——ブレスの検証。
スキルには、1つのスキル内で様々なパターンで現象を発動させられるものがある。
代表的なのが魔法スキルであり、レベルごとに効果や性能が違う魔法が1つに収められている。
まあ、今となっては普通の魔法スキルは無駄が多いことを理解したので、後々自分なりの魔術として理解し組み直す必要があるけれど。
物理現象で再現できそうな魔法は後回しにして、目下空間魔法の理解を深めて魔術化が目標。
他にも身体能力強化も、システム側のステータスと干渉して効率が悪いし改善点も多い。
それはともかく。
魔法スキル以外にも複数の効果を持つスキルがあって、今回検証するのは神龍力というスキル。
ステータス上昇、魔法の効果を減少させるなど、龍がもつ力を再現させるスキルと言ってもいい。
これらの能力を素で保持している龍とは強力な存在だけど、他にも龍と言えばこれと言う非常に有名な技があるのはご存知だろうか?
そう、ブレスである。
祝福じゃなくて息吹のほうね。
口から破壊力を持った息や炎などを吐き出す攻撃方法。
ドラゴンが出てくるアニメやゲームとかでは、ビームみたいに色んな物を破壊しているアレ。
もちろんこれも神龍力で再現することが可能で、本家本元に比べると劣化品ではあるけど使った本人のステータスに威力が左右されるので、今の私や白ちゃんが使うととんでもない威力になる。
そしてブレスの属性も、使った本人の得意属性で発動されるらしい。
白ちゃんは、紫色混じりの黒い奔流といった見た目の闇属性。
私の場合だと、夜空のような漆黒の下地にオーロラのような極彩色が揺らめくような、幻想的だけど何処か不気味な印象を受けるブレスが発動した。
どうやら私のブレスは外道属性らしくて、そのまま何も意識せずに発動して撃つと破魂の効果が乗ったブレスが吐き出されるらしい。
あきらかに封印確定の技なので、なんとか破魂の効果を消そうと努力した結果、破魂のかわりに幻狂の効果が発動するブレスを撃つことが出来るようになった。
……まあ効果特性を変えるのに結構集中力を使うし、そもそもブレス自体が普通の魔物相手ではオーバーキルなので、結局あまり使わないことになると思うけれど。
高威力の大技としては優秀だけど、手数や範囲では魔法を使ったほうが効果的だし扱いやすい。
格下相手なら鱗粉系のスキルだけで何もさせずに完封出来ちゃうし。
そういえば私のブレスを見た白ちゃんが、
「玉虫色……、テケリリ? 宇宙的恐怖? イアイア?」って言っていたけれど、どういう意味だったのだろう?
あとで聞いておこう。
あと他には私の場合だと飛行中にブレスを発動する練習もしてみたけれど、空中でブレスを発動させると反動で大きく位置が動いてしまうので、同時に姿勢制御も全力で行わないと狙った場所を安定して攻撃出来ないのが問題だった。
緊急回避的に移動目的で使うのも悪くはないけれど、攻撃としても使えるように飛行能力の向上は必要かな。
下手に撃って錐揉み回転し墜落することになるのは、1回だけでいいので。
白ちゃんがブレスを使う場合だと、人型と蜘蛛型の2つの口から同時にブレスを吐くことが可能なので絵的にもすごくカッコイイと思うのだけど、それを言ったら微妙な表情をしていた。
なんでも見た目が美しくないとのことらしい。
実にファンタジーしてて、カッコイイと思うんだけどなあ。
結局ダブルブレスは、意地でも見せてはくれなかった。
——コケの魔道具店。
「虫指に魔蛾の翅、21センチ。貪欲に取り込み解き放つ」
私は出来上がった杖を眺めながら、そう呟いた。
素材は自分自身であり、用意するときだけ毎回少し勇気がいるけれど、すぐ元通りに出来るので掛かる費用は自分の魔力と体力だけ。
お値段プライスレス。
費用がかからない意味でも、価値がつけられない意味でも、どっちでも。
「いや、それまともに使えるのコケちゃんだけだからね? 何この性能の杖、ピーキーすぎる」
杖を鑑定したらしいアリエルさんが、呆れと感嘆の混じった表情で杖を評価する。
杖の芯である翅に魔力などを溜め込む性質があるので、あらかじめチャージをしておけば少ない魔力で高威力の魔法などを連発出来るのが、この杖の利点である。
まあ、私以外が持った場合、強制的に魔力を吸われてしまうし貯め込む許容量が多いからこそ、魔力が足りない人が持つと一瞬で魔力を食われ魔力欠乏に陥り干からびかねないのが欠点だけど。
「単純に魔力電池以外にもこういう使い方も出来るよ」
そう言って私は杖に魔力を流し込み同調させて、芯材を対象にスキルを発動させる。
分離したとは言え、元は私の翅である芯が死滅の力を帯びた鱗粉を内部で生成していく。
そして杖を何もない場所に向けて振るうと、先端から腐食属性を帯びた弾丸が発射された。
「あばだ……」
「ストーップ!! 何とんでもない物作ってんのさ!?」
「これで私のも作ってくれる?」
「もちろんいいよー」
アリエルさんのツッコミをスルーし、私は期待に満ちた目をしている白ちゃんから白い脚の一本を受け取って、これをどう加工するべきか考える。
攻撃性能を求めて闇属性と腐食属性を全面に押し出すか、それとも空間魔法を補助する道具として制御の基点となる空間指定に特化した性能にすべきか……
大鎌が完全に攻撃力特化だから、ここは補助に長けた杖にするのがいいかな。
どんな完成図がいいのか白ちゃんと相談していると、アリエルさんが激怒し肩を震わせ息を荒く吐きながら会話に混じってきた。
「ぜーっ、はぁぁ……。もう出来上がった杖については今更言っても仕方ないから置いとくけど、他にも何か作ってるのがあったら出しなさい!」
背後にオーラが見えて空気が震える音が聞こえそうな、というか実際に威圧を解放されて物理的にも圧力が掛けられるほど怒られたので、素直に今まで作ってきたものを見せた。
「ふむ、耐性訓練用の拷問道具の数々に……、これは鑑定石の類似品かな? 込められたレベルも高いし、かなり実用的。で、これはコンロ?」
積み上がった無数の魔道具を瞬く間に仕分けしていくアリエルさんは1つ残らず全てチェックを終えると、最後にこう言った。
「そこまで変なのは多くなかったけれどダメな物もあったから、こっちのは処分ね」
「そんなー!?」
たしかに失敗作ばかりだけど、面白いと思って残していたのに。
どれもこれも手間暇掛けて作った作品の数々が、無造作に投げられ山となる。
「あの杖はギリセーフとしても、こっちの銃っぽいやつはアウトだし。それに何これ? 腐食攻撃を発生させる包帯って……、耐性あげる前に着けた人が死ぬわ、こんなの」
そう言って次々握りつぶされて粉々になっていく魔道具たち。
その包帯作るのが凄く大変で、付与が酷く難しく何度も材料の翅が塵になり私自身も何度も指が消し飛びながら作り上げた、文字通り血が滲むような超大作なのに、あぁ……
私はアリエルさんの手によって塵になっていき、再利用も出来ないように焼却処分される魔道具たちを呆然と眺め、静かに涙するのだった。
——髪型いじり。
旅の道中ではそう頻繁には行わないけれど、身体を清めるのも大事なこと。
浄化といった一回魔法を使えば洗浄完了みたいな便利なものは無いので、水魔法で水を用意しては身体を洗うといった、基本的には前世とそう変わらない内容である。
というか旅の最中でも水の確保に困らず身体を洗えるのだから、魔法があるだけで相当旅が快適に進められているので非常に便利である。
人型になってから髪がとても長くなったので、少しでもしゃがんだりすると地面に付いてしまい汚れる機会も多いので、魔法で手軽に洗えるのは大変助かっている。
今日も汚れを水流で洗い流し、濡れた髪はそよ風を制御して乾かしていると、背後に白ちゃんが居た。
「ん、なに……? おぉ……?」
白ちゃんは、ほぼ乾いていた私の髪を手に取ると素早く手を動かしていき、しばらくすれば太く束ねた大振りの三編みが背中で揺れていた。
「おぉー、白ちゃんとお揃いだ」
「ふふん、どうだー。他にも試していい?」
「いいよー」
基本的に髪型はそのまま降ろしていただけだったので、纏めてあるのは新鮮だった。
髪がバラけず1つに束ねてあって首周りや背中がスッキリしているけれど、纏めているとなんか締め付けられて息が詰まるような感じがして落ち着かない。
そして、ポニテ、ツインテール、ハーフアップ、おだんご、おさげ、などなど色々と髪を弄られ、同じ様に白ちゃんの髪型も弄ったりしたけれど、結局どっちも普段の髪型が落ち着くということで元に戻したのだった。
それからしばらくして、白ちゃんの髪型弄りの熱は私だけに留まらず、その矛先はパペットたちに向かい複雑怪奇な髪型を施しては、彼女たちに変なインスピレーションを与えるのであった。
——産卵スキル取らないの?
ある日、スキルについて情報共有をしていた時のこと。
突然白ちゃんから、こんなことを言われた。
「コケちゃんも元々の種族が虫だし、産卵のスキル取れると思うけど、獲得しないの?」
「え゛っ……?」
そして産卵スキルの効果と有用性についての説明を聞いたけれど、それでも私としては取得するのは遠慮したかった。
「いや、だって……、結婚とかもそういうことも無しに子供作るって……、ちょっと……」
産卵スキルで生み出されるのが自分自身のクローンみたいなものだとしても、私自身が卵を産むことになるのは、さすがに心理的抵抗が大きかった。
以前の蛾の姿だったのなら、まだ抵抗はそこまで無くて取得したかもしれないけれど、今は人型になった上にこの体格だよ?
それだと絵面的にかなりマズイことになるのではという思いもあった。
私自身の身体の構造的に尾底骨付近から太く生えている尻尾みたいな腹部、この末端にある部分からだと思うけれど、アリエルさんとそう身長や体格の変わらない私が? 卵を産む?
……それはちょっと、犯罪チックではないかなぁ。
指を突き合わせ視線がものすごく泳ぎながら言うと、白ちゃんもそれがどういう意味かを理解し顔が赤くなっていた。
「ちょっ、おまっ! それは私が性に奔放なアレだと言いたいのか!?」
「誰もそこまで言ってない!」
ギャーギャー言い合い、そのまま掴み合いの喧嘩なって互いの頬を抓り合う。
無意味な争いを数分間繰り広げ、赤くなった頬を擦りながら息を整える。
「ゼェー、ゼェー……。ともかく! 取得する気は無いからね!」
焼けるように熱い顔を冷ましながら、私は白ちゃんに向かって叫ぶ。
同じ様に肌が淡いピンク色に染まった白ちゃんも、私に向かって不穏な事を叫んだ。
「そこまで拒絶されると、意地でも首を縦に振らせてやる」
突然白ちゃんの指先から糸が飛び出してきて、私に向かってくる。
それを回避しようとするが距離が近すぎたので避けきれず、盾にした左腕に糸が絡みついた。
すぐ断ち切ろうとするけれどその前に白ちゃんが動く方が速くて、急激な引き寄せる力によって投げ出された私は瞬く間に腕ごと身体を縛り上げられ、宙吊りのミノムシとなった。
「ぐぅっ……」
「別にそっちの気は無いけど、折角だ。覚悟しろよぉー? ふぅぅ~」
「うひっ!?」
ニヤニヤと嗜虐的な笑みを浮かべた白ちゃんが、耳にそっと顔を寄せて息を吹きかける。
至近距離で熱気を帯びた空気が耳を撫で、近い位置にある触覚も微風に細かく揺らされて、首筋から背骨を通り抜け全身が鳥肌立つようなゾワゾワが走る。
「んなっ!? や、やめっ!?」
「ほれほれー? ここはどうじゃー」
「んっ、くぅ……」
片手で首筋をなぞるように撫でられながら、もう片方は耳たぶの溝を掘り起こすように揉まれる。
強張った首の筋肉を爪で突付かれ引っ掻かれ、耳元ではガサゴソとやけに大きな音が至近距離で鳴らされる。
その刺激が加わる度に反射的に身体が強張り身を捩るものの、糸に縛られた状態では首を左右に揺らすか足をバタつかせることしか出来ない。
暴れれば暴れるほど糸は食い込み、腕や翅などに強い圧力が掛かってくる。
「ふふ、ふふふ……。ちょっとヤバイなこれ、楽しくなってきたかも」
「うぅぅっ!? ふうぅぅぅぅ、ッッ!?」
歯を食いしばり声を出さないように堪えるものの白ちゃんは容赦無く指先で刺激してくるので、焼け付く熱が蓄積していき汗が吹き出して肌を流れる。
ワンピースの内側で、腰から生えた腹部がブワっと膨らんでは収縮して波打つのを、幾度も繰り返していた。
私は、このままではマズイと本能的に悟った。
私は…… 受け入れる。
≫拒否する。
触れようとしてきた指が接する前に、私はスキルを発動させた。
腐食の力が荒れ狂い、自分ごと糸を断ち切る。
自爆攻撃である腐食攻撃は私自身にも牙を剥くが、以前に耐性を高めるために修行をしていた事もあり肌などが酷く爛れる程度で済み、全身から血を流しつつも自由を手に入れた。
血まみれになりつつも糸から抜け出した私は、急速に飛び退いて大きく距離を取り10メートル以上離れたところで叫んだ。
「はぁっ、はぁッ! な、な、何してくれるんですか!? このバカー!?」
語彙力が小学生並になり、白ちゃんを罵倒する。
この後、地図を書き換えなくちゃいけないような規模の、ガチで本気の喧嘩をした。
省略されました。全てを読むにはわっふる(ry
(完全にアウトなので載せませんよ)