじょ、うは……!」

 

『予測・現状の魔力ではこれ以上治療不可能です。この後探査艇へ連れ帰ります。問題はありませんか?』

 

 言葉の続きを言ってくれたデバイスに感謝しつつ。女の子を見つめる。小さく縦に頷いてくれた。大きく深呼吸して力を取り戻すと女の子を抱きかかえた。

 

「いくぞ」

 

 覚悟を決めて口にすると、不安定な足場を何とか登るために歩き始めた。女の子が時折痛みでうめくが現状のわたしにできることはもうない。何とか探査艇へ連れて帰るしかない。

 腕の中の女の子がわたしの顔を見つめていた。小さくつぶやいた声が聞こえる。

 

「……ユー、ノ?」

 

「?」

 

 ユーノ。どこかで聞いたような気がするが……気のせいだろう。

 

「わたしは、ユーノじゃない。人違いだ」

 

「……そう、ですか」

 

「名前」

 

「……?」

 

「わたし、だけ、名乗っては……失礼だ」

 

 何とか登り切った。一旦女の子を地面におろし、自らも膝をついて大きく息をする。想像以上に疲労している自分に情けなさを感じていると、女の子の声が聞こえた。

 

「私、私はっ……」

 

 声を返せるような体力はない。何も言えずにいると言葉が続けられた。

 

 

 S。マテリアル、S。

 

 

 汚れた黒いバリアジャケットに身を包んだ少女は、傷んでボロボロになった茶色の髪の毛の隙間から私を見つめているのが見えた。その後探査艇に運び込んだマテリアルSは意識を失っており、しばらく目覚めそうになくそのまま休息をとることにした。

 

 

 奇妙な流れ星を拾ったこの日から、流れ星を見送るまでの日々。

 

 

 その間にわたしの身に何が起き、何を見たのか。マテリアルSはどうなったのか。今後の記録は忙しくなりそうだが、それくらいしかわたしに残せる物はない。

 少し本腰を入れることになりそうだ。懐かしい感覚を思い出しながらわたしは操縦席の硬い椅子で眠りについた。やれやれ、自室のベッドを譲ったのは失敗だったか……?

 

 

 ──名もなきスクライア族の一人が記録した。




没版では探査艇に墜落したショックでルシフェリオンが暴走起こして
探査艇を大爆発させた結果重傷になるシュテルさんがいました。


流石に色々とあれかつボーイミーツガールしてくれそうにないので没。
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