転生したらPSO2の安藤だった件 作:ただの安藤
「っ?!」
あ、俺死んだこれ。
その瞬間脳裏に過ったのはこれしか無かった。
俺は仕事終わりの帰り道に信号無視の暴走車に激突されたのだ。
横断歩道の中央に差し掛かった頃、 突然けたたましいクラクションが聞こえると同時に脇腹に衝撃が走り抜る。
身体の中からバキバキッと骨が粉砕される音とグチャリと嫌に生々しい肉が潰される音が聞こえてくると同時に空中に吹き飛ばされる。
そして、追突された時よりはマシだが地面に叩き付けられ強い衝撃が背中を襲った。
「ぐふっ……」
呼吸をしようとするが口の奥から沸き上がるように出てくる鮮血でそれも叶わない。
……この様子だと、肺も逝ってるな。 追突された時に聞こえたあの音からしても脇腹辺りもミンチになってるだろうし……助かる確率なんてないだろこれ……。 ははは……我ながら呆気ない最後だなぁ。
自分の死を受け入れるのは早かった。元より助からないのは明確だからだ。
ただ、心残りはある。
ネトゲがもう出来ない事だ。
俺の主にプレイしていたネトゲPSO2ことファンタシースターオンライン2はキャラクリが一つのエンドコンテンツと言っても過言ではない。
顔の造形から体つきまで全て自分で設定出来るので知り合いのイラストレーターと相談し1からデザイン画を書き起こし、膨大な時間を捧げ行ったレベリングと装備作成、そして少々の課金(自称)で完成した己の最高傑作もとい己の分身、自身の娘とも言える自キャラがインターネットと言う電子の海に埋もれるのは我慢できなかった。
この世界で消えてしまうのなら出来る事なら来世は今の平凡な人生ではなく自キャラの様な存在になってみたい物だ。
《確認しました。 対象の記憶領域からイメージをサルベージ完了。 イメージ通りの
身体の感覚がどんどん喪失していくのに従って思考も鈍ってきた。その影響か幻聴まで聞こえてしまっている。
《ーーー確認しました。対象の記憶領域から作成した
ユニークスキル『具現武装』、『魔素吸収』、『人化』を取得しました》
あ、出来るなら最近の追加要素も入れて欲しいところですね……。
幻聴に咄嗟に注文を入れた俺は悪くない。
だってゲーマーだもの。運営に要望を送り付けるのはゲーマーの性みたいな物だから。
まぁ、死に行く奴の世迷い言って奴かね。
《ーーー確認しました。 対象の記憶領域からサルベージ完了。 ダークファルス系ユニークスキル『
『
しかし、対象の現状では『
ーーー確認しました。ダークファルス系ユニークスキルを5つ入手する条件を満たし『ダークブラスト』を取得しました』
はははっ……。 それが本当なら俺はかなりの強キャラになれるんだろうな……。 そんな事を聞こえてくる幻聴を聞きながら思う。
そして、その幻聴を聞き終わった瞬間に思考がパソコンを強制シャットダウンしたかの様に途切れた。
=====
顔に何か冷たいものが触れた感覚で目が覚める。 目を開けてみると見渡す限り木々が生い茂っている森林に寝ていたようだ。
回りを確認し、自分が何でこの様な場所に居るを考える。
そして、思い出した。自分が暴走車の轢き逃げに合い、死んでしまたことを。それに伴い言い知れぬ違和感が俺を襲う。
「っ……。……おかしい。俺はた、確かに死んだはずなのに……。じゃあ何で俺はここに生きているんだ……」
思わず声がこぼれ落ちる。そして、更なる違和感が俺を襲う。自分の声だ。俺の声は平均的な成人男性と変わりない程度の声の低さだったはずだ。
だが、今さっきの自分の声は推していた声優さん(具体的
には初期F○Oの某ナスビちゃん、アズー○レーンの5船戦姉妹の中の人)の声に似ていた。
しかもその声色や口調はネトゲの自キャラで使用していたボイスその物だった。
ふと、事故に合ってから死ぬまでの間に聞こえた幻聴の内容が脳裏を過る。
「ま、まさかね…?」
あの時、あの声は何て言った? イメージ通りの身体を作成したと言っていた。 まさかな、と思いつつも自身の身体を確認する。
「ははは……マジかー……」
鍛え抜いたとかはないけど健康な一般男性程度の体つきだった筈の俺の身体は丸みを帯びた女性の体型に変わり、胸元の膨らみのせいで足元が見えなくなっていた。
それに幾千もの戦い(意味深)を戦い抜いた歴戦の盟友とも言える下半身のぶつも無くなっていた。
さらにだ、纏っている衣装には良く見覚えが有った。
そう、ネトゲで自キャラに愛用させていた黒染めの羽織に和風テイストの衣装を着た格好だった。
そして、更に頭にはイヌ科と思われるケモミミ、腰には8本の濡れ羽色の毛並みが特徴的な狐の尻尾が生えていた。
恐らく、俺の考えが正しければ瞳も紅色で狐の様な感じになっているのだろ。
「これは思い付く限りではあれしかないよなぁ……」
今まで得た情報で考えるとそれしかないのだ。 一度死に、目が覚めたら見覚えが無い場所に居て、常に妖狐のコスプレを好んでしていると言う設定の自キャラ、『カナデ』になっている。
「『TS転生』……しかもここまでの要素も相まって俺はどうやら『
自キャラである『十六夜楓』の名前を出した瞬間、何かが一気に身体から抜け落ちる気持ち悪い感覚と次の瞬間に何かに満たされる感覚が襲う。
「っ……。……なんだこの感覚?」
暫くして、気分が落ち着く。そして、何だか身体が更に軽くなった気がした。
だが今はそれどころじゃない。考えるのは後回しだ。
まずはこの未知の世界で死なない為にも何処まで自分が『カエデ』の力を引き継いでいるか確認しなければならい。
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数時間の時間が経ち辺り一面に斬り倒され、撃ち抜かれ、半ばから消失してしまっている木々が散乱している頃にはこの身体が何が出来るか出来ないかをある程度把握することが出来た。
ちょっとしたアクシデントで一人称が私に、口調やら仕草が変わってしまったが概ね問題はない。
「よし、取り敢えずこれで良しとしましょうか。
もし戦いに巻き込まれても『具現武装』で何とかなりそうですしね」
検証した結果、転生した私は幾つかの力を持っている事が分かった。
まずは今の私の根幹を成している『具現武装』。
これは自分のイメージを具現化するユニークスキル?と言う力だ。
これを利用して私に対して常に自分の心象に理想の『カエデ』像を具現化し、その理想像を全て自身にフィードバックする事が出来る。
これのせいで丁寧な口調になり、仕草も女性的になってしまった。
他にもゲームで使用していた武器も具現化することが出来る。
次に『魔素吸収』。これはアークスが空間に存在するフォトンと言うエネルギーを吸収し、自分のエネルギーとして使用できると言う設定由来の物だがこれも中々に強い。
この世界にはファンタジー世界で言うところの魔力に当たる魔素がフォトンと同じで空間にも存在してる。つまり『魔素吸収』は空間に存在する魔素を吸収し、自身の魔素として使用できる。
そして、『
自身や敵の時を数秒間止めたり、時間の流れを速くするしたり遅くすることが可能だ。
他にもルーサーと言うキャラは研究者(マッド)と言う設定もあるので思考の加速、解析能力を持っていたりする。
時間を止めるのだけは私が体内の保有魔素の総量を遥かに越えるため使用はほぼ出来ないと言っても過言じゃない。精々、某マスクドライバーシステムを用いた仮面ライ○ダー達みたいにクロックアップ染みた事が限界だ。
一方、『
例えば、欠損した物の時間を巻き戻し元に戻すことが出来ると言ったものだ。そして、自分と全く同じ存在を呼び出す事が出来る力でもある。
あと『平行存在』については良くわからなかった。発動したと言う感じはしたのだが近くに分身が現れなかったし、存在も感じ取る事もなかった。
『ダークブラスト』だが、これは強力な変身能力だ。発動すると人鳥の化け物と言った姿に変身し、所謂ビーム系の攻撃を使用可能になる。
ちなみに、狐にはスキル無しで任意で変身出来た。これは種族的に元々持っている能力らしい。
最後に、『人化』と言うスキルがあった。これは上級魔族である今の私を普通の人類に擬態出来るスキルだ。
実はなんの変哲も無いように思えて、その擬態能力は凄まじかった。ケモミミを人の耳に構成し直したり、尻尾を尾てい骨に構成し直す事ができる。
更には、魔人である証の魔素をほぼ完璧に隠蔽する事ができる。この世界を巡りたいと考えている私には凄まじく有用な能力だ。
ただし……使うと身体を物理的に再構成するのでめちゃくちゃ痛い。
数回使ったらエクストラスキル『痛覚無効』を習得出来てしまった程だった。
と言った具合に私は忠実に自キャラの性能を再現+α出来ていた。
「……さてと、これからどうしましょうか?
さっき、ダークブラストを発動して空を飛んだときに和風の集落が遠目に在りましたし、そこに先ずは向かうのもアリですね。となると……このままの姿で行った方が良いですよねぇ……」
とりあえずの目標を立てて私は歩き出すのだった。
個体名 カエデ・イザヨイ(十六夜楓)
種族・黒狐
※「狐ものがたり」(『宮川舎漫筆』に収録)に説かれている善狐のうちの種族の一つ。今作では鬼人族と同じく一部の地域では土着神としても奉れる事もある上級魔人の一つ
ユニークスキル一覧
『具現武装』
『魔素吸収』
『人化』
『フォトンアーツ』
『テクニック』
『
『
『
『
『
『ダークブラスト』
『■■な■闇』lock
備考
衣装(PSO2内基準)
アウターウェア『カンナギツバキ[Ou]』(黒色)
ベースウェア『火を継ぐ真衣・影[Ba]』
アクセサリー
『狐耳B』
『妖狐の尻尾』
ヘヤースタイル
『ダスクヘヤー』
髪
『黒髪』
瞳
『紅』
ボイス
『女性追加ボイス100(CV種田梨沙)』
使用武器
弓『フォルニスエスピア』
刀『光跡刀フロラシオン』
使用迷彩
『*艶武麗護刀』