【完結】コケダマですが、なにか?   作:あまみずき

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2 森羅万象の実力と罠(22/04/11加筆)

 考えを巡らせること、しばらくして。

 場所は変わらず、家主さんこと巨大なコケダマの背の上。

 

 既に何日か経過して、考えるだけの時間は腐るほどあり、おおよそステータスなるものの意味を理解した。

 基本はゲームなどで見るキャラクターの能力を数値化したものと一緒。

 何故こんなものがあるの?という疑問は、現状では見当もつかないので考察などは後回しにし、理解出来た性質をそういうものだと受け止めて考えていこう。

 

 まずHP、これは個々が持つ生命力を表している、読みはヒットポイント。

 これがゼロになれば、恐らくだけど死亡する事になる。

 数値の増減に、外傷の有無だけでは無く出血や病気なども含まれるのかは不明だけど、常に気を付けておくべき内容なのは間違いない。

 

 MP、読みはマジックポイントで、魔力を表しているらしい。

 魔力は魔力としか出ず、その正体については鑑定でも知ることは出来なかった。

 ただ、物語の設定にならうのであれば、多分魂の力とかと呼べるものだろう。

 

 SP、スタミナポイント。

 数値が二種類あって、黄色の数値は瞬発的な運動などで消費するSPであり、要はどのくらいで息切れするのかという目安の数値。

 赤色の数値は、満腹度というか貯蓄してある体力の事らしい。

 つまり食べれば増えて、減っていけば餓死までどれくらいという値である。

 

 そして、五つの項目。

 攻撃、防御、魔法、抵抗、速度と分類されて表記されている数値は、いわゆる得意分野や能力がどれだけ秀でているのかを明確に示す項目だった。

 

 攻撃が高ければ、それだけ物理攻撃で与えるダメージが大きくなり。

 防御が高ければ、それだけ物理攻撃で受けるダメージが少なくなり。

 

 魔法が高ければ、魔法を扱うにあたって基準の出力を満たせる事を示していて。

 抵抗が高ければ、それだけ魔法による攻撃から受けるダメージが少なくなり、特殊な攻撃などでも、この数値が身を守るのに影響しているらしい。

 

 速度が高ければ、全力で動いた時の速さの平均値も高くなる。

 計算式はまだ良く分かっていないけれど、黄色のSPが満タンの状態から全力疾走して尽きた時に移動した距離と速度を想定して、数値が算出されているのではないかと思う。

 

 スキルとは、いわゆる特殊能力。

 名前の通り、このスキルがあればこんな事が可能ですよという指標であり、自動的に効果を発揮しているものもあれば、任意で使うものもある。

 

 暗視とか耐性とかは自動で付けっぱなしになっているし、一応オンオフが出来るみたいだけど、特にメリットが無いので常時オンの状態で良いと思う。

 鑑定は、任意で使うスキルの筆頭とも言える。

 使おうと思ったら、説明しがたい感覚だけれど発動させているっていう感覚があり、その感覚を元に自分の意志で操作している感じ。

 

 他にも称号などもあり、そっちは何かしらの効果と、称号の獲得時にスキルが貰えるという内容らしいけれど、今は置いておこう。

 

 

 うーん、……よしまずは手持ちを把握しておかないとね! 

 というわけで、なんだか凄そうなスキル、《森羅万象》を使ってみよう。

 

《森羅万象》起動! 

 

 ん? え、いたい???? 

 いたっ、くぅああぁぁぁああぁぁ、頭がぁぁ……………………

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「外道耐性LV1」を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「気絶耐性LV1」を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「森羅万象LV1」が「森羅万象LV2」になりました》

 

 

 ……はっ、気絶してた!? 

 

 なにが起きたのか、よく憶えていない。

 けれど、色々な情報が一気に頭に流れ込んできて理解する前に意識が飛んだような……

 

 気絶する寸前にスキルをOFFにしたのかそれとも自動で止まったのか、今はあの膨大な情報が止んでいる。

 だけど、処理しきれないほどの雑多で莫大な情報が使うたびに毎回襲ってくるとなると、とてもじゃないけれど使えないスキルになってしまうんだけど……

 

 ん? なにか増えている。

 

《外道耐性:外道属性に対しての防御能力が増加する》

 

 さらに鑑定っと。

 

《外道属性:魂を直接犯す属性》

 

 こわっ! 

 なにこれ、ヤバそうなことしか書いていないのですけど。

 

 これを取得したのは《森羅万象》を起動してからなので、つまり使うと魂にダメージ負っていたということに……? 

 

 封印する……? 

 

 いやでもなぁ……うーん。

 

 

 ︙

 ︙

《「外道耐性LV10」を取得しました。残りスキルポイントは54800です》

《条件を満たしました。スキル「外道耐性LV10」からスキル「外道大耐性LV1」に進化しました》

 ︙

《「外道大耐性LV10」を取得しました。残りスキルポイントは50300です》

《条件を満たしました。スキル「外道大耐性LV10」からスキル「外道無効」に進化しました》

 ︙

《「気絶耐性LV10」を取得しました。残りスキルポイントは45800です》

《条件を満たしました。スキル「気絶耐性LV10」からスキル「気絶大耐性LV1」に進化しました》

 

 ヨシ! 

 もういっかい挑戦してみる! 起動! 

 

 ……ッ。

 …………すごい。世界って、こんなにも、緻密で複雑な。

 

 まだ頭痛は結構するけれど、気絶大耐性もあって耐えられる。

 それでも偏頭痛を酷くしたような痛みを感じるけど、気を失うこと無くいられる。

 この痛みは、膨大すぎる情報を処理できないから感じる痛みであって、今自分の魂に悪影響から守る力が貼り付けられており、それによってダメージを無効化しているのがわかる。

 そして、私の周囲に居るコケダマたちの動き、空気の流れ、熱、気配、どこまでも続いているかのような広大な迷宮、空間のゆらぎ、そして魔力。

 

 ほとんどの情報を処理できていないけれど、世界と一体となったかのような感覚は、ちっぽけな私が世界の真実を解き明かしたかのような、そんな全能感を与えてくれる。

 

 ……楽しいなぁ。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「森羅万象LV2」が「森羅万象LV3」になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「集中LV1」を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「並列思考LV1」を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「演算処理LV1」を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「苦痛耐性LV1」を獲得しました》

 

 ︙

 ︙

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「森羅万象LV9」が「森羅万象LV10」になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「神性領域拡張LV1」を獲得しました》

 

 

 ずうぅぅぅぅっと、スキルを使い続けて世界と一体になる感覚に浸っていたら、いつのまにかLV10まで成長していて他にもいくつかスキルが増えていた。

 しかもだいぶ時間が経っていたみたいで、群れの現在位置が元いた位置からかなりの距離進んでいる上に、SPの赤ゲージが枯渇寸前になってて今0に、あっHPが急速に減り始めてきた。

 

 慌てて目の前の苔を食べ始めたけど、その間も膨大な情報が流れてきて意識が溶けて引っ張られそうになるので、一時的に切って思考をクリアにする。

 

 危なっ、転生して1月も経たないうちに餓死で死亡とか、冗談にも程があるよ。

 大急ぎで食べ進めて回復させつつ、自分に鑑定をかけて変化したスキルを見る。

 

 増えたりしたのは「集中LV4」「思考加速LV3」「並列思考LV3」「演算処理LV3」に「苦痛耐性LV2」「神性領域拡張LV1」の6つで、他にも「森羅万象LV10」「気絶大耐性LV2」と、かなりスキルの欄が充実していた。

 

 新たに増えたスキルを確認しつつモシャモシャ食べていると、群れの移動が止まっていて先頭の方から激しい轟音と衝撃波が響いてきていた。

 さすがにここから直接見ることができそうにないので、森羅万象をつかって確認する。

 

 んーっと? 

 

 猿、猿、数え切れないほどの猿。

 それと、おっきい猿が少し。

 めちゃくちゃいっぱい居る猿の巨大な群れが、正気を失った様子で我が身を顧みず襲いかかってきていた。

 その鬼気迫る様子は恐ろしいものだけど、しかし前面に並んだコケダマたちの防壁を突破できてはいなかった。

 密集陣形で隙間なく洞窟の横幅を埋めるグレーターコケダマが猿たちの猛攻を防ぎ、上空ではウィングドコケダマたちが飛び回って撹乱しつつ魔法や状態異常をばら撒いている。

 なんとか抜けてきた個体も、内側で待ち構えている色鮮やかな状態異常特化のコケダマたちになすすべなく討ち取られていく。

 それは堅牢な城塞のようであり、全てを飲み込む津波のようで。

 

 そして、家主さんであるアークコケダマの魔力が高まるのを感じると、壁を作っていたコケダマたちが左右に移動し道を空け、射線を通す。

 空いた隙間に猿たちが押し寄せてくるが、そこはすでに死地が確定している場所であった。

 大地魔法が突き上げ串刺しにし、水流魔法のウォーターカッターが胴体を泣き別れにさせ、暴風魔法が運良く生き残ったものを逃さず刈り取っていく。

 

 そんな血しぶき吹き荒れグロテスクな暴虐の嵐を目の当たりにして、私は興奮を抑えられそうになかった。

 

 すごい! すごい! すっごぉいぃっ!! 

 

 魔力が流動し形を変化させ、魔法という現象を何も無かった場所から生み出す。

 それは世界を書き換える技であり、あるがままを受け入れるしかない世界というものを望むままに彩れる、神秘の御業。

 

 それに魅せられた私は、漂う饐えた血の匂いも、ぬらぬらした内臓の色も、風前の灯火となった命が消えていき魂が世界に溶けていくのを感じつつも、心には歓喜しか存在していなかった。

 

 これ欲しい、これがあれば、世界が、私の手で。

 

 そんな妄想と憧れがドンドン膨らんでは、私の心に強く刻まれていく。

 自分自身の願いと夢を理解し、憧憬のまま進みたい目標が私を染めていく。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「欲求LV1」を獲得しました》

 

 小さなコケダマの身体で喜びを表現しつつ陶酔し浸っていると、戦いは終わっていて僅かに麻痺で自由を奪われた瀕死の猿が多少の残っているだけとなった。

 

 すると、すでに死んだ猿を他の大きなコケダマたちが食べ始めているが、なぜかまだ息のある猿を1箇所に集め始めた。

 そしてその近くに家主さんが伏せると、なんとなく意図を察した。

 

 これは未熟な私たち幼体への餌だと。

 

 すでに、少しずつ背中で暮らしている同居人たちがゆっくりと動き出して、地面に降りようとしているのを捉えており、私も急いで続く。

 

 必死になって動いたのが功を奏したのか、ほとんど一番に到着することができたが、SPの黄色も赤色もかなり危険な状態。

 そして勢いのまま痙攣する猿に齧りつく。

 

 私が噛み付いても一切抵抗できず、ただ震えるしかできない猿に少し可愛そうだと思ってしまうけど、生きるためと思って力を込めて食い千切る。

 

 決して美味しいとは言えずむしろ不味い味だけど、何度も何度も必死に食らいつく、そして——

 

《経験値が一定に達しました。個体、スモールコケダマがLV2になりました》

《各種基礎能力が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「苔鎧LV1」が「苔鎧LV2」になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「麻痺攻撃LV1」が「麻痺攻撃LV2」になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

 身体の皮が剥がれていく。

 それに合わせ、まだ中途半端にしか覆われていなかった苔の鎧が一気に全身を覆い尽くすように増えていく。

 減っていたHPも最大まで回復し、ほんの少し身体が軽くなる。

 

 それを感じつつも、食べるのをやめない。

 ただ勢いのまま突き動かされるように食べ続け、明らかに今の私より大きい猿を骨まで残さず喰らい尽くすと、そのままフラフラとまだ誰も食べていなくて息がある猿に近づく、そして——

 

《経験値が一定に達しました。個体、スモールコケダマがLV3になりました》

 

《経験値が一定に達しました。個体、スモールコケダマがLV4になりました》

 

《経験値が一定に達しました。個体、スモールコケダマがLV5になりました》

《各種基礎能力が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「苔鎧LV3」が「苔鎧LV4」になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「麻痺攻撃LV3」が「麻痺攻撃LV4」になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「麻痺耐性LV3」が「麻痺耐性LV4」になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「毒耐性LV1」が「毒耐性LV2」になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「睡眠耐性LV1」が「睡眠耐性LV2」になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「酸耐性LV1」が「酸耐性LV2」になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「過食LV1」を獲得しました》

《スキルポイントを入手しました》

 

 あははっ、あははははっ

 

 ひたすら食べる。

 今自分が何をしているかも曖昧なまま、酔って惚けた心で食べ続ける。

 そうでなきゃ、自分自身のナニカが溶けて壊れてしまうようで。

 まだ受け入れるには早すぎるナニカが、私自身を壊してしまわないように、今は酔い痴れたまま食べ続ける。

 見るべきでは無い事は、識るべきでは無い事は、忘却の彼方へと沈んでいく。

 

 そして、周囲には血痕しか残らず口の周りを血で濡らした私と兄弟姉妹しかいなくなったとき、ようやく意識が少し戻る。

 まだ少し夢現な状態だけど、兄弟姉妹たちが家主さんへと帰っていき苔の斜面を登っていくのを見て、私もぼんやりしたままついていく。

 

 ふわふわモコモコで登りづらい苔山の頂上に辿り着けば、疲労が一気に押し寄せてきた。

 

 あぁ……、私、殺した。そして食べちゃった。

 

 事実を今になって理解するものの、なぜが私の心はあまり痛まず、ただ喜びの境地にいた。

 それは空腹を満たしたことによる満悦か、それとも心の防衛本能が見せる幻の快楽か。

 

 そんなことを思っていると、全ての幼体を乗せた家主さんが進み始める。

 

 そうして、暗い洞窟の中進み続ける群れを眺めて、私は思う。

 

 もっと力を——と。




 コケダマ種と、コケダマ種の群れ

 迷宮の外でも見かけられる種族で、本来は群れを作らず森の中でひっそり暮らしている。
 性格は温厚で、手を出さない限り積極的に襲ってくることがないので、深い森の中で気づかずに横を通り過ぎていることがある。
 迷宮の外の個体はほとんど進化することはなく、食物連鎖の下層に位置している。

 エルロー大迷宮の個体たちは、はるか昔に縦穴から落下してきたコケダマ種が、過酷な生存競争に生き残って種をつないできた個体である。
 そのため本来コケダマ種が持っていない麻痺属性を獲得しており、常に集団で行動して狩りをしている。

 エルロー大迷宮には、アークコケダマを主としたコケダマ種の群れがおり、主人公はここに生まれた。
 コケダマ種がここまで進化するのは稀で、その強さはアークタラテクトや下位の地龍とタイマンで勝てる可能性があるほど。
 そんな一大勢力を築いているコケダマ種の群れであるが、本来弱かった種族であり、またクイーンタラテクトのように大量に産卵して個体の数を増やすことが出来ないので、なかなか戦力となる個体が増えないのが現状。
 アークまで進化しているのは現在主人公がいる群れの他に僅か数匹いるのみであり、めちゃくちゃ数の多いタラテクト種や神話級も数多くいるエルロー大迷宮では、決して強いとは言えないのが実情である。
 外のコケダマ種:危険度F 迷宮のコケダマ種:危険度D~S
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