【完結】コケダマですが、なにか?   作:あまみずき

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14巻EX2にて支配者スキルについての説明がありましたので、それを参考に一部支配者スキルの説明を変更。
……書いた当時は知る由も無かったのですが、いくつか合っている部分があって自分でも驚きです。(勤勉獲得スキルが思考超加速であったり、精神系スキル熟練度など)

スキルについては、一部変更、もしくは原作とは異なるもののまま変更せずにします。
でないと既に書いた内容と矛盾しますからね。


準備段階 —シュレイン3—

 場所を移し、宇宙船の格納庫といった無骨で広々とした空間にて。

 甲板から直接入って来れるこの場所には、俺のほかにカティアやユーリ、それと京也ことラースと竜形態のままのフェイの五人が居た。

 

 そこで俺は、アリエルさん達から知り得た情報を全員に共有し、意見を求めた……のだが。

 

『へぇーふぅん、ラースねぇ?? 確かそれって怒りって意味じゃなかった? ねぇねぇ笹島くん自分の名前にアイタタたぁって名前付けたのなんで? ねぇ、何でよ??』

「……前世の名前も今世の名前も、名乗るのに相応しく無いと思っているからラースって名付けただけだよ。そんなに深い意味や理由は無い」

 

 フェイが、ラースという名前についてニヤニヤとした口調で弄り倒す。

 そのからかいに、京也は不機嫌そうな顔で理由を答えていた。

 

 ラース、か……京也には合ってない感じがするな。

 俺は、京也は怒りをコントロール出来る奴だと思うから。

 前世での京也は、仮面だとしても表面上怒っているところは一切見たことが無かった。

 そんな京也が怒り狂うほどの過去の傷——その怒りが必要無くなるまで、俺はお前の事を支えていこうと改めて強く思った……まあ今何をしてやれるのか判然つかないけどな。

 

『ほほぅ、今世の名前もあると。じゃあ、そっちは?』

「…………ラズラズ」

『——ッ————くっ——似合わっ————ッ』

 

 ツボに入ったのか、巨体をくねらせながら床面をバシバシ叩くフェイ。

 竜の姿のままなので、手を打ち付けるたびに地震のように周囲が揺れて危ないので注意する。

 

「フェイ、そこまでだ。それと人の名前で誂うなよ。今世での京也の両親が付けてくれた、大事な名前だろうに」

『——ぅ。……ごめん悪かったわ、謝罪する』

 

 俺の言葉で冷や水を浴びせられたかのように冷静さを取り戻して、気不味げに京也へと深く頭を下げるフェイ。

 その謝罪に京也は大きく嘆息した後、言葉短く許すと告げた。

 

「ラズラズ……たしか、ゴブリン族の命名規則はそんな感じでしたわよね」

「そうだよ、遥か昔のゴブリンの英雄にあやかって、音を二度重ねるんだ。あぁそれと、ゴブリンといってもこの世界のゴブリンは——」

「高潔な武士気質みたいなんだってね。物語にもなってるから色んな意味で驚いたよ」

『いつだったか、シュンが野外活動でゴブリンと死闘するハメになった事もあったわねー』

 

 いわゆる地球上の創作に出てくるゴブリンとは全くの別物。

 山奥とかで小さな村を作り、狩猟と農耕の自給自足の生活を営む修験者のようで——あのときは様々な不幸が重なって流されるがまま戦闘が勃発することになり、マジで死ぬかと思った。

 

 なんで戦闘中に覚醒を起こして、技のキレが跳ね上がりステータス差を埋めてくるんだよ。

 まるでバトル物の主人公のように、色々と理不尽な存在だった。

 結局、決着は付かずにうやむやに終わったけど、あれはあれで良かったと今でも思う。

 そのまま続行していたら身命を賭け鎬を削り合い、どちらかが死ぬまで終わらなかっただろう。

 

 ……って、今はこんな話している時じゃないだろ。

 

「親睦も大事だけどそれは後にとっておこう。大事なのは、これからどうするかって事。俺たちの選択が、この世界の未来を決めるんだから」

 

 既に大まかな事情と裏を明かして、アリエルさん達が語った結論は伝え終えている。

 

 この勇者剣か、全力の京也でなければ、翠魔レルネーに対抗できない。

 そして、翠魔レルネーをどうにかしなければ全人類が滅ぶとなれば、俺自身としては立ち向かうことに異存はない。

 

 しかしだ——俺一人では辿り着けやしないのだから、仲間みんなの意志を確かめて協力を願わなければ、始まりにも立てない。

 だからこそ、こうして誠実に全てを明かし、真摯に頼み込んでいる訳だが、なんだか俺だけ一人カラ回っている感じがするのは何故だ? 

 

「何故って……どうして私らが断ると思ったのよ、シュン」

「そんなの今更です。そもそも、嫌だったら王国の時から一緒に付いてきたりしないよ」

『そうそうー。泣き虫でヘタレな勇者様は、アタシらに素直に支えられなさいって』

 

 カティア、ユーリ、フェイは、三者三様の言葉と雰囲気で何処までも力を貸すと肯定していた。

 その温かな心が胸の奥へと染み入り、確かな絆となって光を灯す。

 

「京也は……」

「シュンに言われずとも、僕は行くつもりだったさ。けどまあ、可能性は一つでも多いほうが良いからね。——行こうか、親友(シュン)

 

 眼前に立つ穏やかな顔を浮かべた親友に——俺は笑みで返した。

 

「あぁ、行こう! 親友(キョウヤ)! 俺たちの未来の為に!!」

 

 掲げられた拳を、力強く打ち合わせる。

 なんだか、これが初めて京也と心から分かり合えたような、そんな誇らしさと昂揚感に満ちた、むず痒くも嬉しい友情の確かめ合いだった。

 

「——みんな、一緒に未来を勝ち取るぞッ!!」

「「「「おおっ!!」」」」

 

 俺の掛け声に、響くような声で一斉に応えるみんな。

 心なしか、とても温かい。

 さっきまでの骨の髄まで凍えるような寒さは、もう何処にも感じられなかった。

 

『なら、これからに向けて最後の準備ってとこね』

 

 結論は出たと、フェイが次の話題へと流れを変える。

 それを受けてカティアとユーリは、顔を見合わせて静かに頷き合う。

 

「うん、そうですわね……このままですとフェイや京也はともかく、私たちは足手まといになってしまいますから」

「ならカティアさん——今こそ私たちに出来ることを」

「ですわね。ユーリは()()()、私は()()()で」

「どんな効果でも、恨みっこなし。得た力で全力を尽くすこと」

 

 お互いにしか分からない何かを交わし合い数秒後、二人は無言のまま大きく首肯した。

 そして更にユーリは俺の手を取り、両手で包み込むように握った。

 

「ユーリ……?」

「神言教の文献にあったんだけどね。聖女が真の意味で認められる為には、勇者の称号を持つ人と儀式する必要があるの。さぁシュン君、汝を我が聖女に任ずる——そう言って?」

「えっと……汝を我が聖女に任ずる? ————うわっ!?」

 

 そう言った途端、俺とユーリの間で湧き上がる光の粒子。

 それは鎖のように絡み合い、幻想的でありながらも絶対の楔のように俺たちを結び合う繋がりが生まれたような感じがした。

 何となくだが、これはフェイと交わした契約とも似ている。

 お互いの状態が分かるというか、無形の通信回線が二人を結んでいるようだった。

 

 そこから伝わってくるのは……胸の高鳴り? 

 

「あっ——これちょっと恥ずかしいかも。慣れないと余計な事まで伝わりそうだね」

「あ、あぁ……本当に合っているのか、これ? いや確かに何か起きた訳だけどさ」

 

 何処となくお互い気まずい雰囲気になるが、それを横から大きな咳払いが聞こえた事で、空気は一蹴されて霧散した。

 

「でしたら、私たちを鑑定してみれば、どんな力を得たのか分かりますわ」

 

 そうカティアが言うので、俺は二人のことを鑑定してみた。

 するとそこには、見慣れないスキルと称号が——

 

 カティアの方にあったのは《純潔》というスキル。

 その効果は、絶対的な結界能力。その防御性能は神龍結界をも越えるとあった。

 さらに称号ともなると——

 

《純潔の支配者:取得スキル「腐蝕無効」「親愛」:取得条件:「純潔」の獲得:効果:抵抗が大幅上昇。防御系、耐性系スキルの熟練度に+補正。支配者階級特権を獲得:説明:純潔を支配せしものに贈られる称号》

 

「凄いな……」

「でしょう? 大当たりですわ。これなら盾役として、シュン達を守ることが出来ます」

 

 そして、ユーリの方はもっと凄かった。

 《勤勉》という指定したスキル一つだけを超強化するスキルと、称号で得たらしき複数の強力なスキルが新たに並んでいた。

 

《勤勉の支配者:取得スキル「思考超加速LV10」「真摯」:取得条件:「勤勉」の獲得:効果:MP、SP(赤)、抵抗の各能力上昇。精神系スキルの熟練度に+補正。支配者階級特権を獲得:説明:勤勉を支配せしものに贈られる称号》

《聖女:取得スキル「奇跡魔法LV1」「勇者LV1」:取得条件:勇者と誓いを交わした癒し手であること:効果:治療の効果が超大幅に上昇する:説明:勇者に寄り添い世界を救おうとする者に贈られる称号》

 

「なんか、もう……言葉に出来ないな。俺要らないんじゃないか?」

「そんな事無いってば。勇者剣を使えるのはシュン君だけなんでしょう? なら私は、どんな怪我でも必ず治してみせるよ。それが勇者を支える聖女のあるべき役割なら」

 

 二人が獲得した、七美徳の名を冠する支配者スキル。

 これらのスキルを得ることが出来たのは、先程の翠魔との戦闘によってレベルアップを果たしていたからこそ、スキルポイントに余裕が生まれて支配者スキルの獲得に至ったのだという。

 

 なら俺はと考えた時——浮かんだのは、慈悲を獲得したときに合わせて得たスキル。

 その名を改めて見て、思わず苦笑が漏れた。

 

 ——そっか、俺の答えは最初から此処にあったのか。

 

『はぁぁ……ならアタシもやるしかないわよね。シュンその袋よこしなさい』

 

 カティアとユーリの様子を見てフェイは何かを決意したかと思うと、俺が持つ空納が付与された革袋を大きな鋭い爪で指差した。

 

「え? あぁ……」

『えぇっと……前に大迷宮で見た時には、たしか……感覚に従って…………あったわ、これね』

 

 そのままフェイへ手渡すと、器用に爪で掴みながら中身をひっくり返した。

 その中から、ある朱い液体が入った小瓶を取り出した。

 

 って——確かそれはっ! 

 

「待て、フェイ。それは下手に使えば死ぬかもしれない危険なポーションで——」

『ごくん』

 

 制止する間も無くフェイは、瓶ごとその朱い液体——ネクタルを飲み干してしまった。

 

 ネクタルの効果は、一時的な不死性と神の如き力を得ること。

 だけど資格無き者が飲めば待っているのは死なんていう、恐ろしい代償も持ち合わせていた実質使用不可能なポーションであった。

 それを、フェイが躊躇すること無く飲んだということで。

 

「大丈夫なのか、フェイ!?」

『アタシの直感が今これを使えって言ってたのよ——お、おぉ?? あっ、ゴメン少し眠るわ……できる、だけ…………早く起きる、から……』

 

 そう最後に言い残すや否や、フェイの身体から生えるように白桜色の結晶が、隙間無く覆い尽くしていく。

 増え続ける結晶は、この広々とした格納庫を埋め尽くすかのようにドンドン膨れ上がっていき、やがて天井スレスレと格納庫の半分を占める大きさにまで成長して、ようやく膨張を停止するのであった。

 

 以前にも、似たような事があったのを憶えている。

 これが進化の為の待機状態だと分かっていても何が出来る訳でもなく、その光景を俺たちは呆然と見詰めるしかなくて——

 

 

 

 

 ——時同じく。

 フェイルーンが神蜜(ネクタル)を飲み込んだのと同じタイミングで、二人の神格は脳裏に響いた囁きに対応を求められていた。

 

「なんだと? 新たに龍へと昇格した者がいるだと? しかしこれは……」

 

 システムの構造的に、龍種は全て黒き龍神の眷属として識別され、彼の元に通知が伝達される。

 そして、システムより求められるのは——名付けの儀。

 

「地竜に生まれた転生者の子か……しかし既に名前があるのでは、ならば——命名、オスト」

 

 龍神は、かつての同胞の名を記憶から引っ張り出し、美しき純白の龍鱗を持っていた龍から名を与えた。

 名付けによって、眷属としての繋がりを確定させる為でもあるが、これを行う事により正式に龍として進化が始まるのだ。

 

 

 

 

 ——さらにそれは、今システムに囚われている少女にも届き。

 魔術陣に磔にされ意識が殆ど無くとも、白竜が進化の際に取り込んだエネルギーの質に反応して無明へと堕ちた意識に僅かな光が戻る。

 何故なら神蜜(ネクタル)に宿るエネルギーとは、彼女が神に至る時に眷属に流してなお溢れた、材料に縁があるというだけで濃縮されてポーションに宿ったという、彼女と同質の力の結晶なのだから。

 

 そのほんの僅かに灯った光が、フェイルーンの進化をさらに上位の存在へと至れるよう、強烈に後押しをする。

 生命を滅ぼすために前もってシステムに大量に注がれたエネルギー、それさえも逆に利用して、翠の乙女は白竜を神に近き存在へと、強くより強く進化させるのであった。

 

「……承認。——進化プロセスに介入。実行:超越進化、対象:フェイルーンオスト。記録参照、命名——オウェイシス。————進化先を、光龍フェイルーンオストオウェイシスに変更します。最優先処理として、超越進化を実行開始」

 

 システムが光り輝き、魔術が唸りを上げる。

 これにより、取るに足らぬちっぽけな(トカゲ)は、最も神に近き光を統べる気高き(ドラゴン)へと新生する。

 

 システムに記録された、名付けに籠められた想いを参照して彼女に新たな名前が与えられた。

 

 その名は、白き月と砂漠の泉。

 生まれたばかりの地竜に名付けた少年は、とあるゲームに出てきた地名から名前をつけた。

 何処までも続く砂漠の世界。

 その中心にはオアシスがあり、幻想的な夜景は砂漠の中にひっそりと存在する楽園とも。

 

「…………お願い、どうか」

 

 ——世界を壊してしまう前に、止めてほしい。

 生命の無い、渇いた星になんてさせないで。

 

 

 そして、始まる龍への新生——

 本来ならば急激な進化は、フェイルーンの身体も魂にも多大な負荷を与えてしまう。

 魔物の進化が段階を踏んで上位種になっていくのも、そのときそのときに合わせた器と魂に昇華させていかなければ、肉体と魂の力のバランスが崩れて不具合を起こすからだ。

 

 その末路は即死ならまだ優しい方で、魂の崩壊すらもありうる。

 収まらぬ過ぎた力も、中身の足りぬ大器も、総じて均整を欠けばただただ壊れ落ちるのみ。

 

 しかしその齟齬をシステムに囚われている神の持つ力、魂に特化した性質によって適時修正され引き上げられ強引な後押しを受けながら、白き龍は進化の階段を恐ろしい速度で駆け昇っていく。

 

 ——その力は、システムの恩恵から外れる一歩手前まで。

 

 ——その体躯は、優美に天を泳ぐ白光の大河のように。

 

 ——その魂は、真なる龍へと至れる資格を得るほどに。

 

 此処に、新たなる超越者が一人。

 光龍フェイルーンオストオウェイシス——二柱の祝福を受け、新生を果たすのであった。




*称号関係・支配者スキル関係は、独自設定です。
*フェイルーンの進化は独自設定です。
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