ベルカの残滓――追憶の白き流星   作:ぱんそうこう

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シンフォギアが全く手につかないので先にこっちを。
新作の世界観を間違えたコードギアス短編、やっぴりみなさんアプリ効果で見て下さってるんですかね?ありがたいことです。


不屈のエースは負けたくない

「オフトレツアー二日目恒例行事!大人も子どももみんな混ざっての陸戦試合!」

 

「あたしは初体験だからすっごい楽しみ!」

 

「前回も凄かったんだよ?八神司令たちが大活躍で!」

 

「今回はチーム分けどうするのかな?今年はわたしのパパも出るし……」

 

「そっか。ヴィヴィオちゃんのお父さん、今年が初めてだもんね!どれぐらい強いのか楽しみなんだー!」

 

「ふっふっふ。わたしのパパは世界で一番強いんだもん!みんなで束になっても勝てないかもよ?」

 

「あの……試合、ですか?皆さんで?」

 

「はい!大人チームは最大出力に制限がかかりますがそれ以外は全力です。純粋に戦技と戦術の勝負ですね」

 

(そうか。闘えるんだ……あの凄い人たちと。それに……)

(アムロ。未熟な私が彼に戦闘技能で勝てるとは思えませんが、それでも……貴方に届かせてみせる)

 

 

 

 

と、温泉組が意気込んでいる中で。

大人組は一足先に温泉から上がって休憩中。ノーヴェが組んだチーム分けを見ながら高町なのはとフェイト・T・ハラオウンが雑談に興じているのであった。

 

 

 

 

 

 

「これが明日の組み合わせ?」

 

「うん。ノーヴェが作ってくれたの」

 

「この割り振り……うん。戦力差も申し分なし。同ポジションは接戦になりそう。……それで」

 

「なに?どうしたのフェイトちゃん」

 

「二戦目の割り振りなんだけど……」

 

はて。おかしいところなんてあったっけ。

チーム表記無し、うん。ノーヴェもいい仕事してくれた。完全なバトルロイヤルだもん、どこもおかしいところなんて無いよね。

 

「いくらなんでもこれはちょっと……どうかと思うよなのは」

 

何言ってるのフェイトちゃん。私だってちゃんと考えてるよ。どうやったらあの人の勘を潜り抜けて撃ち落とせるのか。それにはやっぱり飽和火力が一番なんだよ?当たらなければどうということはないって昔の人も言ってたらしいけど、それなら避けられない密度で砲撃すればいいだけだもんね。

 

「うん。それはそうなんだけど……なのは、チーム戦っていう趣旨忘れてない?」

 

「忘れてないよ?せっかくチーム戦をするんだもん。こういう乱戦も経験しておかないとね」

 

「でもこれアムロさんのこと狙い撃ちにするためのルールなんじゃ……六課の時のこと、まだ根に持ってる?」

 

「ソンナコトナイヨ?いい加減その感覚的な教導はやめろなんて少しも思ってないよ?」

 

「やっぱり引きずってるー!?」

 

あ、フェイトちゃんがかたかた震え始めた。大丈夫だよ?狙うのはアムロさんだけだもん。もしかしたら砲撃に巻き込まれるかもしれないけどバトルロイヤルだからゆるして。

 

 

 

私、高町なのはにとってあの人は超えるべき壁だ。

一個人として、戦技で負けてるつもりはない。でもいざ正面から戦った時、私はあの人を落とせたことがない。

 

 

狙いを付ければ、その瞬間には回避運動を取られてる。

誘導弾を使って追い詰めても、軌道を読まれた挙句直射弾で撃ち落とされて道を作られる。

 

明らかに反射神経レベルで負けてる。というか、勘の良さが尋常じゃない。

 

それに戦技そのものにしても隙が無い。正直、管理局の上位陣を見てもまずここまでの人はいないと思う。特に手癖も足癖も悪くて、接近戦に持ち込むとすーぐ足が出るわ手が出るわ。バズーカを投げて爆弾にしてきた時は正直どうかと思ったの。

 

 

 

「初めまして。八神司令の推薦で技術者として入ることになったアムロ・レイです」

 

あの人と最初に会ったときはただの技術者として。はやてちゃんが新人のデバイスの調整のためにスカウトしてきたっていうことで、六課では少し注目されてた。確かにはやてちゃんがスカウトしてきただけあって優秀だったし、前からスバルのデバイスの調整をしてきてる分、個人毎のデバイス調整だって絶妙。ちょっと目は暗くて気力が乏しかったけど、話してみれば人当たりも良いから他人事みたいに「モテそうな人だなぁ」って思ってたし、同じ部署のシャーリーが同好の士が出来たってちょっと興奮気味に話してたのを覚えてる。

 

「僕が戦える人間だって?……まさか。僕はしがない技術屋さ。戦うなんて、冗談じゃない」

 

けど、初めて会ってそう聞いた時から、ただの技術者じゃないってことだけは薄々感じてた。

 

 

 

「ッ!医務室に連絡を!担架を二人分!大至急だ!」

 

「おいアムロの旦那。一体どうしたんだ?血相を変えて」

 

「いいからヴァイスも手伝ってくれ!時間がない!シグナムもだ!」

 

「わかった。お前がそこまで言うなら、何かあるということだな?」

 

 

 

私がティアナの勝手に怒った時、事前にティアナとスバルの分の担架を用意して待っていたことがあった。何だか妙に準備がいいから気になってシグナムに聞いてみると、その日の訓練が始まった直後に用意してくれてたみたいで、まるで未来でも見えてるんじゃないかって。

ヴァイスもあの人がなんだかベテランの局員みたいに見えたって言ってたから、その頃からだと思う。あの人が何か訳ありだってことを感じたのは。

 

そして、やっぱりそれは正しかった。

 

 

 

「以上が僕の知る限りのゆりかごのカタログスペックだ。何か質問は?」

 

「あの……それはいいんですけど、どうしてここまで知っているんですか?まるで……」

 

「『直接見てきたような』と言いたいんだろうランスター陸士。分かっている。だから、改めて自己紹介させてもらうさ」

「僕の名はアムロ・レイ。そしてもう一つ、ここにいる皆に知っておいてもらいたいことがある」

 

 

「僕はかつて、『白き流星』という名で呼ばれたこともある男だ」

 

 

ベルカの白き流星。管理局でも聖王教会でも……ううん。ミッドチルダに住む人なら、まず真っ先に知ることになるであろう名前。かつて「赤い彗星」と対をなした古代ベルカのエースオブエース。そして、ゆりかごと共に虹の彼方へ消えたはずの英雄。そして、私が「再来」と呼ばれた流星の、その所以。

それを聞いて、私は驚くよりもまず先に「ああ、そうだったんだ」って納得した。戦う人間としての感覚、って言うのかな。私の中のそれはアムロさんから戦いの匂いを感じ取っていたんだと思う。

 

そういえば、海鳴に行った時にお父さんも同じように感じてたっけ。アムロさんが店に入った途端に一瞬だけど身体を強張らせて、後でコッソリ私に何かあるかもしれないってことを伝えてくれたことがあった。結局お父さんが心配してたようなことにはならなかったから良かったんだけど。

 

 

 

 

良い人なのは分かってる。

大人の男の人って感じでカッコいいし、ちょっとお父さんに雰囲気が似てるとこがあるのも個人的に親しみが持てるので高ポイント。局内でも知る人ぞ知る、って感じで話題に上がることもあるみたいだし。

ヴィヴィオに対してもいいお父さんでいる。最初はごはんまずいってヴィヴィオに泣かれるわ、泣いてるのを見てあたふたすることしか出来ないわで散々だったけど経験さえ積めばちゃんとしたお父さんになれるってことを見せてくれたのも併せてさらに倍ドンだよ。

自分からそうなろうと努力してたのも、私たちはちゃんと知ってるからね。

 

 

 

だけど。だけど一個だけ、あの人にはどうしても許容できない「欠点」がある。

 

 

 

 

あの人の教導はあまりにも、あんまりにも感覚的すぎ!新人の教育にはひとっっっっつも向いてないのっ!!!

 

 

 

 

なーにが「背中にも目をつけろ!」なのっ!?いや私も出来るけどっ!というかマルチタスク出来る魔導師なら大なり小なりできる事だけどっ!それはそれとして表現が抽象的すぎてお話にならないの!!!

 

あと生徒に求める基準も高すぎ!マルチタスクなんて新人にやらせることじゃないの!それに私みたいに模擬戦の中で戦い方を教えるならともかく、ただただ叩きのめして長く生き残ればヨシ!は自分の良いところ悪いところを把握してる経験済み魔導師にやらせるべきであって新人にやったらただ数分間絶望を味わうだけで何にも生まないの!え?若い頃は一分掛からず全滅できた?うるさいよっっっ!!!

 

 

ぜー。はー。ぜー。はー。

 

 

……ちょっと取り乱しちゃった。うん……あれは、本当に酷い事件だったよ……。ヴィータちゃんがアムロさんが昔シュトゥラって国で兵の訓練をやってたなんて言うから、他のベテランの人に教わるのも良い経験になるかもって思ったのに……。指導方針としてちゃんと基本に忠実に、かつ実際の模擬戦の中で覚えるってところを踏襲してくれるっていう約束だったのに……。

こんなだから訓練の後ヴィータちゃんが気まずそうな顔で「すまん。その……本当に、すまん」ってフォワードの皆に謝る羽目になるの。少しは反省してほしいと思うよ。

 

 

 

 

 

でもね、アムロさん。私、知ってますよ。

JS事件が終わってから色々と試作の専用デバイスを趣味で作ってるみたいですけど、その全部が「実戦用」ってこと。自分がガンダムを使わなくても戦えるように、ミッド式もベルカ式も関係なく色々実験してますよね。

 

それはきっとヴィヴィオを守るため。「ガンダム」がミッドのどこかに居ることが分かったことで、その捜索は今でも続いてる。だから、もし何かあった時ガンダムは逆にアムロさんの枷になる。それが分かってるから新しい物を一から設計してるんですよね。

それはつまり、自分が戦うべき敵がいるかもしれない、と予感しているということ。こういうことであの人が勘を外したことがないから、きっと近いうちに何かが起こるかも……って、私は思ってます。

 

なら、私はあなたを守れるぐらいに強くなりたい。例えアムロさんが戦うことを望んだとしても、もうアムロさんの命はアムロさんだけのものじゃない。帰る場所があって、守るべき人がいるんだから。

それにヴィヴィオと出会う前の、あの無気力気味だった頃。「戦うなんて冗談じゃない」——あれはアムロさんの本心から出た言葉なんじゃないかって私は思ってます。

 

だから私は、もう十分じゃないかって思うんです。私が初めて魔法に出会った時より、ちょっと年上ぐらいの頃に巻き込まれた戦争。ほぼ一年に渡って殺し合いを続けて、生き残ったと思ったら今度は厄介払い。そこでようやく平穏に過ごせていたのに、今度はゆりかごの起動とシャア・アズナブルの反乱。生きてきた年月の半分ほどを戦争と辛い記憶と共に過ごしてきて。幾らか立ち直ったとは言っても、これ以上戦い続けたらいつか本当にアムロさんの心が壊れてしまうかもしれない。もしそうなったら、ヴィヴィオだって悲しむし、私もフェイトちゃんも……アムロさんに関わった全部の人がきっと悲しむ。そんな未来は見たくない。

 

……けど、もう言っても聞かないってことぐらいは分かってます。

だからせめて、今度こそ正面からあなたに勝ちます。

現代を生きるエースとして、この世界を守る一人の人間として、過去のエースを超えてみせますから。確かに私がちょっと負けず嫌いだから、っていうのもあるけど、それ以上に私は。あなたが戦わなくてもいいぐらいに強くなりたい。

そして貴方に証明したい。例え相手が何だとしても絶対に負けないことを。そう思うのは、私の傲慢でしょうか?

 

 

 

 

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