【完結】甘雨さんを休ませたい   作:リヒス

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いい休暇が過ごせました!

 群玉閣。

 七星【天権】の肩書を持つ、凝光が莫大な金を使って建てた宙に浮遊する建物です。一度、ファデュイの企みにより璃月の海上に現れた魔人オセルを倒すため、崩壊しましたが、蛍とパイモンの協力もあって、再建することができました。

 彼女は再建した際は看板役者である雲菫を招き、要人を招いて観劇していました。

 その後は、一般人を招くことなく三人の腹心と共に戦略を練っていたみたいですが、私が長いお休みを貰うことと関係があったのでしょうか。

 

「あら、刻晴」

「私が来るなんてお見通しでしょ!」

「……どうでしょう?」

 

 群玉閣内にある金の縁取りが付いた、フカフカなソファに足を組んで座り、キセルをふかしている凝光がいました。その姿は優雅で、璃月の管理を務めている七星の風格がにじみ出ています。

 璃月中に彼女の部下がいますので、私たちが群玉閣へ来るのは想定済みでしょう。

 刻晴の問い詰めも含みのある笑みで誤魔化すのですから、これ以上何を言っても無駄でしょうね。

 

「座って話しましょうか」

 

 凝光はキセルの灰を灰皿にトントンと打ち落とすと、そこへキセルを置き、ソファから立ち上がった。

 彼女は私と刻晴を小さなテーブルとチェアがある場所へ誘う。

 私たちはそこに座った。

 

「お酒を飲みながら話してもいいかしら?」

「……仕方ないわね」

「あなた、丁度いいつまみを持っているわよね」

「ほら、私たちの事、監視してたんじゃない」

「ふふっ」

 

 凝光は刻晴に万民堂の店長に作って貰ったエビのポテト包み揚げが欲しいと言いました。そこにもちろん凝光はいません。

 刻晴が疑っていた通り、凝光は私たちの行動を部下を通じてみていたのです。

 

「あんたが飲む、たっかい酒と合うのかしら」

「今回はモンド産の麦酒だから、とても合うと思うわ。あなたもどう?」

「いらない! 水をちょうだい」

「甘雨は?」

「私も水をお願いします……」

 

 凝光の元へ訪れると、いつも彼女のペースで話が進んでしまいます。

 話を自身のほうへ有利に持ってゆく話術は大商人ですね。

 相変わらず、壁一面には璃月の今後が書かれており、商人は紙きれ一つでも手に入れたいと願うほどの価値があります。

 モンド産の麦酒を飲みながら、エビのポテト包み揚げを食べている方が同一人物であると想像もつきません、

 

「あの、凝光」

「なあに?」

「私、刻晴に長いお休みを貰っていたのですが理由をご存じでしょうか」

「ええ。知ってるわよ」

 

 私の長い休みについて凝光が絡んでいるようです。

 

「私と刻晴は”賭け”をしていたのだから」

「かけ……?」

「あー、私の負けよ!! あんたの仕事、特・別に引き受けてあげる!」

 

 刻晴が負けを宣言した。

 話の流れからすると、刻晴は凝光との賭けに”負けた”ことになります。

 私も段々と話の全容が見えてきました。

 

「私が長期のお休みを貰ったら、何をするか……、それをお二人で賭けていたのですか?」

「ええ」

「何を賭けていたのか、差支えなければ教えていただけないでしょうか」

「面倒な”仕事”よ」

「稲妻が鎖国を終えたことは知っているわよね」

「はい」

 

 稲妻が鎖国令を解いたことは聞いている。

 璃月は稲妻との交易をすぐに再開させるだろう。

 それは璃月に取って有益であり、繁盛する。

 しかし、上手い話ばかりではない。

 

「璃月が稲妻との交易を始めるでしょう。いい商売や悪い商売も」

「違法取引をしている璃月人を刻晴が取り締まるのですか」

「それが”負けた”代償。特に絹織物や琥珀石の裏取引は璃月に損益をもたらすわ」

「なるほど……」

 

 凝光が警戒することは必ず起きる。

 何件も起きるだろう。

 本来、璃月で建設と土地管理を担う【玉衡】の肩書を持つ刻晴の管轄ではない。凝光に頼まれても、彼女は一度拒否しているでしょう。

 

「もしかして、私はその賭けのために利用されたのですか?」

「ごめんなさいね。でも、あなたに休暇を与えてほしいという声が上がっていたのよ」

「私に休暇を……」

「だから、刻晴と賭けたの。『甘雨に長期の休みを与えたらどうなるか』と」

 

 突如、長期の休みを言い渡されたのはそういう経緯があったのですね。

 二人の賭けに利用されたことは府に落ちませんが、私に休暇を与えてほしいと気遣ってくれた方がいたことが嬉しかったです。

 

「私は、また必要とされなくなったのではないかと不安で―ー」

「もう、この賭けは終わり。甘雨、仕事に戻ってちょうだい」

「はい! では、私はここで失礼します!」

 

 私は凝光の話を聞き終え、群玉閣を去りました。

 そして、仕事場である月海亭へ戻ってきました。

 

「甘雨先輩!」

 

 私が戻ってきたことに後輩が気づくと、駆け寄ってくれました。

 

「休暇、如何でしたか?」

 

 私に休暇を与えてほしいと願ったのはきっとこの子たちでしょう。

 私が抜けて忙しかったでしょうに……。良い後輩たちを持ちました。

 始めは、必要とされていないのかと不安に思っていましたが、思い返せば普段とは違うことが体験出来て、良かったと思います。

 

「はい! いい休暇が過ごせました!!」

 

 私は後輩の問いに満面の笑みで答えました。

 

 

 




今回で最終話です!

甘雨のお話、如何でしたか?
ちょっと間を空けて、別のキャラクターの二次創作を書こうと思います。
もし、リクエストがありましたらコメント欄にてよろしくお願いします!

ではまた、新作でお会いしましょう!!
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