【完結】コケダマですが、なにか?   作:あまみずき

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17 神仰

『もしもし、聞こえてますよねー? 無視は悲しいです』

 

 いつの間にか私たちの間の地面にスマホが落ちていた。

 その前世でよく見た至ってシンプルなデザインは、とにかくこの世界にある物としては可笑しい不釣り合い極まる物体であった。

 

 目の前に落ちているスマホを見ていると、向かいの蜘蛛子ちゃんは頭の耳?を抑えてイヤイヤと身を捩らせている。

 まるで、嫌なことは何一つ聞きたくないと駄々をこねる子供のように。

 

『あぁ、何ということでしょう。

 苔さんは話を聞いてくれているというのに蜘蛛さんは無視するなんてー、およよー。あらら? 私の手にはなぜか蜘蛛自爆ボタンが——』

『ごめんなさい許して! 押さないで! ていうか何そのボタン!?』

 

 蜘蛛子ちゃんは飛び跳ねて姿勢を正し、地面に頭を打ち付ける勢いで平身低頭した。

 

『冗談ですよー、そんなものありません。ボタンなんて無くても蜘蛛をきったない花火に変えることくらい出来ますから』

 

 スマホから聞こえる声には一切メリハリというものが感じられず、全てが冗談にも聞こえるし、全てが本気であるかもしれないという、薄ら寒い怖さのある音声が流れ続けていた。

 

『えぇ……えぇー、えぇぇ??』

『ご安心を、こんなに面白可笑しい人材を無駄に散らすようなことは、いたしません』

 

 全く声の調子が揺らがないから、どこまでが冗談なのかわからなくて凄く困る。

 私がそう思っている間に、蜘蛛子ちゃんは全力でゴマすりをしていて、なんとか機嫌を取ろうと必死になっていた。

 

『冗談ですよぉ。冗談』

『冗談に聞こえないって……』

『よく言われますね』

 

 一連のやり取りが一段落して、蜘蛛子ちゃんは急激に精神的疲労が襲い掛かったことでグッタリしていた。

 

『えーと、それでDさん。何の用で声を掛けてきたのですか?』

 

 私がそう誰にあてるでもなく念話に乗せると、スマホの向こうから返事が返ってきた。

 

『単なるお祝いですよ。蜘蛛さんが不死に至ったのと、苔さんが実に懐かしい生き物の姿へと進化したことへのお祝いです』

 

 蜘蛛子ちゃんの不死も凄いことだけど、私の姿? 

 

 改めて進化後の自分の姿を確認すると——全体的に濃い翠色なのは変わらないけれど翅の模様が変化していて、上下左右ともに白線が二重に入っており外側の白線には、光の加減で鮮やかに蒼く燐光を帯びていた。

 上翅の方には目玉模様のような白と黒の部分もあり、その中心にも煌めく蒼の輝きが灯っていたのであった。

 

『……ほわぁ。改めて見ると物凄く綺麗な姿。私自身のことなのに』

『でしょー? その姿は、遥か昔にこの星に生息していた希少で、全宇宙的に見ても珍しい生き物の姿を模しているんです』

 

 翅を傾けたり小刻みに震わせたりしながら確認していると、向こうにいる邪神様はこの姿の由来について説明しだした。

 

『私も認める美しい見た目と本来ありえないような特異性に、随分驚いたものです』

『その生物……その蛾は、どうなっちゃったの?』

『残念ながら絶滅してしまいました。私がコレクションする前だったのに、しょんぼりです』

 

 その声には本気で残念そうな気持ちが込められており、この姿……というかその滅んでしまった蛾に対しての思い入れが強いことを伺わせた。

 

『その特異性ってなに?』

『それは秘密です』

 

 私がボカされていたところに触れるとクルリと声の調子を入れ替えて、何でもなかったかのように秘密だと言う。

 

『何度も聞こうとしても無駄ですよ。教えないと言ったら、教えないのです』

 

 あらかじめ先読みしていただろう内容を突きつけられて、口を噤んでしまう。

 

『むぅ……』

『ねえ、邪神サマよ。この不死って……なんでこんなスキル作ったのさ?』

 

 不満に全身を逆立てて膨らんでいた私を押しのけて、蜘蛛子ちゃんが割り込んでくる。

 

『人は満たされると最終的に何を目指すと思います?』

 

 そして管理者Dは、ごくありふれた醜くて罪深い人の業を語りだした。

 満ち足りた者が、もっと欲しいと欲望の手を伸ばすのは永遠なる命であると。

 それが行き着く先は、決して手が届くこと無く途中で力尽きてしまい積み上げてきた犠牲の全てがシステムのために還元される、効率的で無慈悲な仕組みをスマホの主は懇切丁寧に説明した。

 

『……あいかわらず性格の悪いことで』

『邪神ですので』

 

 平坦な声なのに、語尾にハートマークでもついていそうなゾッとする台詞が聞こえてきた。

 

『じゃあなんで私ポンと手に入れちゃった訳?』

『ザナ・ホロワは、元々不死の魔物という設定ですから』

 

 そして蜘蛛子ちゃんが辿った進化の道筋について説明をし——

 腐食攻撃という耐性ないまま使用しただけで死ぬようなスキルを持ちつつも、進化しただけでは耐性を持たないままで。

 使えば相手を殺して自分も死ぬという、そのままでは次の進化など到底不可能な要素を乗り越えなければ、進化できずに死んでしまうことを饒舌に語りだす。

 

『……なので、まさか本当に進化してしまう個体が出てくるとは予想していませんでしたけどね。おめでとうございます、あなたは世界で唯一のユニークモンスターになりました。

 あっ、ついでに苔さんも同じく世界で唯一の魔物でしたので一緒にお祝いしますね。わぁぁ~、ぱちぱちぱち~』

 

 なんとも飄々として軽い感じであるし蜘蛛子ちゃんのついでだとしても、祝ってくれるのであるならば、一応素直に受け入れることにする。

 隣の蜘蛛子ちゃんは、あんまり嬉しくないようだけど。

 

 そして私たちは、様々なことを聞いたり聞かされたりした。

 

 不死のこと、禁忌のこと、蜘蛛子ちゃんが無自覚のままやっていたシステムに想定されていない魂への攻撃方法のこと、他にも転生者がいるのかどうかということ、管理者についてのこと、神について……スマホ向こうに居るDの目的のこと。

 

『結局、あんたの目的って、何?』

『言ったはずですよ、娯楽だと』

 

 蜘蛛子ちゃんがズバリと気になっていた核心に触れた。

 そしてそれが、裏表のない純粋な欲望と悪意のためであることを、私たちに言い聞かせるように呟いた。

 

『でも今日は気分がいいので、それなりにサービスして色々とレクチャーして差し上げましょうか?』

『おぉ! マジっすか、じゃあ何で私たちこの世界に転生したの?』

『それは私も気になっています』

 

 二人して光ったまま動かない画面を映すスマホを覗き込む。

 

『ご説明しましょう! ——まずあなた達は地球の日本で死にました。ここまでは分かっていますよね?』

『ああ、うん。やっぱり死んでたのかー』

『……ぼんやりとだけど憶えている。酷く痛くて恐ろしい感覚だった』

 

 その無慈悲に突きつけるDの言葉に、忘れかけていた記憶が蘇ってくる。

 胃がひっくり返りそうな気持ち悪さが身体を侵していき、喘鳴が漏れだす。

 

『続けますよ? その死因なのですが、先代の勇者と魔王が関係しています』

 

 記憶の奥底に封印していた感覚に、思わず身体が震えてくる私の様子を無視し、彼女は話を進めようとする。

 

『両者ともに次元魔法の使い手であり、かなりの天才でした。彼らは次元魔法を改変し、世界の壁を越える魔法を編み出してしまったのです』

 

 淡々と語りつつも僅かに驚きを滲ませた声で話し続ける。

 

『なにそれ、すっご。そんな事出来るの?』

 

 蜘蛛子ちゃんが思わず口を挟んだ。

 

『ええ、出来ますよ。そこの苔さんがやっているように改変自体はやろうと思えば出来る——その程度のことでしかありません。

 しかしシステム外の技術に対してシステムの補助は働きませんので、補助に慣れてしまった住人である彼らには、そんな壁を越えるような高度な術式は制御できませんでした。結果術式は暴発。

 しかも次元を越える際にMA領域を一部破壊、世界の壁を越えた先の地球の日本のとある高校の教室で爆発してしまったのです』

 

 私たちが転生した原因、そしてそれによって齎された被害の大きさを知った。

 地球側ではあの後どうなったのか分からないけれど、こちらの世界でもMA領域の破壊、つまりこの世界にとって極めて大事な部分を壊すという、とんでもない被害を及ぼしていた。

 

『なんてはた迷惑な』

『まったくです。その勇者と魔王のせいで、私は作ってから放置していたそっちの世界のシステムを点検し直す羽目になってしまいましたよ』

 

 さらりと重要そうな事を呟く管理者D。

 

『作って放置! 製作者の怠慢!』

『えっ、ちょっとまって……この世界のシステムってあなたが作ったんですか!?』

 

 突然の暴露に、驚きを隠せず声が上擦る。

 

『あら、言っていませんでしたっけ?』

『初耳ですよっ!』

 

 私の抗議に悪びれずに言う。

 

『まあ良いじゃないですか。私はシステムを提供しましたが、あくまで部外者でしかありません。その世界を管理するのは、その世界の管理者の役目です』

 

 そう言って部外者であることを強調するけど、よく考えると矛盾していることに気付く。

 

『とか言いつつ、この頃結構干渉してんじゃん』

『仕方ありませんので。

 彼らの暴走が原因とはいえ結果的に何の罪もない高校生たちが死んだ上にシステムに巻き込まれてしまいましたから。私も原因の一部ですしシステムの構築者として最低限のフォローをしておくべきかと』

『原因の一部? あとやっぱり教室にいた他のみんなもその時に……』

 

 私は、あの時同じ教室にいたクラスメイトや先生の顔を思い浮かべた。

 

『ええ、転生者についてはさっき話しましたね? 私はその時死んだ人の魂がシステムに逆流してしまい、その世界で転生することになってしまいまして。

 そのままでは分解されてしまう魂を保護し、記憶や元の魂の力をそのままにこの世界を生きていけるように、特別なスキル(n%l=W)を付与しました。あとは適性を見て適当なスキルを一つずつプレゼントして、なるべく魂の波長が近い種族に転生出来るように二十六人を斡旋しました。これでも最低限のフォローはしてあげたと思っていますよ?』

 

 うん? あの教室に居たのは先生も合わせれば二十七人。

 その人数と合っていないような……

 

『一人足りなくないですか?』

『ああ。それは私ですね』

『お前かい!? あんたあの教室にいたの!?』

 

 蜘蛛子ちゃんが飛び跳ね、彼女があの教室にいたことに驚いていた。

 

『はい、だからあの魔術が教室に開通してしまったんですよ』

 

 やっぱり無関係な部外者とは言えないよね、それ。

 

『ちなみにあんたの名前は?』

『それは秘密です』

 

 蜘蛛子ちゃんが不満と文句を垂れていると、突然ウインクした顔文字のようなイメージが脳内へ飛んできた。

 驚いて周囲を確認するものの何もなく、蜘蛛子ちゃんは相変わらず不機嫌そうに地面にのの字を描いている。

 すると、私だけがスマホを見ているタイミングで一瞬だけ、さっきの顔文字と同じものが画面に映った。

 

 ……言おうと思っても、言えないのだから気にすること無いのに。

 

『まあ私のことは置いといて——システムの最高管理者である私があの場に居たから、あの事故は起きてしまったんです。なので責任をとって、こうしてそちらの世界に干渉しているわけですよ』

 

 話の流れを切り替えて、今もなお此方の世界に干渉して様子を見ていることの理由を語りだす。

 

『けど、叡智とかのスキルはどうなのよ』

『あれは、あの時にも言ったようにご褒美ですよ。

 ——そうそう、せっかくですしご褒美が蜘蛛さんだけにしか与えていないのは不公平ですよね。どうせなら苔さんにも差し上げたいんですけど、お恥ずかしながらこれだという良い案が思いつかなくて。なにかご希望はありますか?』

 

 そう言って、私に対して質問を投げかける管理者Dの声。

 蜘蛛子ちゃんが貰えるのなら出来る限り吹っ掛けろと囃し立てているけれど、喧しく思ったのかDさんの『自爆』という一言で黙らされていた。

 

 私は深く悩んで、答えを決めた。

 

『出来るなら……。出来るなら神に成れるような、そこに至るまでに必要な力を導いてくれるような、そんなスキルが欲しいです』

 

 小さな声で、けれど言葉に尽くせない思いを込めて告げる。

 

『ほう? それはどうしてですか?』

『この滅びかけの世界から一人だけ逃げ出したい訳ではありません。私は大切なモノを守るためなら何だって捧げてみせます。だからそのための力が欲しい、それではダメですか?』

 

 そう言ってみれば、スマホの向こうから驚いているような慨嘆する声が聞こえ、隣にいた蜘蛛子ちゃんも、思いもよらぬと呆然とし言葉も出せないようだった。

 

『……ふむふむ、これはちょっと驚きましたね。まさかこんなに真摯な願いで神になりたいと言われるとは』

 

 再び聞こえてきた声には、呆れているようなあるいは痛快だと言っているような、そんなどちらとも判別がつかないような声色を滲ませた返事が聞こえてきた。

 

『————わかりました。ならば、こういう感じでやってみましょうか』

 

 そうしてDから指示を受けて、その通りに行う。

 

『そうですね、何か祈ってください。深く強くスキルが取れるほどの思いを込めて』

 

 言われた通りに私は祈る。深く深く、この世界に身を捧げた女神と電話越しの向こうにいる邪神に対して、祈りを捧げた。

 今なおシステムに繋がれその身を犠牲にしながらも世界を救っている女神と、スマホの向こうに世界を隔てた先にいる邪神の、()()()()()()()()()()記憶に残っているその顔を思い浮かべた。

 

 そして祈る。

 あぁ、どうかお願い——こんな願いを抱く私を糧として、世界へ()()を導いてほしい……

 

 

 そして、さしたる時間もすぎない内に——

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「祈祷LV1」を獲得しました》

 

『よぉし。それをこうして、ちょちょっとすれば……』

 

《要請を……位管理者D……》

《管理者サ……却下……要請……》

《上位……Dが……リエ……請を……下しま……》

 

 何度も何度もノイズに満ちた声が響く。

 それはどこか悲鳴のように、跡切れ跡切れに消えていく。

 そして——

 

《要請を上位管理者Dが受諾しました》

《スキル「神仰」を構築中です》

《構築が完了しました》

《条件を満たしました。スキル「神仰」を獲得しました》

《「祈祷LV1」が「神仰」に統合されました》

《条件を満たしました。称号「神仰の支配者」を獲得しました》

《称号「神仰の支配者」の効果により、スキル「魔法付与LV10」「解脱」を獲得しました》

《「魔法付与LV6」が「魔法付与LV10」に統合されました》

 

 

 私の願いを受けたスキルが構築され、それを獲得する。

 そして、それによって得たモノは、確かに私の願いを叶えるのに必要なモノだった。

 

『いやー、少し疲れました。余計な手間が増えてスムーズに行きませんでしたよ』

 

 その声には、一仕事終えた疲労と達成感を帯びさせていて、わざわざ手間暇掛けてくれたことに感謝した。

 

『いや構いませんよー。これからどうなるか面白そうですし、期待してますから』

『コケちゃん鑑定してもいいかな? するよ? ——勝手にするね』

 

 私が許可する前に、蜘蛛子ちゃんが勝手に鑑定を実行する。

 まだ鑑定妨害を掛けたままなのに、叡智の解析能力と権限で無理矢理突破し、ステータスを読み取られていくけれど、望んだ結果が得られなかったみたいで首を傾げていた。

 

『あれ、なんで!? 叡智様の力でも読み取れない!?』

『当然です。知られては少々困る情報を与えたのですから、プロテクトは厳重に掛けますよ』

 

 私からは問題無く、スキルの情報とその内容が閲覧できているけれど、蜘蛛子ちゃんからは何が書いてあるのか欠片も理解できないように、厳しく遮断されているようだった。

 

『もちろん獲得した本人にも、内容を口外することを禁ずる制約が掛かるようにしましたから。苔さんに聞いても無駄ですよ。何があっても話すことも伝えることも出来ません』

 

 ふと試しに、念話で蜘蛛子ちゃんに冒頭にある、さわりの一文を伝えようと思い浮かべる。

 けれど思い浮かべて蜘蛛子ちゃんに語りかけてみようとしたが、蜘蛛子ちゃんは一切何も反応を返さない。

 まるで私が何も喋っていないかのように。

 

『……おーい、コケちゃん急に黙り込んでどうしたの?』

 

 蜘蛛子ちゃんが心配そうに私を小突く。

 それを見て、掛けられた制約の強力さを、身を持って理解した。

 

『ううん、何でも無いよ。色々凄いものだったから驚いちゃって』

『ほぉー?』

 

 このくらいボカした事なら言えるみたい。

 そして私は蜘蛛子ちゃんの質問を躱し続けていると、ほんの少し仲間はずれにされていたスマホから不満げな声が聞こえてきた。

 

『私がいること忘れてません? これは蜘蛛自爆ボタンを押して、お邪魔虫を排除するしかありませんね』

 

 強権を持ち出して、無理矢理に話を引き戻したDは、再び質問と説明を受け付けていった。

 管理者を敵と見ている勢力の存在、転生先が相性であり大半が人族に転生していたこと、それをさらに深く追求してみると一部は変な転生先になるように適当に処理を施したということを暴露したりなど、他の転生者はまだ赤ん坊が殆どであるということ、最後の最後に——自身は現代日本の快適な環境で優雅に暮らしていることをこれでもかと言うほど煽られて……

 

『まあ冗談はこれくらいにして、あなた達のこれからを期待していますよ。特に蜘蛛さんは()()に勝てることを祈ってます。願わくばもっと私を楽しませてくださいね』

『いつか、そのツラ引っぱたいてやるからなー!』

 

 蜘蛛子ちゃんが前脚上げたポーズで威嚇して怒りを顕にしている。

 そしてスマホに視線を戻すと最後に一言残して消えていった

 

『では、また』

 

 フッと、最初から何もなかったかのように痕跡も残さず消える。

 結構長々とお喋りしていて、いつの間にかかなりの時間が経過していたことに気付いた。

 

 蜘蛛子ちゃんは怒り滾らせながらも緊張から解放され脱力するといった、絶妙に矛盾したことをだらけきった姿勢にて、イライラを表現していた。

 

 

 私は何も無くなった地面を見て目を閉じると、蜘蛛子ちゃんとの念話を切って、誰にも聞かれないように、そっと心のなかで呟く。

      若葉  

 またね、————さん。

 ——はい、ではまた。

 

 脳内に響いた声は、不思議と酷く綺麗で楽しげな音だと、そう感じた。




2022/07/10:加筆修正。
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