やさしい恐喝王   作:くま

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 楽しみとはゲヘンナ(地獄)への入口と考えたことはあるだろうか?具体的に言えば、目標と言い直してもいい、人生の目標に向かって努力しろなど言い方は違えどよく聞くだろう…それは目標に辿り着くまでの過程を考慮しない最低の言葉だと私は思う。

 

 日本に行くのは楽しみだ。仕事として行く事になっているが、実質旅行と変わらない…私は他国にメディア進出するにあたって努力した、言語も文字も、それこそ何十時間も勉強と会話を繰り返したとも、その国独自の考え方も考慮するし、私のキャラ的にまずいと感じる事を判別するのも手間だった。

 

 秘書を雇うにしても…ミルヴァートンだぞ?この理由だけで大半の事を独自でやる必要があった。どうしてだ小説のミルヴァートンよ!何故あなたは金と他者の不幸しか信じないのです。おおミルヴァートンよ…迷走は辞めよう。

 

 出張するにあたって引継ぎは大事だ。そもそも社長である私は普段からテレビ出演などで出ていて、優秀な部下君達で補うというスタンスだった。カクテル仲間に人員募集を頼んでみたら部下君からダース単位で呼べると…最高だよ部下君、君に任せるからいい人呼んでくれ、でもこの前みたいに私の情報は…ね。

 

 振り子のように顔を振らなくても、相変わらず君はオーバーだなハハハ…私が笑うと静かになるのやめてほしいな、ミルヴァートンでも傷つくんだよ?まあ慣れたよ…他国でのビジネスをする理由の一つだが母国でのビジネスがやりずらくなっている、国から警戒されてたし当然だが。

 

 打開策として複数のやり方を考えた。大まかに二つ、一つは女王に謝罪文と警戒を解いてほしい、できれば関係回復。もう一つは元から展開していた国外取引の発展、今もやってるビジネスをより深める。この二つ…こういう時にメディア王としての力を有効に使える。恐喝王の呼び名の方が流行っているが…自分でも名乗ってるから今更だな。

 

 日本は特に取引相手が多い、枡山さんの自動車メーカー、鈴木財閥やら今も関係を続ける烏丸グループやら関西だけなら大岡家も…調べれば調べるほど日本の財力持ちが多い気がする。アメリカよりかは劣るが、足を見られる可能性があるな…そこは私のアピール次第か、社員全員の未来に関係あるのだ、やるしかないだろう…

 

 課題は一つ一つ終わらせよう…女王への謝罪文だ...重要な問題がある、女王の機嫌を悪くした理由がわからない…私個人に対して言ってくることから考えて、やはり恐喝王かな?いくらシャーロックホームズが有名だからって恐喝王だから…マイナスイメージを気にされているのか...

 

 流石にミルヴァートン流に書くのはまずい…正直に書こう。私のアピールは母国を思っての事です、この思いを乗せて誠意を込めて書けば通じるはずだ。それとプレゼント…じゃない、献上品は石鹸なんてどうだろうか?私に汚れた意思なんてありません、手紙と一緒なら通じるだろう。

 

 不安だが、もう一つの課題というより私の後釜だな…母国にいない間に任せる人物、部下君達に任せるのもいいのだが無理だそうだ。だが社員以外の人物に指揮運営を任せる企業なんて聞いたことがないぞ…ここで弊害だな、優秀な部下君達を頼り過ぎた。そしてまた頼ってしまう悪循環、駄目だな私は…

 

 最初の人員募集の件でカクテル持ちの一人が是非とも我社に来たいと、しかも母国出身ですぐ来れると…私の運は最近、限界どころか天元突破をしたようだ。カクテルの名前を貰っている人物は多分だが何かしらの事業を経営して成功した人物に付けているのだろうと考える。ピスコさん、ウイスキーソーダこと私…よし!

 

 来てくれるカクテル持ちはスタウトと言うらしい。カクテルの名前の由来は何なんだ?スタウトは黒いビールだが…ピスコは白いウイスキー、ウイスキーソーダも白に近い、もしかして性格を表しているのか。だが私の名前も部下を通じて第三者から教えられたし…

 

 事業を展開していく上で各社長たちとの面会はある。全員とは言わないが、やはり向上心がある者が多い印象だ…かくいう私もそうだ、自分という存在をアピールに余念は無い、まだまだ上に行くという向上心も消えていない。しかしだ、上に行けば必ず先行者はいるものだ、そいつらを努力で超えていくのが一種の楽しみとしている私だが…他者を陥れる卑怯なやり方をする者もいる。

 

 そうだな…先を見て危険を見落とすなんて事あってはならない、スタウトさんが来たら私がじっくり話して判断しよう。それに直接カクテル仲間に合うのは初めてだ、少し緊張と興奮が合わさったような感情で口元が緩む…それを見て部下君達が怖がる。いい加減に慣れてくれないか、この場合は私が慣れるしかないのか…

 

 本当ににすぐ来てくれた。応接室で待たせている、髪型のセットなど身だしなみチェックいざ!…最悪だ...自分は思っていたより冷静じゃなかったようだ。ノックもせずに入ってしまった、スタウトさんも驚いている…笑顔で乗り切るしかない。

 

 思い込みとは恐ろしいものだ、スタウトさん…本命は教えてくれなかったが、会話をしてみて印象が変わった。この人なら大丈夫だろうと思える、少し運営に関する質問・やり方なども問題なし…部下君然り、枡山さん然り、スタウトさん然り、優秀な人しかいないのか...私も頑張ろう。

 

 でも会話の途中から顔色が…私が小さなミスは気をつけてね、その話をした時から険しい表情になった。覚悟の現れだろうか?〝どこまで伸ばしていい〟突然彼から私に対しての挑戦状を叩きつけられた…私よりも業績を伸ばしてやる宣言、最高だよあんた。笑顔で任せると伝えたとも!是非ともやってくれ、今からでも!…覚悟を決めた目で本当にやり出したぞ、連絡も…

 

 スタウトさん、彼はやり手だと改めて感じた…女王に献上品は送っていたが必要なかったかもしれない。良い関係を維持したいと女王からお言葉を引き出した…あと互いの恥を隠そうみたいなお茶目なお願いをされた。皮肉も返さず、真面目に取り組み、結果を出す、でもちょい悪アピールを忘れない、しかも他企業で成果を叩き出す…ハードボイルド、彼こそ紳士リアルジェームズ・ボンド!

  

 

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 私の気分は最高だ。女王からの警戒が無くなった、スタウトさんも問題なく部下君達と会社を回している。逆に私がいると変な緊張感が社内に…せっかくの気分が台無しになる、やめるんだ私、部下君?すまないね、ご家族がいるのに出張に連れて来て…まだテキーラの話を...顔が青いぞ、私は先にホテルに行くように伝えた。何度も大丈夫と言われたが、ハッキリと逆に迷惑だと伝えたら引き下がった。…あとで謝ろう。

 

 会社を任せた相手が優秀過ぎた為、私の仕事が無くなった…本当に凄いな、スケジュールを前もって空けていたのもあり、予定より三日早く日本に着いた。とは言っても私はどこに居ても目立つ、飛行機に乗る前も馬車の移動で私が国外に行く事が…有名税という物かな?記者・スタッフさん達が大量に通路を塞いでいる。

 

 まあ普段通りミルヴァートン笑顔で対応、日売テレビのアナウンサーが結構近づいて来たが、ある程度会話をした後に友人の元に向かった。森谷ではない、あいつとはガーデンパーティを開く日に会う予定だ。まだ早い、枡山さんとの取引もまだ先だ。今回はIT産業界の帝王と呼ばれている社長トマス・シンドラー、彼と合う事にした。

 

 彼と会ったのは…正確にはプログラムで天才少年と有名だったヒロキ・サワダ君経由で出会った。私がアメリカで仕事をしている時、ヒロキ君がファンとして会いに来てくれた、内容は人の心理を掌握するデータ収集に協力して欲しいという子供らしくない物だったが…彼なりに楽しんでいたようだった。

 

 シンドラー社長の養子になってからも交流は続いていた、プレゼントも送ったりしたな...彼の開発していた人工頭脳「ノアズ・アーク」について僕の友達なんだと電話からでも思い入れが伝わった。だがある日を境に連絡が途絶えた…私は心配してシンドラー社長に連絡した…投身自殺…

 

 今でも彼との会話を思い出す、自殺する最後の連絡を受け取ったのは私だった。〝ノアの箱舟をどう思いますか?〟私は突然の事で思ったことを口にした。その後…事情聴取を受けると思ったが、シンドラー社長が終始、自殺として処理してしまった。それからだ、本格的に社長と私が交流を持ったのは…

 

 墓参りもしようか…頭を切り替えよう。シンドラー社長との面会はスムーズだった、事前連絡はしていたが突然の訪問でも対応してくれた。最新体感ゲーム機「コクーン」についての説明をほどほどに、彼から先行参加者にならないかと言われた…メディアに向けたアピールとして私を入れる戦略もあるのだろう、それにコクーンの基礎はヒロキ君がプログラムした物でもある…参加するとも。

 

 発表予定日を聞いて、その場を後にする…シンドラー社長と別れた後、ヒロキ君の父親の樫村 忠彬(かしむら ただあき)さんが話をしたいと言ってきた。十中八九、ヒロキ君のことだろう…

 

 どのような思いだったか、覚悟を決めた目をしていた。〝ヒロキの事を思うならコクーン発表に合わせて貴方も協力してくれ!〟…コクーンのゲームステージを選ぶ際に「オールドタイム・ロンドン」を選択してクリアしろとのこと。

 

 それがヒロキ君の為になるなら、と返事をすると礼を言われ行ってしまった。〝ジャック・ザ・リッパーがシンドラー社長に関係あるのは貴方なら知ってるだろう〟とか…知ってること前提に話されていたが、まるで意味が分からんぞ。 

 

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 …ミルヴァートンにとって敵も味方も関係ない…全て奴の駒なんだ…

 

 

 あいつは敵を作り続ける。例え自分が所属する組織であってもだ、思い上がりも甚だしい、一人では限界があることを理解していないのだ。奴は酔っている、ミルヴァートンという架空の存在に自分を重ねて小説のような事を出来ると本気で思っているのだ。

 

「スタウト、ウイスキーソーダから救援要請…行くのか」

「コルン、信用できない奴だが組織に所属して日が浅い、それに判断途中だと聞く。俺が見定める」

「連絡くれ、撃つ」

「その時は頼む」

 

 組織はミルヴァートンの扱いを困っている。当然だが…証拠を消すのは良い、テキーラの奴から情報を得ていたのは事実だろう。痕跡すら残さないのは素晴らしいが、犯行を隠していないのはマヌケとしか思わない、ピスコにも笑いながら自供する始末。

 

「今まで閉鎖的だった奴が…」

 

 奴の動向を探るのは組織間での暗黙の了解、そして…MI6としても最重要事項になりつつある。ミルヴァートンが黒の組織からも敵対的、奴が一方的に敵対しているだけだが組織からスパイを入れられるほど警戒されている。我々英国秘密情報部やFBI、その他のメンバーも同様に警戒していると同時にチャンスでもあるのだ。

 

 このまま暴走を続ければ奴は破滅する。厄介な人物が自滅するのは良いのだが、母国としても奴の利用価値を考えるとこのまま組織に排除されるより対立を煽る方が有益と判断した。幸い奴にも地位がある、付け入るスキはいくらでもあり、奴も命は欲しいだろう。上手くいけば奴の会社が我々の隠れ蓑として機能する…

 

 奴は部下の扱いが上手いらしい、俺を誘導する者もそうだが恐怖による忠誠心の植え付けを怠っていない…案内されている社内を見る、組織に関係ある者・関係ない者が一目瞭然だった。簡単に言えば死に物狂いで働いている者達が組織関係者だ…逆に関係ない者達はリラックスしている。

 

 聞いてみたが、死に物狂いの連中は社長のお気に入りだそうだ。社長から働き過ぎてると言われるぐらいの忠誠心があると…メディア王の異名は伊達じゃないな、一般の者達には奴らが働く姿をエンターテイメント、パフォーマンスとして見せている。奴らにとっては家族を人質に取られて必死なんだろうが…これも奴の狙いか、晒し者として味合わせて精神的に追い打ちをかける。

 

 趣味が悪い…それでいて隠していないのが更にたちが悪い。ある意味元からそうか、小説のミルヴァートンを目指しているだ。そんな奴に常識を問うことが間違いなのだろう。それにしても応接室に来るまでにアプローチが無かった、盗聴器の一つでも付けられるかと思ったが…

 

 奴は突然入って来た、待っていたぞと言わんばかりの好戦的な笑みを向けて獲物を見定めている。なるほど、この男を表現するならミルヴァートンしかないと感じられる圧が包む。舐めてもらっては困る…俺も修羅場をくぐってきた男だ、飲み込めると思うなよ毒ヘビ紳士殿?

 

『広告代理店として我社の方針は…‥』

 

 何を考えているんだ…俺に社長代理を任せるだと?馬鹿なのか、会ったばっかりの男に経営を任せる者がいるはずない。それよりコードネーム持ちの俺を社長にすればスパイだろうが何でも出来るぞ、読めない...こいつは何を求めているんだ。

 

『そういえばノックを忘れていたね…貴方も小さいミスは気をつけた方がいい』

 

 ッこいつ!俺がNOCだと知って…いいや偶然だ、部屋に入る際にこいつはノックを忘れていた事実を言っただけだ。

 

『女王にも手紙を送ったんだ、国を思ってミルヴァートンを演じているとね。それと潔白な証明として石鹸を送ったんだよ』

 

 …こいつは知っている、俺の事をMI6所属の二重スパイだと。それでいて協力する意思を示した。女王が警戒した理由を知らないわけがない、それにこのタイミングで信用もない俺に対して言う必要が無い。

 

「どこまで伸ばしていい」

『ふふ、君に任せるよ』

 

 なるほど、自分に害になるとわかれば密告するか…俺だけならいい、万が一NOCメンバーを知っているとすればまずい...排除する選択もある。情報の入手先が分からない状態で行えば…どっちにしろ従う選択が最善か。

 

 本部に内容を話せば許可が下りた…奴が気にしていた制限も解いた、全てが奴の計画通りになってしまった。ある意味では我々にとって有益な契約だろう、法外な利子を取られないように油断ならないがな、そういえば小説で今の場面に合う奴の言葉がある。

 

 …‥ひとつの秘密をあばきますと、それが間接的にすくなからぬ利益をもたらしてくれるんです‥‥‥

 

 

 

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 …あの男は場を引っかき回すのが好きみたいね…

 

 

 ウイスキーソーダ―が日本に向かっている。組織から連絡…テレビで自分から映ってる奴の報告はいるのかしら?私はアナウンサー水無怜奈(みずなしれな)として奴の到着を待っていた。組織とは別にCIA本部から、奴が我々の仲介役を買って出たと英国秘密情報部から確定情報として連絡が来たと…信じられない。

 

 父であるイーサン・本堂が身を挺して私を守り、組織から信用を得て数年、キールとして活動する最中…奴が現れた。組織に喧嘩を売りながら実力を示してコードネームを得るという異例中の異例、組織関係なんて知らぬと言うように表裏どちらも受け入れない独立した動きを見せていた人物。

 

 私も水無怜奈として会ったことがある。テレビ前の彼は普段と変わらない立ち振る舞い、小説の中から出てきたと言わんばかりの見た目も相まってミステリアスな雰囲気に吞まれそうになった。私だけでなくその場にいた全員そうだけど…感じるのよ、この人物は悪である...違うわね、チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートンであると、恐喝王であると心から認めてしまうの。

 

 「シャーロックホームズ」を読んだことが無い人物も彼を見たら知りたくなる。私もそうね…相手を知ることは大事だけど、小説を知ることが一番奴の対策になるなんておかしな話よ。そしてわかった、彼は完璧主義の模倣犯ね。しかも実現できるだけの実力を兼ねそろえた怪物、こんな人物の相手なんて面倒だわ。

 

 奴は警察も我々も組織も…そして国でさえも捉えられない状況に没頭している。その為ならなるほど、我々の信用を得る作業も必要だ…MI6所属の人物が奴の社長代理で働いている、その話を聞いた時、理解できなかったけど信用を得る為なら今までの土台も賭けると示した。

 

「最終的に彼が欲しがるものは何なの…」

 

 狂人の考えなんて思考するだけ無駄ね。まあ小説と同じ末路を辿ってくれるならホームズとワトソン、それと女性関連の問題に介入してもらわないと…今の時代にホームズはいるのかしら?でもそれだとホームズがミルヴァートンを撃つことに、でも作品によって違う結末が…

 

「駄目ね私は…妄想と現実を一緒に」

 

 ミルヴァートンさんが来ました!

 

 その言葉と同時に駆け出す、アナウンサーとしての仕事もしなければ…彼は相変わらず変わらない様子で記者に対応する。彼も小説みたいに危険が迫れば取り乱すかしら…

 

『ええ、社長代理の方が優秀過ぎて予定より早く日本に着いてしまいましたよハハハ…‥』

 

 組織としての仕事は完了した。奴に盗聴器と発信機は付けた…言葉通りなら友人の元に向かうだけだけど...絶対何か他にあるはず。

 

 取材が終わった後は奴の動向を探った。そんな中、彼の呟きが頭に残った…

 

『ノアの箱舟…どう返したらよかったかな』

 

 旧約聖書でも考えている?どう返したら…意味がわからないわね...

 

『…君みたいに深く考えてない私には鳩が印象深いぐらいしか思い浮かばないよ』

 

 !?盗聴器がバレてる…そして鳩ですって公安が彼をマークしている?でもそんな連絡…独断先行...あいつらならやるわね。聞く必要があるわ、それに私を既にマークしてる、近づき過ぎたかしら…それとももっと前から?

 

「敵か味方か知らないけど…レイディ・エヴァ・ブラックウェルでも演じてやろうかしら」

 

 …ドーヴァーコート伯爵は赤井に任せて、ホームズの役割も同時進行…なんてね…

 

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 …ジャック・ザ・リッパー…汚れた血はどこまで私を苦しめる…

 

 ミルヴァートン、奴は私の事を調べ上げていた。ヒロキとの交流を始めた時から奴はメディア王・恐喝王と独特なパフォーマンスで有名だった。

 

『ミルヴァートンさんの人心掌握って凄いね!まるで本物のミルヴァートンみたい』

 

 ヒロキが奴に興味を持つのも必然だったのだろう…私にとってミルヴァートンはどうでも良かった、所詮はパロディに身を包む男としか評価していなかったが…

 

『シンドラーおじさん!ミルヴァートンさんがプレゼントだって!』

『おお…良かったなヒロッ!?』

『どうしたの?』

『い、いや...何でもないよ…何か言われたかい?』

『あ、解体作業で汚れるだろうからって。僕はプログラムしかやらないのに...ミルヴァートンさんは僕が溶接とかすると思ったのかな?』

『はは、そうかもしれないな』

 

 ヒロキに送られてきたのは「革のエプロン」…ミルヴァートンあいつは気づいている!私がジャック・ザ・リッパーの子孫だと言う事を!何が狙いだ、金か、名誉か…だが奴は既に地位を得ている。

 

 それからもヒロキと奴の交流は続いた、それより問題なのはヒロキが私のコレクションを見て…あのナイフ、ジャック・ザ・リッパーと私を完全に結び付けた。だから私は…ヒロキを…監禁した…

 

 全て奴のせいだ...奴がいたからヒロキは!奴が自殺に追い込んだんだ!奴が決心させたんだ…あのパソコンに出た画面、ノアの箱舟から飛び出た一羽の鳩…あいつを確実に排除する、コクーンに奴を誘導した。後は事故に見せかけて頭に電流を…

 

「決して知られるわけにはいかないんだ、ミルヴァートン…お前には私が鉄槌を下す」

 

 …ジャック・ザ・リッパーを知る者はいてはならない…

 

 

 

 

 

 

 







 チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン、彼は大理石のように冷たい心を持っている。決して逃れることは出来ない、一度でも捕まれば死んでも搾り取られるだろう…

 彼が動けば誰かが躍る、彼は金や地位が欲しいわけではない、人が人として生きようとする瞬間を踏み弄る…その一瞬に立ち会う事を何よりも求めている。
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