「弟と結婚できないなら、色情霊になればいいじゃない」~弟くんのことが大好きすぎてお姉ちゃんは今夜も弟くんを誘惑しちゃいます~ 作:水無飛沫
ピンポーン。
玄関のベルが鳴る。
両親はマナの親と飲みに行ってしまったので、家には俺しかいない。
「はーい」
声を出しながら扉を開ける。
そこには俺から視線を外し、斜め上を見ながら愛想笑いを浮かべえるマナが居た。
「いらっしゃい」
「う、うん。おじゃまします」
……ふたりして玄関で動きが止まってしまう。
マナが泊まりに来るのも随分と久しぶりだ。
話をどう切り出していいものか悩んでしまう。
それは彼女も同じようで、どうしたものかと髪をいじっている。
「夕飯は?」
「これから」
そう言ってマナが手に持った袋を持ち上げる。
中にはきっと彼女の母親が作った惣菜が入っているであろうタッパーがいくつも収まっていた。
うちの母親も随分と機嫌よさそうにたくさん料理を作り置きして出て行ったので、考えていることは同じだったようだ。
思わず苦笑してしまう。
「なに?」
キョトンとするマナを「とりあえず来ればわかるよ」とリビングへと通す。
テーブルの上にはちょっとしたパーティーでもできそうなくらいの料理が並んでいる。
そこにマナの持ってきた惣菜を並べると……
「まるでお誕生日会ね……」
マナがぼそりとつぶやいた。
俺も全く同じ状況を想像していた。決して二人で食べる量ではない。
「余ったら冷蔵庫に入れておいて。みんなで朝から飲むから」
そう言っていた母親の嬉しそうな顔が未だに頭から離れない。
「とりあえず食べようか」
ふたりして席に着き、思い思いに食べ始める。
どれがおいしい、それがおいしい、これはマナが作った、みたいな話をしているうちに、すぐに話題も尽きてしまう。
毎日のように顔を合わせているのだから、他に話題はないし、当たり前っちゃ当たり前なんだけど……。
食事もひと段落して片付けを終えると、俺とマナはソファで並んでテレビを眺めた。
「お風呂はどうする?」
何気なく聞いてみると、
「あ、うん。じゃあ貰おうかな」
という答え。
どこかぎこちなさを感じながら、彼女が戻ってくるのを待つ。
「お待たせ」
という声とともに、髪を下ろしてタオルで拭きながら、パジャマ姿の彼女が戻ってくる。
マナはそのまま俺の隣に腰を下ろすと、テレビを眺め始める。
見慣れない姿と石鹼の匂いに、ドキドキしてしまう。
「ねぇ、ハヤト……」
熱に浮かされた表情のマナに、俺は今までとは知らない幼馴染の姿を認めざるをえなかった。
「お、俺もお風呂……入ってくる」
「……うん」
残念そうなマナから逃げるように、俺は風呂場へ向かう。
いつもの見知ったお風呂場も、彼女の浸かったお湯というだけでなんだかドギマギしてしまう。
……いや、さすがにその考えはどうかと思うぞ、俺。
できるだけ冷静を心掛けながら、お風呂を終えてマナのもとに戻る。
マナは俺の姿を認めると麦茶を二人分入れてくれた。
テレビを眺めながら、隣に座っているマナに今までの幼馴染とは違った何かを感じてしまう。
ぎこちないやり取りをしながらも夜は更けていくもので……。
「じゃあ寝ようか」
さすがに寝ないと明日に差し支えるであろう時間帯。
もう先延ばしにする気はなかった。
「う……うん」
俯いたマナの表情は見えない。
俺の後に続くようにして、2階へ上がり俺の部屋へと入ってくるマナ。
「おじさんもおばさんも帰ってこないね」
「明日は有給取ったから、夜通し飲んでから帰るってさ」
「へぇー、うちの父さんと母さんも同じこと言ってたよ」
そう言ってクスリと笑う。
けど、それの意味することに気づいてしまい、やっぱり妙な照れが出てきてしまう。
それはマナも同じようで、さっきからしきりに髪をいじっていた。
「マナはベッドで寝な。
俺は床に敷いた布団で寝るから」
場の空気に耐え切れず、そう告げて俺は押し入れから布団を取り出す。
「……ハヤト」
身体に小さな抵抗を感じる。マナが俺の寝巻の裾を掴んでいるのだ。
「一緒に寝てくれないの?」
上目づかいで問いかけてくるマナ。
耳まで真っ赤になっていて、勇気を振り絞って聞いたであろうその質問が俺の心に刺さる。
「いや、それは……」さすがに幼馴染とはいえよろしくはないだろう。
そう言おうとした俺をマナは制して
「わかってる。私たち、もう子供じゃないんだよ?
今日はハヤトになにをされても、覚悟は決めてるし……」
マナが俺をベッドに座らせる。
そして俺の横に自らの腰を落ち着けると、彼女は俺の方を見ながら目を瞑った。
「マナ……」
俺は彼女の肩を抱いて……
「ふぅん。随分と大胆になったわねぇ。マナちゃん」
「っ、姉ちゃん!!」
俺たち二人の前に、姉が立ち塞がった。