世界救い終わったけど、記憶喪失の女の子ひろった   作:龍流

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シナヤ・ライバック

 右の拳を、潰された。

 打撃を通す瞬間に、頭突き(ヘッドバット)で、インパクトをずらされた。

 鋼鉄の塊をただぶん殴るのと、鋼鉄そのものが自らの意思でぶつかってくるのには、明確な差がある。骨が折れた鋭い痛みに、おれは歯を食い縛った。

 自分と同じ顔だからといって、好き勝手に殴り過ぎてしまったようだ。自分の打撃で自分の拳を潰してしまうなんて、こんな醜態、師匠に知られてしまったら「修行不足」だと、確実にどやされてしまうだろう。

 まあ、仕方ない。

 右が潰されたなら、左で殴るだけだ。

 

「いつまでもぼこすかと……殴れると思うなっ!」

 

 胴体の中心に、左の手のひらを当てられる。シナヤの視線は、おれではなく真横を見ている。

 打撃ではない。魔法の行使だ。

 まるで、見えない糸に背中を引っばられたかのような感覚。それを感じた次の瞬間に、おれの体は真横にぶっ飛ばされていた。

 

「うおっ!?」

 

 武器を投擲して相手に当てるのではなく。

 相手に直接触れることで、触れた相手そのものを射出する形で、吹き飛ばす。

 あの盗賊がやっていた『燕雁大飛(イロフリーゲン)』の使い方だ。

 

「巧いな」

 

 魔法が磨き抜かれている。

 距離を取られた。間合いを稼がれた。仕切り直しだ。

 やはり、接近戦には付き合わない腹積もりか。しかし、こちらとしては接近しなければはじまらない。

 上体を下げて、一気に突進しようとした、その瞬間。鼻先を、刃の閃きが掠めた。

 短刀の魔法による射出。わかりやすい。しかし、効果的な牽制だ。

 

「おまえ、何本刃物持ってんだよ?」

「いいだろ。お気に入りだ」

 

 しかも、投げた刃物はヤツの手元に引き寄せられ、戻っていく。

 腰から伸びているのは、先ほどの攻撃の際にも用いていた、あのワイヤー。ベルトに括り付けられているそれは、先端に短刀の柄が繋がれており、まるで鞭の如くしなった。

 間合いが、長い。空中を駆ける刃の切っ先を注視しながら、後退して距離感を測る。

 

「無駄だ」

 

 いや、訂正しよう。

 間合いが、異常に長い。おれの想像の二倍以上は伸びてくる。

 

「ちっ」

 

 よほどよく伸びる、長いワイヤーを仕込んでいるのか。

 横の切り払いは、体を屈めて避ける。戻ってくるそれを、今度は横っ飛びで躱す。避けて、躱しきれない斬撃はひろいあげた剣で止めるか、受け流す。

 相手は、投擲する剣やナイフのコントロールを『燕雁大飛(イロフリーゲン)』に頼っている。魔法に頼っているその都合上、ヤツの手元から離れた武器の狙いはある程度看破することができる。

 何故なら、

 

燕雁大飛(イロフリーゲン)は、視線でターゲットした目標にしか、ものを飛ばせない」

「よくご存知だ」

「昔使ってたからな。お前よりも上手く扱えていた自負もある」

「今は使えないんだろうがっ!」

 

 声音はキレている。が、ヤツの攻撃は変わらず冷静だった。

 ただ単純に刃物を飛ばされるよりも、よほど厄介だ。ワイヤーで繋がれているから、投擲攻撃に付き物である得物の弾切れという弱点がない。しかも、投擲した短刀には遠心力で振り回すという新たな択が加わっている。点の攻撃オンリーだった遠距離に、線の攻撃も加わったようなものだ。

 だが、その独特な仕掛けと運用さえ理解してしまえば、問題無く詰められる。

 

「慣れてくるだろ? 勇者サマなら」

 

 まるでこちらの思考を見透かしたかのように、ヤツの口元が強がりを含んだ笑みで釣り上がる。

 

「だから、もう二本、追加だ」

「まじかい」

 

 斬撃の軌道が、変化する。慣れてきたはずの、パターン化していた攻撃が、再び読みづらくなる。

 二刀ではなく、四刀。

 武器を多く持っているのは、投擲の際に無手になるリスクを嫌ってのことだろうか。

 子どものお手玉のように。ヤツの手の中で剣の柄が入れ代わり立ち代わり、踊る。

 

「タコ足か?」

「もう少しかっこいい例えをしてくれ」

 

 空中に浮かぶ刃の、密度が増す。

 距離を詰めなければ潰せないのに、接近の難易度がどんどん上がっていく。さっさと『哀矜懲双(へメロザルド)』に頼りたいところだが、転移の先を読まれて潰される可能性がある。またさっきの煙玉を使われても厄介だ。

 せめて障害物で身を隠すために、おれは谷間に群生している森林の中に踏み込んだ。

 

「森の中なら、ワイヤーが絡まって使えないとでも?」

 

 少しでも躊躇ってくれればよかったのだが、ヤツは即座に追ってきた。

 鼻を鳴らす気配と同時。伸びる斬撃が、木々を切り飛ばしていく。そうして、地面に落ちた手頃なサイズの枝に、ヤツが触れて魔法効果を付与していく。

 

「……いけ」

 

 ダーツの矢、という形容すら生温い。串刺しにされたらただでは済まないことがわかる枝葉が、こちらに向けて一斉に飛来する。

 触れれば簡単に折れるような枝を『百錬清鋼(スティクラーロ)』で硬化。それらを『燕雁大飛(イロフリーゲン)』で目標に向けて射出。お手本のような、魔法と魔法の組み合わせ。かつての我が魔法ながら、つくづく無駄がない。良い使い方だ。

 遠距離でちまちま撃ち合っていても埒が明かない。こちらの体力が持っていかれるだけだ。

 一度でいい。もう一度だけでも、ヤツに触れるチャンスをつくることができれば。

 勝機は、こちらにある。

 木の幹を地面と平行に踏み込んで、おれは攻勢に転じた。

 相手までの距離。その間にある、身を隠せる大木の数。

 ここしかない、と思った。

 そして、それはヤツも同様のようだった。

 こちらから、接近する。迎撃の剣閃が、幾重にも閃く。

 捌かなければならない攻撃は、四回。

 一本目の薙ぎ払いは、柄を蹴り上げてはじいた。ブーメランのような大振りな曲刀が、宙に浮く。

 二本目は、脱ぎ捨てた上着で絡め取った。はじめて、ヤツの瞳が驚愕で見開いたのが、わかった。もう、それがわかる距離だ。

 三本目は、受けも回避も難しい。

 

哀矜懲双(へメロザルド)っ!」

 

 だから、回避を魔法に頼る。

 おれとヤツの位置を、そっくりそのまま、入れ替える。互いの立ち位置の入れ替えは、哀矜懲双(へメロザルド)の転移の仕掛けがわかっている相手にも、初見なら必ず効く。

 急制動。即座に振り返って、地面を踏み込み、跳ぶ。

 ヤツの反応は、早かった。

 おれが踏み込んだ瞬間に、背後への投擲は完了されていた。

 それは、こちらの動線に置く攻撃。ここにきて、燕雁大飛(イロフリーゲン)による視線誘導に頼らない、純粋な技術のみで当てる投擲だった。

 四本目。もう止める手段が残されていないそれを、潰れた右腕でそのまま受け止める。脳を突き抜けるような痛みに、歯を噛み締める。

 だがこれで、ヤツは手持ちの短刀すべてを撃ち切った。

 

「っ……らぁ!」

「ぐっ……!」

 

 左腕に、魔法をのせて、一撃を叩き込む。

 だが、浅い。おれの渾身の打撃は、腹を軽く打つ程度の威力しか発揮できず、地面を転がったヤツは即座に体勢を立て直した。

 もう一発。

 致命打を打ち込むために、左腕に突き刺さっている短刀を、ワイヤーごと巻き取る。そこに繋がったヤツを、こちらに強引に引き込む。

 

「……コール。バルド・シリューカス──」

 

 どこに、隠し持っていたのか。

 袖から伸びるように、引き抜かれた細剣が、ヤツの両手で輝いた。

 最後の仕込みか。

 認めてやろう。さすがは、おれだ。用意周到という他ない。だが、この距離ならまだ届か

 

 

「──『封糸長蛇(アダルラング)』」」

 

 

 その思い込みを、二刀が斬り開いた。

 剣が、絶対に届かない間合いで、刃の閃きがあった。

 

「……なっ」

 

 重なった斬閃が、おれの腕を二重に切り裂く。

 細剣、ではない。明らかに刃渡りが一瞬で伸びた長く鋭い剣が、そこにあった。

 

「体捌きも、経験も、剣術も、戦闘の組み立ても。およそすべてで、オレはお前に負けている。だが、お前がなくして、オレがまだ持っているものがある」

 

 鮮血が、飛び散って舞う。

 

「お前とは違う魔法だ」

 

 おれが知っている、ヤツの魔法は三種類。

 体を鋼の硬さに変える、防御特化の『百錬清鋼』。

 触れた物体を、視線の先へと射出し、的中させる遠距離攻撃用の『燕雁大飛』。

 殺した相手の魔法を奪う『黒己伏霊』。

 そして、

 

封糸長蛇(アダルラング)。オレが触れたものを『伸縮』する。なんてことはない。殺傷能力もあってないような、大した使い道もない魔法だが……」

 

 不自然に刃が伸びた刀剣を、一振り。刃に付着していた血が、点々と地面に落ちた。

 

「こういう時は、効果覿面だ」

 

 おれの、知らない魔法だった。

 今さらながらに、あのやたらと伸びるワイヤーの正体を理解する。あれは最初から長い鎖を仕込んでいたわけではなく、魔法効果のオンオフで延長と短縮を繰り返していたのだ。

 

「オレはたしかに、勇者じゃない。だが、オレはお前とは違う道を歩み……お前とは違う冒険をしてきた。その過程で、新たに得た力もある」

 

 長刀が、突きつけられる。

 

「あの子は、オレが守る」

 

 その声音に、迷いはない。

 

「たとえ……世界を救った勇者を、殺すことになっても」

 

 そして。

 

 

 

 

 勇者を殺した。

 心臓に突き立てた剣を、シナヤ・ライバックは引き抜いた。

 臓物に、刃を突き入れる感触。そこから溢れ出る、血の赤色。

 

「はぁ、はあ、はっ……」

 

 本当に、殺してしまった。

 勝てた。シナヤは勇者に、勝つことができた。

 だから、もう大丈夫だ。

 これで、ルーシェは消えなくて済む。

 世界よりも守りたい女の子を、守ることができる。

 もう一人の自分に勝って、シナヤ・ライバックは今度こそ本物になれた。

 

 ──本当に?

 

 自分が殺した、勇者を見下ろす。

 ギリギリで掴んだ勝利に、高揚はなかった。

 本物に勝つことを、ずっと望んでいたはずなのに。

 なのに、今この瞬間。心の中に渦巻いているのは、薄暗い後悔だ。

 

「……オレは」

 

 シナヤ・ライバックは、本当はこわかった。

 自分の存在は、精巧な写し絵のようなもので。何かの拍子に、吹けば飛ぶような危うさの中に成り立っている。

 それは、シナヤが守りたかったルーシェも同じことで。

 だから、シナヤの冒険は新たなものを得るためではなく、常に守るための戦いだった。

 新しい力なんて、本当は必要なかった。ただ、彼女を守れるだけの力があればよかった。

 欲しいものは、もうなかった。ただ、彼女が自分の隣で笑っていて、自分も彼女の隣で笑うことができれば、それでよかった。

 偽物には、笑うことすら許されないのだろうか? 

 そんなはずはない。そんな残酷な現実が、許されていいはずがない。

 シナヤはあの日、選択をした。

 勇者をやめることを。世界を救うのを、諦めることを。

 だから、今日も選び取った。

 あの子を助けるために、自分を殺す。

 ただ、それだけの選択を。

 

 

 

「……そんな顔すんなよ。おまえが勝ったんだろ?」

 

 

 

 声が、聞こえた。

 もう一人の自分が、こちらを見上げていた。

 心臓を潰したはずの勇者が、血を吐き出しながら、笑っていた。

 シナヤは、思わず苦笑した。

 こんなくだらない幻覚を見てしまうほどに、自分の心は追い詰められていたのか。

 幻覚。まぼろし。思い込み。

 そんなくだらないものに、心を侵されるほどに。

 

「……コール。ベリオット・シセロ──」

 

 はっきりと、紡ぐ名が聞こえた。

 

 ──幻覚?

 

 いいや、違う。

 

 

 

 

「──『泡沫無幻(インスキュマ)』」

 

 

 

 

 幻覚、ではない。

 現実だ。

 シナヤが見ていた光景。そのすべてが、一瞬にして砕け散った。

 広がっていた血の赤色が、消え失せる。剣にべっとりと付着していた肉片が、剥がれ落ちる。

 シナヤの目の前で息絶えていた、勇者の姿が溶け消える。

 

「歯ぁ、食い縛れよ」

 

 そして、下から抉り抜くような、顎を砕く一撃が炸裂した。

 これまでで、最も重い拳だった。

 うめき声の一つすらあげられず、シナヤは大きく仰け反って、そのまま地面に倒れ伏した。

 

「どう、して……?」

 

 拳を強く握りしめたまま、勇者は告げた。

 

「自分自身と触れた相手を『幻惑』する。それが『泡沫無幻(インスキュマ)』」の魔法効果だ」

「触れ……?」

「触れただろ? さっき一発」

 

 そう言われて、ようやく思い至る。

 勇者にしては軽かった、ただシナヤの体を吹き飛ばす程度に終わった、あの打撃。

 殴って、触れる。

 言うだけなら簡単だ。

 けれど、それを、たったあの一瞬で。

 

「ははっ……」

 

 勝てるわけがない。

 もう指先すら動かない全身を自嘲しながら、シナヤは認めるしかなかった。

 

「オレの負けだ」

「ん。おれの勝ちだな」

 

 ズタボロの全身を引き摺りながら、勇者は地面に倒れたまま動けないシナヤを見下ろして。

 その隣に転がっていた、シナヤの剣を拾い……あげることなく、爪先で蹴っ飛ばして。

 

「あー、すげぇ疲れたぁ……」

 

 よっこいしょ、と。

 勇者は、シナヤの隣に腰を落ち着けた。

 

「……なぜ殺さない?」

「ん? まあ……殺す必要がないから?」

「……勇者サマは、随分とお優しいな。勇者ではないオレ如き、いつでも殺せる、と。そういうことか?」

「お前さぁ。おれをこれだけボコボコにしてるのに、自己評価が低すぎだろ」

 

 やられた分にきっちり言葉で嫌味を返しつつ、勇者は頬をかいた。

 シナヤは、重ねて問い返した。

 

「もう一度聞くぞ。どうして、殺さない?」

「おいおい。おれはいつから死にたがりになったんだ?」

「オレを殺せば、名前と魔法を取り戻せるかもしれないだろ」

 

 一瞬、勇者は口をつぐんだ。

 

「いや、それは多分ないよ」

 

 殺した相手の、名と魔法を奪う。

 勇者の魔法の性質は、たしかにまだ生きている。たしかに、自分を殺せば、その名前を取り戻せるかもしれない。けれど、それは結局のところどこまでいっても仮定に過ぎない。

 なによりも、今の勇者はシナヤのことを、自分と同じ名前の人間であるとは認識していない。

 だから、たとえその名を認識できなくても、殺すことに意味はない。そう思った。

 それに、もっと大事な理由もある。

 

「だって、お前が死んだらあの子が悲しむ」

「……」

「おれはさ、やっぱり結構嬉しかったんだよ。お前たちが生きていてくれて」

 

 相手が自分自身だから、というのが大きかったのかもしれない。恥ずかしい言葉が、意外とすんなりと勇者の口をついて出た。

 

「お前の言うとおり、おれは魔王を倒して世界を救った勇者だ。でも、その過程で取り落としてきたものや、救えなかったものも、たくさんある」

 

 あの日、花をくれたハーフエルフの女の子を救えなかったことを。

 世界を救った勇者は、ずっとずっと後悔していた。

 これからも生きている限り、未熟でバカな勇者があの子を助けられなかったことを、決して忘れない。忘れてはいけない。

 けれど、そんな後悔とはべつのところで、あの日救われた命があった。それが、今日という日まで、生きていてくれた。

 

「だから、生きていてくれて、嬉しかった」

 

 本当に、なんてことない。単純な理由だった。

 

「……オレは、逃げた」

 

 絞り出すように、シナヤは言った。

 

「あの日、死にかけたオレは、心が折れた。勇者になるよりも、死にたくないって、思ったんだ」

「わかるよ」

 

 お前は、おれだから。

 勇者の目が、そう言っていた。

 

「だからオレは、あの子を助けて……あの子を助けることを言い訳にして、逃げたんだ。オレは、お前みたいに強くなれなくて、だから……だからオレは……!」

「それでも、あの子の勇者はお前だろ」

 

 慰めるわけでもなく、同情するわけでもなく。

 もう一人の自分に向けて。

 ただ、一つの事実を、勇者は口にした。

 

「おれがあの日、救えなかったものを、お前は救ってくれた。今日まで、守り続けてくれた。だからお前は、立派な勇者だ」

 

 労うように、勇者は動けないシナヤの肩を叩いた。

 

「世界を救った勇者であるこのおれが、絶対に保証する」

「……まったく。何から何まで、完敗だな」

「当たり前だ。おれは魔王倒して世界救ってるんだぞ? そう簡単に負けてたまるか」

 

 ぐっと伸びをして、勇者は大の字に寝転んだ。

 

「あ〜! それにしても全身が痛い! やっぱ、自分同士でケンカなんてするもんじゃないな」

「……そうだな」

「あ、そうだ。ちょっと、聞きたいことあるんだけど」

「なんだ?」

「お前ってさ、どんな名前なの? もうおれとは違う名前を名乗ってるんだろ?」

 

 今さらになって聞きたいことがそんなことか、と。シナヤは堪らず吹き出した。

 傷が痛むというのに、勘弁してほしい。

 

「今のお前は聞くことはできないけど……多分、聞いたら笑うと思うぞ」

「なんで?」

「……あの子の元々の名前を、並べ替えて使ってるんだ」

 

 シャナ。

 シナヤ。

 本当に、アナグラムにすらなっていないような、ひどい名前だ。

 だが、そんな自分の名前を、案外シナヤは気に入っている。

 

「いつか、お前がみんなの名前を取り戻すことができたら、オレの名前もわかるだろうさ」

「そうかぁ……それはまた、がんばる理由が増えちまったな」

 

 二人の勇者は、空を見上げたまま、一緒に笑った。

 きれいに揃った二人の笑い声は、しかしまるで違うもので。その違いが、二人が異なる道を歩いてきた勇者であることを、たしかに証明していた。




今回の登場魔法
・『封糸長蛇(アダルラング)
 シナヤ・ライバックの魔法。元々は、バルド・シリューカスが所有していた魔法。触れたものを『伸縮』させる魔法効果を有する。仕込んだワイヤーを伸ばしたり、剣の刀身を延長して斬撃の間合いを広げたりと、細かいところで応用が効く。

・『泡沫無幻(インスキュマ)
イ ザ ナ ミ だ
戦闘ではまともに初使用。コソ練してきたので、接触時間が短くても『幻惑』の魔法効果を使用できるようになった。
触れれば確実に幻覚効果を使える、といえば聞こえはいいが、色魔法は触れればほぼ必殺なため、そこまで強くはない
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