【完結】コケダマですが、なにか?   作:あまみずき

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滅び墜ちるエルフの里
47 決戦前


 遥か遠くに見えるのは、広大な大森林。

 帝国軍に偽装した魔族軍が進軍するその先に、目的地となる場所が見え始めていた。

 

「遂に来たね」

 

 その森、ガラム大森林を見て、アリエルさんがポツリと呟いた。

 この場所の奥地にあるものこそが、エルフの里である。

 

 ユーゴーが率いる帝国軍は先行して森の中に踏み入っていた。

 現在は大軍を通しやすくするために森を切り拓いており、ステータスやスキルというモノがあるこの世界では、相当重労働であるのは変わらないが難しい事ではなかった。

 今も軍の先頭に立ちステータス任せに大木を切り倒しているユーゴーの状況が、彼につけた眷属から知らされていた。

 

 その後ろからゆっくりと進むのが、今私たちがいる魔族軍。

 先頭の帝国軍が速度を落としている関係上、魔族軍も気持ち速度を落として進んでいた。

 本来は、敵同士の勢力なので合流する訳にはいかず、ある程度の距離を保ったまま進軍しているという訳だった。

 

 魔族軍が帝国軍に追いつく頃には、丁度エルフの里まで到着しているだろう。

 

「ポティマスは終わりだね」

「ふふ。そうだね」

「ようやく……、決着の時ですね」

 

 上から順に、白ちゃん、アリエルさん、私が言う。

 相槌を打つアリエルさんが言葉を続ける。

 

「ああ、終わりにしよう。長い、ホントに長い因縁を」

「うん」

「ええ」

 

 軽く微笑むアリエルさんの宣言に、私たちは首肯を返した。

 

「さあ、行こうか」

 

 世界の救済、その第一歩で、後は駆け抜けるだけ。

 その始まりは、世界に寄生するポティマスという悪性腫瘍を取り除く事。

 決意を確かめ合い、私たちもポティマス率いるエルフと無数の機械兵器が待ち受けているだろう大森林へ、足を踏み入れていった。

 

 

 

 

 

 

 既に大森林は目前で、左右何処を見ても木々が生い茂る森が視界に映るといった距離まで迫る。

 しかし先程決意を確かめ合うという感動的なシーンを演じた私たちだったけど、この馬車ならぬ蜘蛛車といった籠の中で現在、何とも言えない弛緩した空気が漂っていた。

 

「ふおおぉぉー??」

「ここか? ここがええのか?」

 

 変な声を上げているのは白ちゃん。

 そして白ちゃんの上に馬乗りになって、容赦無く弱い箇所を抉り込むのはアリエルさんだった。

 

 ……ただ、ごく普通のマッサージを行っているだけ。

 それだけです。

 別に何も変なことはしていません。

 

 ここまで種々様々な事を頑張っていた白ちゃんに対して、日頃の感謝と労いという事でアリエルさんがマッサージを提案し、それを白ちゃんが受けている真っ最中という状況だった。

 アリエルさんの技量については白ちゃんの様子を見れば明らかで、ふにゃりと顔を綻ばせ気持ちよさそうに、アリエルさんの手揉みにされるがままになっていた。

 

 でも、白ちゃんが妙に艶っぽい声上げるから、集中出来ないのですが……

 

「てぃ!」

「っぐ!?」

「誰が無駄に年食ったババアだって?」

「そんな事言ってな……おぐぅっ!?」

 

 向こうは、放っておいてもいいかなぁ……

 

 じゃれ合っている白ちゃんたちを横目に見ながら、私は既に愛用の魔術補助器となった魔術本を自身の内側から召喚して、現在構築中の魔術が書き込まれているページまで捲る。

 

 この魔術本は、私の力を取り込みつつ増幅させ演算装置としても使える、魂そのものと融合した高密度の神秘の塊だ。

 神秘と呼んでいるけど、言わば特定の色に染め上げられたエネルギーであり、その純度が桁外れに高まった結果、物質化したモノと言える。

 これは信仰を基にして染まったエネルギーであり、本という形態を取っているのは、その信仰の大本である神話を書き記すために、といった感じだと思う。

 

 実際に書かれていた詩は、その神話に関する内容だったし。

 

 そしてこの魔術本と私の相性は、比倫(ひりん)を絶するほど良いものだった。

 だからDさんが白ちゃんを通じて私に渡したのか、それとも何か裏があるのか。

 それは分からないけれど思うところがあるとすれば、この神話の内容が私の境遇と大きく被るという事だった。

 

 神話の通りになるとすれば、私は……

 

 頭を振って、脳裏に思い浮かんだ事を追い出す。

 状況が似ているとは言え差異も多いし、別にそういう事になるとは限らないと、否定する。

 そもそも、この世界での事を終わらせなければ何も始まらないのだと、下らない事を考えるのは全てが終わってからでも問題は無いのだから。

 

「さて、続きを刻もう」

 

 今書き上げているのは、一種の権能とも呼べるような魔術の作成である。

 白ちゃんがシステム中枢に行く前に見せた、あの魔術陣がそれ。

 

 自分自身の本質、魂と直結した大掛かりで複雑な魔術。

 作り方自体は、魔術本の中に記載されていた。

 たぶんDさんが仕込んでいたと思うけれど、思惑はどうであれ使える物なら使うだけ。

 この魔術を作れるようになった切っ掛けは、本を読み進めて作り方を知った事も大きいけれど、私の願いを祈りの形を、ハッキリ描けるようになったから。

 

 そもそも、自分の魂というものを知っていなければ、この魔術は成立しない。

 

 既に私は、組み上げた一部を使って強力な魔術を行使出来ている。

 魂に干渉するような、詠唱を含んだ魔術がそれだ。

 

 今ある魔術、それらを組み合わせた一つの完成形は、組み上がっていた。

 

 だけど、その魔術には上がある。

 そのヒントを掴みかけていて、あと一歩、足を踏み出せば成立する。

 精神の本質、私という存在の極点にあたるもの。

 この、世界すらも描き変えられるような魔術なら、上手くいけば世界を救う切り札になる。

 そう迷いなく信じて、私は本に書き記していこう。

 

 耳を澄まし、自己の奥底へと潜る。

 魂魄の鼓動が聞こえてくるはず、そして自らの魂を描き出そう。

 

 私の祈りは、みんなが生きられるように、希望を託せる温もりある世界であること——

 

 ふと瞬間、一つの想いが脳裏を過ぎった。

 私はその祈りを込めて、魔術を書き上げていく。

 

「此処に——、神名《翠星》の名において書き記す」

 

 書き込んだ魔術が、形を変えて文章になっていく。

 それを指でなぞると、間違いなく私の祈りの結晶であるのが理解出来た。

 

「……出来た?」

 

 これは、形になったと言っても良いのだろうか? 

 けれど少しだけ、ちょっと外れている(・・・・・)と感じた。

 上手く言葉に出来ないけれど、ルーツは同じなのに別の物語(・・・・)であるような。

 

「でも、これなら……」

 

 発現した能力は、いつか必ず必要になるかもしれない。

 これがあれば、悲しい結末でも覆す事が可能になる。

 そう確信出来る、権能にも等しい力だった。

 

 

 

 

 本を閉じる。

 励起していたエネルギーを内側に収めていき、平常時の状態になるように整えていく。

 

 今すべき事は終わった。

 けれど未だエルフの里には、辿り着いてはいなかった。

 

 ガラム大森林の伐採作業は、帝国軍の総大将であるにも関わらず最前線にて体を張って、木々を切り倒しているユーゴーのおかげで順調だけど、それでもエルフの里まで辿り着いていないのは、この大森林が非常に広大であるからだった。

 

 森を切り拓いた後の帝国軍は、表側の戦力である一般エルフを惹き付けつつ適度に戦力を削って適度に撹乱する捨て駒に近い軍と、ユーゴーが直接指揮している精鋭の部隊の二つに分かれる。

 捨て駒の帝国軍は、不正を行った領主などの私兵などの、いわゆる魔族軍の第八軍と同じような構成となっていた。

 そしてユーゴーの精鋭軍はエルフの殲滅を行いつつ、結界内から向かってきたシュレインたちの対応に当たる事になっていた。

 

 彼らシュレインの勇者パーティは、王国から此処まで様々な出来事が起きつつも、私たちが辿り着く前にエルフの里に繋がる転移陣に到着して、エルフの里の結界内へと入っていた。

 結界内での様子は現在不明だけど、大まかな予想としては他の転生者たちと会っているだろう。

 私たちが戦端を開いた後、不確定要素の彼らが戦場に出てくると考えれば、対応に当たり足留めを行うのは、ユーゴーが位置的にも因縁的にも最適だった。

 

「てぃ」

「あたぁー!?」

 

 また白ちゃんが何か変なことを考えたのか、それを察知しデコピンするアリエルさんが見えた。

 周囲の空気へ伝わる揺れは極限まで抑え込んでいるけれど、そこに込められた破壊力は白ちゃん以外が受けると頭が吹っ飛ぶ威力のデコピンだった。

 

 まあ、これくらいでないと白ちゃんが普段展開している防御魔術によって、一切痛痒を感じないのだから、お仕置きとして二人の間ではこれが正解なのだと、もう見慣れた光景である。

 

「白ちゃんってさ、分かりにくいようで、分かり易いよね」

「あっ、確かに」

 

 基本的に感情的で自分本位な価値観なのは、一緒に過ごしてきて最初の方に理解した事だ。

 だからこそ、表情には出なくても内心では不満や苛立ちが渦巻いている時があり、それらを察知する能力は、白ちゃんと付き合う上で必須技能だった。

 そもそも、魔物の頃は蜘蛛であり表情すら無いのだから、必然鍛えられたとも言う。

 

 けど、最近はそれだけじゃないような感覚も覚えていた。

 それが何かは、まだ掴めていないけれど。

 悪いものでは無い、それだけは確かだと思う。

 

「ぶぅ……」

 

 不貞腐れている白ちゃんが映る。

 私たちの前だと表情もコロコロ変わるのに、その素直さを少しでも他で見せられれば、ソフィアちゃんやラースくんたちとも壁を無くせるのではと思う。

 

 けれど、そこが白ちゃんだから。

 唯我を気取っているけれど、本当は自分が傷付き心が揺らぐ事を恐れている、ごく普通で臆病な子供である事も、私は知っている。

 

 誰かを大切にしてしまえば、見捨てられなくなる。

 そしてもし大切になった人を見捨ててしまえば、自分が許せなくなってしまう。

 だから、必要以上に自分の内側に誰かを入れたくないのが、白ちゃんだ。

 

 口下手なところは元からかも知れないけど、本質はたぶんこれ。

 

 だから白ちゃんは、私とアリエルさんにしか、心を開かない。

 そうそう死ぬことも無く、相手を知っていて、実力的にも対等に付き合える相手だから。

 

 気に掛けている相手は他に先生もいるけれど、それは白ちゃんの出自に関係しているからこそ、先生も特別の枠に入るのだろう。

 白ちゃんの正体は、殺されそうになっていたのを先生に保護され教室に巣を作っていただけの、Dさんつまり若葉姫色の身代わりの役目を与えられて異世界に送り込まれた、ただの蜘蛛だった。

 

 違和感は、最初に出会った時からあった。

 群れから逸れエルロー大迷宮の下層で彷徨っていた私は、アノグラッチと戦っていた白ちゃんを見つけた。

 その時は、不安と飢えで精神が溶けかかっており、ただ憶えのある食料としてアノグラッチらに襲い掛かっていった。

 そして先にアノグラッチと戦っていた蜘蛛にも、敵だと思って攻撃した。

 けれど、森羅万象という魂すらも感じ取れるスキルを持って生まれた私は、その蜘蛛が異質な魂をしていたので敵意よりも興味が勝り、念話で声を掛けた。

 今思い返すとファインプレーだけど全く理性的では無い判断だったと思うよね。

 迷宮での頃は頻繁にテンションも乱高下していたし、だいぶ精神が狂っていたと思い返せる。

 

 それで、その蜘蛛が若葉姫色と名乗り、私たちは一緒に行動をするようになった。

 でも私は、その蜘蛛が若葉姫色だとは思えなかった。

 

 だって、自分の魂と群れのコケダマたちの魂、それらで人と魔物との魂の差は理解していた。

 そして若葉姫色と名乗った蜘蛛の魂は、異質ではあったが大きさは魔物のそれに近かったから。

 

 人の魂では無いというのは始めから気付いていた。

 でも、一緒に過ごしたのは私も心細かったから。

 

 そしてお互いに、当時は蜘蛛子ちゃんコケちゃんと呼び合って、私たちは生存競争こそが唯一の世界から這い上がってきた。

 

 大迷宮中層でDさんと会話した時に、あの教室に居て転生しなかった一人がDさんだと聞いて、それがすぐ若葉さんだと分かった。

 口止めの呪いを施された事からも、それが真実なのだと確信が持てる証拠になっていた。

 

 けれど、私は白ちゃんから離れる事を選択しなかった。

 絆を少しずつ重ねて、心を理解し合いながら、死線を乗り越えてきた。

 そうしている内に、白ちゃんが何者であろうとも気にならなくなった。

 

 だって、些細な事だって気付いたから。

 白ちゃんは白ちゃんであり、今そばにいるのが親友である、それだけが答えだったから。

 ルーツなど、さして重要では無い。

 今と未来、そこで共に歩めるかが大事だったのだから。

 

 その結果が、今の私たち。

 深い深い暗闇の中で出会い、共に過ごしてきた。

 魔物の身体が何だ、偽物の記憶と魂が何だ、そんなもの私たちの絆には罅一つ入れていない。

 私は、白ちゃんだから親友になって、救われたのだから。

 

 意地っ張りで負けず嫌いで、怠けたがりな刹那主義。

 でも、本当は誰よりも仲間思いで、そのために頑張れる白ちゃん。

 大切なモノは、積み上げてきた思い出と足跡、分かち合ってきたモノにこそ、あるのだから。

 

 白ちゃんも、そう思ってくれていると、良いな。

 

 

「……どうしたの、コケちゃん? そんな笑顔でさ」

「え?」

 

 笑っていた? 私が? 

 

「なんか初めて見たような、懐かしいような……、ああ前世でのコケちゃんの笑い方だ」

「……ほんとう?」

 

 記憶の彼方へと消え去った、前世で自然と行えていた笑い方。

 絶望と哀しみ、冷たい狂気に塗れ過ぎた。

 私はもう、あんなふうに笑えないと思っていたのに。

 それなのに、今、私は……? 

 

「おぉー。目が輝いてる、これが本当のコケちゃんか」

「茶化さない魔王」

「あいたっ!」

 

 かなり強めに、アリエルさんが白ちゃんに頭を叩かれる。

 無理矢理床にキスさせられても、アリエルさんは怒りを見せず苦笑していた。

 

「その顔の方が良い、明るく笑ってる方が良いよ。……だけどその顔見せて良いのは私の前だけにして」

「おやおやー? 独占欲発揮してます? 白ちゃん? ん?」

「ふんッ!」

「ごほッ!?」

 

 白ちゃんの踵が頭にめり込み、再び床板にキスさせられるアリエルさん。

 だけど私はその事よりも、別の言葉に動揺していた。

 

「えっと……、私の前だけって……」

「ああー!! 何も言ってませーんッ!!!!」

 

 その誤魔化し方は、無理があるのでは無いのかな!? 

 割と結構、私自身もテンパっているのを感じながら、何一つ質問など受け付けませんって態度で示している白ちゃんを見て、これ以上この事は蒸し返さないようにした。

 

 下手な事して藪蛇となれば、私にも二次被害が来そうだと思ったから。

 ……なんだか、頬が熱い気がする。

 無意識の内に、肩に掛かる柔い髪を指に絡めていた。

 

「えーあー、そうだ! コケちゃんって実はダブルとかだったりしない?」

「うん?」

 

 話題を変えるために、唐突に投げ込まれた質問に首を傾げる。

 

 なんでもシステム中枢に囚われている女神と少し似ている事から、よくよく考えると日本人的な顔じゃ無いよね? と、白ちゃんが疑問に思ったらしい。

 私はシステム中枢に行ったのは最初の一回だけなので、細部まで女神サリエルの顔を憶えている訳では無いけれど……、確かに似ているかも? 

 

 その理由は、マステマに進化した際に堕天使という種族になった事で、女神サリエルの顔付きに私が引っ張られたのかもしれないと思っていたけれど、そう言えば白ちゃんの指摘についても少し当て嵌まっていたのを思い出した。

 

「お母さんの家系で、結構昔にギリシャ(・・・・)からの血が入っていたみたい。だから、血の濃さとしてはクォーター以下だけど、そのせいかもね」

 

 前世で、かなり小さな頃の記憶だ。

 私には物心付く頃には父親という存在は居なかった。

 だから自分の親について聞いた時に、父親の事ははぐらかされたけれど、お母さんの方の家系については結構深くまで教えてくれた。

 その中に、たしかそうだと教えてくれたはず。

 

「ほぉー? コケちゃんは異国のルーツもあったと」

「生まれも育ちも日本なので、思い入れも何も無かったですよ? それに転生して魔物になって、異世界でそれなりに暮らしていれば、もう何一つ関係無い話ですけどね」

 

 アリエルさんの疑問に、私は思ったままの事を口に出す。

 前世ではちょっと目鼻立ちがパッチリ整っているだけの些細な特徴でしか無かったから、外国の血と言われても、ピンと来ない程度のモノだったのだから。

 

 そういえば……、あの(・・)神話のルーツは……

 

「なんか、こうしてふざけ合っている内に、結構進んだみたいだね」

「ん」

「……そうみたいですね」

 

 感知範囲を広げて周囲を把握すると、エルフの里まであと少しといった位置だった。

 アリエルさんは、顔を引き締め真剣な表情で言う

 

「今回の戦い、勝率は?」

「100%」

 

 それに即答する白ちゃん。

 

「じゃあ、私たちが生き残れる確率は?」

「……」

 

 しかし、続く問いには口が塞がる。

 

「即答出来ないって事は、100%じゃないって事だ。ほら、分かりやすい」

 

 また、苦虫を噛み潰したような表情になる白ちゃん。

 アリエルさんが苦笑したまま続ける。

 

「白ちゃんってホント身内には甘いよね。……でも、今回ばかりは、その甘さを捨てな」

 

 アリエルさんは言葉の途中で区切ると、雰囲気を一変させ吐き捨てるように言う。

 戦いなんだと、戦いであるから命のやり取りをするんだ。

 そして命を懸けているのだから戦いで死ぬ事があるのなら、それは私たち当人の力不足が原因で他人の命まで背負う事は無いと言った。

 

 アリエルさんたちは、彼ら彼女らなりに全力で自分たちの出来る事をする。

 だから私たちも、自分なりの勝利を目指して全力を尽くして欲しいと、切に願ってきた。

 

「出来る限りのフォローはするよ」

「……アリエルさんの想いは、邪魔しない。けれどピンチなら、たとえ死んでても(・・・・・)助けてみせる」

「なら、二人の手を煩わせないように頑張んなきゃね」

 

 誰も欠けて欲しくない。

 そんな願いも、私を構成する祈りの一つである。

 

「みんなで生きて勝つ確率は、100%」

 

 白ちゃんが言う。

 

「そう、誰一人欠けたりしない」

 

 私が拳を掲げる。

 

「出来る事を精一杯。当たり前の事を、全力で」

 

 察したアリエルさんが、ソラへと掲げられた誓いに、自らの手を重ねる。

 そして、白ちゃんも——

 

「「「勝とうッ」」」

 

 三人で宣言する。

 ここには居ないみんなも、願いは同じだと祈って。

 決意と誓いは結ばり、そして振り抜かれた。




終わりの始まりの、始まり。
(そして終盤という事で、かなりのネタバラシ)
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