「弟と結婚できないなら、色情霊になればいいじゃない」~弟くんのことが大好きすぎてお姉ちゃんは今夜も弟くんを誘惑しちゃいます~   作:水無飛沫

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7話

 

 

 

「いつかはこんな日が来ると思ってたけど……」

 

姉が俺とマナを引き離すと、二人の間に座った。

それどころか、マナに見せつけるようにして姉は俺に密着している。

 

「私が帰って来たからには、もう誰にも渡さないんだから」

 

姉は俺の腰に抱き着くと、首だけを振り向かせてマナに舌を出す。

 

あまりの出来事にマナは硬直している。

 

「アヤ姉……本当にアヤ姉なの?」

 

やっとのことで絞り出された声。

そりゃ、そういう反応になるよね……。

 

「本当の本当に私よ」

 

冷たい声音で言い放つ姉。

……あれ?

 

「どうして……本当に幽霊に……?」

 

「そうよ」

 

マナの様子がおかしい。

姉との再会がそんなに嬉しくもなさそうだ。

 

「私ははーちゃんと結ばれる。その為に帰って来た」

 

姉がマナの目を見て、宣言する。

 

「そ、そんなことできるわけないじゃない」

 

マナが力なくつぶやく。

……なんだか姉がケンカ腰じゃない?

俺の記憶の中の二人は、本当の姉妹みたいに仲が良かったはずだけど。

 

「そうね。そんなことできるわけない。

そう思って諦めてた。

だから、あなたがはーちゃんと結ばれるように応援もした」

 

グッと姉が俺の腰に回した手に力が入る。

 

「けど、私は……私にはそんなことできなかった。

誰か他の人とはーちゃんが結ばれるなんて、耐えられなかった」

 

――だから自殺したのよ。姉が顔を伏せる。

 

「……だって……姉弟で結ばれるなんて……」

 

マナの声は震えている。

 

「常識も節理も、今の私には通用しないわ。

マナちゃん。あなたの敗因は、5年間もはーちゃんに手を出さなかったことよ」

 

「そ、そんな……」

 

マナの目が震えている。

だがグッと拳を握ると、

 

「いえ、けど……あたしだって!! ずっとハヤトのこと!!」

 

姉の目を見返した。

 

「だから何? よく考えなさい、私とあなたの差を。

あなたは老いる。けど、私はずっとJKのまま。

ずっと綺麗なままではーちゃんの傍に居てあげられるわ」

 

「でも、あたしはハヤトと一緒に老いることができるもん。

色んな幸不幸を共有できる!!」

 

「じゃああなたに絶対はーちゃんより先に死なないって断言することはできる?

寂しい思いをさせないって断言できる?」

 

ぐぐぐ、とマナの呻く音が聞こえる。

(……いや俺、姉が死んでからの5年間はメチャクチャ寂しかったですけどね)

などと野暮なツッコミを入れる空気でもない。

 

「私にはできるわ。私なら、ずっとはーちゃんの傍で、彼が死ぬまで一緒にいてあげられる」

 

姉の冷たい手が、俺の頬を愛おしそうに撫で上げる。

 

「誰にもはーちゃんは渡さない。帰りなさい、あなたの負けよ」

 

マナに顔を向けずに、姉が自らの勝利を宣言する。

 

「ま、負けてないもん。アヤ姉だって、”まだ”なんでしょ?」

 

「そう。”まだ”よ。

けどどうかしらね。それも時間の問題じゃないかしら」

 

ならばまだ負けてはいない。そう言いたげにマナの瞳に光が戻る。

……ところで、なにが”まだ”なんだろ。

 

「あ、あたしだって!!」

 

「……私ははーちゃんに取り憑いてるんですもの。

四六時中一緒。

そのことの意味がわかるかしら?」

 

「ダメ!! 絶対にダメ。ハヤトは……ハヤトは……」

 

そこで何かを思いついたように顔を上げるマナ。

 

「じゃあ私も毎日ハヤトと一緒に寝る!!」

 

いや、さすがにそれは……

 

「ダメでしょ」

 

姉がピシャリと言い放つ。

 

「よしんばハヤトがオッケーしたとしても、おうちの方の許可が下りないでしょ」

 

姉にダメだしされて「ぴえん」と表現できるくらいベソをかきながら、マナがその場でスマホを取り出してどこかに電話をかけ始めた。

 

「ママ―!!」かくかくしかじか。

現状を嘘偽りもせずに母親に状況を報告するマナ。

最後に「私、もう毎晩ハヤトのところに泊まるね!!」と決意表明をすると、少し間を置いて

「やったぁ!!」とマナが飛び跳ねる。

 

……え、いいの? 娘を同級生の男の家に泊まらしちゃうの?

 

「ふふっ」

 

勝ち誇った笑みを浮かべるマナ。

 

「ふんっ、第一関門は突破したようね。だが我々の両親がなんていうかしら?」

 

マナに電話を渡された俺。通話相手は既にうちの母親に代わられていて……

あぁ、そういえば今日はうちの親とマナの親、計4人で飲み会してるんだっけ。

 

「いいわよー」

 

酒に酔ってると思われる母親の呑気な声が聞こえる。

 

『お母さんっ!?』

 

俺の声に合わせて、スマホに耳をそばだてていた姉も驚きの声を上げる。

 

「だってほらぁ。

マナちゃんのところとは仲いいし……。というか、私たち、あなたたち二人が結婚するものだと思ってるし、今更誰も気にしないわよぉ」

 

むしろくっつくのが遅すぎたくらい。そうつぶやく母の言葉に

 

「チィィィィッ!!」

 

姉が盛大に舌打ちをする。

 

「さぁ、これで私たちは親公認のカップルになったわね!!」

 

マナが姉が居ないほうの俺の隣に座り、腕に抱き着いてくる。

姉も負けじと、俺の腕に胸を押し付ける。

 

「ちょ、まっ……」

 

俺、大ピンチ。

 

「ハヤト……」

「はーちゃん……」

 

『寝よっか』

 

左右から耳元で囁かれて、そのまま押し倒される。

俺に拒否権はなかった。

 

左右を姉と幼馴染に挟まれて、今夜は少し寝苦しい。

 

 

 

 

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