偽りの英雄~彼女に振られて異世界転生~   作:オクたんじろう

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蒼との出会い

 

 王城に来て一か月が経った。

 

 ここでの生活はそこまで悪くなかった。むしろ奴隷になっていること以外は地球での生活よりもレベルが高いだろう。

 仕事は地球の知識を伝えていくだけで楽だし、食事は美味しいし自由時間もある。

 

 ちなみに地球の知識についてだが、一番食いついてきたのは食文化についてだろう。こちらの食文化はそれほど進んでないらしくいろんなレシピや醬油や味噌などといった調味料の知識などにとても興味を示していて、どこの世界も食欲は凄いんだなと思ったりした。

 

 他には銃のことや医療品のことも伝えたが、どうやら興味がないらしい。

 何故ならこの世界の上位の実力者にもなると銃のようなものは効かないし、世界のトップレベルの魔法師には核爆弾規模の魔法を使える魔法師もいるらしいし、光の上位魔法だと病気などは治せる。しかも手足も生やせるらしいので現代医療の知識も興味がないらしい。

 

 

 そしてこの王城に来てわかったこともたくさんある。まず俺がなんとなくで使っていた、魔力を身体の中で動かすことや、魔力によって身体能力を上げる技術はそれぞれ魔力操作と身体強化といい。魔力を使う技術で魔法ではなく魔術というらしい。

 

 ちなみに魔法というのは、ダンジョンという場所で神からの試練をクリアすると、神の加護を受けることができ、それでようやく使えるようになる。さらに魔法というのは加護の強さによって5段階に強さが分けれているらしく。下から【普通級(ノーマル)】【希少級(レア)】【特別級(スペシャル)】【伝説級(レジェンダリー)】【神話級(ミシカル)】とランク付けされている。

 

 人間の使える魔法は、火、水、地、風、雷、光の6属性であり、それ以外が属性なしの無らしく、俺が加護の適性なしと言われていたのはこの無だったということらしい。

 

 人間の持つ属性は何でわかるかといえば、髪の毛の色らしい、火なら赤、水なら青といった感じで、ちなみに俺の髪のような白髪や黒髪といった髪の色は無という感じだ。なので俺は魔法を使うことは出来ない。それを聞いて少し落ち込んだものだ。でも魔術は使えるので毎日暇なときに魔術の練習をしている。

 

 そんな感じで昼はメイドや執事に地球の知識を教えたり、それ以外の時は本を貸してもらってこの世界の知識をつけたり、魔術の練習をしたりといった生活している。

 

 わりとこの生活は楽だし、このまま一生この生活でもいいな……と思っていると、俺に貸し与えられてる部屋がノックされた。

 

 俺は思考を一時中断し、部屋のドアをあける。

 

 するとそこには赤髪の筋肉質な男がいた。

 

「こんにちは、クオン」

 

 この人はバン・シュナイダー侯爵で王国でもトップクラスの魔法師だ。

 基本的にこの王城の貴族や王族は俺のことを無視するし、メイドや執事も仕事で話すとき以外は俺に近寄ってこない。しかしこの人はいろいろとお節介を焼いてくれるいい人だ。少し暑苦しいが

 

「こんにちは、何か俺に用がありましたか?」

「ああ、ちょっといいか? 暇だったら少し付き合ってくれ」

 

 なにか用事があるのだろう、今はちょうど自由時間で時間は空いているし、この人に良くしてもらっているしと、俺は快く頷いた。

 

「はい! 大丈夫ですよ」

「よし、じゃあ連れていきたい場所があるから着いてこい!」

「わかりました」

 

 そう言われて侯爵に着いていき、王城の中を進んでいくと侯爵はとある一室の前で止まった。明らかに俺の部屋よりもでかそうだ。

 その部屋のドアを侯爵はノックする。

 

「ティリス様! 入ってもよろしいでしょうか?」

「どうぞ」

 

 侯爵に連れられて部屋に入る。

 

 そこにいたのは人魚だった。比喩ではなくリアルに人魚だった。上半身は人間の姿だが下半身はヒレがついていた。どうやら普通に立っていられないらしく車椅子に乗っている。

 

 俺は少し見惚れてしまった。サファイアのように澄んだ青髪と瞳、前の世界でも見たことのないほどの絶世の美貌、肌は日に当たったことがないかのように白く幻想的だ。10代前半くらいだろう。まだ幼さはあるがそれでも凄まじい。

 

 俺がそんなことを考えていると侯爵が話始めた。

 

「お久しぶりです。ティリス様。こちらがクオンです。現在王城で異国の文化を教えているものです」

「お久しぶりです。バン様。わざわざ来てくれてありがとうございます」

 

 侯爵がこんなに丁寧なので相当偉い人なのだろう。失礼がないようにしよう。そう思い俺は自己紹介をすることにした。

 

「俺はクオンです。奴隷ですがこの城に住まわせてもらっています。お目にかかれて光栄です。よろしくお願いします」

「私はティリス・セイドリーテです。第三王女ですが王位継承権はないのでそんなに畏まらなくても大丈夫ですよ」

 

 そう言ってティリスは微笑む。凄く可愛い。ああ、これは一目惚れだろう。

 

「はい、わかりました!ティリス様とお呼び致しますね」

「では私もクオン様とお呼び致します」

 

 俺たちがお互いに自己紹介をして、微笑みあっていると侯爵が嬉しそうな表情を見せた。 

 

「仲良くなれたようでよかったです。ではこれで私は失礼いたしますね」

 

 そう言って侯爵は部屋から出て行こうとする。俺はどうするのだろう?

 

「侯爵! 俺はどうするのでしょうか?」

「これから暇なのでしょう? お互い王城で気軽に話せる人がいないのですから、私からのお節介ですよ」

 

 そう言って侯爵は出て行ってしまった。俺は困惑してティリスを見ると微笑まれてしまった。

 何も話さないのもなんだし、俺から話しかける。

 

「侯爵行ってしまいましたね、どうしましょう?」

「そうですね、では話でもしましょうか」

「はい! 是非しましょう」

 

 俺はティリスにそう言われたので、嬉しそうにそう返した。

 

「じゃあ……そういえば、クオンさんは異国の方なのですか?」

「はい、そうですよ! 私は異国というより異世界から来たんです」

「そうなのですか! ぜひ話を聞きたいです」

 

 そう言って、ティリスは目を輝かせた。未知の世界に興味があるようだ。

 

「よろこんで」

 

 俺はそれから、ティリスといろいろ話した、地球のことを俺自身のことも、いろいろ話しているとわかったこともたくさんあった。

 

 どうやらティリスは生まれつき人魚だったらしい。

 この国では人魚は亜人とされ差別の対象らしく、王女であっても周りに人間じゃないと蔑まれて見られてきたらしく、ちゃんと人として接してくれるのはバン侯爵くらいらしい。

 

 そんなこんなでいろいろ話しているとあっという間に日が落ちていた。流石にそろそろ帰るとしよう

 

「では遅いので私はこれで失礼します」

「楽しかったです。また来て話を聞かせてください」

「私の方こそ楽しかったです。ぜひまた来ますね」

 

 そう言ってティリスの部屋を出て自分の部屋に帰った。

 

 

 どうやら俺はティリスのことを好きになってしまったようだ。

 

 我ながらちょろいが仕方ないだろう。あんなに親密に女子と話すのは一か月ぶりだし、この世界に来てからは俺と親しくしてくれる人がいなくて寂しかったし、なによりあれだけの美少女だ。俺でなくても少しの間で好きになってしまうだろう。

 

 そんなことを考えながら、俺とティリスの初めての一日目は終わった。

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