たぶん。
ということで今回もゆっくりみていってね!
ルナサ・プリズムリバーは目の前で起きている地獄絵図を冷静に観察していた。
否、おそらく第三者から見れば、ルナサもこの白玉楼を地獄絵図と化している要因の一つだろう。
白玉楼では、冥界の女主人がいつもであればのんびりとした風体で縁側に座っているはずが、
傍に置いてある饅頭一つにも手を付けず、無表情で考え事をしており、その周りをオロオロとしている従者。
そしてその原因を従者から聞いたリリカとメルランは気持ちを落ち着かせるために楽器を弾きだし、というより気が動転しているのは明らかで、二人の楽器からは音が垂れ流しにされているような状況だ。これだけ周りが騒がしければ従者からの言葉を聞いて、最初は動揺したルナサも、
今は一周回って冷静さを取り戻していた。
アトゥンがただならぬ状況下で行方知れずとなった
といっても、アトゥンの行方が分からなくなるのはいつものことだ。
だからといって、普段から気に留めないわけではなく、ルナサはアトゥンの友人である妖精達から、しばらく姿を見ていないこを聞くと、点々とライブをしながら、周辺でアトゥンを見なかったか聞いて回ったり、ライブ前後の空き時間に探しに行ったりしていた。
最近では行方知れずになっている時の方が珍しく、自宅か白玉楼に行けば大体会えるし、ライブ時には必ずと言っていいほどアトゥンが来ていた。
だから安心していたし、本人もしばらく大人しくしていると言っていたのを覚えている。アトゥンが約束を守るかと言えば・・・守る努力はしていると思う。ただよく事件に巻き込まれたり、幼い妖怪だからか、好奇心に打ち負けていることが多いようだけど。
そのせいか、アトゥンは一度行方知れずになると、ほとんど見つからない。そのうえ見つかる時は異変を起こした黒幕の近くだったりするから手に負えない。それを見越して異変が起きている場所に行こうとはなかなか実行に移すのは勇気がいるものだ。異変の近くにいるのは確かだけど、黒幕の傍にいるわけじゃない、というのが恐ろしく厄介なのだ。
アトゥンを探すには片っ端から異変に関係していそうな人物、妖怪を当たっていかなければならない。そんなの紅白の巫女や白黒の魔法使いくらいしかやらない。つまり、アトゥンを見つけるには、異変を解決しないといけないわけで、一介の騒霊でしかない私達では少々荷が重い。それに、異変解決から何日かすれば、けろっと現れるので、探しに行くより待っていた方が良い。
ただ、今回ばかりはそうもいっていられないかもしれないと、ルナサの直感が告げている。幻想郷で起きている異変と、アトゥンの能力を見て考えても何らかの関りがある可能性が高い。本人も動揺していたのだろう、要領を得ない従者からの説明では、わかりにくいところもあったが、もしかするとアトゥンの能力が異変に利用されている可能性がある。私達もここに来る前に何人かの幻想郷の住人そっくりの何かと弾幕勝負をしたけど、はっきりいって弾幕やスペル、容姿だけなら本人そっくりだった。それはアトゥンが使っていた私の模倣スペルにも同じことが言える、そしてアトゥンは様々な場所で色々な人物と関りを持ち、そのスペルを見てきた。
・・・大丈夫、アトゥンは無事だ、少なくともアトゥンが利用されていると仮定した場合アトゥンには手を出していないはず。
嫌な考えが頭をよぎり、ルナサは一度思考を止めた。
ちょうどその時目の前の光景も動きが見え始めた。
「妖夢、行くわよ」
「えっ、は、はい!」
女主人、西行寺幽々子が険しい顔を崩し、いつもの表情で。しかし、その言葉には一切の遊び心を加えず淡々と。妖夢もその言葉で目が覚めたのか、先ほどまでとは一転、背をピンと伸ばし、面持ちも引き締めしっかりと幽々子の後に続く。そうだ、こうしてここで油を売っていてもアトゥンは見つからない。
「リリカ、メルラン。私達もいくよ」
「ね、ねえさん行くってどこに?」
「ルナサ姉、あてはあるの?」
「あてはない、けど何もしないんじゃ手がかりも掴めない」
そう言って私は二人を振り返らず飛び立つ。
すぐ後ろから、いつもより少し調子の落ちた二人の声が聞こえてくる。
その時微かに、二人の声とは別の音が聞こえた気がした、それは普段私達を応援してくれているときのそれとはおおよそ似つかない弱弱しい音だったけど。確実にアトゥンの声だと感じた。
私は振り返って二人と目を合わせる。
三姉妹は互いに顔を見合わせて頷くとその声がした方向に向かって速度を上げて飛んだのだった。
ほどなくして、三姉妹はその光景を目撃することとなる。