やさしい恐喝王 作:くま
犬も歩けば棒に当たる。動きまわる者ほど何かしらの良い・悪い抜きにしてトラブルに合う…意味を理解するとその通りだと思うだろう。くだらないかもしれないが、「ことわざ」とは最も難関な言語だと思っている。私が当初この言葉を知った時、自分の目を疑え!の意味かと思っていたよ。
私は今、
ヒロキ君の墓参りをしてきた、本当なら本来の私として会う方がいいのだろう、でもあえてミルヴァートンとして彼に会ってきた。彼が求めた男は私じゃない私…なら合っているだろう。
電車に乗るまでに、乗ってからもだが人々の目が私を包む、何度も黄色い声援を浴びたとも…私にとって声援とは嬉しいだけじゃない、チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートンとして存在しているという確認を兼ねている。
時々怖くなる、私という存在は実在しているのか?という虚無感…ミルヴァートンは私の名だ。同時に小説の彼の名だ…私はどっちが本当のミルヴァートンなのか疑問に思うことがある。偽りの自分を常に被っている者として、それを表現する者として…
自分は何者か、その答えを自身で出すことは出来ないだろう。他者から答えを聞かない限り…しんみりとした私は部下君に連絡した、体調は大丈夫?今何してるの、部下君に聞くと枡山さんと連絡してましたと過呼吸のような息遣いで伝えてきた…運動でもしていたのか?
私は考えた、部下君から枡山さんについて聞いたのだ。経済界の大物である枡山さんと繋がり…部下君は何者なのだ?部下君が優秀だから...で流していたが駄目だろう、社長としてビジネスチャンスを逃しているとスタウトさんを見て考えた。
そして聞いてみた、君は何者なんだい?その言葉を伝えると…わかりましたの一言で通話が切れた。いや、意味がわからないんだが!何がわかったんだ…もしかして私が枡山さんと今、会いたくなったと勘違いしている?いくら何でも…でもワーカーホリックになるぐらいだし...…枡山さんに部下君について説明した。万が一来たら謝ります!そのことを事前に伝えたら、呆れたように返事をされた。
ヤバい…取引前に詫び菓子を準備しよう。部下君、私が君を理解してなかったのが悪いが...少し頭冷やそうか。再度連絡しても繋がらないし!本当に枡山さんのところに行ってたら優しいあの人でも取引してくれなくなるかも...やめてくれよ…
私も頭を冷やそうと自販機でアップル・ジュースを買った。リンゴは好きだ、見た目もそうだが味も良い、カットも良いが、私はまるかじり派だ!リンゴ食べたいな~そんなこと考えながら飲もうとすると独特なエンジン音が駅に響く、私はその音を聞いてポルシェだとわかった。
電車のドッキリ…その続きか...いいだろう!休日だがこの何とも言えない心を晴らすため勢いでポルシェに近づいた。そうしたら黒ずくめで黒メガネの人物が…〝兄貴を待たせるな乗れよ〟と催促する、は!上等だチャールズ・オーガスタス・ミルヴァートンに挑むとは!ハイテンションで返事をしたらひるませた!ふっ...仕掛け人を驚かす、これもエンターテイメントだ!
だが勢いのまま扉は開けない...ミルヴァートンとしてゆっくり開けて中の人物に私の存在を認識させる。そして自己紹介だ、そうしたら中の人物も好戦的な笑みで〝会いたかったぜウイスキーソーダ〟と…ウイスキーソーダ?なぜ…‥嘘だろ...もしかしてこのドッキリ枡山さんが仕掛け人!?そしてこの人達ってやっぱり!…‥
私の予想は当たった…ひるませてしまった人がウォッカさん…中にいた銀髪・長髪の人物がジンさん...ピスコから連絡がきたって…ヤバいよ、部下君がやらかして迷惑をかけたらしい...でも枡山さんが私のテストを兼ねてドッキリという形で二人にお願いしたんだって、お茶目すぎるだろ…なんでもプレゼントのお返しらしい…
…思いが届いたんだ!遠く離れた日本で...感動的だな…なるほどつまりテストとはチャールズ・オーガスタス・ミルヴァートンを演じきれるかな?という第二の父としてのテストだな!でも…この人たちも演技力凄いな...本気で圧を感じるぞ。カクテル仲間の人は全員凄みがあるんだ、枡山さんことピスコさんが怒った時、スタウトさんが業績を伸ばしてやる宣言…私も仲間として本気でミルヴァートンになろう...
会話をしていく、内容は経営についてスタウトさん…第三者を入れてお前は頑張らないのか!とか私の今後…カクテル仲間・部下君達に金以外で何を返すんだ!とか…‥どこまでも父性…いや第二の父よ、貴方は日本の
お互いに熱くなっていく…最終的にジンさんは〝期待してるぜ〟と...認めてくれた…‥これほどやりきった、それでいて満足する気持ちは初めてだ...もう何も怖くない。ウォッカさんは二人で話し続けてたから空気にさせてしまった、本当に申し訳ない…お詫びとしてアップル・ジュースでも…困惑しながらも受け取ってくれた。
まあ仕方ない事でもあるが、駅前でずっと止まっている訳にもいかないから…ウォッカさんが適当な公園まで移動してくれてたんだよね。気分転換も兼ねて公園に降りる、最後にミルヴァートンとして伝えた、ウォッカさん…貴方、優しさがにじみ出てますよ。
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いや~いい時間だった。スッキリした!しかも枡山さんも聞いていたらしくすぐ連絡がきた…やっぱり隠しカメラあるんだ...私を信じてくれると…‥喜びたい!!でも...まだテストは続いている、ホテルに着いたら私の部下が待ってるから部下君にコートを洗濯してもらえと、そうしたら晴れて仲間と認めると…
カクテルの名前は性格を表しているんじゃと考えていた。でも違ったスタウトさんに浅はかな考えで酷い勘違いをしてしまった…そもそもスタウトが黒いビールだから腹黒...恥ずかしいな。でも今度は当ってると思う、カクテルは混ぜ合わせて初めてカクテルになる…つまり才能をいっぱい持ってる人達に付けてるんだ!そしてその人物に合った名前を部下君みたいな第三者が付けている…
一瞬だがジンさんのことを悪く考えてしまった。いや、これは私がシャーロックホームズを研究…ある意味、教本としているからだが…アヘン窟へ向かう酒場にジンが提供されるシーンがあったなと考えた。昔はまあ…底辺の者達が飲む酒と言われていたから...
失礼だな、やめよう。ホテルに行こうかと考えて移動するが…公園の名前がわからん。それに出る雰囲気だったから二人のポルシェから降りたが、あのまま乗ってたら送ってくれたのでは?
適当に公園にいる人に聞けばいいか…そんな軽い気持ちで歩いていると、ラジコン飛行機で遊ぶ少年達を見かけた。話しかけると
〝俺達少年探偵団だ!〟
探偵団…ベイカー街遊撃隊のような活躍をしているのかな?意地悪な質問をしてみたが
出会って早々何なんだこの子、小説に詳しいからからかったんだが食らいつくぞ…少し話した後ラジコンの方に興味が湧いたのか元太君から奪い取ろうと取っ組み合いになった。悪ガキだぞこいつ…と思いながら止めようとするとラジコンヘリに爆弾が!とか変な事を言い出した…咄嗟に奪う為に面白い冗談をいれるね君。でも驚かしたせいか、落としてリモコンが壊れたようだ。悪者のオチが付いたなハハハ…しょうがない買ってやるか。
眼鏡の少年、コナンというらしいがキレた…壊れたリモコンをまだ飛んでるラジコンヘリに向けてシュート!そして爆☆発!超エキサイティング!?
少年が〝誰が犯人だ!〟と私に怒気を含んだ声で聞いてきた…知るか!
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…お前を信じてやる、ようこそ黒の組織へ…ウイスキーソーダ…
ミルヴァートンが予定より早く日本に来日した。キールが仕掛けたが瞬時に看破されたらしい、奴ならそれぐらい可能だろう…だが奴は知っていながら取り外さなかった。我々を混乱させる為だろう、どうやら私が裏切らせた部下を精神的に追い込むのが楽しくなっているらしい。
『君は何者なんだい?』
お前の主人は誰だと…自分の立場を考えろ、家族がどうなっても…‥絵に描いたようなセリフだ。全ての意味を凝縮したセリフ、私が保護すると伝えた考えを塗りつぶす一声。
『わかりました』
わざわざ、当てつけの為だけに捨て駒にするとは…スタウトが言ったように奴は気分屋なのか...だとしたら面倒だぞ…
『奴の警戒網は知っていただろう、どうやってウイスキーソーダから信用を得た?』
『…正直にこのままだとお前は破滅すると』
『馬鹿な…奴が今まで理解してなかったとでも?本気で言っているのか』
『俺も今の現状を信じられないんだ…だが現に邪魔がないだろう、それに俺が社長代理になったのも奴がテレビで宣伝した、今では異例の大出世したこの人物は何者だ...特番が組まれるぐらい記者共が俺を狙ってる、当分の間は動けそうにない部下を通じて連絡する』
今までの妨害がなかったように…事実なのだが納得できんぞ。何より奴の情報源が謎のままだ…奴はスタウトが来ることを知っていた、そうでなければこうもスムーズに事が運ぶなんてありえない...掃除するしかないか…奴も白々しい連絡を辞めろというのに。
「…なんだ」
『枡山さん、部下の事で相談が』
…聞こえているのを知ってて連絡してくる。付き合うだけ無駄だな、早く来させろと伝えたあと奴は部下に対して…
『枡山さんに迷惑をかけるなよ』
もう、呆れしか感じなかった。矛盾する命令を部下に与える、この会話は部下にも聞こえている。私に迷惑をかけるな、私を殺すなと...それでいて私の元に向かえ…要するに私の前で自殺しろと言っている。取り押さえる部隊を用意して待っていると、会話通りに覚悟を決めた奴の部下が来た…薬で眠らせたが...奴に合わせようとするとこちらが疲労する。
「あまり虐めないでくれないか、老体にはきついのだよ」
『…申し訳ない以後気をつけます...部下をよろしくお願いします、取引時に必ず謝ります』
「…ああ」
奴の考えが読めない、独りよがりの小僧じゃなかったのか?協力する姿勢を出したかと思えば敵対する…情緒不安定、二重人格…‥何なんだお前は…まるで実体がないかのように掴めない。
「…スタウトを通して理解していくしかないか...いや、少々手荒いがジンに頼むか。奴から生き残ればお前を信じてやろう」
あの態度を続ければ死ぬだろう…荒療治だが見つめ直す最後の機会を作ったんだ、味わえウイスキーソーダ。出る杭は打たれる物だ、お前の才能は認める…組織の一員として会えることを願っているよ。
…ミステリアスな奴と認めていたがジンが期待できると口にするとは...本当にわからないな君は。部下を叩き起こし状況を伝え、今度は私のメッセンジャーとして使用した。私にもわかったことがある、奴が嫌うことだ…裏切り者、歯向かった者に対して悪意を向けると言う事だ。
…‥私なりのお返しだよ、ミルヴァートン…‥
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「来やしたぜ兄貴…本当に発信機を取ってねえ...舐めてやがる!」
ウイスキーソーダ、奴は未知数の可能性を秘めている。あの方は組織として奴の力を取り込んだ…だが逆に奴は奪い取った。ムカつく野郎だ...すぐに落とし前をつける命令が来ると思ったら未練があるらしい、あいつの人心掌握に対する執着は異常だ…他者を支配したい感情を隠しもしねえ奴は本来なら扱いやすい。だが奴は別だ、隠してる奴の方がはるかにやりやすい。
「ピスコの奴が試せと言ったんだ…俺は命令に背いてない」
「兄貴を待たせるな乗れよ」
ウォッカが奴に詰め寄った…そして奴の本性の一端を見た、ああいいぞ!もっと出せお前の本性を!そっちの方が面白い!
『わざわざありがとう!知っていると思うがチャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン、恐喝王として君たちに会いたかった!』
今まで隠していた牙を見せた。フロントガラス越しでも感じる圧、ウォッカは耐えられなかったようだが責めはしねえ…こいつは大物だ、あの方が未練を感じているのも理解した。こいつを取り込めば組織は更に強くなる。
わざとゆっくり開けてきやがる…蛇が獲物を狙うようにゆっくりと音を立てず食らいつくように。どっちが獲物か試してみるか…ウイスキーソーダ!!
「会いたかったぜウイスキーソーダ」
奴は一時的に圧を止め名を聞いてきた。あえて俺達に名乗らせるか!気分屋と聞いていたが違うな、こいつは信念を持って行動するタイプだ。その信念を吐いてもらうぜ!ミルヴァートン…‥
ハハハ!笑いしか出ねえ!こいつは隠してなかった、相手の心をへし折ること、それしか興味のねえ狂人だ!相手が一番望む物を用意する、こいつは取引を持ち掛ける。必ず相手が望む結果になるだろうよ…思い描いた結果の真逆にな。
「スタウトの奴を社長にしてお前は高みの見物か?」
『彼は私に協力を申し出た、私を縛る鎖をご所望されていたのでね。好きなだけ渡すとも…代わりに私が野放しになるがね』
スタウトの奴は組織に縛り付けようと動いた。だから逆に縛り付けられた、望んでいた結果を得られた喜びを感じた後に落とす!こいつにとって会社なんて交渉道具としか考えてない、それにこいつならすぐ立ち上げるだろうよ。
「お前について来る奴らに何を求めている?」
この質問で決める気だった、これで破滅と答えていたら底が知れたとして処分する。だが奴は違う答えを出した、組織としての忠誠を発言したんじゃない、こいつは相手の望む答えと逆を言う男だ。
『彼らが人間らしく生き続けること…これはチャールズ・オーガスタス・ミルヴァートンの、私の本心だよ』
ククハハハ!永遠に苦しむ様を見るときたか!なるほど、破滅しちまったらそこで終わりになっちまう。本心を隠さない男だよミルヴァートン!
「最後に聞こう、あの方の為に動けるか」
さあどうする!お前は人の上に立つことを望む男だ!おまえはどうする…‥ああそうだ!その笑みだ、その目だ、その本性をさらけ出したお前なら必ず言う言葉があるだろう?
『あの方?…私が必ず飲み込もう、だが終わりが見える結果ほどつまらないものはない』
お前は決して認めない、獲物が自分より上にいることを…だからこそお前は…‥
『故に…共に手を取り合える日が来るまで口を閉じよう』
牙が届くまで近づき続ける、その牙に猛毒を仕込んでゆっくりと…お前は結果も過程も楽しむ男。理解したぜミルヴァートン、お前とならやっていける。
「期待してるぜ」
奴を降ろしたあとウォッカが奴について聞いてきた。
「あ、兄貴…本当によかったんですかい?」
「問題ねえよ、奴は組織の力を伸ばしていく、自分が手に入れるものとして」
「尚更まずいんじゃ!」
「伸ばし切った時が奴の最後だ」
そう、奴を排除するのはその時までお預けだ…楽しみにしてるぜウイスキーソーダ…
「さ、流石兄貴」
「お前も奴からスカウト貰ってるじゃねえか」
「あれは俺を馬鹿に!」
「そのリンゴ・ジュースをお前に渡した理由わかるか?」
「え…」
「馬鹿カクテル言葉だ、ウォッカ・リンゴ・ジュース…強さと優しさ、お前は甘くて扱いやすいと認めたんだよ」
「あ、あの野郎!」
…‥俺達の事を知ってなきゃ用意もできないがな…‥
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…ミルヴァートン、あいつが爆破事件を動かしているのか!…
〝堤向津川緑地公園に爆弾を仕掛けた、早くしなければ子供達が…‥〟
「くそ!公園のどこだ」
工藤新一宛てに爆破予告の電話がかかってきた。声はボイスチェンジャーで加工されてわからない、ニュースでプラスチック爆弾が盗まれたのを知っていた俺は急いで探しに向かった。犯人は工藤新一に怨みを持っている、過去に解決してきた事件関係者だと推理できるがピースが足らない…
「あ、あいつは!」
チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン…奴は黒の組織と繋がっている...証拠はない。だが理解できる、直接見てわかった…あいつは何かの事件の犯人だと俺の勘が言っている!なんで奴の近くで遊んでるんだあいつら!
『ベイカー街遊撃隊のような活躍をしているのかな?』
「ベイカーなんたらって何だ?」
ベイカー街遊撃隊、シャーロック・ホームズの小さな協力者達…だぁぁ!なんでわからないんだ元太!
「恐喝王のお兄さんや悪いことをする人たちを捕まえる俺達の先輩だよ…ね!」
『…ああ、君がこの子たちのウィギンスかな?』
「ホームズかもしれないよ?」
『ハハハ…なら私の勝ちだ、探偵として捕らえられなかった』
「どんなに細い糸でも集めれば真実に繋がる…俺なら捕まえられるさ」
『その真実を歪んだものにするのが恐喝王さ…小さなホームズ君?』
ああ必ず証拠を集めてやるさ...事件とは別に熱くなる心を感じながら少年探偵団の方に目を向けるとラジコンで遊んでいた。どこでそんな…ミルヴァートンが渡したのか!急いで元太から取り上げようとすると抵抗された、そしてしくじった!爆弾の事を伝えたら驚いてリモコンを落として壊しちまった!
ミルヴァートンの奴は見ているだけだ、呆れたように俺を見ているッ悪かったな!四の五の言う暇もない!
ラジコンヘリに蹴ったリモコンが当たり何とか空中で爆破できた。
「犯人は誰なんだ!」
ミルヴァートンがこんな直接的な犯行をするはずがない、それに意味もない恐怖を奴は与えない…これは単なる八つ当たりだ。
『私が知る訳ないでしょう』
そうだろうよッ例え知っていたとしても話す訳ないか…爆弾は一つじゃない、被害者が出る前に対処しねーと!
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ミルヴァートン…お前の為に計画を早めたというのに…クク、私の考えを理解してしまったか友よ…ああなら、いいだろう…私という存在を写し出せるか確かめよう、真のシンメトリーを持つお前になら期待できる、今だに姿を出さない工藤新一とは比べるまでもない。
…‥楽しみだよミルヴァートン…‥
ミルヴァートン(ピックウィック・クラブ仕様)なら感想にあるハート様のセリフも合うと笑った作者です。