ベルカの残滓――追憶の白き流星   作:ぱんそうこう

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n番煎じの一発ネタ。
ついつい筆が乗ってしまうので、このままだとスパロボ御三家のネタをコンプリートしてしまいそうです。


許してください!シンフォギアの方もちゃんと書いてますから!


覇王の慟哭

――その後ろ姿を覚えている。

 

白と青の翼を背負ったその機械的な姿。初めて見た時は、随分珍しい騎士甲冑だと興味を抱いた。聖王家の最新兵器だと聞いていたが、ここまで物が違うとは思ってもみなかった。……その翼が着脱可能な自律兵器だと聞いたときは開発陣の正気を疑ったが。

 

 

 

――その戦う姿を覚えている。

 

暴走した――否、暴走させられたゆりかご。愛した人の墓標。それは今、「赤い彗星」の手でベルカを滅ぼす最終兵器と仕立て上げられた。

いつになっても鮮烈に思い出せる――赤い彗星と戦う白き流星を。

 

 

「俺達と一緒に戦った男が、なんでベルカ潰しを!」

 

「ベルカに住む人々は自分たちのことしか考えていない。故にこのシャア・アズナブルが粛清しようというのだ!」

 

「エゴだよそれはッ!」

 

 

赤と白が交錯する。

オリヴィエがゆりかごに乗ってから数年、確かにベルカの戦乱は聖王家の勝利で幕を下ろしつつあった。しかし禁忌兵器の乱用、そして戦争で荒廃した大地は元には戻らない。戦争で失われた多くの命もまた同じ。時代の流れの中で二人は決定的に道を違えた。

 

赤い彗星はベルカそのものを滅ぼすことを選んだ。

白き流星はそれでもと今の世界を守ることを選んだ。

 

 

――そして、あの日の光を覚えている。

 

「私の勝ちだな、アムロ。今計算してみたが、ゆりかごの最終兵器は発射されベルカは滅亡する。貴様との決着には敗れたが、この戦いは貴様らの敗けだ!」

 

「ふざけるな!たかが魔力砲一つ、ガンダムで押し返してやるッ!」

 

「正気かッ!?」

 

「貴様ほど急ぎ過ぎもしなければ、人類に絶望もしちゃいない!」

 

「馬鹿な真似はやめろッ!」

 

「やってみなければ分からん!」

 

 

発射された「世界を滅ぼす炎」。しかしそれを彼は、自らを盾として防ごうとした。

次第に炎に包まれる「彼」。しかし彼の行動は確かにその場の「誰か」の心を動かしてみせた。

 

「駄目だ、皆下がれ!砲撃の熱と衝撃で自爆するだけだ!」

 

「ガンダムだけにいい思いはさせませんよ!」

 

「ベルカが駄目になるかならないかなんだ、やってみる価値ありますぜ!」

 

「だが、既に爆装している者もいる!」

 

敵味方問わず、無数の光が障壁を作り、炎から世界を守っている。しかし「彼」と違い、他の者は皆それに足る性能を有していない。今にも魔力が尽きた者、甲冑が耐えられなかった者は次々と脱落し、地に墜ちては命を落としている。

 

 

「駄目だ!皆下がれ!」

 

「……これだ。いずれこんな悲しみだけが広がって、ベルカを、次元世界そのものを押し潰すのだ。なぜそれが分からん、アムロ……!」

 

「離れろ!ガンダムの力は!」

 

 

その時、「彼」から光が溢れた。

その光はゆりかごのみならず戦場全てを包み込み、砲火の嵐を止めた。地上からでも分かる。どこまでもあたたかく、優しい光だった。

 

「これはサイコフレームの共振……?人の意識が集中しすぎてオーバーロードしているのか!……だが、恐怖は感じない。むしろ温かくて安心すら感じる。――そうか。だがこの温かさを持った人間が世界さえ破壊するのだ!それを分かるんだよ、アムロ!」

 

「分かってるよ!だから、世界に人の心の光を見せなきゃならないんだろ!」

 

誰もが手を止めていた。誰もが見入っていた。

そして「彼」はついに、赤い彗星とゆりかごもろとも世界から姿を消した。

 

――戦争は終わった。

 

 

そこから先はトントン拍子だった。きっと誰もが終わらない戦争に疲れきっていたのだろう。

後に聞いたことだが、あの光は次元世界のあらゆる場所から観測できたという。それは「彼」の心の光が世界に影響を与えたという与太話に真実味を帯びさせた。

以来、「ガンダム」は聖王オリヴィエと並び世界を救った英雄として語り継がれることとなった。そしてその宿敵たる赤い彗星は「世界を滅ぼしかけた男」として悪名とともに語り継がれることとなった。

 

 

「彼」は二つ名の通り流星となって世界を駆け抜け、次元世界そのものを救ってみせた。

 

 

 

 

 

でも、そんな彼に俺が抱いたのは、どうしようもない嫉妬だった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

朝日が昇り、悪夢は男の慟哭と共に終わる。

「いつも通り」最悪の目覚めをした部屋の主の名はハイディ・E・S・イングヴァルト。ここミッドチルダでSt.ヒルデ魔法学院中等科に通う学生であり、古代ベルカの「覇王イングヴァルト」の記憶を受け継いだ少女である。

 

 

「また、ですか……」

 

 

じっとりと汗ばんだ肌が気持ち悪い。またシャワーを浴びなければとゆっくりベッドから這い出る。

具合は決して悪いわけではないが、若干頭が痛い。

そんな中、アインハルトはかつて見た白い翼を思い出していた。

 

 

現在ではJS事件とも呼ばれている事件が終結したあの日、記憶のままの「ガンダム」を見てから一度も止まない、過去の悪夢。私を苛む、「覇王(わたし)」の絶望。

力で覇を唱え、和をもたらそうとした男はどこまでも無力で、全てをただ地上から見守ることしかできなかった。

そして「彼」は、力ならざる方法で世界を変えた。

その事実の何と残酷なことか。

 

多くの命が失われた。聖王家は断絶し、他の多くの王も少なくない打撃を受けて戦争どころではなくなった。でも、そんな中でも戦争を続けようとしなかっただけかなりの進歩だろうと思う。

無理もない。あんな美しい光を見て、心が動かないわけがない。夢で追体験した私でさえ感動で心を動かされたのだ、あの場で見た者達ならばなおのことだろう。

後の世にベルカを含め、複数の世界が協力して「時空管理局」を作る原動力となった、という話も頷けるほどの尊さがそこにはあった。

 

でもそんなものはお伽噺で十分だった。学校で教わるくらいで丁度よかった。なのに、なのに――

 

 

「どうして今になって現れたのですか――アムロ」

 

 

ベルカは消えた。赤い彗星もいない。戦乱の時代から遥かな時が経った世界に、再起動したゆりかごを止めるべく現れた「ガンダム」はどこまでも記憶のままの姿で、「彼」自身だとどうしてか確信できた。

誰もが驚いた、伝説の再演に。

誰もが憧れた、あの白き流星に。

そして誰もが、「ガンダム」を求めた。さまざまな思惑を胸に秘め。

 

その時、自分の中の「覇王(おれ)」が狂った。

 

日中でも時折意識が途切れる。毎晩毎晩悪夢に苛まれる。そのせいで眠れないでいると、夜に突然意識が遠のき、気付けば外で誰かと戦っていたことさえあった。

 

近頃は自分と「覇王(おれ)」の境界線が曖昧になり始めた。

きっとこのままでは自分が消えてしまうだろう。

だから、その前に。

 

「私を殺してください、アムロ・レイ――」

 

私を早く、終わらせて。呪われた覇王の血筋を、終わらせて。

彷徨える覇王の怨念に、止めを刺してください――

 

 

「――白き流星、『俺』の友だった男よ――」

 

そして私はきっと、今日も意識が無いまま敵を求めて今日も彷徨うのだろう。ベルカの残滓を求めて。さらなる強者を求めて。さらなる力を求めて。「ガンダム」を求めて。

 

 

(でもそれも、今日を最後にしたい。そしてその幕引きがアムロ・レイであれば……)

 

 

そんなことを願いながら、変わらない一日が始まった。

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