少しずつリアルが落ち着いてきたため、これから徐々に投稿を再開していこうと思います。
まずは青薔薇の軌跡を投稿します。
これからもよろしくお願いいたします。
トールズ士官学院旧校舎地下一階。
ユージオが坂を降りきったとき、誰かの頬を思い切り平手打ちする音が響き渡った。
音がした方を向いたとき、黒髪の男子生徒が金髪の女生徒に平手打ちされたところであった。
(────!?)
一瞬何があったのかが分からず、目を丸くしたユージオであったが、頬を朱に染めながら胸を庇うようにして押さえている女生徒。
そして平手打ちされたにも関わらず怒る様子も無い男子生徒。
最後に、ユージオは全員が落ちていったときに、黒髪の男子生徒が金髪の女生徒を守ろうと動いていたのを見ていたため、全てを総合してある程度のことを察する。
何が起こったのかを話すために、時はほんの少しだけ遡る。
ユージオとフィー以外が落ちていったあと、上手く受け身を取れていなかった生徒達は何が起こったのか分かっていなかった。
「……クッ……何が起こったんだ……?」
「いきなり床が傾いて……」
「……やれやれ。不覚を取ってしまったな」
「ここは……先ほどの建物の地下か」
各自、ぞれぞれ起き上がり状況の確認に努める。
アルバレア公爵家のユーシスは、サラの不意打ちに関して「下らん真似を」と吐き捨てていたが、先程のマキアスとの言い合いもあって不機嫌さを隠せずにいた。
そこにフィーが降りてきたタイミングで、優しげな雰囲気を持つ紅茶色の男子生徒も上半身を起こして、入学式で知り合った生徒を探そうと声を掛ける。
「はああ〜っ……心臓が飛び出るかと思ったよ。リィンは大丈夫──」
紅茶色の男子生徒が右を向いた瞬間、驚きのあまり「えっ!?」と言いながら固まってしまった。
彼の視線の先には、
「ううん……何なのよ、まったく……」
不意なことで金髪の女子生徒も反応が出来ずに落ちてしまったのは仕方がない。
坂を落ちたところまでを認識したところで、金髪の女子生徒は違和感を覚える。
そして、うつ伏せ状態になっている少女は、目線を下の方に持っていき────
「………………………………」
何が起きているのか、女性としてあまりにも恥ずかしい状態であることをすぐに理解する。
いや、理解するというよりも、感情的にその状態に対する忌避感が先に出てしまったという方が正しい表現だろう。
それも仕方がない。自身が男子生徒の上に乗った状態で、誰にも触らせたことがないであろう部分に今日初めて会った異性の顔があったのだから。
「……その……なんと言ったらいいのか」
リィンと呼ばれた黒髪の男子生徒は金髪の女生徒の胸に顔を
その声にハッとなった金髪の女生徒はすぐにその場をどいたのだが、理性と感情のコントロールが上手くいかず、頭の中がぐるぐると回っていた。
リィンも起き上がり、何が起こっているのかを理解しているため、バツが悪そうに金髪の女生徒へ謝罪をする。
「えっと……とりあえず申し訳ない。でも良かった。無事で何よりだった──」
しかし、リィンの言動はこの現状に置いては及第点未満であり、感情の行き場を失っていた彼女を爆発させるのには十分であったようだ。
そして、彼女が平手打ちをリィンにお見舞いしたところで、ユージオが降りてきたということである。
(不運というかなんというか……なんか
ある程度のことを察したユージオは苦笑いを浮かべながら、女難の相がありそうな
全員がリィンに憐れみの目を向けるが、女性陣は気持ちが分かるため何も言わず、男性陣もやぶ蛇になることを恐れて表立って口を開くことはしなかった。
「あはは……その、災難だったね」
紅茶色の男子生徒だけはリィンを慰めようと小声で彼に話しかける。
リィンは左頬を押さえながら、「ああ……厄日だ」と小さな声で返事しつつ、周りを見渡すとここは少し薄暗いが少し広めの空間であると分かる。
部屋の周りには均等に台座が十個あり、その上には何かが置かれていた。
全員が部屋の状態を認識したとき、何かの音が一斉に鳴り響く。
いきなり鳴ったため全員が驚くが、すぐにその正体が自分の持っていた
「これは……入学案内書と一緒に送られてきた……」
「携帯用の導力器か」
眼鏡を掛けた女生徒と青髪の女生徒が呟くと、導力器から聞き覚えのある声がする。
『──それは特注の《戦術オーブメント》よ』
通信機能を内蔵している携帯用の戦術オーブメントから聞こえる声の主はつい先程まで一緒にいた《Ⅶ組》の担任であるサラ・バレスタインであった。
各自驚きの度合いは異なっているが、殊更驚いていたのは先程リィンに平手打ちをした金髪の女生徒である。
「ま、まさかこれって……!」
サラは彼女が何を言いたいのかを理解し、言葉を引き継ぐ。
『ええ、エプスタイン財団とラインフォルト社が共同で開発した次世代の戦術オーブメントの一つ。第五世代戦術オーブメント、《
「
「戦術オーブメント……
サラは各自で受け取るように伝えると、部屋が明るくなる。
「君たちから預かっていた武具と特別なクオーツを用意したわ。それぞれ確認した上で、クオーツを
突然のことで困惑しているが、この状況では指示に従うしかないため、それぞれが自分の預けた荷物が置かれている場所まで向かう。
ユージオも同じように向かい、青薔薇の剣が置いてある台座の前まですぐに辿り着く。
青薔薇の剣の手前には小箱が置いてあり、そこには水色のクオーツが入っていたのでユージオはそれを手に取る。
『それは《マスタークオーツ》よ』
サラからタイミングよく手に持っていたものの説明が始まる。
指示通り全員が
『君たち自身と
サラ曰く、他にも色々と機能があるということだが、追々説明していくとのことだ。
彼女の『さっそく始めるとしますか』という言葉ともに、広間の奥の扉がひとりでに開く。
『そこから先のエリアはダンジョン区画になっているわ。割と広めで入り組んでいるから少し迷うかもしれないけど……。無事、終点までたどり着ければ旧校舎一階に戻ることが出来るわ。ま、ちょっとした魔獣なんかも徘徊してるんだけどね』
彼女の脅しに何人かが反応するが、気にせずにサラは言葉を続ける。
『──それではこれより、士官学院・特科クラス《Ⅶ組》の特別オリエンテーリングを開始する。各自、ダンジョン区画を抜けて旧校舎一階に戻ってくること。文句があったらその後に受け付けてあげるわ。何だったらご褒美にホッペにチューしてあげるわよ』
からかうように話したあとに通信を切るサラ。
いきなり開始されたオリエンテーリング。
しかし、全員がまだ状況が飲み込めていないため、まずは中心に十人が集まる。
「え、えっと……」
「……どうやら冗談というわけでもなさそうね」
これからどうしようか相談をしようという空気の中、「フン……」と鼻を鳴らしたユーシスが一人でダンジョン区画へと向かおうとする。
そこに声を掛けたのは貴族嫌いのマキアスであった。
「ま、待ちたまえ! いきなりどこへ……一人で勝手に行くつもりか?」
困惑と心配、そして非難が入り混じったような声でユーシスを引き止めるが、彼はそれを一蹴する。
「馴れ合うつもりはない。それとも“貴族風情”と連れ立って歩きたいのか?」
「ぐっ……」
先程のやり取りを蒸し返され、マキアスは言葉に詰まる。
そこにユーシスは尊大な態度でマキアスを挑発する。
「まあ──魔獣が怖いのであれば同行を認めなくもないがな。武を尊ぶ帝国貴族としてそれなりに剣は使えるつもりだ。
「だ、だれが貴族ごときの助けを借りるものか!」
その挑発に乗ってしまったマキアスは、自分のほうが貴族よりも上であるということを証明すると言い、一人で勝手に行ってしまった。
ユーシスも「……フン」とだけ言い、同じく勝手に行ってしまう。
そのやり取りを見ていた全員が困惑していた。
「……えっと…………」
「ど、どうしましょう……?」
「──とにかく我々も動くしかあるまい」
青髪の女子生徒が念の為数名で行動しようと提案し、金髪の女性とと、眼鏡の女生徒に一緒に行動しようと声を掛ける。
二人とも「その方が助かる」と言って了承する。
「それに、そなたも──」
フィーにも声を掛けようとしたところで、彼女が一人で先に行ってしまったことに気付き、あとで会ったときに声を掛けようと呟く。
(きょ、協調性のかけらも無いなぁ……)
ユージオはここまでのやり取りを見ていて、苦笑いを浮かべるしか出来なかった。
本当であれば、ユーシスたちのやり取りも止めたほうが良かったのだろうが、まだ距離を測りかねているというところがあったのと、この先にいる魔獣がそこまで強くないということから、特に問題ないと判断し一旦声を掛けるのをやめていた。
「では、我らは先に行く。男子ゆえ心配ないだろうが、そなたらも気を付けるがよい」
「あ、ああ……」
リィンはどんどん変わる状況についていくのが精一杯だったのか、困惑の返事だけを残し、彼女たちが先に行くのを見送る。
その際に金髪の少女が自身を睨んで去っていくのを見て、思い切りため息をついてしまった。
「あはは、すっかり目の仇にされちゃったみたいだね」
「ああ、後でちゃんと謝っておかないとな……。──それで、どうする? せっかくだから俺たちも一緒に行動するか?」
リィンの提案に茶髪の男子生徒は嬉しそうな声で「もちろん!」と返事する。
今までほとんど話さなかった長身の男子生徒も了承の返事をする。
「……君はどうする?」
「僕も大丈夫だよ。よろしくね」
ユージオも同じく了承したところで、それぞれ自己紹介を始める。
長身の男子生徒はガイウス・ウォーゼル。ガイウスは留学生であり、帝国に来てまだ日が浅いとのことであった。
リィンもフルネームで自己紹介をする。
「こちらこそよろしく。リィン・シュバルツァーだ」
「エリオット・クレイグだよ」
「僕はユージオ。ユージオ・ルグィンだよ」
ユージオが自己紹介したところで、全員が「えっ!?」と声を上げる。
「ルグィンって、あの
「《黄金の羅刹》と言われるオーレリア将軍の……?」
「彼女の名前はオレの故郷でも知れ渡っているぞ」
各々がルグィンという家名を聞いて、真っ先にオーレリアの名前を出すくらいに帝国では《黄金の羅刹》オーレリア・ルグィンという名前は有名であった。
少し照れくさそうにユージオは答える。
「まぁ養子だけどね。一応オーレ……義姉上には鍛えてもらったりはしていたよ。それにガイウス……もしかして君はノルドの?」
「ああ、どうしてそれを?」
「姉上の側近でウォレス准将という方がいるんだけど、色々とお世話になっていたんだ」
「……彼はオレと兄弟弟子だな」
「そうだったんだ……だから同じ槍を使っているの?」
「それもあるな。故郷で使っていた得物なんだ。ユージオ、よかったら時間があるときにウォレス准将のことについて話を聞かせてくれないか?」
「もちろんだよ。僕も聞きたいこともあるからさ」
ガイウスとユージオは思いがけない人物を共通の知り合いとして、少しだけ仲を深めた。
リィンはその様子を見ていて、ユージオに話しかける。
「ユージオ
「
「ああ、帝国北部にある田舎の貴族さ」
「え、リィンも貴族だったの!?」
エリオットは先程まで仲良く話していた人物が貴族だったことに驚きを隠せなかった。
「まぁ養子だし、ユーシスみたいなちゃんとした貴族というわけでもないさ」
「そうだね。僕も同じだよ。一応貴族としての考えは色々と詰め込まれ……教わったけど、半分平民みたいなものかな?」
「ああ、そうだな。だからエリオットも気にせずに接してくれると嬉しい。第一、《Ⅶ組》は身分に関係ない人たちが集まったクラスなんだからさ」
「……そっか。そうだね! うん、二人ともよろしくね!」
エリオットも最初は貴族と聞いて、先程のユーシスのような感じかと思っていたが、リィンとユージオとのやり取りに嬉しそうな顔をしていた。
ガイウスも帝国人ではないため、貴族という身分をあまり理解していなかったが、二人とは仲良くやれそうだと安心した様子であった。
自己紹介もそこそこに、それぞれの使っている武器や戦闘スタイルを紹介しあい、ガイウスは十字槍、エリオットは《
「それで……リィンの武器はその?」
「ああ──」
「それって……剣?」
「帝国のものとは異なっているようだが……?」
見たことがない形状の剣であったため、エリオットとガイウスはリィンに尋ねる。
リィンは自らの得物を抜いて三人に見せる。
「これは《太刀》さ」
「うわぁぁ……キレイな刀身……」
「……見事だな」
感嘆の声を上げるガイウスとエリオットに対して、少し自慢げにリィンは口を開く。
「東方から伝わったもので、切れ味はちょっとしたものだ。その分、扱いが難しいからなかなか使いこなせないんだが」
「帝国で伝わっている剣よりも“斬る”ことに特化した武器だよね」
「ユージオ、知っているのか?」
「うん……ちょっとね……」
リィンはあまり知られていない武器に関して、ユージオが知っていたことに驚く。
ユージオは少し話を濁すが、それに気付かないエリオットは感動したように言葉を続ける。
「なんだかすごくサマになってるよね!」
「そうだな。せいぜい、当てにさせてもらおうか」
「じゃあ──最後は僕だね」
そう言うとユージオは青薔薇の剣を抜く。
「……あ…………」
「え……?」
「…………なんと……」
その美しさに言葉を失うリィンたち。
青い薔薇を意匠とし、半ば透き通った刀身は芸術作品としても素晴らしいもので、見るものを魅了する片手用直剣である。
「とりあえず、そろそろ僕たちも行くとしようか」
「ああ、警戒しつつ慎重に進んでいこう。まずはお互いに戦い方を把握しておかないとな」
「うん! そうだね!」
ユージオの呼びかけにより、そろそろ先に進むという空気になる。
もちろん先に出発したマキアスたちとの距離がこれ以上離れても良くないためだ。
開いた扉から進んでいくと、近くに魔獣の気配を感じエリオット以外が警戒をする。
そして目に見える範囲に羽の生えた猫型の魔獣が現れ、ようやくエリオットも武器を構える。
「あ、あれって魔獣……?」
「ふむ、見たことのない種類だが」
「あれは飛び猫だね。油断しないようにしよう」
「ああ、気を引き締めていこう」
全員が武器を抜いて構える。そこでトビネコもユージオたちに気付く。
「俺とガイウス、ユージオが前に行く! エリオットはフォローしてくれ!」
「分かったよ!」
二体のトビネコに対して、リィンとガイウスが飛び込んでいく。
二人の攻撃は上手い具合に牽制となり、トビネコ二匹のヘイトを稼ぐことに成功する。
「……
二匹が揃ったところで、
視界外からの
「今だ! ガイウス行くぞ!」
「応っ!」
そして、魔獣が動かなくなったのを確認し、残りの一匹がどうなったのかユージオの方を見るが、すでにユージオは倒していて、周りの警戒をしていた。
「い、いつの間に……!」
「さすが《黄金の羅刹》の義弟というだけはあるということか……」
「うう……今みたいのが何匹もうろついているのかな……」
リィンとガイウスはユージオが戦闘をした物音すら立てずに討伐したことに驚き、エリオットはそこには気にも留めず弱気な発言をする。
その言葉に緊張が緩んだガイウスは、「気配を感じるから、間違いなさそうだ」と彼の発言を肯定した。
恐怖もあるが、進むしか無いと思い、エリオットは気を引き締めて先に進むことを決意する。
(うん、問題なさそうだね)
ユージオは特に手を出すこともなく戦闘が終わったため、彼らをそこまでサポートする必要がないと判断する。
少し上から目線での考えになってしまっているが、彼自身が歳上なのと潜ってきた修羅場の数なども違うためそこは仕方がないものでもあった。
ただ、全員がそれぞれの得意分野で高い才能を感じるので、自分も追いつかれないようにしようと考えていた。
そのあとも問題なく進んでいく。
地下道のため、方向感覚も失いそうになるが、油断せずに魔獣を倒していく。
グラスドローメというスライム状の魔獣やコインビートルという甲殻型の昆虫魔獣などの種類が出てきたが、ユージオのサポートを必要することなく三人で倒していく。
そして中間地点ほどになったとき、戦闘後にエリオットが膝をつく。
「はあぁ〜っ……」
「エリオット、大丈夫か?」
「怪我はなさそうだが……」
どうやらエリオットは緊張の連続だったため、疲労もあって気が抜けてしまったということだった。
「……でも三人ともすごいなぁ。ぜんぜん平気みたいだし……」
「まあ、慣れの違いだろう」
「どうする、手を貸そうか?」
「ううん、大丈夫。ちょっとヨロけただけだから」
リィンが手を差し伸べようとしたが、エリオットは大丈夫であるとそれを断り、立ち上がろうとする。
しかし、エリオットの背後からコインビートルが迫ってきているのにリィンたちは気付くのが遅れてしまっていた。
「おい……!」
「エリオット!」
「へ……?」
気付いたときにはもうコインビートルがエリオットに飛び掛かっており、リィンとガイウスはフォローが間に合う状態ではなかった。
それでもリィンはなんとか庇おうと突っ込もうとしたところで、横から何かが通り過ぎる。
「──え?」
リィンが横を向き、エリオットは後ろを向いたとき、コインビートルはすでに両断されており、その先にはユージオが剣を収めているところであった。
「エリオット!」
「大丈夫か!?」
慌ててリィンとガイウスがエリオットに駆け寄るが、怪我も特に無いエリオットは「うん、大丈夫」と返事をする。
「ユージオもありがとう。お陰で助かっちゃったよ」
「大丈夫だよ。怪我がなくてよかった」
「それにしても……今の動き、まったく見えなかったな」
「ああ……」
リィンもガイウスもユージオの移動速度を見て、感嘆の声を上げる。
それに対して、
そして──。
「それで……そろそろ出てきたらどう?」
「──っ!?」
ユージオが向けた視線、その先にはショットガンを手に持ったマキアスがおり、傍目から見るとそれで四人のことを狙っているようにしか見えなかった。
「な……ま、マキアス?」
「え、一体どういうこと?」
「ち、違うんだ! 話を聞いてくれ!」
マキアスは慌てて事情を説明する。
彼が説明するには、先程の身勝手な行動を謝罪したいと思い、引き返してきたということだった。
そこでエリオットが襲われているのを発見し、ショットガンで応戦しようとしたところにユージオが一閃したため呆然としていたのを四人に発見されたという流れだった。
「……いくら相手が傲慢な貴族とはいえ、冷静さを失うべきじゃなかった。すまない、謝らせて欲しい」
「いや……気にすることはないさ」
「うんうん、あんな状況だったしね」
リィンとエリオットは仕方がない状況であったと頭を下げたマキアスを慰めて、謝罪を受け入れる。
そこで改めて同行させてほしいとマキアスがお願いをし、全員が自己紹介を始める。
「リィン・シュバルツァーだ」
「エリオット・クレイグだよ。よろしくね」
「ガイウス・ウォーゼル。よろしく頼む」
「僕はユージオ・ルグィンだよ」
ユージオが自己紹介をした途端、マキアスが過敏に反応をする。
「ユージオ……今ルグィンと言ったか? もしかして君は貴族なのか?」
「まぁ、一応そうなるのかな? とはいえ、僕は平民からの養子だし、みんなと何も変わらないけどね」
「……そうか。なんというか……貴族かどうかはさておき、すまない」
マキアスの基準がよく分かっていないユージオは自分の思ったことを話す。
「大丈夫。気にしないでいいよ」
「……ありがとう」
ユージオの言葉にマキアスはありがとうと答えるが、ここではそれ以上何かを追求する空気にはならなく、そこでマキアスは口を閉ざしてしまう。
その気まずい空気を誤魔化そうとエリオットが口を開く。
「あのさ、とりあえずそろそろ先に進まない? 他のみんなも先に行っているだろうからさ」
「……そうだな。君たちは四人だけみたいだな?」
「ああ、最初の場所に戻ったとしても誰もいないだろう」
マキアスは全員に謝罪をしようと思っていたようで、ガイウスの言葉に「そうか……」と俯いてなにかを考えながら答える。
そして、少し気まずそうに顔を上げると四人に向かって「よかったら僕も同行して構わないか?」と告げる。
リィンたちが喜んで迎え入れると告げると、少し照れくさそうに軽く咳払いをして、
「マキアス・レーグニッツだ。改めてよろしく」
と、マキアスは四人に合流することとなった。
「見たところ女子もいないようだし、先を急いだほうがよさそうだ。万が一、危険に陥っていたら僕たちがフォローしないとな」
「ああ、そうだな」
「では、出発するか」
マキアス、リィン、ガイウスの会話を聞いて、ユージオは彼女がいるのなら問題ないだろうけどねと思っていたが、敢えて口に出すことはせずに先に進むことを優先することにした。
そして地下区画を進んでいると、マキアスは当然の疑問を口にする。
「しかし、どうして学院の敷地にこんな場所があるんだ?」
「そうだよねぇ……落とし穴まで用意してるし」
「そういえばユージオは一番降りてくるのが遅かったが、落とし穴があるのは分かっていたのか?」
マキアスとエリオットの会話を聞いて、思い出したかのようにガイウスがユージオに話しかける。
「ああ、
「……そんなことも分かるんだ?」
ユージオの回答にエリオットとマキアスは単純に驚き、リィンとガイウスはその警戒心の高さに驚くが、まだどれだけ自分たちとの実力差があるのかまで把握することは出来ていないようだった。