この慎重すぎる勇者に祝福を! 作:プロパティ
私、リスタことリスタルテは今、何故か地球の日本の担当女神をしている。
約100年前に女神として誕生した私がいつも通り統一神界で世界の救済を任されるのを待っていると、私の大先輩に当たる元日本の担当女神、水の女神アクア様が異世界へと飛んで行ってしまったらしく、いつのまにか私が日本の担当女神になっていた。
日本の担当女神としての仕事は主に死者の案内。死んでしまった人間を転生させてあげるか、何もない天国的に飛ばしてあげるか、もしくはとある異世界に記憶を持ちながら転生させてあげるかの3択。本来人を転生させるなんてまだ新人女神の私如きがしていいことじゃない筈なのにイシスター様とアリアの推薦のおかげで特に何も言われない。
右左上下どこを見ても真っ白な空間にちょこんと置いてある机と椅子。そしてその椅子に座っているのが私。
──えーっと、なになに。次に案内するのは……
私はブンブンと頭を振り払い、聖哉を此処へと呼び出す。その瞬間、眩い光が私の目を襲いかかり、光が収まった頃には一人の男がこの空間に現れていた。
180cmを超える高身長。爽やかな黒髪の下には凛々しいマスク。体から発散されるオーラは統一神界の男神並に神々しかった。
──じ、実物はもっとかっこいいわね……
「龍宮院聖哉さん。ようこそ死後の世界へ。あなたはつい先ほど、不幸にも亡くなりました。短い人生でしたが、あなたの生は終わってしまったのです」
私をじっと見つめながら固まっている聖哉。そりゃそうよね、突然白い空間に呼び出されてあなたは死にました、なんて言われたら誰でもこうなるに決まってる。
「初めまして。私は治癒の女神リスタルテ。今は死者の導きをしています。さて、若くして命を落としてしまったあなたには3つの選択肢があります。
一つ目は娯楽も何も存在しない天国のような場所へ行く、と言う選択肢。
二つ目は記憶をなくして人間として転生する、と言う選択肢。
そして最後の3つ目は魔王軍によってピンチになってしまった世界を救うために記憶を持ったまま異世界へと転生する、と言う選択肢」
未だに微動だにしない聖哉。はっはーん?これはあれね。私に見惚れちゃってるのね。
自分で言うのもなんだけど、私は女神。ハッキリ言わなくてもイイ女。艶のある金髪に完璧なスタイル。それは見惚れちゃっても仕方ないわね。うんうん、と私が一人頷いている聖哉とがようやく声を発した。
「いきなり得体の知れない珍妙なものにそんなことを言われてもな」
「『得体の知れない珍妙なもの』ってそれ私のこと!?」
い、いけない。つい素が……い、威厳よ!女神としての威厳を保つのよリスタ!
「得体の知れないものなどではありません。もう一度言います。私は女神。この溢れ出るオーラを見ても信用なりませんか?」
「オーラなど出ていない。信用ならん」
「!?ほ、ほら、この溢れ出る神々しいオーラを」
「見えん。見えたとしてもそれはお前が俺を誘拐して麻薬かなにかで俺に幻覚を見せている可能性がある」
な、なんなのこの子……それに、私のオーラが見えないなんて、ここに呼び出すときに頭がパーになっちゃったのかしら……きっとそうね!そうに違いないわ!
「そもそもの話、俺が死んだだと?死因はなんだ?」
「……死因は、心臓麻痺です」
「……チッ、突然死か。毎日5回は病院へ行くよう心掛けていたのだがな」
!?5回!?毎日5回!?どれだけ病気が怖かったのよ……もしかして何か過去にトラウマでもあったのかしら……。
「俺の死因として一番あり得るのは心臓麻痺。いいだろう、眉唾だったお前の話も多少は信憑性を帯びてきたというものだ」
!!その上から目線は一体何目線なの!?
「それで、異世界に転生だったか。……世界を救いたいのならば女神のお前が救えばいいだろう」
「ルールがあるのです。神は人間が人間たちの手によって反映するよう多数の世界を作ったのです。だから人間は人間が救わなければダメなのです」
「ふん、虫のいい話だ。…………そもそも、仮に、仮にその世界へ行ったとして言語はどうなのだ?」
「そこは私たち神々の親切サポートによって異世界に飛ばす際にあなたの脳に負荷をかけて習得できるようになっているから安心してください。勿論、文字も読めるようになります」
でも確か副作用で運が悪いとパーになるって聞いたような……い、いや、そんなわけないわよね!私たち神なんだし!……でもアクア様が担当してたってなると……うん、考えるをやめよう。
「脳に負荷だと?……実はお前は悪魔で、俺の脳みそを破壊しようとしてるとかではあるまいな」
「……そ、そんなわけないじゃないですか!私は正真正銘女神です!」
あっぶねー!失礼な物言いだけど聖哉の言ってること半分くらい当たっちゃってるー!
「女神、か。ならばお前は相手の能力、つまりプロパティでも見れるのか?」
「!?プロパティ!?いや、なんでステータスをわざわざプロパティっていうんですか!?」
っていうかこれなに!?なんか聖哉の目の前にウインドが展開されたんだけど!?え、もしかしてステータスじゃなくてプロパティでも自分のステータスって出せるの?えぇ……。
「ふん、まぁいい。その異世界とやらに飛んでやろうではないか」
……あ、あっれー?やっぱり聖哉も異世界に転生できるなんて聞いて内心喜んでるじゃない!全く、素直じゃない奴ね。ふふ。
「では、その魔法陣の上に」
「断る」
「龍宮院聖哉さん。あなたをこれから異世界へと……ってえっ?えっ、いや、えっ?い、今なんて?」
「断ると言ったのだ。準備もせずに異世界へ行けと言われて行くわけがないだろう」
「……で、でも!準備って言っても何も出来ることなんて」
「筋トレをする。今すぐ出て行って俺が呼ぶまで帰ってくるな。お前のような珍妙なものがいると気が散る」
「!!ち、珍妙!?私は女神よ!それに、筋トレなんかしたところで本当にほんの少ししか強くはならな──」
私がつい素の口調で叫ぶと聖哉が私のことを持ち上げて…………思いっきり壁に向かってぶん投げた。
は?
……あ、あっぶな。壁にぶつかる寸前であの部屋に穴を作って出られたからよかったけど……………くぅっ!!あの男、女神に対してなんてことを!!それに最後の目!!私を見る目が完全に生ゴミを見る目と同じだったんですけど!?
というか大体、どこの人間が異世界に行くのに準備をするのよ!!ここは普通の人間だったら興奮して即転生するところでしょ!!しかも聖哉筋肉元からすごいあったし!!や、やっぱりここに呼び出す際に頭がパーに……
そこで顔面蒼白になりかけた私は、私が手に持ってたおかげで一緒にこの部屋の外に投げ出された死者の詳細が書いてある紙のある項目を見忘れていたことに気がついた。
龍宮院聖哉
死因──心臓麻痺
性格──あり得ないくらい慎重