同盟上院小咄 アルフォンス・ナヴァロの同盟美食行脚   作:Kzhiro

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「文化の多様性の最たるものを知りたくばガラティエに行け。そこで胃を満たしてしっかりと見物すればお前はもう文化人の雛鳥だ。(とある芸術家)」


ガラティエ共和国・リストランテ・アピキウスのイタリア料理

溜まっていた有給休暇の許可が降りたため、久方ぶりにガラティエ共和国に足を運ぶことにした。

 

アーレ・ハイネセンの長征から離脱した集団が建国し、「ローマ共和国属州」という一風変わった看板を掲げるこのガラティエ共和国は「中間星域の盟主」「長征の次女」と称される程の影響力を誇る構成邦であり、またそれに伴って豊かな文化を誇る国として有名である。ハイネセンの美術館で名作と称えられる絵画や彫刻の類の殆どがガラティエで作られた作品であると言ってしまえば、その文化の豊かさが窺えるだろう。

 

また、当然ながら食文化も豊富であり、主要産品であるトマトやバジル、オリーブなどをふんだんに使用した豊富な地中海料理は自由惑星同盟に籍を置くものであれば一度は口にするほどメジャーな料理であり、美食家であれば一度はガラティエに足を運ぶほどのものである。

 

そして忘れてはならないのが酒である。ガラティエの豊かな第一次産業に支えられ、確かな酒造業によって作られた高品質な酒の数々はガラティエを「ジョージ・パームの愛した星」、「Planetes Bacchi(酒神の惑星)」と呼ばれる根拠であり、私の心の師たる美食家アンブローズ・ジェームズをして「ガラティエの酒は美食の友」「ガラティエの酒飲まなくして美食家は名乗るな」と謳われるほどの良品として有名である。とりわけガラティエワインはかなりの高級酒として有名であり、年代物であれば数百万はくだらないとされる。

 

さて、今回私はそんな素晴らしい料理と酒を出してくれる素晴らしい店の前に立っている。首都ルームの繁華街にこれ見よがしに立つ高級レストラン、「リストランテ・アピキウス」。ガラティエの精神たる古代ローマを代表する美食家の名を冠した、名店中の名店である。今回私はこの店に予約を入れたと言うわけである。

 

早速私は店内に足を踏み入れた。小綺麗な制服を纏ったウェイターが一通りの確認を行った後、速やかに席に案内した。流石は高級店であり、一片のシミもない白亜の壁やそこに飾られた美しい絵画、彫刻が、豪勢さを誇るシャンデリアに照らされてより美しく輝いて見えた。

 

そんな店内の様子を楽しみながら案内された席に着いた私はお手拭きで手を拭いた後、テーブルの脇に立てかけてあるメニューに目を通した。「リストランテ・アピキウス」は地中海料理の中でも有名なイタリア料理の専門店であり、メニューに書かれてあるラインナップも殆どがイタリア料理であった。私は一通りメニューを眺めた後、「アピキウスの贅沢セット」と呼ばれる少々お高めの料理が多めに出てくるらしいセットメニューを注文した。無論、ガラティエワインも込みである。

 

暫くメニューを眺めていると前菜が酒と共に到着した。サーモンのカルパッチョ、プロシュート、チーズ盛り合わせという豪華なラインナップである。

まずはワインのコルクを開け、並々とグラスに注いで香りを楽しんでみる。葡萄の芳香な香りが鼻腔を刺激する。一通り楽しんだ後、一口ほど口につけた。ほんのりフルーティーな味わいと微かな酸味と渋みのハーモニー。やはりガラティエのワインは酒の王とも言えるだろう。満足する味わいである。

 

カルパッチョに手をつける。玉ねぎのさっぱりとした味わいとサーモンの濃厚な味わい、そしてレモン汁由来の酸っぱさ。なるほどこれはワインによく合う代物である。ワインを一口含んだ。

 

続いてはプロシュートである。こちらは生ハム特有の脂っこい濃い味わいが口腔を支配した。なまじカルパッチョを食べた後だと味がよくわかるものである。思わずカルパッチョ、プロシュート、カルパッチョ、プロシュートの順に食べていった。チーズは言わずもがなである。ワインによく合う代物だ。

 

さて、次にやってきたのはパスタであった。キノコのクリームパスタとアーリオオーリオ・ペペロンチーノの二皿である。まず私はペペロンチーノの方に口をつけた。唐辛子の辛味とオリーブオイルの程よい肉油っこさ、そして良質の小麦から生まれるもちもちとした麺の食感。素晴らしいとしか言えない。

続いてはキノコのパスタに口をつけた。麺にまとわりつくクリームがキノコと麺を包み込み、優しい味わいを醸し出す。これも素晴らしい一品であった。一通り食べた後、ワインを喉に流し込む。

 

その次にやってきたのはピッツァであった。モッツァレラピザとプロシュートのピザ。パスタでこの美味しさであったのだから、次もまた期待できるだろう。一通り切り分けながら期待に胸を膨らました。

切り分け終わったらまずはプロシュートのピザから口をつける。良質の小麦から生まれるもちもちとした食感にトマトとバジルの旨味がのし掛かり、さらにプロシュートの重く、脂っこい旨みがこれを包む。ずっしりとした旨味、はまる美味しさとはまさしくこのことである。

次にモッツァレラピザに口をつけたのであるがまさしくこれは当たりであった。ワインに程よく合う美味しさのチーズがトマトとバジル、そして小麦の生地の旨味と共に高次元の味に昇華する。まさしく感極まる味であった。ワインを飲まずにはいられない。

 

メインディッシュの最後とも言える料理は海鮮料理であった。アクアパッツァとズッパディペッシュ。もうそろそろキツくはなってきたがシェフの技術の精髄たる料理を残すのは失礼というもの。まずはアクアパッツァに匙を入れた。先程の料理に比べるとそれほど主張が激しいわけではないが魚介の旨味とオリーブの香りがぎゅっと詰まったスープは膨れかけた腹でもなかなかいける。

続いてはズッパディペッシュ。こちらはブイヨンなどを使っているためか、なかなか味の主張が激しい代物であり、これはこれで美味い。前菜の時と同じく、交互にいただいた。

 

デザートが来るまでの間、ワインを並々と注ぎ、しっかりと味わうようにして飲んだ。ああ、個人がこのような贅沢を味わってもいいのだろうか。罰が当たりはしないのだろうか。いや、当たりはしないだろう。むしろこれだけ素晴らしいものを食べて罰が当たるのがおかしい。ここは帝国じゃあるまいし。やはりガラティエは美食家の天国とも言えるだろう。

 

ワインを一通り飲み終わると、デザートが来たようである。牛乳を使用した自家製のジェラートであり、さっぱりとした味わいであった。

 

アピキウスのフルコースを評価するのであれば5点中4.8点である。現時点での最高得点とも言える点数であり、それに相応しい料理であった。是非とも機会があればまた立ち寄りたい。


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