ウナギを倒した後、一息ついて次の進化に向けて確認をする私と蜘蛛子ちゃん。
蜘蛛子ちゃんは早々に進化先を決めたみたいだけど、私の場合はまたもや進化先が複数出てきたことで、そこからどれを選ぶべきか悩んでいた。
《進化先の候補が複数あります。次の中からお選びください。
・ パラライズコケダマ
・ ソーサリーコケダマ
・ ウィングドコケダマ
・ マユ・マリ 》
前回は三つで今回は四つも進化先が並んでいるので、上から順番に見てみようと思う。
《パラライズコケダマ:進化条件:スモールパラライズコケダマLV10:コケダマ種と呼ばれる芋虫型の魔物の希少種の成体。非常に強力な麻痺毒を持つ》
これは麻痺属性に特化したまま成体となって、ステータスが上昇する感じだと思う。
しかし、成体になるということは身体が大きくなる事なので、今までみたいに隠れたりする事が出来なくなるし、マグマに満ちた中層で大きくなると燃える危険性が高くなるので微妙だと思う。
《ソーサリーコケダマ:進化条件:一定以上の平均魔法能力を持つコケダマ種、魔法系スキル所持:説明:魔法に精通するコケダマ種と呼ばれる芋虫型の魔物の希少種。知能が高く魔法を操ることに長けている》
こっちは魔法特化な進化先。
私のメインウェポンの魔法が強化されるだろうからアリかもしれないけど、これも成体にあたる可能性があるので大型化してしまうかもしれない。
それに知能が高いというのもどれだけ高くなるのかわからないので、結果的に微妙な進化となるかもしれなかった。
《ウィングドコケダマ:進化条件:一定以上の平均速度能力を持つ小型コケダマ種:説明:コケダマ種と呼ばれる芋虫型の魔物が飛翔能力を獲得した希少種。高い移動能力を持ち空に羽ばたく》
こっちは群れにもいたので、進化先の姿について既に知っていた。
今よりやや大きくなり、薄い翅が苔の合間からニョキッと生えていて、それを使ってまるで風船みたいにフワフワ飛ぶことが出来る種族だったはず。
もちろん戦闘時には縦横無尽に高速移動も出来ていたので、低かった機動力が大幅に良くなるのは簡単に予想出来る。
ここまでは、どの候補にもコケダマの名前が入っているので、得意なことは違えどコケダマ種に連なる種族に進化するのが分かる。
しかし最後の種族は、謎に包まれた説明しか書いていなかった。
《マユ・マリ:進化条件:一定以上のステータスを持つ小型コケダマ種:説明:繭になる。苦難に耐え忍び遂に進化するとき、その身は生まれ変わるだろう》
ただ、繭になるとしか進化先の情報が載っていなくて、どんな能力を持っているのかとか重要な情報が一切乗っていないのが不安に感じる。
しかし説明に『苦難に耐え忍び遂に進化するとき、その身は生まれ変わる』とあるので、さらに次の進化では非常に強力な進化をすることが期待できそうな予感がしていた。
さすがに簡単には決められないので、それぞれの進化先とその説明を、蜘蛛子ちゃんにも伝えて相談をする。
私にも選ぶのが難しいと思った進化先について、蜘蛛子ちゃんもかなり悩んだみたいで一時間位話し合うことになった。
——主に蜘蛛子ちゃんが考え込む上に、向こうは筆談でしか意思疎通出来ないので返事が遅いのもあるけれど。
大きくなる可能性のある進化はナシ。
飛行能力は魅力的だけど下層の強者たちに対抗するには、より強い進化先に進まなくちゃ勝負にならないので、進化のルートが止まるかもしれないウィングドコケダマもナシとなった。
そして最終的に、私は謎だらけだけど、さらなる進化に期待を込めてマユ・マリに進化することを選んだ。
なにかあったら助けてほしいとも、予め蜘蛛子ちゃんにお願いをして、私たちは進化を始める。
倒したウナギの死骸でシェルターを作り上げて、身の安全と食料を確保してから、私たち二人は互いに眠りについた。
そして——
《個体スモールパラライズコケダマがマユ・マリに進化します》
︙
《進化が完了しました》
《種族マユ・マリになりました》
︙
《熟練度が一定に達しました。スキル「欲求LV9」が「欲求LV10」になりました》
《条件を満たしました。スキル「欲求LV10」からスキル「渇求LV1」に進化しました》
《熟練度が一定に達しました。スキル「禁忌LV3」が「禁忌LV4」になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル「禁忌LV4」が「禁忌LV5」になりました》
《進化によりスキル「繭」を獲得しました》
《スキルポイントを入手しました》
︙
目が覚めた時、感じたのは初めて意識を取り戻したときのような何かに包まれているような感覚だった。
そして今回は、意識はあれど身体を動かす感覚は、何一つとして感じられないものだった。
何も見えない溶けた視界は自分がどこにいるのかも把握できず、肉体からの感覚は全て機能していないように感じる。
普通の五感に頼れないので、森羅万象を起動し直し状況の把握に努めた。
そして状況を理解した時、なるほどこれは苦難どころではない状態だと気づいて、何故か分からないけれど可笑しくて笑ってしまいそうな、渇ききった気持ちが湧き起こっていた。
《マユ・マリ(苔森 真理) LV1
ステータス
HP:486/486(緑)
MP:1/2745(青)
SP:1000/1000(黄)
:1000/1000(赤)
平均攻撃能力:10
平均防御能力:636
平均魔法能力:2982
平均抵抗能力:636
平均速度能力:0
スキル
HP高速回復LV1 MP高速回復LV2 MP消費大緩和LV1
SP回復速度LV8 SP消費緩和LV8 状態異常強化LV6 魔力精密操作LV2
魔闘法LV9 魔力撃LV9 魔力付与LV10 魔法付与LV1
気闘法LV1 気力付与LV1 強麻痺攻撃LV4 昏睡攻撃LV1 毒攻撃LV9
酸攻撃LV9 外道攻撃LV8 麻酔合成LV8 催眠薬合成LV6
霊装苔LV1 鎧の才能LV7 立体機動LV6
隠密LV8 迷彩LV1 無音LV1 無熱LV1 無臭LV1
集中LV10 思考超加速LV1 予見LV8 並列意思LV1 高速演算LV2 記憶LV9
命中LV10 回避LV4 確率補正LV1 鑑定LV10 念話LV4
光魔法LV7 水魔法LV9 暴風魔法LV1 大地魔法LV1 重魔法LV7
治療魔法LV6 麻痺魔法LV4 睡眠魔法LV4 外道魔法LV5
物理耐性LV4 光耐性LV6 水耐性LV8 暴風耐性LV1 大地耐性LV1
重耐性LV6 火耐性LV3 状態異常大耐性LV1 酸耐性LV6
腐蝕耐性LV4 気絶大耐性LV4 恐怖耐性LV8 苦痛無効 痛覚軽減LV6 外道無効
暗視LV10 五感強化LV5 視覚領域拡張LV4
身命LV5 天魔LV10 瞬身LV4 耐久LV4
剛力LV1 堅牢LV6 天道LV10 護符LV6 縮地LV5
渇求LV1 過食LV8 繭 神性領域拡張LV4 森羅万象LV10
禁忌LV5 n%l=W
スキルポイント:5800
称号
悪食 味方殺し 血縁喰ライ 麻痺術師 睡眠術師 無慈悲 魔物殺し 魔物の殺戮者》
スキルが多数成長しているし見慣れないスキルも結構増えているけど、なによりも目につくのは極端すぎるステータスの数値。
MPと魔法能力が飛び抜けているのは前からそうだったけれど、その数値が元の倍近くまで増えている。
さらにHP・防御・抵抗もMP・魔法と比べたら低いけれど、進化前の100越えた程度であった数値からは想像もつかないほど成長している。
しかし、その代償とでも言うような、攻撃能力と速度能力の極端な欠如という、致命的な弱点のあるステータス配分になっていた。
一先ずステータスのことは置いといて、現在の見た目について確認する。
私が進化した後の姿は、深い緑色をしたフワフワな繊維質の繭になっていて緻密な糸の隙間から苔の一部がはみ出して姿を覗かせているのが伺える。
大きさとしては、元のスモールパラライズコケダマよりも一回り小さくなっていて、蜘蛛子ちゃんのお腹と同じか少し大きい程度に縮んでいた。
しかしそんなコンパクトな繭の内部には何も無くて、ドロドロの液体と高濃度の魔力がゆらゆらと蛹と化した身体の甲殻内で渦巻いているだけだった。
今の私の身体は液体状に溶けきっていて、感覚器官の何もかも無くなったからこそ五感の殆どが感じられなくなっているのだと、否が応でも理解させられた。
そして現在の肉体は液状であり、繭には手足も何も無い楕円の球体であることから、ステータスの平均速度能力が0という数値が偽りないものだと実感してしまうのだった。
……大まかな身体についての把握をしたので、改めてスキルを確認する。
なぜか進化後であるのにも関わらずSPが最大値に回復している原因もここにあるだろうから。
《霊装苔:魔力を帯びた苔。MP・平均防御能力・平均抵抗能力にスキルレベル×10分のプラス補正》
いままで特に効果のなかった苔鎧に効果がついてMPと防御抵抗に補正が掛かるようになった。
成長補正などは無いもののステータスを増やしてくれるスキルは重要なので価値はかなり高くなったと思う。
《渇求:強い渇きのような欲望を抱く者を示すスキル。経験値の回収能力が増加する》
レベルを上げやすくしてくれるスキルがさらに強化されたみたい。
前の欲求は効果が微増だったのに対し、こちらは増加と説明が変わっている。
けれど、これでも蜘蛛子ちゃんが持っている《傲慢》のほうが、圧倒的に性能が上みたい。
ほかには、迷彩・無音・無熱・無臭といった隠密系統のスキルが複数追加され、SPを消費して強化する能力の気闘法や気力付与といったスキルも追加されていた。
そして最後の追加スキル。
《繭:取得時にSP全回復。SPの消費速度を超緩和。食事不可になる。次に進化した際このスキルは消失する》
進化してもSPが最大値で残っていたのは、この繭というスキルの効果によるものだった。
普通は進化した後はMPとSPが空っぽになっているものだけれど、このスキルによってSPは全回復してSPの消費速度も物凄く減らしてくれているみたい。
だけど、デメリット効果として食事が不可能になる効果も付いていて、進化するまでは一切SPを回復させることが出来ないことを表していたのだった。
つまり今の私とは、身体を作り直す段階のまま形態が固定されていて、ここからさらにレベルを上げて今あるSPが尽きる前に次の進化にこぎつけないと、餓死してしまうという事なのだと理解してしまった。
最適の選択と思って決めた進化だけれど、とんでもない地雷が埋められていた進化先でもあり、説明が言う通りに苦難に満ちた道のりを乗り越えなければならなくなったらしい。
自分自身のことを確認していたら、先に進化していた蜘蛛子ちゃんが鋭くなった鎌のような前足にウナギの切り身を突き刺したまま立っていた。
そして私を鑑定して、どういう状況なのかを理解したみたい。
そんな蜘蛛子に、さっそくお願いをすることになる。
『私を背負って、戦ってくれる……?』
蜘蛛子ちゃんは少し考えた後頷いて、蜘蛛糸で私と彼女自身の身体を結び貼り合わせて簡単には落ちたりしないようにして、私を背負った。
しかし、このままでは糸などが直ぐ燃えてしまうので、私は水魔法で常に水流を循環させ続けて繋いだ糸を湿ったままにする。
本来なら、そんなことをしていると他の魔法の構築とかが覚束なくなるけれど、今の
——維持をお願いね。
——任せて、私。
並列意思LV1、もう一つの自分自身の意識を脳内に、いや魂に追加するスキル。
このスキルによって精神だけで発動できる能力は分担して扱えるようになった。
私の意識が二人分になるこのスキルは、魔法に関しては手数がそのまま二倍になったようなもので、MPの総量こそ変わらないものの出来ることが大きく広がった。
一人は、水魔法による冷却と魔法付与で火の抵抗力を与える魔法も、糸と私に蜘蛛子ちゃんにも加え続ける。
そしてもう一人は、索敵と魔法の援護に集中する。
結果的に、少し重くなったものの高機動高回避を持っていた蜘蛛子ちゃんに、強力な遠距離攻撃が自動で発動する私が乗っかった、移動砲台が出来上がった。
——動けないけど索敵と魔法は頑張るね。
え? いつの間に外道無効を? 忍耐? なら探知が使えるようになったね。
もう使った? 凄いよね、あの感覚——
蜘蛛子ちゃんは新たに忍耐という特殊なスキルを獲得していて、その時に一緒に外道無効も手に入れていたみたい。
なので、蜘蛛子ちゃんも索敵出来るようになったけれど、目は多いほうが良いので私も森羅万象での感知警戒は怠らないようにする。
魔法という分野では、ついさっき魔力を感じられるようになった蜘蛛子ちゃんに負けるわけにはいかないので、全力で支援をしたいと思う。
それからは、食べることが出来なくなった私の分まで蜘蛛子ちゃんがウナギを食べきると、再び広大な灼熱の中層を進み続けていく。
背中に繭を括り付けた蜘蛛は、代わり映えしない迷宮を歩み続ける。
マグマに照らされた、その姿はどこか楽しげでありながら使命感に満ちた決意を感じられるようだった。
そして、その背で揺られる私は、今まで避けていた選択を取ろうとしていた。
今まで怪しい文面で、取得を避けていたスキル。
《強欲(500):神へと至らんとするn%の力。他者を殺害した際、対象のステータス・スキル・スキルポイントをランダムで奪う。また、Wのシステムを凌駕し、MA領域への干渉権を得る》
蜘蛛子ちゃんが持っている《傲慢》と《忍耐》と同じ類のスキル。
謎の説明文と、非常に強力な効果を持つスキル。
初めて見つけたときは、怪しげな文章から取得を見送って避けていたスキルだけど、今となっては蜘蛛子ちゃんに置いて行かれないためにも必要なスキルで。
だから——
《「強欲」を取得しました。残りスキルポイントは5300です》
《「渇求LV1」が「強欲」に統合されました》
《熟練度が一定に達しました。スキル「禁忌LV5」が「禁忌LV6」になりました》
《条件を満たしました。称号「強欲の支配者」を獲得しました》
《称号「強欲の支配者」の効果により、スキル「鑑定LV10」「征服」を獲得しました》
《「鑑定LV10」が「鑑定LV10」に統合されました》
——これでいいはず。
《強欲の支配者:取得スキル「鑑定LV10」「征服」:取得条件:「強欲」の獲得:
効果:HP、MP、SPの各能力上昇。自身の持つ神性領域を拡張する。精神系スキルの熟練度に+補正。支配者階級特権を獲得:説明:強欲を支配せしものに贈られる称号》
《征服:強欲発動時、対象の魂全てを吸収する。またその他に——》
鑑定がすでにLV10で持っていたため、称号の効果で贈られてきたけれど溢れてしまった力が、形を成すことなく混ざり合って消えてしまった。
実質称号でのスキル獲得が一つしか出来なかったため、内心かなりの落胆を感じる。
どうせなら、新たなスキルが欲しかったなと——《ジジッ》
他に得られそうな、怪しげなスキルは表示されていない。
なら、今はこのスキルを使いこなすしかない。
まだ足りない。
もっと力を得なくちゃ。
じゃないと、じゃないと、じゃないと……………………
…………私は生きなくチャなラないノだカラ。
繭鞠(マユ・マリ)
強欲の支配者の効果、渇求スキルは、捏造設定です。
次回は蜘蛛子視点を。
蜘蛛子は
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もっとコミュ障
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このままでいい