「私がここにいたら悪い?」
刻晴は堂々とした態度で返事をします。
七星の仕事は璃月の外を出るものだってあります。
きっと刻晴は軽策荘方面の仕事があるのでしょう。
璃月から軽策荘への道はここしかありません。ばったり会ってしまうのも仕方ないでしょう。
「いえ、悪くはありません」
「てか、あんた何してるのよ」
「これは、万民堂の店主に頼まれて―ー」
「頼まれて、ねえ」
刻晴は目を細め、私に疑いの目を向けていました。
どうしてそんな目で見られないといけないのでしょうか。
「なんで休みを与えたのに、頼まれごと引き受けてんのよ!」
「それは……」
刻晴からすると、万民堂の食材を璃月へ運ぶことは休みではなく仕事にみえたようです。
「急に休みと言われても、どう休みを過ごしたらいいのか分からなくて……」
「そう。はあ……」
私の言い分を聞いた刻晴はあきれ顔をした後、ため息をつかれました。
きっと、私が休日でも雑務を受けていることが信じられなかったのでしょう。
長い休日を貰っているというのに、どうして余暇を楽しむことがどうしてできないのだろうと思っているに違いありません。
「軽策荘に行ったのは、瑠璃百合を買いに行ったんだと思ったのに……」
「え?」
「あっ」
刻晴は口を塞ぎ、苦笑いをしていた。
「もしかして、私の後をついてきたのですか?」
「そんなに暇じゃないわよ!」
「じゃあ、どうして私が軽策荘に向かうことを知っていたのです?」
「そ、それは―ー」
「それは?」
問い詰めると、刻晴は額に手を当て、首を横に振っていました。
観念したようです。
「……私の負けね」
「負け、とは?」
「それは璃月に戻ったら教えてあげる! それよりも、今はー-!」
私と刻晴が言い合いをしていたことで、仲間割れをしていると思ったのでしょうか。好機と言わんばかりに大勢のヒルチャールが現れ、取り囲まれてしまいました。
刻晴は片手剣を構え、雷元素を蓄えています。
「こいつらを倒すわよ」
「はい!」
私も弓を構え、刻晴に加勢します。
ヒルチャールたちが荷物に触れる前に倒されたのは言うまでもありません。
☆
その後、私と刻晴は荷物の護衛をしながら、璃月を目指しました。
望舒旅館で食事を摂り、弁当を買って足を休めた後、一日かけて璃月に着きました。
「お嬢ちゃん! 助かったよ」
「いえ、食材はこちらで間違えありませんか?」
万民堂に立ち寄り、私は店主に荷物を渡しました。
内容も数も問題ないようです。
「お礼に何か好きなもの食べて行って」
「本当ですか! では、お言葉に甘えて。刻晴も何か食べましょう」
「そうね……、エビのポテト包み揚げ、できるかしら?」
「ああ。用意できるよ」
万民堂の店主の厚意に甘え、私と刻晴はそれぞれ料理を注文した。
少し経って、作り立ての料理が置かれる。
「私は後で食べるわ」
「じゃあ、包んどくよ」
「よろしく」
刻晴は揚げたてを食べないようです。
ですが、私が料理を食べ終えるのを待ってくれるみたいですね。
「それ食べたら、群玉閣に行くわよ」
「それって、もしかして!!」
「仕事に戻って良いわよ。正直、あんたがいなくなってから秘書が悲鳴を上げてたからね。限界よ」
「はい! 戻ったら後輩たちのサポートに回ります」
私が長い休みを貰っていたのは、クビになったわけじゃないんですね。
仕事に復帰出来ると知った私は、有頂天になっていました。
嬉しい時に食べる料理は格別です。
早く平らげて、後輩たちを助けなければ。
「その前に、凝光に会いに行きましょう」
「どうしてですか?」
ここで凝光の名前が出てくるのは意外でした。
「凝光に会えば、全部分かるわ」
刻晴は私の問いに、そう答えました。