やさしい恐喝王 作:くま
人々の動きは昆虫でいうアリのようなものだ。集団で動き、集団で物事を考え、集団で結果を出す。一人の行動で結果を出すことはありえない必ずその結果に繋がる過程で誰かの助けが入っている。何が言いたいかというと、一人では何も結果を残せないという事だ。
私はチャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン、イギリス生まれのしがない男。母親が小説の人物から名を頂いたとの事だが私はその小説を読んでいない、そんな時間があればメディアに向けたアピールをしていたほうが有益だ。
裕福な家庭に生まれた、親は広告代理店をいくつも経営する実業家だった。私が18の誕生日と同時に交通事故に合い即死…受け継ぐ形で私が事業を展開している。
悲しかったが、仕方のない事として受け入れた。教会に来る人物は生前に親と親しかった者達、全員が泣きそうになっている…私も合わせて涙を流しながら悔やむ言葉を考えて発した。ある意味ここから私が始まった。
どんなに地位を得ても選択を間違えればすべてを失う。私の親はプレゼントを買いに行く途中で事故に合った、我が家には家政婦もいた、取りに行かせる選択をすれば生き残れた…親は選択を誤ったのだ。自分はそんな間違いは犯したくない、裕福な家庭に生まれたことは幸運だ。スタート地点の違いが未来に影響を与えるのは否定しないがそうじゃない。
人間社会で生きていくには同調が必要だ。何もできないから、知らなかったからなどの感情は理由にならない。知識を得て対処する、その為には他者を利用して 利用して 利用して その結果地位を得るのだ。メディアと関係が深かった親には感謝しかない、私という存在をアピールできる環境が最初から整っているのだから。
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時が経つのは早いもの、あれから数年の間に私は地位を得た。事業を経営していく上で私は繋がりを大事にした。良い人材は他企業に取られている、親が亡くなり企業としての力が落ちていたのもあり人材流出に歯止めをかけることが第一の課題だった。運命はなぜこうも弱い人間に悪戯するのだろう?
やり方は簡単だ、誠意を込めて良い人材に手紙とプレゼントを送っただけだ…所詮は親から受け継いだだけの男に何も疑問に思わずついて来る輩なぞ信用できない。私個人に対してついて来てくれる者を求めた、あわよくばと…
誠意は大事だと改めて感じる出来事だった。手紙を送った相手全員が我社に来てくれた...あの時はいい年して泣きそうになった。
何でもします…働かせてください!どうか...
まさか全員が土下座するほど私に…あれ程、人と人との繋がりを大事にしようと思ったことはない。彼らは今も我社で働いている、やる気があるのはいいのだが働きすぎる時がある、時折ご家族の話を交えながら休暇を取らせるなどしている。我社はホワイト企業だから当然だ、過重労働にはさせないさ。
現在、英国において私はメディア王と呼ばれている。それは良い、社員たちの努力が結果として私をその地位にのし上げてくれたのだ誇らしい勲章として受け取れる。しかし、私をリアル恐喝王やら毒ヘビ紳士と…私がメディア界で有名になると必ずあの小説「シャーロックホームズ」に出て来るミルヴァートンと重ねられる。流石に何度もそんな不名誉な呼び名で呼ばれ続ければ調べもした、結論として所詮は創作物である。そもそも私はまだおっさんじゃない!確かに髪はグレー色で年老いて見えるかもしれないが…目が黄色っぽいのは肝臓が悪いせいだ。
まあ、メディア受けするように立ち振る舞う必要性を考慮した結果、英国において知らぬ者はいない実業家であり恐喝王である…公式が認めたような謎の一体感を感じる。
私が何をしたというのだ!普通に事業を成功させた人物として受け入れてほしいのに!…最近、何かの事業を立ち上げると第一に警戒され、第二にお役人が挨拶に来る。内容は経営していく上での制限だ、独占市場にするなと念を押される…私は国から警戒されている。何をしたというのだ…女王にもシャーロックホームズにちなんでウイスキーソーダを送ったのだが、それが駄目だったのか?
国外受けは良好だ、自国のような謎の警戒はされていない。特に日本はアニメ文化のせいか英国がまた何かやってるwなど前向きに捉えられているようだ。鈴木財閥のご令嬢がいる国としてマークはしていた…親が亡くなって都合よく遺言状が金庫から出て来た。内容は私が事業を受け継ぐ際、烏丸グループを仲介役とすること。
親が事業に成功した時には衰退し始めていたのだが…面倒なことに契約書まで出てきた。融資を多く貰っていたらしい、今なら全て返せるのだが自分にとって有益な関係を維持できている為継続している。いつから私の部下と接触していたのかは知らないが、とにかく優秀な人材が多いのが特徴だ!何か欲しい情報があれば迅速に送ってくれる、必要な人材も…私も見習いたいものだ。直接取引するようになって助かったことが多いのだがカクテルの名前で呼び合うのは何故だ?しかも私はウイスキーソーダと…それはホームズだろう...
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ミルヴァートン、あいつは現代に蘇った恐喝王そのものだった…
先代チャールズ家が経営していた時は良かった、組織間の連携も取れて我々もやりやすかった。表向きもメディアへのアプローチを欠かさず、我々の隠れ蓑として機能していた。あいつらが調子に乗らなければ事故に合わずに済んだものを…
この事業は終わりだ、組織内でも利用価値が低下していたのもあり、別会社の社員として働きだしていた。あいつらの一人息子が受け継いだらしいが、伝手も何もない状態で一般的な社員しかいない…才能が有ったとしても組織の手が掛かった連中が来るだけ、期待するだけ無駄と思っていた。
あいつらの息子、チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートンは生まれながらの人を引き付ける才があった。まさか親の死を利用するとは…表向きそれなりに有名だった両親の死、それに対するインタビューが連日放送された。普通なら突然の死を受け入れられないはずだ、死というカクテルに酔わない限り…
インタビューでは涙を流しながら、だが凛々しくあり続ける様子が映し出された。「親が死去したことは悲しい...だが私はそれを乗り越え!必ず親の後を継ぐと宣言する!」…これは演技だ、こいつは親の死を何とも思っていない...大半はこの演技で騙せるだろうが、まだまだ粗削りな部分が目立つ。息子の方は演劇をしていた経歴は無い…才能とは突然開花するものだと。その時は興味程度だった、ミルヴァートンから手紙が届くまでは。
「馬鹿な!どうして娘の事を知ってッ」
あまりの内容に声を荒立ててしまった。妻と娘に気づかれたが誤魔化しつつ手紙を再度見た。内容は目立ったことは書かれていない、自分が経営する事業に戻って来てくれという願いの手紙…ただ、所々に我々にしかわからないようなメッセージが書かれていた。
『テキーラをラッパ飲みしてみたが面白いぐらい吐いてしまったよ、自分の限界を見極めなきゃいけないと感じる出来事さ…‥』
自分の失敗談を語りに入れて興味を待たせる…常套手段だが、カクテルの名前をわざとらしく入れるのは我々に対するアピールとしては馬鹿らしいと感じる。訳すとこうだ…‥『テキーラから情報を吐き出させた、この程度の輩が工作員とは…‥』
舐めているのか?それとも死にたがりか、偶然か…そもそも奴が経営するようになってまだ接触もしていない段階でコードネーム持ちの連中と合えるはずがないはずだが、他にも大手自動車メーカーを例に挙げて今後の事業展開についての説明が書かれていた。例に挙げられている企業全てが組織と関係がある…信じないわけにいかない何よりこいつは知り過ぎている!
『…‥P.S. カナダ産ハチミツが手に入ったので良ければ召し上がってください。スノーボールを作る際に使用すると美味しいらしいです。』
こいつは娘のアレルギー体質を知っている、個人情報は調べられているのだろうッそして犯罪歴も、送られてきたハチミツ『MYRSO』カナダ経由で販売されている大麻配合のハチミツ、麻薬使用で捕まった過去を調べられただけじゃない!娘の命はいつでも奪えるという宣言。
俺は最早ミルヴァートンの手紙を信じていた、『スノーボール』というのも隠語だ。コカイン…‥娘はまだ未遂だったが、付き合いのあった友人が所持していたのがわかった。娘が手にするのは時間の問題だっただろう…
組織は裏切れない…ここまで情報が把握されている人物を組織が生かしておくだろうか。答えはNOだ、工作員の情報だけじゃない、組織の情報まで持っている。そして俺も家族も巻き込まれる…この手紙で知ってしまった情報から共犯者に仕立て上げられた。
手紙は処分した、生き残るにはミルヴァートンに仕えるしかない…組織に奴の有用性を伝えて移動するのに時間はかからなかった。俺以外の奴にも手紙を送っていたらしい、計算されたように同時期に奴を推薦する訴えが続くのに組織も興味を持ったようだ。
チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートンは今後ウイスキーソーダと…‥コードネームで呼ばれるのに時間はかからなかった。今でも思い出す、我々が奴に土下座をした時の顔を、小説の彼のように獲物を見定める黄色い目、人の上に立っているという優越感を感じているとわかる表情…心の底から感じる恐怖。奴に仕える事になった者達にも定期的に接触される、感じた感情を忘れるなというように家族や今後の話を笑顔で話すのだ、密告しようと覚悟を決めていた者に対しては徹底的に心を折って来る…
奴はそれを隠そうとしない、小説の人物と自分を重ねるようにメディア露出をしている。あくまで演出であるというアピールを欠かさない…
…違うんだ…奴は本当のチャールズ・オーガスタス・ミルヴァートンなんだ…
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ここまで英国に対して挑戦状を叩きつけた輩はいないだろう…チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン、奴の名を聞かない日がない。メディア王と言われるだけあり、連日何かしらの催し物に参加・主催するなど彼はアピールを欠かさない。
「女王に対してウイスキーソーダを送るとは…宣戦布告でしょうか」
「我々の動きを読んでいると教えたのでしょうね」
英国は先代の頃からマークしていた。あれは黒の組織のダミー会社として機能している、FBIと協力して既に把握していたが社長が事故…に見せかけて排除されてから優先度が下がっていた。あのミルヴァートンが引き継いでから急速に復旧、いや先代より圧倒的に厄介な存在となりつつある。
「英国の潜入員から連絡が途絶えたそうです…恐らく」
「FBIも同様...shit!隠してもいないのに!」
「今のままでは証拠不十分です…奴が送った手紙などから恐喝として受け取れるかは」
「わかってるわよ!…ジェイムズは何て」
「別の角度から攻めると、日本で組織が動く可能性があるとの事です、既にパスポートも受けとってます…」
「私はジョディ・サンテミリオンね...アンドレ…貴方も負い目を感じてるのも分かってるけど切り替えなさい、誘導したのが奴だとしても証拠がないのよ!」
アンドレが黒の組織メンバーを逮捕する任務の際に偶然現れた老人…離れるように伝えたのが間違いだった。その老人は組織の関係者、密告され…ライ、FBIの仲間であり潜入していた赤井の素性がバレる切っ掛けを与えてしまった。長年自分の責だと思い詰めていたが、別の関係者を逮捕する際に聞いてしまった真実。
『ハハハ恐喝王は何でも知ってる!お前達がここに来ることも、お前達が探ろうとしているのもな!誰もあの方から逃げられないのさ死以外は…‥』
その男は目の前で自殺した。元から準備していたのだろう、我々が駆けつけるタイミングに合わせて毒薬を飲んでいた…その上、言い終わると同時に銃による…全てが奴の掌の上だった。自殺した人物の家族が同時刻に事故に合った、偶然じゃない!奴が全て仕組んだんだ!
あいつは隠していない、自分が恐喝王であると笑いながらアピールしている。その通りなのだ、奴こそ現代の恐喝王チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン本人だ!
ウイスキーソーダ…カクテル言葉は「誕生」 今世紀の王を祝福せよと奴は言っているのだ。
…‥必ず奴を捕まえる!…‥
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テキーラはイラついていた。最近コードネームを得た存在に情報を漏らしていたのではと組織から疑われている為だ。
「ああ、俺やテキーラや取引は完了した。心配すんなウォッカ、ジンにもそう伝えておいてくれ」
コンピュータプログラムの取引を任され固定電話から連絡をしていると、背後でガキが小銭を落とした…イラついていたのもあり蹴り飛ばした。
トイレで中身を確認しようとする最中、ウイスキーソーダについて考えながら作業を行った。
「ウイスキーソーダに情報だと、ふざけんなや!会った事もねぇぞたくっ英国で有名になってる奴と俺が接点結ぶわけ...なんやコレ入れへんぞ…ん?開いとるか?」
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トイレが爆発した。その過程を聞いていた子供が一人、爆発後すぐ現場に駆け付ける。
やっと やっと 奴らの手がかりを掴みかけたのに!何でこんな事に...
大手ゲームメーカー・満天堂の新作ゲーム発表会に呼ばれた毛利一家。酒を飲み過ぎた毛利のおっちゃんに飲み物でもと自販機を探していると黒ずくめの大男を見かけた。社員バッジもない人物がゲーム会社の物品を受け取ったのを疑問に感じながら自販機に近づくと、その男の会話を聞いてしまった俺は咄嗟に近づき靴底に発信機と盗聴器を仕込んだ。
『ウイスキーソーダに情報だと、ふざけんなや!会った事もねぇぞたくっ英国で有名になってる奴と俺が接点結ぶわけ...なんやコレ入れへんぞ…ん?開いとるか?』
ウイスキーソーダ、そして英国で有名…まさか!爆発は推理と関連付けた直後だった。
「現代の恐喝王」
シャーロックホームズは何度も読んでいる、その中でもホームズが推理じゃなく強硬手段を用いた相手…日本でも有名だ、小説に関係なくメディア受けするようなコミカルでミステリアスな雰囲気を醸し出す人物としてテレビやCMで見かける。
「ウイスキーソーダ、ホームズが飲むカクテルじゃねーか…皮肉かよ」
爆発物の調査、いつも通りおっちゃんを眠らせて犯人を問い詰める。大黒ビル最上階「カクテル」というBarで黒の組織と取引を行うことを知った俺は急いで向かうが…組織の連中は元から取引相手も抹殺する予定だった。最上階に着いて数分も経たずに爆発した、運よく爆風から逃れたが奴らの手がかりが振り出しに戻っちまった!
推理としては浅はかだが、わかったことがある。恐喝王は組織の関係者かあるいは…
わかっているのに捕まらない…小説のまんまじゃねぇか!
奴は犯行を隠さない、どんな状況下でも自分が有利な状況を作り出す。他者を利用し、他者をあざ笑い、他者を陥れる…
(面白れぇ…必ず尻尾を掴んでやる!)
現代を生きるホームズと現代を生きるミルヴァートン。
二人の運命が結ばれた。どのような結末が来るのか…
真実はいつも一つ
作者はコナンを視聴しているが、何話でこいつらが出た!とかは曖昧なのでwiki見ながら書いてます。漫画も途中までしか持っていない、アニメ版は飛ばし飛ばしで毎週見ていたわけではない…ガバが多くなるかも。
テキーラの話は印象が深かったから…黒の組織メンバーなのに速攻で退場・間違いによる死。不幸過ぎるぞ。