【完結】コケダマですが、なにか?   作:あまみずき

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かおす回。あいきゅぅをさげて、よんでねー。
今回の文体で読むのを辛いと感じるのでしたら、後半の魔王様視点までスクロールしてください。


26 旅の恥はかき捨て

 お酒を飲んじゃったコケちゃん()は、ふわふわした気分のままお酒を飲んでいきます。

 

 両手でコップを持ってクピクピのむ姿は、たいへん愛らしいものです。

 

 さて、コケちゃん()がお酒を飲んで意識がポヤポヤしているとき、ほかの人は何をしていたのでしょうか? 見てみましょう。

 

「まだまだあるからねー。ジャンジャンいこー!」

 

 まおう少女アリエルちゃんは、お酒をコップに入れるとすぐ一気飲みして、あっという間にお酒が入った樽を空っぽにしてしまいました。

 くれぐれもよい子のみんなは、一気飲みをしちゃダメですよ? 急性アルコールなんたらで危ないのです。

 

 そしてアリエルちゃんは、1樽目を空っぽにすると2樽目のお酒を開けました。

 そう、アリエルちゃんはお酒を樽で、それも何個もいっぱい買ってきたのです。

 

 こんなにあっては飲みきれません。

 そう思うのがふつうですが、なんとアリエルちゃんが1人で樽いっぱいに入ったお酒を飲み干していたので、たぶん大丈夫なのでしょう。

 

「ふふっ、ふふふ……」

 

 白ちゃんは、お酒が入ったことで気分が良くなっているようです。

 アリエルちゃんに対抗してか早いペースでお酒を飲む白ちゃんも、ドンドン樽のなかみを少なくしていきます。

 

 けど、アリエルちゃんほどお酒になれていないのか、お顔が真っ赤です。

 おめめをグルグルさせた白ちゃんは、お酒の力かテンションが高くなっているようです。

 

「キュー……」

 

 あらあら、コッソリお酒を飲んでみたソフィアちゃんはひとくち飲んだだけで倒れちゃったようです。

 ちっちゃい子がお酒を飲んだらダメなのが、はっきりわかりますね。

 

「う、ひっく、ううぅ……ッ」

 

 おや、メラゾフィスくんが泣いています、どうしたのでしょうか? 

 どうやら彼は、人間としてのあり方と吸血鬼のあり方とで、悩んでいるようです。

 それがお酒の力によって、出てきちゃったのでしょう。

 

 そんなメラゾフィスくんを見た白ちゃんは、無理矢理メラゾフィスくんにお酒を飲ませます。

 お酒を飲まされて慌てるメラゾフィスくんを、ケラケラ笑う白ちゃん。

 わるい子です。

 

「ゲホッ、ゲホッ!」

 

 メラゾフィスくんが怒っています。

 睨まれた白ちゃんは、のほほんと笑っています。

 

「うん、そっちの方がいい顔だー。ウジウジしてるよりよっぽどマシ」

「あなたに……、何がわかるッ!」

 

 メラゾフィスくんが大声で叫びます。

 

「何もかも失って、その上吸血鬼になってしまった私の気持ちが、あなたにわかるか!?」

 

 メラゾフィスくん、迫真の叫びです。

 それに答える白ちゃんですが……あっ、どこいくのコケちゃん()!? 

 

 コップのお酒が無くなってしまったコケちゃん()は、一滴も残ってないコップを悲しそうに見つめますが、樽の中にはいっぱいお酒が入っていることに気づくと、フラフラと立ち上がります。

 

 アリエルちゃんは、言い争う白ちゃんとメラゾフィスくんか、それとも身体を右へ左へユラユラさせてお酒の樽に向かうコケちゃんか、どっちを見るか迷っているようです。

 

「あはは~、よいしょぉー!」

 

 お酒が入った樽のそばに来たコケちゃん()は何ということでしょう、とっても重そうな樽の1つを両手で抱えて運んでいきます。

 その樽を元いた場所まで持ってくると、蓋をちっちゃなおててで何度も何度も叩いて強引にこじ開けます。

 

「えいっ、えいっ」

 

 かわいいセリフに反して叩かれた樽からは、ちょっとシャレにならない音が聞こえます。

 そして蓋が開いた樽に抱きつくとフチにあたまを乗せて、樽の中になっがーい舌を垂らして入れると、ちぅちぅお酒を吸い始めました。

 

「ちゅぅぅ…………。ちぱっ、おいし~、あはは~」

 

 息継ぎのために口を開くと、ふだんの落ち着いたしゃべり方とはちがう、鈴を転がすような幼く甘い声がコケちゃん()の口から響きました。

 

 そして再び樽の中に舌を入れると、その独特の作りになっている舌をストローのようにしてお酒を飲み始めるのでした。

 

「えへへー、ちぅぅ……」

 

「どうする?」

「死ねない! 私は、お嬢様のためにも、まだ死ぬわけにはいかない!」

 

 おや、どうやら白ちゃんとメラゾフィスくんとの言い合いも、大詰めに入っていたようです。

 首元に鎌を突きつけられたメラゾフィスくんは叫びます。

 その答えに満足したのか、白ちゃんは鎌を下ろしてニッコリ笑います。

 

「生きる意味とか、誇りとか信念があるなら何迷う必要があんの? 吸血鬼になったらそれに影響あんの? ないならそんなの些事だよ些事、くだらない」

 

 白ちゃんはメラゾフィスくんの悩みを一刀両断したようです。

 メラゾフィスくんは白ちゃんの言葉に核心を突かれ、呆然とうなだれていました。

 

 崩れ落ちるメラゾフィスくんとは対照的に、白ちゃんは気分良くお酒を飲み始めるのでした。

 

「吸血鬼じゃなかったらいいの?」

 

 おや? コケちゃん()が会話に入ってきました。

 どうやら一部しか聞いていないようです。

 

「えっ……? いや、私は吸血鬼になったことに文句などございません。ただ血を吸うことに罪悪感を覚えていただけで……、それももう、白様の言葉で目が覚めました」

 

 メラゾフィスくんは憑き物が落ちた顔で、自分自身のことを笑います。

 けれど、コケちゃん()は今の言葉も半分しか聞こえていなかったようで……

 

「血を吸わなくても済むなら、それでいいの?」

「え、……えぇ、そうですね??」

 

 メラゾフィスくんが困惑しています。

 まばたきせずジッと見つめるコケちゃん()は瞳孔の開いた瞳を輝かせ、再び確認します。

 

「なら、メラゾフィスは血が必要で無くなればいい、そう思っているんだよね?」

「いえ、私はもう……」

「待っててっ!」

 

 メラゾフィスくんの答えをヘンに受け取ったコケちゃん()は、走り出します。

 背後では、メラゾフィスくん以外のみんなも困惑しているようです。

 

 そして酔っ払ってしまいスヤスヤ眠るソフィアちゃんのそばにしゃがみ込むと、ジッと彼女を見つめます。

 しゃがんだ姿勢からピクリとも動かないコケちゃん()は、その瞳にどうやらソフィアちゃんの魂を映しているようです。

 

 魂を把握する力を最大限発揮して、ソフィアちゃんの魂に結びついた力を紐解きます。

 そして関係ないスキルや称号の術式の中から、お目当ての術式を見つけ出します。

 

 見つけた術式を、本能に近い幼い思考ながらも研ぎ澄まされて純粋になった演算能力で、記憶し脳内に構築を再現していきます。

 

 けれど、最後の1ピースが上手く見えません。

 このままでは術式が完成しない、そう思ったコケちゃん()は眠っているソフィアちゃんの胸に指を突き立てました。

 

「えいっ」

「すぅすぅ……ッ!? ごふッ!?」

「お嬢様!? 苔様なにを!?」

「ちょっ、コケちゃん!?」

「うっわ……」

 

 なにやら後ろが騒がしいです。

 でも、そんなことコケちゃん()は聞こえていません。

 

 ソフィアちゃんの心臓に触れた指から最後の1ピース、真祖の術式をコピーしました。

 そして血を吐くソフィアちゃんの胸から指を引き抜くと、青い顔をしてヒューヒューか細く息をするソフィアちゃんに癒やしの奇跡を掛けてあげます。

 

「これでよし! つぎ~」

 

 片手を血で染めたコケちゃん()はメラゾフィスくんに近づきます。

 返り血に染まって笑顔を浮かべるコケちゃん()に、メラゾフィスくんは足が下がってしまいます。

 

 何故か逃げていくメラゾフィスくんにコケちゃん()は首を傾げると一気に近づいて押し倒し、メラゾフィスくんに馬乗りになります。

 大人の男の人が痛みに情けないうめき声を上げていると、お腹に乗ったコケちゃん()が天真爛漫な笑顔で言います。

 

「えへへー、さきっちょだけ、一瞬でおわるから~」

「苔様!? おやめ下さい!?」

 

 なにやら勘違いしたメラゾフィスくんが暴れています。

 けれど悲しかな、コケちゃん()とのステータス差は圧倒的なのです。

 

「えいっ」

「ぐぅッ!?」

 

 血塗れの指をメラゾフィスくんの心臓に突き立てます。

 そして——

 

「術式複製……転写、転写……転写……、えらー、劣化、一部失敗、修正……、修正……」

 

 コケちゃん()がブツブツ呟きながら、メラゾフィスくんの魂にさっき憶えた術式を書き込んでいきます。

 強制的に魂に術式を刻まれているメラゾフィスくんは、あまりの激痛に泡を吐いて狂ったように暴れます。

 

 それを足で押さえつけながら刻み続けるコケちゃん()の術式はちょっと劣化してしまい、システムも突然起こったバグを修正するために、メラゾフィスくんに新たな称号を与えました。

 

「んー? 始祖? まぁ、いっか!」

 

 とりあえず目的の効果を与えることに成功したコケちゃん()は、気絶したメラゾフィスくんの上からどいて、胸に空いた傷を治療します。

 

 気絶しているメラゾフィスくんを突っつくコケちゃん()に、突然の凶行で動くことが出来なかった2人の視線が突き刺さります。

 

 アリエルちゃんは、あんぐり大きく口を開けて。

 白ちゃんも半目で、ないわーと言っています。

 

 そしてメラゾフィスくんに術式を刻みつけて疲れたのか、フラフラとお酒の樽まで戻ってくると、それに抱きついて眠ってしまいました。

 

「ひゅぴー、くぴー……」

 

 独特の寝息を立てて眠るコケちゃんを見て、残された2人は困惑した表情で顔を見合わせると、完全に酔いが醒めた頭を抱えるのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 えぇ……。

 なにこれ、どうすればいいの? 

 

 私は2樽分も酒を飲んだというのに、ついさっき起きた出来事で一気に酔いから醒めてしまい、片手で押さえた頭が二日酔いとは違う頭痛を訴えているのに、気が滅入りそうになっていた。

 

 出来事を順番に整理すると、このようになる。

 

 まず私と張り合うようにお酒を飲んでいた白ちゃんが酔っ払うと、ハイテンションになって誰とでも喋るようになり、メラゾフィスくんに絡みだした。

 

 無理矢理酒を飲ませる白ちゃんにキレたメラゾフィスくんは、その勢いのまま白ちゃんに食って掛かり、吸血鬼になってしまった私の気持ちがわかるのか、と叫んだんだよね。

 

 で、白ちゃんはそれがなんだと、こちとら一回死んで全て無くして、その上蜘蛛だよ? 吸血鬼なんてちょっと不便で血を吸わなくちゃいけないだけじゃん? と論破した。

 

 それを聞いたメラゾフィスくんは言葉を失い何も言えないでいる間に、白ちゃんが次々と喋ってソフィアちゃんにも同じことが言えるのか、ソフィアちゃんが前を向いているのにお前はどうなんだと諭して、そんなに嫌なら死ねばいいと鎌を突きつけた。

 

 本気の本気を示すように威圧を開放して選択を迫る白ちゃんに、顔を青くしたメラゾフィスくんは震えながらも、死ねない、お嬢様のためにも死ぬわけにはいかないと、意地を見せた。

 

 その答えに満足した白ちゃんは鎌を下ろして笑い、答えがあるなら迷うことは無いと、そう言い切ってメラゾフィスくんの悩みを断ち切ってしまったんだよ。

 

 呆然とするメラゾフィスくんだったけど、その顔には今までの苦悩は消えていて彼の中で一つの答えが生まれたのを感じた。

 ここまでだったら、白ちゃんが悩みを解消させたこと以外には納得できる、いい話だったなーで終わるんだけれど問題はここから。

 

 いままで大人しく静かに……、いや酒を樽で持っていき力づくで蓋を抉じ開けて飲んでいたので静かとは言えないのだけれど、会話にも参加せず1人で飲んでいるだけだったコケちゃんが、急に白ちゃんとメラゾフィスくんの会話に混じってきたんだよ。

 

 で、コケちゃんはメラゾフィスくんに、吸血鬼じゃなかったら良かったのか? 血を吸う必要が無くなればいいのか? と聞いたら困惑するメラゾフィスくんの反応を無視して1人で納得をし、ソフィアちゃんの元に向かうとしゃがみ込み彼女をジッと見続けた。

 

 数分そのまま動かずにいて不思議に思っていると、突然コケちゃんはソフィアちゃんの胸に指を突き立てる凶行に及んだ。

 

 激痛で目を覚ましたソフィアちゃんは暴れるけれど、それを押さえつけて何かを見続けるコケちゃん。

 その行動に驚愕した私たちはコケちゃんを止めるために動こうとしたけれど、その前にコケちゃんは指を引き抜き傷跡もなくソフィアちゃんを治したけれど、凶行はそれだけで終わらなかった。

 

 なんと今度はメラゾフィスくんに馬乗りになり、抵抗する彼を押さえつけるとソフィアちゃんの血で染まった右手を彼の心臓に突き立てた。

 

 明らかに普通の苦しみ方ではないメラゾフィスくんを無視して、無機質な声色で跡切れ跡切れに呟き何かを行うコケちゃんに、私と白ちゃんは気圧されて飲み込まれてしまい動くのが遅れてしまった。

 

 そうして私たちが手をこまねいている間にコケちゃんはメラゾフィスくんに何かを施すと、気絶した彼を治療して離れると、酒樽の元に戻って抱きしめると寝息を立て始めたのであった。

 

 

 一先ず寝落ちしたコケちゃんが何かしないか注意を払いつつ、気絶したメラゾフィスくんの状態を確認すると、以前には無かった称号とスキルが増えていた。

 

《始祖:取得スキル「不死体LV1」「視覚強化LV1」:取得条件:自力で吸血鬼になること:効果:吸血鬼のマイナス効果を半減する:説明:吸血鬼の祖たるものに贈られる称号》

 

 おかしい。

 メラゾフィスくんはソフィアちゃんから血を吸われたことで吸血鬼になったのだから、この条件を満たしているはずが無く達成は不可能なはずなのに、何故か始祖の称号を所持していた。

 

 そのほかにはメラゾフィスくんに異常は見られず、気を失っていること以外には何処にも問題は存在しない健康体だった。

 

 その後もソフィアちゃんの状態を確認したり色々あったけれど、ソフィアちゃんとメラゾフィスくんの2人には、それ以外に異常は無くてむしろ過剰なまでの治療魔法で細かい傷まで完全に治されていた。

 

 これ以上は調べようにも私の手に余ると判断した私は、再び酒を飲み直すのであった。

 

 はぁぁ……白ちゃんだけでも悩みの種なのに、問題がまた増えた……

 

 荒々しくコップを酒樽に入れて掬うと、私は浴びるように一気飲みをするのであった。

 

 

 

 

 

 

「コケちゃん、昨日のことだけど……」

「忘れて下さい……っ」

 

 ぼんやりと憶えている昨夜の記憶に、私は羞恥のあまり誰の顔もまともに見ることが出来そうになかった。

 なんでっ、あんなっ! 言動をっ!? 

 

 昨日の記憶に赤面しながら、私はメラゾフィスさんに施した術式のことを考える。

 何をやったのか理解は出来るけれど、それを素面の状態で再現するのは自分でもよくわからない感覚が思い出せず抜け落ちているせいで、同じことをもう一度やるのは不可能だと感じていた。

 

 あの、魂に直接触れていた感覚は、いったい……? 

 

 自分が行ったことに疑問を持ちながらも、私は1つ思うことがあった。

 

 もう! 二度とっ! お酒は飲まないっ! 




女児(酔っぱらい)、女児(実年齢的に)、女児(ガチ赤子)、女児(偽)、女児(人形)×4、
保育士さん(苦労人)
メラゾフィスくん、かわいそう()
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