気分が乗ったら、もう一話投稿しようかなと考えています。
ユージオが銀髪の女性に連れられて到着した場所は、兵士達が訓練をする練兵場であった。
銀髪の女性が現れたのを確認した兵士達は、先程までの兵士達と同じく、訓練を止めて一斉に敬礼をする。
「訓練中にすまないが、少しの間だけ借りるぞ」
「イエス・マム!」
兵士達は返事をした後、練兵場の端へと移動していく。
銀髪の女性はその様子を見つつも、練兵場の真ん中へとユージオとともに歩く。
そして、練兵場の真ん中で立ち止まり、ユージオの方へと振り向くのだった。
「そういえばまだ名乗っていなかったな。私はラマール領邦軍、そしてここジュノー海上要塞の総司令であるオーレリア・ルグィンだ。見知り置き願おうか」
「オーレリア・ルグィン……さん……?」
「む……そなたは私を暗殺に来たどこかの国、もしくはここの情報を盗みに来た革新派からの刺客なのかと思っていたのだが、よもや私のことすら知らなかったというのか?」
ユージオの反応を見て、オーレリアは自身の予測が外れていたと気付く。
しかし、そうでなければわざわざジュノー海上要塞のオーレリアの執務室に侵入する理由がない。
だが実際に彼はオーレリアの執務室に
ユージオはオーレリアの反応を見て、彼女が有名な人なのであろうことを察したのだが、分からないものは分からないのである。
彼が出来る精一杯のフォローとして、「すみません……田舎者なので……」とバツが悪そうに話すことくらいであった。
遠巻きに彼らのことを見ていた兵士達は、オーレリアのことを知らないとはっきりと口にしたユージオに対して驚きと怒りが混じったような視線を向けていた。
「……まぁそのことはもうよい。実は最近身体がなまっていてな。私に気付かれずに執務室に侵入できるような者が来たのも何かの縁であろう」
「────ッ!」
オーレリアの言葉と彼女の青薔薇の剣を見る目線で、何を言いたいのかを察した。
彼女はユージオの反応を嬉しそうに見た後、腰からルグィン伯爵家に伝わる宝剣《アーケディア》を抜く。
ユージオは愛剣の柄に右手を乗せるが、まだ抜くつもりはなかった。
「ど、どうしても戦わないといけないのですか?」
「もし私に一撃当てることが出来れば、
それをさも平然とユージオへ伝えるが、彼としてはそもそも不法侵入ということすら納得できていないのである。
目が覚めたらあの場にいた、ただそれだけなのであった。
「どうした? やるのか、やらないのか?」
オーレリアの答えを急かす口調に、ついに観念したのか、ユージオは青薔薇の剣を抜いて構える。
その柄から刀身の先に至るまで青白く輝く剣を見て、周りで見ていた兵士達もその美しさに思わず感嘆の声をあげる。
(やはりな……あの剣は……)
オーレリアも青薔薇の剣に対し、何かを感じ取っていた。
しかし、それを微塵にも顔に出さないようにし、その剣を持つユージオへ意識を戻す。
ユージオは愛剣を右に流すように構え、オーレリアへの攻撃のタイミングを伺う。
アインクラッド流──ユージオが親友であるキリトから習った剣術。本当であれば、その一生を故郷であるルーリッド村の
そしてそのアインクラッド流で、キリトの剣である《夜空の剣》の素材にもなった《悪魔の樹》ギガスシダーを伐り倒すことによって、ユージオの剣士としての道が始まったのだ。
実際にはVRMMORPGである「ソードアート・オンライン」というゲームに出てきた片手直剣ソードスキルなのだが、それはキリトの誤魔化しによって隠されている以上、彼にとってはアインクラッド流というのが正式流派である。
そして彼が扱うことが出来るソードスキルは二十あるうちの半分ほどにも関わらず、それでもSAO時代に最高の反応速度を持つキリトから「自分はすぐに追い抜かれるであろう」と言われるほどの才能を有していた。
お互いに武器を構えたまま動かない。
オーレリアはその余裕から先手をユージオに譲るため、ユージオは戦闘態勢に入ってようやく分かった──実際には計ることが出来なかった──オーレリアの脅威に動くことが出来なかったのだった。
しかし、このままでは埒が明かないと思い、遂にユージオが動き出す。
「あの坊主が動いたぞ!」
「オーレリア将軍に真っ向から突っ込んでいくなんて、無謀なやつだな……」
ユージオは正面から突撃していき、自身が使える最高の技を放つ。
真上からオーレリアを斬り下ろすが、左に身体を傾けただけで彼女は悠々と避ける。
しかし、それだけでは攻撃が終わらず、直後に振り下ろされた剣がオーレリアに向かって斬り上がっていく。
「────ッ!?」
流石のオーレリアもその攻撃には驚いたのか、宝剣アーケディアの腹を使って受け流す。
攻撃がヒットしなかったことを悟ったユージオは、すぐにバックステップで後ろに下がり、彼女との距離を空けるのであった。
「なん……だと……」
「まさかオーレリア将軍に……?」
まさか初撃でオーレリアに剣を使わせるとは思っていなかった兵士達は、驚愕の顔をしていた。
それは彼女自身も驚きを隠せなかった。
(よもや私に初撃で防御を取らせるとは……)
対してユージオは悔しそうな顔をしていた。
自分が今使える最高の技を持ってしても、初見で簡単に防がれてしまっていた。
そうなるとユージオに出来ることは限られてきてしまう。
「ふ……ふははは! 面白い! 面白いぞ! そなた、名はなんと申す?」
「……ユージオ、です」
「そうか。ユージオよ、久方ぶりに良き雛鳥に会えたぞ! ここまでの強さを持っているのであれば遠慮は無用というもの!」
オーレリアは気合いを入れると、黄金に輝くオーラを纏う。
そこから発せられる威圧感、それはユージオ自身がセントラル・カセドラルでの戦いでも味わったことがないものであった。
(これ……は……公理協会の整合騎士団長以上……!?)
幼馴染であるアリスを助けるために侵入したセントラル・カセドラルで戦った公理協会整合騎士団長ベルクーリ・シンセシス・ワン。
彼がユージオの持つ青薔薇の剣の前所有者なのだが、その剣技、強さは他の追随を許さないものであり、ユージオが自らを犠牲にしてようやく勝利することが出来た者である。
しかし、目の前にいるオーレリアはそれを遥かに上回る力量を持っており、彼女に一撃を当てるということがいかに無謀なことなのかを悟った。
「では、行くぞ!」
オーレリアは律儀に──舐められているとも言う──攻撃を仕掛けるタイミングを告げると、先程のユージオと同じく真っ直ぐ突っ込んでくる。
「はああぁぁああ!」
「ぐっ……!」
宝剣アーケディアを片手で振り回すオーレリア。その攻撃を青薔薇の剣で受けるが、その衝撃で数メートル後ろへと下がらされるユージオ。
それで終わるはずもなく、彼女は更に追撃を繰り出してくる。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
十秒も経たずして、ユージオは青薔薇の剣を杖にして膝を付くこととなった。
「フッ、どうした? これで終わりか?」
「…………」
オーレリアの言葉に、周りの兵士達も流石にユージオへの同情を隠せなくなっていた。
それは彼が侵入者であることは先程の二人の会話から察している。しかし、まだ年端も行かない
(このままでは……
ユージオは覚悟を決めて立ち上がり、再度構える。
その姿を見て、何かをやるつもりだと感じたオーレリアは笑みを浮かべる。
「そうか……その意気やよし! 行くぞ!」
「システム・コール──」
オーレリアが再度ユージオに迫るが、ユージオは何かを呟きながら後ろに飛び、彼女の攻撃を躱す。
攻撃を躱されたのを嬉しそうに笑い、追撃を仕掛けるオーレリア。
しかし、ユージオは避けることなく、左手をオーレリアへと向ける。
「──バースト・エレメント!」
「なっ!?」
ユージオの掛け声とともに、オーレリアへ暴風が巻き起こり、彼女を吹き飛ばす。
(今だ! 今しかない!!)
ユージオは青薔薇の剣を逆手に持ち替えると、地面へと突き刺す。
「咲け、青薔薇!
青薔薇の剣の術式を唱えた途端、ユージオの足元から魔法陣が出現する。
そしてそこから氷の塊が現れる。
「これは……薔薇の、香り……?」
兵士達は辺りの気温が下がっていくのと同時に、微かに薔薇の香りがするのを感じ取っていた。
それがユージオのいる位置から漂っていることも気が付いていた。
氷の塊は地面を伝い、オーレリアへと向かっていき彼女の足を凍らせる。
普段の彼女であればこの程度の攻撃であれば躱すなり、地面にアーケディアを突き刺して氷ごと吹き飛ばすといった手法なりで対応が出来た。
しかし、今の彼女はユージオの神聖術によって吹き飛ばされ、体制を崩してしまっていたため、それも叶わなかった。
(しまっ──)
氷の塊はバラの
彼女は身じろぐが、氷で出来たバラの
そして徐々に彼女を氷の中へと閉じ込めていくのであった。
「しょ、将軍が……!」
「ま、負けた……だと……!?」
誰の目から見ても明らかな《黄金の羅刹》オーレリア・ルグィンの敗北。
そのことが信じられないといった様子で兵士達は呆然と見ていた。
そう、誰の目から見ても明らかだった──その場にいる
「いや、まだだ」
「ウ、ウォレス准将!」
兵士達は突如現れた褐色肌で長身の男性に対し、敬礼をして応える。
ウォレスは片手を上げると、先程の自身の言葉に疑問を持っていた兵士達へ「見ていれば分かるさ」とだけ伝える。
「はぁ……はぁ……」
出来る限りのことをしたユージオ。しかし息を整えると、油断せずに氷の彫像と化したオーレリアを見つめる。
ウォレスの言葉通り、まだ終わったとは思っていなかったのだ。そして彼の言葉は現実となった。
「こ、氷が……!」
「く、砕けていく……!」
完全に凍ってしまったはずのオーレリア。だが徐々に彼女を包んでいる氷塊にヒビが入っていく。
最後には彼女の「はあっ!」という気合の声とともに、氷は完全に砕け散ってしまうのであった。
「うおおおおお!」
「さすがオーレリア将軍だ!」
「……ふっ。あの少年もやるにはやったがな」
オーレリアの復活に、兵士から喜びの声が上がる。
「フッ、今のは流石に肝が冷えたぞ」
「…………」
オーレリアが余裕の笑みを浮かべているのを見て、言葉通りには受け止めることが出来ないユージオ。
「さて、そなたがここまで見せてくれたのだ。私も見せようではないか、《黄金の羅刹》の一撃を!」
オーレリアは左手で宝剣アーケディアの刀身を撫でると、
その直後、ユージオが気付いたときには目には見えない衝撃波によって吹き飛ばされていた。
「な────」
「行くぞ! 王技・剣乱舞踏!」
吹き飛ばされたユージオを追撃し、目にも止まらぬ速度で斬りつけたあと、上空に飛ぶ。
そして、宝剣アーケディアを地面に刺すと、ユージオの真下から闘気で出来た無数の武器が彼に襲いかかる。
ユージオが意識を保っていられたのはここまでであった。
◇
「……それにしてもやりすぎでは?」
倒れているユージオを尻目にウォレスがオーレリアへと
「フッ、つい優秀な才能を持つ雛鳥を目にしてしまったからな。だが手加減はしたぞ」
「……これでですか?」
ユージオはボロボロであったが、切り刻まれている痕は一切ない。
言うなれば木剣でボコボコにされただけと同義である。全身打撲なのは確実ではあるが。
それでも彼女にとっては十分手加減をしていた。
「まさか本当に私に一撃当てるとはな」
「ええ、それには俺も驚きましたよ。貴女は決して
「フッ、それは私にも分からんな。まぁ目が覚めたときに話を聞けばよいであろう」
その後、兵士達に医務室にてユージオの手当てをするように指示をしたオーレリアは、執務室へと戻っていくのであった。
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