ベルカの残滓――追憶の白き流星   作:ぱんそうこう

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あけましておめでとうございます。
新年最初はこっちです。シンフォギアはもうちょっと待ってください。


間話  陛下についてのちょっとの違和感?

「成程な。大会までに得意分野を伸ばして、自分たちの領域で戦わせるといったところか」

 

『まあな。……アムロが車取りに行ってる間にあいつらにも言ったが、あたしの予想じゃ勝ち続けられるのは地区予選の前半までだ。一番進めるアインハルトもいいとこ真ん中……エリートクラスの終盤戦にもなればもっと強い奴がゴロゴロいる。だからこそ、あいつらが勝つに自分の持ち味を生かすしかねーと思ってな』

 

「厳しいかもしれないが、僕も同感だ。今競技界で鎬を削っているのは皆自分の全てを競技にかけてきた者たちだ。初参加だから負けるというわけではないが、絶対的な経験の差は大きいだろうな」

 

『そこら辺を埋めるのがあたし達の仕事ってわけさ。そういうわけだから、ヴィヴィオの帰りもちょっと遅くなるかもしれねーんだ。悪いな』

 

「いいさ。なんなら僕も手伝おうか」

 

『あーいや、そこまでしてもらわなくても大丈夫だ。アムロも仕事とかあるだろうし』

 

「そうか?それなら……いや、ヴィヴィオの分だけは手伝わせてくれ。勿論親だからじゃないぞ。少し確かめたいことがある」

 

『確かめたいこと?ヴィヴィオに何かあるのか?』

 

「ああ。この間の合宿で薄らとな。もっとも、憶測だからまだどうとは言えないが……その、僕が原因かもしれないからな」

 

『……お前なにやらかしたんだ?』

 

「弁解するが、僕が直接したわけじゃないぞ。昔にも同じことがあった。元々素質があった分、僕と一緒にいた結果だと思うんだが……」

 

『まどろっこしいな。つまり、ヴィヴィオがどうしたって言うんだ?』

 

「ああ。あの子はもしかしたら—————」

 

 

 

—————————————————–————————

 

 

「じゃあここはひとつ陛下の右から攻めちゃおっかな」

 

「右側——ホントかな?」

 

「ホントだってばー」

 

陛下と向かい合って互いに構える。お互いに軽口を叩いているけれど、目だけは笑ってない。相手の一挙一動を見極めようと必死だ。

 

陛下と会うのは久しぶりだ。最近は陛下が来てもたまたま会えないこともあるし、ましてや練習だって一緒に出来てない。ホントならいっぱい練習したいところだけど……インターミドルに出る以上、陛下だってライバルだ。手の内はあんまり見せたくない。

 

だからこれでいく。これなら出しても見えないから。見えなかったならバレてないのとおんなじだもんね。

 

「シスターシャンテは素直ないい子!嘘なんて———」

 

(たまにしかつかないよ♪)

 

地面を蹴る。誰にも負けない自慢のスピード。打ち込むのは右じゃないし左でもない。前置きナシの後ろに対応できるかな?

……って、あれ?

 

(初見のアレを避けちゃったよ。この子……っていうか今、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

陛下は目がいい。それはあたしもよく分かってる。だけどそれだけで見極められるほど、あたしのスピードは甘くない。単純に前より反応が早くなったようにしか思えない。しばらく会えてなかった分をさっ引いても、ね。

 

「やるじゃん陛下。アレを初見で避けるなんて……もしかして見えてた?」

 

「ううん全然!すごいよシャンテ!全然見えなかった!」

 

「その割にはしっかりカウンター構えられてたじゃん?そんな簡単に攻略されたら自信なくなっちゃうなー」

 

「いやいやホントに見えてなかったんだって!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

(ちょっと確かめてみようかな。もしかしたら本当に偶然タイミングが合っただけかもしれないし)

 

「あ、ごめんシャンテ。デバイスセットしてもいい?」

 

「ああごめん。どーぞどーぞ」

 

(てことは今の反応はデバイスの補助無しってことだよね。……できれば偶然であってほしいけど)

 

陛下の申告でそのまま再会。見た目は変わってないけど、陛下が大丈夫って言うなら大丈夫なんでしょ、きっと。

 

(それなら今度は品を変えて……)

 

自慢のスピードに幻術を併せて分身。正面から突っ込む「あたし」と後ろから行く本命のあたし。前と後ろで迷えば落ちるし、そもそも見えなきゃ防げない。防げない、んだけど……。

 

(何というか、目に頼らずに反応してきてる!おまけに刃面を素手で思いっきりブン殴ってきたよこの子は!)

 

反応のしかたから見えてないだろうことはギリ分かる。だからこそ分からない———反応が早すぎる。あのシスターシャッハすら追い抜きそうなレベルの反応の早さ。そして何よりこの子はそれを自覚していない。

 

「陛下。もうちょっと撃ち合おっか?」

 

「いいよ!ガンガンいこー!」

 

陛下の強みは目の良さ。なのに目を使わずに反応してくるこの矛盾。

 

「凄いね陛下!このスピードにも追いついてくるんだ!」

 

「最近すっごい勘が冴えてるんだよね!シャンテの動きもちょっとだけ分かってきたかも!」

 

「勘でどうにかできるものじゃないんだけどね!」

 

なんて理不尽な「勘」だろうか。あたしが撃ち込む瞬間を目で見るより、耳で聞くより、鼻で嗅ぐより……他のどの感覚よりも早くに感じ取って、あたしが撃ち込む時には既に、当たりをつけて逆に撃ち込む用意を済ませている。

けど思ってたより精度は甘いみたいで、まだ「なんとなく」くらいにしか分かんないんだと思う。そこに付け入る隙がありそうだね。

 

(それになるほどそーか。陛下のデバイス、防衛特化の補助制御型なんだ)

 

言ってみれば全身に防具をつけてるようなもんだ。だから刃物相手にも全力で撃ち込める。

デバイスの防御力に裏打ちされた前に出る度胸。それにこの「勘」がうまく噛み合ったら……。

 

(凶悪、なんて言葉で済めばいいけど。こりゃ思った以上にずっと強敵かもね。だけど……)

 

「ごめん。ちょっと心配なことがあるんだ」

「試しに撃ち込むから反撃しないで防御してみて?」

 

 

 

 

 

————————双剣輪舞。

 

 

 

 

————————————————

 

「さて……どういうつもりです?」

 

「どういうつもりも何も、『危ないよ』って教えようとしただけだよ」

 

陛下との手合わせは護衛役の双子が入ってきたせいでオシャカになっちゃって、今あたしはディードに宙吊りにされている。

縄が食い込んでるから早く解いてほしーんだけど。

 

 

「前々から思ってた陛下の資質。格闘型には向いてないでしょ」

「『聖王の鎧』もゆりかご事件で無くしちゃったんでしょ?タイプとしては学者型。戦闘型魔導師になるにしても中衛から後衛型。あの子のデバイス……あのうさ吉もちゃんと機能しきれてないっぽいし」

「夢見て試合に出た陛下が武器の差で叩きのめされるなんてあたし……見たくないよ」

 

陛下のことは好きだ。かわいいし、優しいし。だからこそ、こういう生まれながらの……本人にはどうしようもない部分のせいで負けて、悲しい思いをしてほしくないから。

 

「……なるほど。言いたいことはおおよそ分かりました」

 

「ですが陛下は聡い子です。ご自分の資質は他の誰よりもご存知ですよ」

 

「セイクリッドハートだって、お父上が手ずから作り、高町一尉や周りの皆さんが贈った機体です。これからもっと立派になっていきますよ。要するに……」

 

「余計なお世話だったかぁ。ところでさ、あたしと陛下の手合わせ、ちょろっとでも見てたんだよね?今日の陛下、反応早すぎなかった?」

 

「そうですか?私には普段と同じくらいかと……いえ、言われてみれば確かにそのような気もしますが……」

 

「下手したらシスターシャッハより早いかもよ。何というか、あたしが撃ち込む時にはもうカウンター撃ち込んでくるみたいな感じで」

 

「ああ、そういうことですか。ふふ……知らずのうちに、お父上の影響を受けているのかもしれませんね」

 

「へ?どゆこと?」

 

「陛下のお父上も似たような戦い方をされるのですよ。あの方は射撃戦が主ですがね」

 

「え、戦えるの?デバイスマイスターだって聞いたけど」

 

「ええ。技術者として身を立てる上で、ご自分で作った機体のテストも自分でなさっているのだとか。一度お手伝いさせていただきましたが、かなりのやり手でした。少なくとも一技術者としては十分すぎるかと」

 

へー、そりゃすごい。

あれ、ちょっと待って。今、「お父上の影響」って言ったよね?

……それってつまり、「お父上」もさっきの陛下みたいな戦い方をしてて、しかも陛下より完成されてるってことだよね?

 

「……ねえ、陛下のお父さんってほんとはめちゃくちゃ強い?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「はっきり言って、さっきの陛下は前より全然強くなってた。もしあの『勘』を完全にモノに出来たなら、とんでもない選手に化けると思うんだよね。……さっきの言い方だと、お父さんは今のあの子よりモノに出来てるってことなんじゃないの?」

 

————ねえ、陛下のお父さんって何者?

 

言葉にしないけど、そう伝えたあたしには、ディードがはっきり息を呑んだように見えた。

その時、ディードの雰囲気がガラッと変わる。

 

 

「……すみませんが、私にはそれ以上お話しすることはできません。たとえ誰であっても」

 

失礼します。そう端的に告げて、ディードは去っていった。

 

分かりやすい拒絶。

いままで向けられたことのない表情で、平坦な声色で。

 

「こりゃ、地雷踏んじゃったかな……」

 

あの様子じゃ、もしかしたら騎士カリムにも言ってないことかもしれない。

これ以上踏み込んだら、もう帰ってこれないかも。そんな予感がビンビンする。ヤンチャやってた頃の勘が危険信号をバンバン出してる。こう、手を出しちゃいけない感じの。

 

(うん。これ以上はやめとこ)

 

あんまり言いふらすのも好みじゃないし。それであの子に嫌われるのもヤだし。知りたくなったらそれこそ本人に聞くだけの話だしね。

ま、だいじょーぶでしょ。そんなことより練習練習!

 

……って、ディード行っちゃったけどこれどうすんの?あたし縛られたまんまなんて嫌なんだけど!?はやく帰ってきてー!オットー……は陛下のお側だから帰ってこれないし!

誰でもいいからはやくあたしを下ろしてーーーー!!!!

 

 

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