「おれは次話の執筆をしていたと思ったら、いつのまにかコケちゃんの人化イラストを描いていた」
な……何を言っているのか、わからねーと思うが
おれも何をしていたのか、わからなかった……
頭がどうにかなりそうだった……
催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……
クイーンタラテクト襲来、上層での待ち伏せ戦から何とか生き残り、一息ついた頃。
私たちを襲った蜘蛛たちが簡単にはやって来ることが出来ない、中層の奥深くにて。
『あっ、進化出来る』
『おおっ、また一緒。これは運命かもしれないねー?』
私たちは度重なる激戦を潜り抜けたことで、前回の進化から大して時間も経っていないというのに次の進化を迎えていた。
上位種に進化してレベルが上がりにくくなっているのに関わらず、こうして再び進化出来るようになるのは、強くなっても次から次へと新たな強敵が絶え間なく現れて、その度に戦わざるを得ない状況に毎度毎度巻き込まれているからだと思う。
今回は蜘蛛子ちゃんが引き寄せてしまった事件だったけれど、今後も何かしらのことが立て続けに巻き起こりそうなのを予感していた。
嫌な予感、当たってばかりだからなぁ……
嫌な信頼を憶えるようになった私の直感が外れたことは今のところ一度も無いのは、果たして良いことなのか悪いことなのか。
周囲の安全確保は威圧系スキルを2人して同時に使うと魔物が1匹残らず逃げていくし、余程強いそれこそクイーンタラテクトだとかそれに匹敵する龍種だとか、それくらい強いレベルでなければ私たちに襲いかかる気概のある魔物はおらず、それゆえ周囲は酷く閑散としていた。
さて、まずは確認からと。
《進化先の候補が複数あります。次の中からお選びください。
・ モフ・モフラス
・ マホビナ・ラスコヴニク 》
また複数。
数は2つだけだけど、この神話級と呼ばれる段階で進化先が別れるとなると慎重に熟考して選ばないといけない。
ここまで来ると次の進化なんてものは無くなるらしいので、ここで選んだ種族がこれから死ぬまでずっと付き合っていく身体となるのである。
まず上から。
《モフ・モフラス:進化条件:モフ・モスLV30:説明:原初の姿を取り戻し神秘の苔を纏う魔蛾。羽ばたき一つで世界を書き換える》
……説明は説明しないことが義務か何かなのだろうか。
はっきりしたことは何も書かず内容を推察するしか無い文章に、もはや驚きも何も感じなくなってきていた。
うーん、順当な上位種になる進化かな?
進化条件が種族指定でLVのみであることから、それ以外に考えられない。
名前も殆どそっくりだし、説明にも魔蛾って書かれている。
次は?
《マホビナ・ラスコヴニク:進化条件:一定以上のステータスを持つ特定の魔物、神霊苔スキル所持:説明:秘密を暴き黄金を錬成する魔法の薬苔。その身は神秘そのものであり星と混じり合う》
……ん? どうゆうこと?
えーっと、ちゃんとよく考えてみよう。
まず何に進化するか。
これは、詳細はわからないもののコケダマ種では無くなるっぽいかな?
説明には苔しか生き物と呼べる名前が書かれていないので、種族が植物系の魔物に変化するのかもしれない。
しかし植物系の魔物なんて今まで見たこと無いし、この世界にどんなのが存在しているのか未確認である以上、何になるのか未知数だった。
——コケダマ種は見た目植物だけど、中身は虫なので。
他には、星と混じり合うという文。
星と混じり合うってことは、それだけ大きな力が使えるようになるかもしれない。
だがよく考えて欲しい、今のこの星の状態を。
禁忌がLV10になったときに知った情報から、この世界が今どんな状況に置かれているのかを、忘れたわけじゃない。
むしろ忘れられるなら何も知りたくなかったっていう情報ばかりであるので、その名の通り禁忌の内容である。
あれから大分経って情報や感情の整理が片付いてきたので、やるべきことは物凄く単純なことであることに、ようやく理解した所だ。
結局やることは今と何も変わらない。
この世界が、こういうモノであるならば、それに従って為すべきことを為せば良い、それだけなのだから。
……話を戻さないと。
結局の所この星の状態が良くないのに星と混じり合うということは、その悪い状態の星と繋がってしまうということだと考えられる。
そんな悪い状態の相手と繋がった場合、ロクに力を得られないどころか逆に私から星にエネルギーを吸い取られてしまう可能性もあるってことである。
そうなった場合、進化して強化どころか大幅な弱体化を強いられることになるので、あらゆる意味で博打が過ぎるこの進化先はボツにするしかなかった。
なので、進化先はモフ・モスの正統進化モフ・モフラスに決定した。
進化先が決まったので蜘蛛子ちゃんに伝えると、蜘蛛子ちゃんは既に最初から決まっていたらしく、私が選ぶまで待っていてくれたみたいだ。
『さて、今回は私から先に進化するよー。周囲の警戒ヨロシクぅ!』
『りょーかいだよ、蜘蛛子ちゃん』
前回私が先に進化して結果とんでもない事態になったので、再び同じことが起きる可能性を考えて何かあったとしても対処できるように蜘蛛子ちゃんが先に進化する。
ただまあ、あれは禁忌という爆弾が起爆したから発生したことだと思うし、今回は大丈夫だと思いたい。
やらかした私が言っても、説得力の欠片も無いけれどね。
そして蜘蛛子ちゃんが進化し始めたけれど、様子がおかしい。
『お? おんやー? どういうこっちゃ……』
『蜘蛛子ちゃん!? どうかしたの!?』
慌てて声を掛けるけれど、何か悪い状況というわけでは無いらしい。
『いやさ、いつものように意識が薄れないというか、眠くならないんだよねー』
『……それって』
蜘蛛子ちゃんが持っているスキルを思い出す。
たしかその中には……
『もしかして睡眠無効かな? これがあるから進化中に眠らなくてもいいとか』
……なるほど、睡眠に関することなら無効化できるスキルがあるからこそ、進化時の強制睡眠を無視できるという訳だったのか。
そういえば……、睡眠は状態異常耐性に含まれているのだけれど、今の私のスキルのレベルはと言うと。
「状態異常無効」
こうである。
状態異常大耐性LV8を持っていたカグナや、さっき倒したアークタラテクトなどは自身が猛毒を使う関係で状態異常耐性もよく育っており、それら諸々を吸収した私の耐性は無効化にまで成長していた。
他にも色々と吸収しているので、どんな魔物でも育っている耐性系のスキルなどのレベルは急速に上昇し続けており、ここの魔物がよく使ってくる属性の耐性などは、無効あるいはその寸前まで強化されていた。
状態異常や属性耐性のレベルは非常によく成長したものの、何故か物理耐性は遅々とした上がり幅でしか増えてくれないので、未だ大耐性にも至っていないけれど。
自分より上のスキルレベルの相手を吸収しても殆ど成長しないのは謎でしか無い。
状態異常無効なら私も眠ること無く進化できると思うので、蜘蛛子ちゃんに一言かけてから私も進化に移った。
『ん、おーけーおーけー。もうすぐ終わるし、やっていいよコケちゃん』
『それじゃあ、始めるね』
《個体モフ・モスがモフ・モフラスに進化します》
︙
《進化が完了しました》
《種族モフ・モフラスになりました》
《各種基礎能力値が上昇しました》
《スキル熟練度進化ボーナスを取得しました》
《条件を満たしました。称号「覇者」を獲得しました》
︙
無数のスキルがレベルアップしたことを知らせるアナウンスが続く。
そして……
《進化によりスキル「乱魔の鱗粉LV1」「死滅の鱗粉LV1」を獲得しました》
《「鱗粉LV7」が「乱魔の鱗粉LV1」「死滅の鱗粉LV1」に統合されました》
《進化により鱗粉系スキルが解禁されました》
《スキルポイントを入手しました》
無事何事もなく進化が終わりました。
襲撃も暴走も何もなく、ただ進化する際に身体の内側からバキバキ鳴り響いて自分が作り変わっていく鈍い音だけが感じられる長い時間だった。
さて、ステータスの確認をしましょうか。
《モス・モフラス(苔森 真理) LV1
ステータス
HP:4579/4579(緑)+1500
MP:17577/24973(青)+0
SP:3561/3561(黄)
:1118/3561(赤)+0
平均攻撃能力:2183
平均防御能力:20261
平均魔法能力:26390
平均抵抗能力:23428
平均速度能力:8174
スキル
HP高速回復LV10 MP高速回復LV10 MP消費大緩和LV10
魔力精密操作LV10 SP高速回復LV10 SP消費大緩和LV10
状態異常大強化LV10 貫通大強化LV4 衝撃大強化LV4 破壊大強化LV3
打撃大強化LV3 斬撃大強化LV1 暴風強化LV2 水流強化LV1 大地強化LV2
光強化LV4 火強化LV3
魔神法LV6 大魔力撃LV10 魔力付与LV10 魔法付与LV6 龍力LV9
龍結界LV3 闘神法LV1 気力付与LV10 技能付与LV2 強麻痺攻撃LV10
昏睡攻撃LV6 猛毒攻撃LV2 強酸攻撃LV2 外道大攻撃LV4 火攻撃LV2
麻酔合成LV10 催眠薬合成LV10 神霊苔LV3 乱魔の鱗粉LV1
死滅の鱗粉LV1 鎧の天才LV2 体術の才能LV7 剣の才能LV3 空間機動LV3
高速飛翔LV2 高速遊泳LV3 念力LV5 投擲LV2 射出LV5
隠密LV10 迷彩LV7 無音LV10 無臭LV6 無熱LV4
集中LV10 思考超加速LV8 未来視LV5 並列意思LV10 高速演算LV10
記録LV10 統率LV3 連携LV1 命名LV2
命中LV10 回避LV10 確率補正LV5 鑑定LV10 遠話LV1
光魔法LV10 聖光魔法LV6 水魔法LV10 水流魔法LV10 蒼海魔法LV1
風魔法LV10 暴風魔法LV10 嵐天魔法LV1 土魔法LV10 大地魔法LV10
地裂魔法LV1 重魔法LV10 引斥魔法LV5 治療魔法LV10 回復魔法LV4
麻痺魔法LV10 睡眠魔法LV7 空間魔法LV10 次元魔法LV1
外道魔法LV10 毒魔法LV8 雷魔法LV5 氷魔法LV3 火魔法LV3
影魔法LV2
物理耐性LV9 聖光耐性LV6 水流耐性LV6 暴風耐性LV9 大地無効
重無効 炎熱無効 状態異常無効 酸無効 暗黒耐性LV7 雷耐性LV3
腐蝕耐性LV7 気絶大耐性LV6 恐怖大耐性LV3 苦痛無効 痛覚大軽減LV4
外道無効
暗視LV10 五感大強化LV6 視覚領域拡張LV7 千里眼LV4
天命LV6 天魔LV10 瞬身LV8 耐久LV8
剛力LV5 城塞LV5 天道LV10 天守LV5 韋駄天LV4
魔王LV4 飽食LV5 激怒LV1 強欲 征服 羨望LV3 暴君LV2
神性領域拡張LV7 森羅万象LV10 禁忌LV10 n%l=W
スキルポイント:3820
称号
悪食 味方殺し 血縁喰ライ 麻痺術師 睡眠術師 無慈悲 魔物殺し 魔物の殺戮者
強欲の支配者 竜殺し 恐怖を齎す者 龍殺し 狂乱の主 率いるもの 覇者》
久々にじっくり確認したけれど、沢山スキルが増えて物凄くゴチャゴチャしており、非常に見づらい感じです。
その原因は主に、征服によって十全に使えるようになった強欲スキルのせいですが。
殺害した相手の魂を丸々支配して自身のステータスに加えることが出来るスキルなので、倒した相手が持っていたスキルなども、そのまま入手したりすることが出来その結果こんな数えるのも億劫な量のスキルが並ぶようになっていました。
——強欲入手以前からでも結構多かったですけど。
んーと……
ようやく水属性風属性土属性の最上級魔法が解禁されて、さらに難度が高くなるものの高威力や広範囲などの必殺技とも言うべき大技が使えるようになったことが1つ。
ようやく空間魔法が成長しきって、次元魔法が派生したことが2つ目。
とはいえ空間属性に求めているのは転移と空納なので、ただの攻撃スキルとしてはイマイチな性能しかない空間系は使わないかもしれない。
他と組み合わせれば何とかなるかな?
3つ目は強欲でスキルポイントも溜まっていく一方だったので、適性が無くて手を出しづらかった魔法スキルや属性強化のスキルなど補助的なスキルもまとめて取得していて、それらも全体的に成長していた。
私が魔法を憶えれば憶えるほど、蜘蛛子ちゃんはそれを見て自力でスキルを獲得するので、スキルポイントに余裕のある私が切っ掛けとなるスキルを集めるべきだと思うから色々と手を出して集めているのです。
称号、覇者の獲得が4つ目。
また威圧系の称号が増えてしまい、ますます格下狩りが難しくなっていく。
どうにか抑え込む方法を見つけないと面倒なことになりそう……
最後、新たに進化で獲得したスキル、乱魔の鱗粉と死滅の鱗粉について。
元々あった鱗粉のスキルがこの2つのスキルに統合されて、本来スキルレベル10で獲得していただろう拡散力や視認性の変化などの追加効果なども最初から出来るようになっていた。
何かしら他のスキルと組み合わせて使用しなければ、何の効果もないただ粉が舞い散るだけのスキルだったけれど、これからは最初から何かしらの効果が付いた状態がデフォルトになり、さらに色々と効果を重ねられるみたいだった。
ここまでは良いけれど、問題なのはこの後です。
乱魔、死滅。
この名前に凄く見覚えがある。
そう、蜘蛛子ちゃんが持っている邪眼系スキルに同じ名前のスキルがあるのです。
乱魔は魔法妨害、遠距離から近づくことも無く攻撃する邪眼とは相性が良くなくて、しかも阻害効果も微妙な性能しか発揮出来なかったハズレ枠と言っていた邪眼の鱗粉版。
こちらは邪眼とは真逆の近距離にしか効果がなくて単体ではなく空間全域に妨害をバラ撒く、いかにも相性の良さそうな組み合わせのスキルだった。
妨害効果は殆どないに等しい微弱な性能だけど、龍結界や神霊苔など他にも魔法対策のスキルは充実しているので、それを後押しする感じの使い方になりそう。
次、一番の問題児枠の死滅の鱗粉。
このスキルはまだ試していないものの使うとどうなるかは、蜘蛛子ちゃんが何度も身を持って示してくれていたので、下手に触らず放置している。
死滅、つまり腐蝕属性の鱗粉を扱えるようになるスキルで、腐蝕属性が何なのかは非常によく知っている。
対生物特効で、使用すれば使った本人も自爆して大ダメージを負う諸刃の剣。
蜘蛛子ちゃんが腐蝕属性の攻撃を使うたび、毎回鎌が無くなったり眼が潰れたりと、使用するに当たってかなりの覚悟がいるスキルだけど、それだけの価値があるほど得られるリターンが大きい強力な属性でもある。
使いこなせれば確実に武器になるので、いつかちょっとずつ試してみて練習しよう。
スキルやステータスの確認が終わり、蜘蛛子ちゃんも新たなトンデモスキルを手に入れていて、それらにお互い驚いていると、突然私たち以外の声が聞こえた。
『そろそろお互いの確認は済みましたか? もしもし、Dですー』
いつかと同じ光景の、ここにあるはずのないスマホが地べたに転がっていた。
マホビナ・ラスコヴニク
超特殊進化。この世界の星の状態では、この進化は罠。星と一体となるとはシステムと一体になることであり、進化すれば魂をギリギリまでシステムに吸われ、残った肉体と魂の残骸は、ただひたすらリソースを作り続けて捧げる装置となる。
本来であるならば溢れる星のエネルギーを吸収して奇跡を起こし、代わりに星にとって必要なエネルギーへと変換して星を循環させる、世界樹のような役割の亜神に相当するものである。
つまり本来神話級なんて目じゃないバケモノ。
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