【完結】コケダマですが、なにか?   作:あまみずき

3 / 146
3 はぐれたコケダマ

 家主さんの背に乗り、のんびりまどろみながら自堕落なヒモ生活を送って、数日が経過した。

 

 その間にも狩りは行われ、何度か戦闘になったりしたけれども、なかなか私たちに生きたまま回ってくる獲物はいなかった。

 

 そのせいでLVは上がっていないけれど、ただ闇雲にレベルを上げて後で後悔することが無いようにできたので、まあヨシと考えとこう。

 

 というわけで、新たに取得したスキルを、どうぞ! 

 

 

《スモールコケダマ(苔森 真理) LV5

 ステータス

 HP:52/52(緑)

 MP:1102/1102(青)

 SP:59/59(黄)

   :59/59(赤)

 平均攻撃能力:29

 平均防御能力:68

 平均魔法能力:1068

 平均抵抗能力:68

 平均速度能力:48

 スキル

 HP自動回復LV1 MP回復速度LV1 MP消費緩和LV1 SP回復速度LV1 SP消費緩和LV1

 状態異常強化LV1 魔力操作LV2 魔闘法LV1 魔力撃LV1 魔力付与LV1 麻痺攻撃LV3

 睡眠攻撃LV1 毒攻撃LV1 酸攻撃LV1 苔鎧LV3 鎧の才能LV1 立体機動LV1 隠密LV1

 集中LV10 思考加速LV1 予見LV1 並列思考LV3 演算処理LV3 記憶LV2

 命中LV1 回避LV1 鑑定LV10

 光魔法LV1 水魔法LV1 風魔法LV1 土魔法LV1 治療魔法LV1

 物理耐性LV1 状態異常耐性LV4 酸耐性LV2 気絶大耐性LV2 苦痛耐性LV2 外道無効

 暗視LV10 五感強化LV1 視覚領域拡張LV1

 身命LV1 天魔LV10 瞬身LV1 耐久LV1

 強力LV1 堅牢LV1 天道LV10 護符LV1 縮地LV1

 欲求LV1 過食LV1 神性領域拡張LV1 森羅万象LV10 n%l=W

 スキルポイント:7200

 称号

 なし》

 

 MPと平均魔法能力を強化するスキルを最大まで取得して、その他はレベルアップ時にボーナスが入るようになるまでLVを上げる。

 そのおかげで、平均魔法能力は四桁と飛び抜けて高くなり、MPの総量もこのレベルではありえない数値になっている。

 できれば平均攻撃能力を上げる上位のスキルを取りたかったけれど、なぜか強力を取得するのに必要なポイントが2000で消費するポイントの総数が膨れ上がってしまうので、最初の段階であるスキル《強力》をLV1取得するだけに留めるしか無かった。

 他のスキルでは、200とか300で取れたのに……

 

 魔法などの必要ポイント数でわかったことだけど、どうにも適性みたいなのがあるらしく、光や水に土などが少なくてすみ、逆に闇や火それと氷は完全にダメみたい。

 必要ポイント10000とか要求されると、取得するのはさすがに厳しいものがある。

 ……全属性とか使ってみたかったなぁ。

 

 あとは、有用そうなスキルを一通り沢山選んで取得して下準備の出来上がりっと。

 

 多少スキルポイントを残したけど、それでも四万ほどあったポイントが一気になくなってしまいました。

 ほかに気になるスキルもあったけれど、今は様子見にする。

 念話とか、今持っても使いみちなさそうなのとか。

 一部怪しげなスキルとかも……

 

 他に気づいたことといえば、鑑定の行使にはリスクがあるというのを知ったこと。

 

 何度も何度も群れのコケダマたちに鑑定をかけていたけれど、使うたびになんだか掛けた相手が不機嫌そうになって警戒していて。

 あれ? って疑問に感じ始めた頃に家主さんからお叱りの声が。

 いや鳴き声とかそういう音があったわけではなく、なんとなくだけど怒っているイメージの思念が飛んできたので、それからは不必要な使用を自重している。

 

 そして今は、魔法を扱うための魔力操作の練習中。

 森羅万象のおかげで、情報量は膨大だけど魔力について緻密に把握できるので、魔力を流し込む感覚や魔力を纏い留める感覚を、しっかり憶えようと努力しているところである。

 

 さて、今日も一日修行、しゅぎょう……、ん? とても強い反応が1つ、いや2つ。

 

 アークに匹敵するかどうかといった反応が、群れの進行方向の先にいることに気づく。

 それは森羅万象のバカみたいに広い感知範囲だから気づけたことで、群れの個体はおろか家主のアークさんでも、まだ気づいていないみたい。

 

 

 そして、そのまま群れは止まることなく進んでいくので、強い反応との衝突は必然で。

 

 ガアアァァ————————ッッ!!!! 

 

 意識が一瞬漂白される。

 洞窟内に反響する、ただただ煩いだけの咆哮で、私の心は押し潰されるような重圧を錯覚して、考えも感情も何もかも吹き飛んでしまった。

 な、に……? 

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「恐怖耐性LV1」を獲得しました》

 

 心が悲鳴を上げているのに、意識は失えない。

 それはきっと「気絶大耐性」のおかげで、けれどそれは何も見なかったことにして逃げることを許さなくて。

 

 私は、目の前で繰り広げられる戦いを、瞳と魂に焼き付けていた。

 

 紫色の重厚な巨体をもつドラゴンが、その太い四肢と身体を生かしてあらゆる魔法と攻撃を弾き返す。

 白色をした引き締まりスラリとした肉体のドラゴンが宙を駆けて、両腕の刀のようなブレードで隙をみせた相手を容赦無く叩き落としている。

 

 そんな崩れることなき城塞と吹き荒ぶ白刃の嵐に、群れのみんなは臆することも退くこともなく突撃していった。

 僅かな時間しか持たないのに、前線に出て身体を張って攻撃を受け止めるグレーター。

 掠っただけで真っ二つか四散しかねないのに、隙間を縫うように飛び回るウィングド。

 常に隙を伺い、前線の壁が空いてしまうとすぐさま飛び出して穴を埋めつつ状態異常に侵そうとする色とりどりのコケダマたち。

 

 互いに一歩も退かない死闘。

 死ぬとわかっていても飛び込む献身。

 

 私は思わず、怒らせてしまうことを知っていながら「鑑定」を使っていた。

 ——あれが《地龍》

 ——あれが、強者の力。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「欲求LV1」が「欲求LV2」になりました》

 

 さすがに仲間が次々やられているのを見過ごすことはできないのか、家主さんのアークコケダマが今迄見せていなかった速度と空間機動を駆使して突撃する。

 

 急な加速に、振り落とされそうになりながらも必死でしがみつく。

 兄弟姉妹たちは戦闘が始まった時点で既に深く苔のなかに潜り込んでいて、ただ呑気に表層で突っ立ったままだったのは私だけだった。

 

 そして、その巨体を生かして仲間の盾となる。

 重傷のグレーターを後ろに下げて、自身は魔力を滾らせて威圧していた。

 

 アークがついに出てきたのを見て、地龍たちは警戒をあらわにする。

 そして、アークほかコケダマたちも様子を窺うように睨み合う。

 さっき見たステータスでは、地龍とアークコケダマは同等もしくは地龍のほうがやや低い感じであるけど、地龍はニ体一組でお互いに連携し合い隙がなく、アークほかコケダマの群れは単体では地龍からすればなんとかなる程度の相手であろうとも、群れ全体でみれば地龍が勝利する可能性は非常に少ないだろう。

 

 ほんの一瞬の睨み合い、けれど何倍にも感じられた時間が流れる。

 そして、ついに状況が動き出す。

 

 紫色の地龍が大地魔法で壁と足場を作りつつ、後退する。

 そしてその間を駆けて、牽制に重点を置くような動きをする白い地龍。

 そんな地龍に対して、魔法の雨あられを降らせ続けるアークとコケダマたち。

 

 私は、一瞬も見逃さないように隠れることなく見続けていたのが悪かったのか、身を挺して守るアークに白い地龍のブレードが迫ってきていることに気づくのが遅れた。

 

 そのブレードの軌道はアークコケダマの上部を狙った動きで、お互いこのままの動きではほんの僅かに掠めるだけに留まる一撃であったが、隠れることもせず逃げ出すことを忘れていた私には、あまりにも致命的な刃が迫っていた。

 

 風音と爆発音が消える——

 見えている世界の色彩が消える——

 感じられる情報が純化して、迫りくる刃の動きと反応のみ感じるようになる——

 

 そしてそれは、私のスレスレを通り過ぎていって——

 

 

 ————ッ!! 

 

 宙を転がる。

 上下が目まぐるしく入れ替わり、視界が意味を持たなくなる。

 けれど飛び抜けた感知能力によって、自分と周囲の状況は問題なく把握できて。

 

 運良く直撃を避けられたものの、通り抜けた風圧で私は吹き飛ばされアークコケダマの背中から突き落とされたことを理解して、けれどそれに反応して対応する前に暗い地面が迫っていた。

 

 ——ぐぅぅぇっッ。

 

 勢いよく硬い岩肌と激突し、そのままゴロゴロと転がって洞窟の壁際まで滑っていく。

 そして、壁にぶつかって上空に一度大きく跳ね上がった後、ゆっくり地面に落下する。

 

 ぁ、うぅぅっ……ッ。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル……

 

 頭の中に声が何度も響く。

 けれど、私はそれをきちんと認識できずに痛みで意識が溶けそうになるも、ギリギリのところで繋ぎ止められる。

 

 ぼんやりしたまま周囲を把握すると、地龍とアークコケダマたちは、互いに痛打を与えられずに戦い続けていた。

 少しずつ退いていく地龍たちは、障害物を作りつつドンドン距離を離していく。

 そして群れの仲間をやられた怒りからか、追撃を続けるコケダマたち。

 

 地龍とコケダマの群れはドンドン離れていき残されたのは、すでに死んでしまったコケダマと、自力で動けないほど瀕死になったコケダマだけだった。

 

 そして私も取り残された側で……

 

 イッ、たぁぁッ、ぃっ……、いたぃよぉっッッ……

 

 激痛が絶え間なく襲う。

 身体の一部が欠けてしまったような喪失感に苛まれる。

 けれど、意識は消えず死を間近にして雑念が消えていき澄み渡っていく。

 

 いまだ効果は低いとはいえ、治療魔法をいままで最も美しくそして素早く組み上げると、自分へ何度も掛け続ける。

 そして、まだ息があるけど瀕死の、仲間である(・・・・・)、コケダマへと這いずってゆく。

 

 残りHPが2桁を割りそうなコケダマを見上げ、私は——

 

 

《経験値が一定に達しました。個体、スモールコケダマがLV5からLV6になりました》

 ︙

 

《経験値が一定に達しました。個体、スモールコケダマがLV8からLV9になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

 ︙

 

《条件を満たしました。称号「悪食」を獲得しました》

《称号「悪食」の効果により、スキル「毒耐性LV1」「腐蝕耐性LV1」を獲得しました》

《「毒耐性LV1」が「状態異常耐性LV4」に統合されました》

《条件を満たしました。称号「味方殺し」を獲得しました》

《称号「味方殺し」の効果により「外道攻撃LV1」「禁忌LV1」》

《条件を満たしました。称号「血縁喰ライ」を獲得しました》

《称号「血縁喰ライ」の効果により、スキル「外道魔法LV1」「禁忌LV1」を獲得しました》

《「禁忌LV1」が「禁忌LV1」に統合されました》

《熟練度が一定に達しました。「禁忌LV1」が「禁忌LV2」になりました》

 

 

 

 ——ふふふっ、あはは、あははははハハははははハははははははハハはははハハはは

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「欲求LV2」が「欲求LV3」になりました》

 

 痛みが消えた身体を確認しつつ、周囲を森羅万象で把握する。

 食べるのに時間をかけすぎていたのか、もう生きているコケダマは私しかいなかった。

 そして群れも、感知範囲の端ギリギリまで進んでいて追いかけるのは無理な距離にいた。

 

 私は、——ただ何をするでもなく、今喰らい尽くした仲間の死骸の前で、微動だにしなかった。

 

 ——アあぁ、まタ食べちャった、今度ハ、仲間ダったのにネ。

 

 私は、口に残る青臭い苦さと酷い臭い体液の味を感じつつ呆然としていた。

 そこに広がる千切れた苔と濁った黄色い液体は、私がやったことを世界に示していて。

 周囲に転がる息絶えたコケダマの光なき目は、私を批難しているようで……

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「過食LV2」が「過食LV3」になりました》

 

 ふふっ、あハは、ごめんネみんな、でもみんな一緒だヨ? みんナは私だかラ(・・・・・・・・)……

 仲間で、兄弟で、家族だからこそ、強く咀嚼して血肉に変える。

 忘れない、忘レナイ、わすれないワスレナイ、忘れないから……

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「欲求LV3」が「欲求LV4」になりました》

 

 ダカら……、私は強くなるよ、みんなの分まで。

 

 外道無効でも防ぐことが出来ない傷が、私の魂に刻まれていく。

 それは、私のナニカを取り返しのつかないほど壊したけれど、私に飽くなき狂熱と苛烈な想いを与えていた。

 

 全てのコケダマの死骸を喰らいつくして佇む私は、悲しみの中で決意と誓いを捧ぐ。

 私は、生きるよ。

 みんなのぶん、より強く、より長く、より多くを手にするから……

 

 そして私は進み始める。

 酸鼻な光景を後にして、歩いていく。

 

 少し離れた場所で戦いが起きているのを察知した。

 それは、たくさんの猿の集団が、一匹の小型な蜘蛛の魔物を襲っているものだけど、優勢なのは蜘蛛の方だった。

 

 どっちが勝つにしても構わない。

 私は、強くならなくちゃ。

 

 私は、——私は、——私、は、ツ、ヨ、クッ。

 

 思考は冷静に、けれど熱に浮かされた心のままに私は進む。

 自分が、これからどんな道を進んでいくのか、何も知らないままに。

 

 地獄の果実を食べた少女は、涙と共に穢れに縛られていくのであった……




苔森 真理(こけもり まり)
 クラス全体と広く関係がある。小柄で明るい言動から愛でられている、だが突拍子もない行動についていける人がおらず、深い交流を持っているクラスメイトはいない。漆原グループとも長谷部グループともその日の気分で移動する渡り鳥。若葉 姫色に対してもちょっかいやイタズラを仕掛けていた強者。自分の心に素直すぎるほどで、幼少期は非常に手のかかる子だったとか。

正直、ステータスの数値や補整など適当に決めています。基準がよくわかりません。
感想・評価、お待ちしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。