【完結】コケダマですが、なにか?   作:あまみずき

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56 説明会の終わり

 説明の中断から、おおよそ三十分程。

 それだけの間を空けた休憩時間は、既に終りを迎えた。

 

 先程ユーリちゃんとの会話を不自然に切ってしまった事に、少々気不味いような気持ちを感じている中、戻ってきた話し合いの場。

 当然その中には、友達の縁を繋ぎ直したばかりの彼女の姿もあって……

 心配そうな、此方の様子に注意深く気を配っているような視線が、私へと向けられていた。

 

 その視線に、少し罪悪感のようなものを覚えてしまう。

 

 ……けれど、あの時に会話を打ち切らなければ、見せる必要の無い弱みを晒していただろうし、そうするほか無かった。

 彼女の前から姿を消した後の、空白の数分間。

 その間の私は一人誰も居ない場所へと姿を隠し、蹲るしか出来ない状態に陥っていたのだから。

 

 左脇腹を、そっと擦る。

 魔術でも誤魔化しが効かない、刺し抉られるような痛みは、もう静まり収まっていた。

 

 人型になった時から刻まれていた、傷跡のようなもの。

 それは時々痛みを私へと訴えていたけれど、最近では頻度も重さも段々と酷くなってきていた。

 

 内側から内臓を壊され侵蝕されているかのような痛みは、生贄の呪い。

 無知のまま神になりたいと邪神に願ったが故の、その代償。

 悪化していく傷の痛みは、まるで残された時間を示しているようで——

 

 システムとの繋がりに意識を向ければ、浮かび上がってくる制限時間(カウントダウン)

 

 ——まだ、大丈夫。

 全てを終わらせるまでは持つと、そう計算したのだから。

 

 

 

 

 

 

「——さて、全員揃いましたか?」

 

 まだ休憩から戻って来ていない人も誰かが呼びに行き、各自の椅子や敷物へと座る。

 雑談に興じていた人も、私たちが戻ってきた事で会話を止め、再び静かに耳を傾けていた。

 

 私たちの側も、欠伸を堪えきれないソフィアちゃんの様子以外は、以前と同じ並びに。

 

 唯一変わっていたのは、サジンと荻原くんの二人の状態。

 説明を中断する前の抱き合うような体勢から、個別に縛った状態へと変わっており、余った縄をシュレインが持っている事から、あの体勢では話を聞くのに不都合だと、改めて縛り直したのかもしれない。

 

 それでも、しっかりと拘束されているのは、特にサジンには縄が食い込むほどキツく縛っているのは、忍者というスキルを持つ事への警戒の現れか、それとも単なる信用の無さからなのか。

 

 ……後者のような気がするけれど、それは今に関係無いものだから置いておこう。

 

 そのほか個人的に注目してしまう点は、シュレインの傍に寄り添って密着しかねないほど近くに並んだ、ユーリちゃんとカティアの姿についてだろうか。

 学園での出来事からシュレインと、此処には居ないスーレシア姫も加えた彼女たちの間に、複雑な人間関係が形成されている事は知っていた。

 

 勿論、優柔不断なシュレインの気質によって、未だ誰にも手を出してはいないようだと、学園の監視や調査をしてきたので、私が思っているような関係では無いと理解しているんです。

 けれどその光景によって、遥か遠き前世のトラウマ部分が静かに刺激されて、イライラが沸々と膨張して心を荒ませていく。

 

 ただの創作話としてなら、許容しよう。

 その他にも、王族として複数の相手を持つ必要があるなど、そういった理由でなら一応納得出来なくもない。

 しかし、いざ現実として目の前で展開されると、少しばかり苛立ってしまうのであった。

 

 ——ハーレム野郎は、去勢されてしまえばいいッ。

 

 父親だと認めたく無い男は、いわゆる複数の女性関係を持っていた(オンナノテキ)らしく。

 大好きなお母さんが母子家庭(シングルマザー)へとなった理由が、そういった類のものであったが故に。

 こればっかりは私の根幹を形作る、根が深い価値観なのだった。

 

 

「ごほん。……では改めて、説明を再開します」

 

 さっきまでと同じように、努めて無機質に、説明するためだけの状態へ。

 内心の激憤を覆い隠す怜悧な仮面を被り、まだ判断する情報が不足し戸惑ったままの転生者たちと相対する。

 

 何処まで話したのかを記憶から振り返って、先程の最後の会話を思い出し言葉を紡いだ。

 

「何をすれば良いのか……という話ですけれど、基本的には特にありません」

 

 その言葉に困惑し訝しむ様子の転生者たち。

 いち早く反応したのは、休憩時間中に精神的に持ち直していたらしい工藤さんの声だった。

 

「ちょっと待って。特に無いって、どういう事なの?」

 

 険しい声色で口を挟んだ彼女は、最初から変わらない鋭い目のまま此方を見据えた。

 

「その言葉の通りです。エルフの里に軟禁されていた転生者たちには、特に何かをして欲しい事はありませんから。むしろ変な事をして掻き乱される事の方が、色々と手間になるので止めて欲しいくらいです」

 

 主に、サジンと荻原くんの方に目線を向けながら、そう告げた。

 そして視界の端では、あの変な縛り方を行っただろう女子たちが視線を泳がせている姿が、目に映るのであった。

 

 あれくらいなら、まあ本人たちには溜まったものじゃないけれど、問題にも為らない些細な事。

 むしろされると一番困るのは、周囲も現状も把握せずに一斉に逃げ出そうとする事に他ならないけれど……それは指摘せずにいた方が良いだろう。

 言われて気付いたから嫌がらせに動く、そんな事態は本心からご遠慮願いたい。

 

「変な事って……ふざけないで。そんな事しないわよッ!」

「ちょっと、待て。そんな言い方は……」

「——委員長、山田くん。そこまでにしといて」

 

 激昂しかけた工藤さんと苦言を呈してきたシュレインらの言葉を遮り、口を挟んできたのは今迄ずっと静観をしていたアサカさんだった。

 

「今は取り敢えず、話を聞いときましょう。聞けるときには、より多くの情報を得ないと。それが生死に直結だってするんだから」

 

 思いもよらぬ援護射撃に、私は内心で驚いた。

 彼女の声には相応の重みが感じられ、それが冒険者として生活してきた彼女なりの、経験則から紡がれた言葉だと察せられるようだった。

 

 彼女と彼について、知っている事はそう多く無い。

 せいぜい、冒険者として活動し人魔大戦にも参加していたなど、殺人経験も含めた結構な場数を踏んだらしいという事を、知っているだけである。

 

 同じく行動を共にしてきたクニヒコの方はというと、言われて初めて気付いたとばかりの反応をしている模様で……

 その事から、その手の交渉事は主にアサカさんが行っていたのだろうなとも、二人の様子の違いから読み取れてしまうのであった。

 

「続きをお願い。その言い方だと、外から来た私たちには何か有るような言い回しよね?」

 

 不承不承ながらも、気勢を沈め座り直す工藤さんとシュレイン。

 アサカさんの発言は至極真っ当な正論であるので、個々がどう受け取ったにせよ反対する言葉を呑み込んで納得し、けれど不満げに口をキツく噤んでいた。

 

「はい、その通りです。ですがその前に、これからの転生者たちの処遇について話しておきます。当面の間は、私たちが責任を持って保護します。住む場所も食事も贅沢などは約束出来ませんが、困らない範囲で面倒を見るつもりです。少なくとも、エルフの里での暮らしより酷くなる事は無いと保証しましょう」

 

 第十軍で管理している土地、私やアリエルさんの個人資産、それと魔術などによる強引な解決策など、多少の問題なら無視出来る程度の余裕はある。

 いざとなれば、今回の協力者である神言教側の手助けを仰いでも良いし。

 

 その私の発言に、囚われていた転生者たちの誰もが安堵の息を溢す。

 中には、自給自足生活はおさらばだとか、外の世界ってどんなのだろうとか、解放に喜ぶ言葉や未知への期待の声なども聞こえていた。

 

「おい、お前たち。前に話してやった事忘れたのか? 仮に彼女が話した事がホントだとしても、外の世界はそんな優しい場所じゃないつーの」

「そうですね。最低限、身の回りの事は各自でして貰うと思います。そこまでは面倒見切れませんから」

 

 クニヒコと私の苦言と忠告にも、何処吹く風な転生者たち。

 

 保護するとはいえ、彼ら彼女らは別に要介護人などでは無いのだから。

 そんな甘えた人間が居たとしたら、泣こうが喚こうが容赦無く放り出す。

 

「それと、希望があればそれに沿った形で答えます。帰りたい場所があるのなら送り届けますし、一人出て行きたいと言うのならそれでも良いです。……流石に無いとは思いますが、何も無くなり手助けしてくれたエルフもおらず、周囲には魔物が生息する場所でも問題無いと言うのでしたら、此処に残るという選択肢も構いません」

 

 最後の言葉には、転生者たちの幾人かが同じ様に、首を横に振っていた。

 

「苔森ちゃん……今、エルフも居ないって」

「……先生には酷な話ですが、誰が裏側に通じたエルフなのか分からない以上、里に居たエルフは先生を除いて、文字通り皆殺しにしました」

「そん、な……。いえ……当、然ですよね……」

 

 ザワリと揺らぐ空気。

 転生者たちにも関係がある話で、たとえ軟禁されていたとしても接する機会のあるエルフの人も居ただろう。

 そのエルフらも死んでいると聞かされれば、冷静でいられない人も数多く。

 

「そこまでやるか!?」

「やりすぎよっ!」

 

 静かに受け止める先生とは対照的に、加熱していく転生者たち。

 

「あーもう! うっさいわねぇ。さっき苔森が理由説明したでしょう? エルフは一人残らず死んだの、あなたらはそれだけ知ってれば良いのよ。気にすべきは、この後の自分の生活。此処で過ごしたあれこれなんて、私らには知った事じゃないのよ。責任どうこう正義どうこう、聞く気なんて欠片も有りはしないわ」

 

 指向性を持った冷気が吹き荒れる。

 その発生源はソフィアちゃんで、彼女はもう我慢ならないといった様子で騒ぎ立てる転生者たちを一喝した。

 それらに晒された転生者たちは、急に襲ってきた寒風と威圧の籠もった背筋が凍えそうな声に、強制的に萎縮させられ、血の気の失せた青褪めた顔で体を震わせていた。

 

「抑えて、ソフィアさん」

「何よ? そもそも私らに説明する義理なんて無いのよ。前世の(よしみ)で親切に教えてやっているのに聞く気が無く邪魔するってのなら、こうして黙らせるまでよ」

「ソフィアちゃん」

「はいはい、説明してるのは苔森だものね。邪魔したわ」

 

 手をヒラヒラと振り、もう何もしませんとアピールするソフィアちゃん。

 

「まったく……口を開けばギャーギャーギャーギャーと……。そんなに嫌なら、地球にでも帰れば良いじゃない」

 

 心底喧しいと嫌悪感を露わにするソフィアちゃんは、最後の最後で特級の爆弾を落としてしまうのであった。

 

「え?」

「は?」

「あ……」

 

 瞬間的に凍結する空気。

 そして次の瞬間には、聴き逃がせないと高々に激発する声が。

 

「帰れるの!?」

 

 その工藤さんの声に合わせて、期待に満ちた視線で大騒ぎとなる他の転生者たち。

 ソフィアちゃんがさっきの言葉を白ちゃんの方を向きながら言ってしまった事で、それが誰なら可能なのかと、教えてしまっていた。

 

「……お仕置き、確定」

「まって、今物凄く嫌な感じがしたんだけど!?」

 

 是非も無し。

 こればっかりは、私でも擁護出来ない。

 

 喜び興奮する人や感極まって涙ぐむ人も居る中、私と白ちゃんは顔を見合わせて——瞬きの内に意見を擦り合わせた。

 そして——

 

「無理、です」

「……今は、それは出来ません」

 

 確かに、白ちゃんなら地球にも行ける。

 けれど、今の転生者たちでは地球へと連れて行けない理由があったから。

 

 この世界には、システムがある。

 それは星を再生させるのが最終目標ではあるが、付随して後々エネルギーを回収する為に、魂を育てる機能がある。

 それが、ステータスであり、スキルである。

 

 しかし、本来であるならば転生者たちには適応されない法則でもあった。

 なにせ私たちは、別の星である地球からやって来た、よそ者であり部外者ともいえる魂である。

 なので、システムが管理する魂の対象外であり、ステータスもスキルといった恩恵も本来ならば存在していなかった。

 

 それを解決していたのが、n%l=Wのスキルだった。

 システムと紐付けを行い、此方の法則に転生者の魂を適合させる為のスキル。

 

 このスキルがあるからこそ、転生者たちがシステムの恩恵を得られるようになっていて、それと同時にシステムと完全に馴染み切らないように制御している効果もあった。

 完全に馴染んでしまうと、この世界で循環している魂の一つだと認識されてしまい、システムによって未来永劫、その魂は囚われてしまう。

 そうならないようにn%l=Wのスキルは魂を分類分けして管理させ、それを防いでくれている訳であった。

 

 だからこそなのか、n%l=Wのスキルは、魂の根幹部分と密接な位置にて接続されている。

 システムと転生者の魂を繋ぐものであり、正しく言うのならスキルなどでは無く、システムへと接続する為の変換器とでも言うような代物であるから、そういう構造をしていたのであった。

 

 これを残したまま、システムの外へと連れ出すのは、色んな意味で危険性が伴ってしまう。

 

 単純に、システムの補助が無くなるので魂に付加されたスキルなどが機能しなくなり、余分な物を抱えた魂が、その重みに耐えきれるかどうかが、一つ。

 次に、予期せぬ誤作動を起こす可能性だってある。

 機能しないがあればその逆、暴走する可能性だって無いとは言えないのだから。

 

 そしてこれが一番の要因なのだが、無理にシステムの外へと連れ出すと、魂が自壊する危険性が非常に高いというのが、転生者たちをこの星から逃がす事が出来ない理由だった。

 魂に付加されているそれらが急に消失した場合、反動として強烈極まる負荷が掛かるだろう。

 それは、普通の魂では先ず耐えきれないと、私と白ちゃん二人での魔族領に居た頃の検討会にて推察と予測がなされていたのだった。

 

 一応、外そうと思えば、それは不可能では無い。

 至難の技と表現するのも生温いほど、極めて繊細な作業を求められるだろうけど相応の時間さえ掛ければ、飛び抜けて魂への干渉性に秀でている私でなら、何とか解放出来そうだとは思う。

 

 けれど、そんな事をするには時間が幾ら有っても足りないし、そんな悠長な事はしてられない。

 システムを解体し大元から接続を切ってしまえば、それらの問題は全て解決するのだから、案の一つとして考えた以上には、全く考えてもいない事柄であった。

 

 

 そのような事をソフィアちゃんが言ったのは、時々地球へ行っていた白ちゃんが持ち帰った地球由来の物品を見せたり、いつかの過去にて帰りたいかと聞いたせいだろう。

 けれど現時点では、イタズラに混乱させるだけの不必要な情報だった。

 

 私は、それをどうにか矛先をずらし誤魔化す為に、それらしい理屈と言い訳を瞬時に考え、口を開いた。

 

「おとぎ話のように転移が可能な、空間魔法というものがあります。それを極めれば、どうなると思いますか?」

「……あぁ、そういう事か」

 

 これ以上余計な事は言うなと、ソフィアちゃんたちには目で釘を刺しておく。

 ラースくんが、それだけで察したのか小さく呟き、上手く合わせてきた。

 

「そこの白さんは、空間魔法が得意でね。大陸中に潜むエルフら狩り出す時にも、僕たちを世界中へと送ってくれたんだ」

 

 その言葉に新たな動揺も生まれるけれど、大の混乱を収める為に意図的に無視して続ける。

 

「僕たちが今日この日の計画を実行出来たのも、白さんの功績が大きい。その彼女なら、いつの日にか地球にだって辿り着ける。これは、そういう仮定の上での話だよ」

「しかし、そう簡単なものでは無いと思って下さい。現に私たちが、星から逃げ出さずに、戦って星を救う方を選んだことからも——理解頂ければと」

 

 私とラースくんの言葉に、一気に醒めて沈静化する空気。

 どうにか最悪の展開にはならずに、煙に巻けたようだ。

 

 しかし、それでも希望はあると、色めき立つ転生者たちの姿もちらほらと。

 

「予め言っておきますが——空間魔法を極めた上で、システムの補助も受けられない先の先を行うという、普通に考えて到底人の寿命では成し得ない、机上の空論にも似た可能性である事を憶えておいて下さいね……」

 

 その唯一の例外が白ちゃんなのは確かだけど、そもそもからしてシステム頼りの魔法ではなく、権能混じりの“魔術”である。

 それは他人には真似なんて不可能な、白ちゃん固有の超高等技術であった。

 

 

「本当にごめんなさい変な希望を抱かせてしまったようで。再三言いますが、こればかりは確実な保証など、何処にもありませんからね? あくまで私たちならという話ですし」

 

 その釘刺しにも、本当に理解しているのか怪しい転生者も多いなか、話を続ける。

 まあ、システム解体後でなら帰還も可能ではあるから、その時それでもなお帰りたいという人がいるのならば、個人的には勧めたくは無いけれど白ちゃんと相談しよう。

 

 この問題が一応の纏まりを見せたことに、内心で深く安堵した。

 正直、この話はとても気分が悪くて悪くて仕方がなかった。

 向こうでは既に死人(しびと)で、此方では人から外れた存在が故に——私は、帰る気など無いのだから。

 

「……さて、説明に戻ります。これからの事については、保護している期間中に世界の情勢とかを学んで、今後の身の振り方について考えると良いと思います。私たちに協力するのか、自立を選ぶのか、それとも拒絶を選ぶのか……選択肢は無数にありますし、どれを選んでも私たちはその選択を尊重しますから」

 

 これで、エルフの里に囚われていた転生者たちに向けた、大まかな説明は終了。

 後は、それ以外の転生者に向けた説明が残っていた。

 

「そして、私たちが個別に協力をお願いしたいのは、支配者スキルというものを所持している人に対してのみです」

 

 この中で、それを持っている先生とシュレインに対して、一瞬だけ気配を向けた。

 その無言の指摘に二人は反応を見せ、微かに肩が動く。

 

「七つの大罪と美徳、それらの名前を冠した十四のスキル。それこそが支配者スキルです。漫画やアニメなどの娯楽文化や、あちらの宗教について知識がある人なら、少しは分かるかと」

 

 先生は、以前白ちゃんが持っていた癒し手たる救恤のスキルを。

 シュレインは、蘇生を司る慈悲のスキルを。

 この二人は、それぞれ所持していたから。

 

「なので、これらのスキルを持つ人は……後でも良いので名乗り出てくれると嬉しいです。それはこの星を救う為にも、とても重要な意味を持つものなのですから」

 

 これで、言いたい事は、全て言い終わった。

 後は、彼ら彼女らの選択によって成される事。

 

「今日は、此処までで一旦終わりにしましょうか」

 

 そういって彼ら彼女らに背を向けた。

 

「——白ちゃん、行くよ」

 

 踵を返して振り向き、私が想う人へと声を掛け退出しよう誘った。

 私の背に、視線が突き刺さるのを感じていたが、それには取り合わず言葉だけで答える。

 

「別に逃げたり、放り出したりなんかしないですよ。何かあれば、この野営地に詰めている人たちへとお願いして下さい。細かな問題なら対応するよう言い含めておきますし、私たちに用があるのでしたら取り次いでくれますから」

 

 立ち上がった白ちゃんと共に、この場から去っていく。

 

 私たちの行動を見て、これで漸く潮時かと後に続くソフィアちゃん。

 ユーゴーも少し遅れて歩き出し、唯一ラースくんだけが立ち止まって迷っているようだった。

 

 その更に背後、残された転生者たちは、突然の打ち切りに困惑しているようであり、息が詰まる話し合いの終了に安堵しているようだった。

 あれなら、まあ——今のところ大事となる問題には発展する事も無いだろうと感じた。

 

 そして、説明中ずっと白ちゃんの視線が背中に注がれていた事に気付いていながらも、それには触れず普段通りの距離感で並び歩く。

 この瞬間だけ余計な周囲の雑踏は、意識の外へと霞んでいった。

 

 ——なんだか、やけに白ちゃんの事となると敏感に察知してしまうなぁ。

 

 これが、恋を自覚したからなのかと思いながら、私と白ちゃんは去っていくのであった。

 

 今は指摘なんかしない。

 それで変な空気になるのは嫌だし、もしそれで白ちゃんの本心などを知ってしまえば、普通ではいられないから。

 

 けれど……いつかは聞きたいな。

 白ちゃんが私の事を、コケちゃんという人物の事を、どう思っているのかを。

 

 ねえ、その時には——素直に教えてくれますか? 




細々とした加筆修正の改訂作業は、順次行っていく予定です。
具体的には、初期のコケちゃんの口調や、微妙な表現の修正などなど……

そして区切りまで、残り数話に……
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