「良い湯でしたわねぇ」
「血まみれになったけどね」
温泉からあがったおれは、湯上りの牛乳を死霊術師さんと楽しんでいた。ちなみに出血多量のアクアリウスはおれの横でぐったりと寝ている。かわいそうに。いろいろと刺激が強すぎたようだ。
「そういえば、魔女さん」
「なによ?」
おれの隣でゆったりと髪を乾かしている死霊術師さんとは違い、全身炎人間の魔女さんは髪を乾燥させるのも早いらしい。すでにかわききった長髪を雑に括って、湯上りのビールを瓶からコップに注いでいる。マジでどんだけ飲むんだよこの人。
「あのときは、加勢してくれてありがとう。なんというか、おれの個人的な戦闘に巻き込んじゃって……」
「べつにあの程度、どうということないわよ。あのクソロリ悪魔と顔だけイケメンにしてやられたのはおもしろくないけどね」
要するに、魔女さんは気にするなと言ってくれているようだった。
ごくごくとビールを飲み干す魔女さんは、その飲みっぷりだけでなく、言動も男前だった。
「ま、大会の本番ではアタシの本当に最強なところ、たっぷり見せてあげるから。勇者サマも精々楽しみにしておくことね」
「……ふむ。魔女さん。それはつまり、おれに応援してほしいってこと?」
「なっ……!」
「悪いけど、うちのパーティーメンバーと当たることになったら、ちょっと保証できないなぁ」
「ば、バカ! なんでそうなるのよ! アンタに応援されようがされまいが関係ないっての! どうせ勝つのはアタシなんだから!」
「はいはい」
「なんでこの流れでアンタがあしらってる側みたいになってんの!?」
あなたがお酒入ってる酔っ払いだからじゃないですかね?
そう言おうと思ったが、さすがに煽りすぎな気がするので自重しておいた。隣の死霊術師さんに肘でつんつんされたし、ここらへんで控えておこう。
「もしおれの仲間と戦うことになったら、お手柔らかに頼むよ。魔女さん」
「……やっぱり、アンタは出ないのね?」
「今のおれよりも、うちのパーティーメンバーの方が強いからね」
「……ふーん。アタシは、今のアンタも強いと思うけどね。アタシはアンタの全盛期を知ってるわけじゃないから、好き勝手な言い分になるけど。そういう意味では、そこで寝てるチャンピオンの悪魔と同意見よ」
「ありがとう。褒め言葉として受け取っておくよ」
あんまり飲み過ぎないようにしなよ、と。
そこだけは注意を促して、おれは死霊術師さんと一緒に部屋を出た。隣を歩く死霊術師さんは何か言いたいことがあるのか、ニマニマと笑っている。
「なに?」
「いえいえ。ただ、勇者さまが、またおもしろそうな女性をひっかけているなぁ、と思いまして」
「すべてにおいて人聞きが悪い言い回しはやめてほしい」
◇
勇者とリリアミラが立ち去っていったのを見送って。
ベルフィールは、またぐいっと手に持ったビールを煽った。
「飲み過ぎだ」
「あっ!? ちょっと姫様ぁ!? 返してください!」
酒カスな魔女のコップをひょいと取り上げて、レイアは呆れを多分に含んだ視線を向ける。
ベルフィールはアイアラス王国の第一宮廷魔導師だが、アイアラス王は女性の側近を好まないこともあって、どちらかといえばレイアの側付きとしての立ち位置の方が濃い。同性であることもあって、ベルフィールとレイアは比較的気安く言葉を交わせる仲だ。
グラスを軽く揺らしながら、レイアは言う。
「もっと踏み込んで聞かなくてよかったのか? ベル。貴様の父親は、勇者殿と戦って敗れている。いわば、父親の仇ではないか。あのトリンキュロ・リムリリィも、そう言っていたのだろう?」
「……今は、聞かなくてもいいかな、と。そう思っただけです」
「ヘタレめ」
「はあ!? なんでもかんでもストレートに口にする姫様と一緒にしないでいただけますか!? 真っ当な人間のコミュニケーションには、時と場合とタイミングってものがあるんです!」
「ふっ。まるで私がまともな人間ではないかのような言い草だな」
「……」
「なぜ黙る?」
「読んでください。行間を」
首を傾げたレイアは、そのままコップの中に半分ほど残っていた液体をごくごくと飲み干して、ふうと息を吐いた。
「まあ、勇者殿が貴様の父の仇であろうとなんであろうと、彼は私が婿に取る。我が友である貴様には悪いが、その事実は変わらん」
「姫様。ご友人としてご忠告申し上げますが、今のところ脈がゼロだと思いますよ」
「一緒に風呂に入った。この事実はもはや婚約と言ってもいいだろう?」
「よくありません。まったくもって過言です。というかその理屈でいうと、アタシも彼と婚約していることになるのですが……」
「……目指してみるか? 第二夫人。私は歓迎するぞ。ベルならいい」
「いいわけないでしょうが! アタシの意志どこに吹き飛ばしてんのよ!?」
レイア・ミラージュ・アイアラスは基本的にすっとぼけた非常識人なので、基本的にベルフィールがツッコミに回らなければならない。丁寧にさっきとは逆の方向に首を傾げているレイアからビールのコップを奪い返して、瓶の残りを注ぎきる。
手持ち無沙汰になった様子のレイアは、ふんすと腕を組んだ。
「いずれにせよ、酒はほどほどにしておくことだ。飲み過ぎて二日酔いで負けました……では、洒落にならんだろう?」
「あのバカ勇者だけでなく、姫様までアタシが負けると思ってるんですか?」
「いや? まったく思っていない」
レイアは即答で断言した。
「ベル。貴様の実力は、四賢と何ら遜色ない……と私は考えている。まあ、口遊むシャイロックには遅れを取って凍らされたらしいが」
「うぐっ」
「しかしそれも、周囲への被害を考慮して魔法の威力を抑えていたからこそ。たとえ勇者パーティーの武闘家や賢者が相手でも、貴様が遅れを取るとは、私は考えていない」
「ど、どうも……?」
素っ裸のままでバスタオルを背中に負って。
姫将軍は不敵に笑う。
「だが! しかし! それでも最後に勝つのはこの私! レイア・ミラージュ・アイアラスだ!」
「姫様。そろそろ服着てください。湯冷めは『反射』できないんだから、風邪ひきますよ」
◇
風呂のあとは、美味いメシ。
古今東西でそう決まっているように、女帝閣下が用意してくれた晩餐会は、それはもう豪勢なものだった。城内の大広間には所狭しと料理が並べられていて、各国の主賓や明日からの大会の参加者たちが食事に舌鼓を打ちながら、歓談に花を咲かせている。
おれも一応、勇者という肩書を持つ身の上である。こういった場に馴染みがないわけではないのだが、あまり得意でもないというのが正直なところ。なので、サクッとメシと酒だけいただいて、さっさと部屋に引っ込もうと思っていたのだが……
「大臣。お待たせしました。ご紹介させていただきます」
「おお! 世界を救った勇者様に、直にお目にかかれるとは!」
「ははっ……どうもどうも」
「あは〜。お待ちの方はこちらが最後尾になってますので、お並びください〜」
うん。無理でした。囲まれちゃいました。
おれの前には、ずらりと並ぶ長蛇の列。一言だけでも、挨拶だけでも、と。そんな風に声をかけてくる人たちに応対していたら、いつの間にかこんな有様になってしまった。
不幸中の幸いというべきか。いつの間にかすっ飛んできてくれた賢者ちゃんが、名前を呼べないおれと初対面の相手の間に入っていい感じに会話を取り持ってくれている。聖職者さんも同じく、順番を待つ人たちの列整理に尽力してくれていた。
「ほえー。そういえば、勇者さんって勇者でしたねぇ」
そして、おれの隣では赤髪ちゃんがもぐもぐと山盛りの料理をおいしく召し上がっている。約一名、何もしていない気がするが、完璧な布陣である。おいしそうにご飯を食べている赤髪ちゃんには癒し効果があるので、これでオーケーです。
とりあえず、仕事をさせる形になってしまった二人にお礼を言う。
「悪いね。賢者ちゃん。聖職者さん……助かるよ」
「一年間、引きこもり生活をしていた弊害がここに出ましたね。勇者さんは自分の立場に無頓着過ぎです」
「はい。ほんとすいません。ところで、騎士ちゃんと師匠と死霊術師さんは?」
「あは〜。お師匠さんは精神統一するってどっかいった〜」
「騎士さんも肉親に顔を合わせたくないから欠席すると言っていました。あの女は何やらあちこち飛び回って商談しているので、放っておきましょう」
賢者ちゃんからあの女呼ばわりされている死霊術師さんは、たしかに場内をゆったりと歩き回りながら、にこやかに談笑しているようだった。おそらく、おれの側にいたら会話のメインがおれになってしまうことを考えて、あえて離れた立ち回りをしているのだろう。あのひと、晩餐会慣れしてるっていうか、ほんとそういうころが抜け目ないですよ。
と、死霊術師さんの姿を目で追う暇もなく、挨拶待ちの次の人がやってくる。
「勇者さん。こちらの方は、怪力自慢で知られている大剣使いさんです。現役の冒険者の中で、最強の剣士に推されるほどの腕利きですよ。今大会の優勝候補の一人です」
「どうもどうも」
「あの勇者殿に直接お目にかかれるとは恐悦至極! ぜひとも手合わせ願いたい!」
「いやさすがに晩餐会のど真ん中で手合わせはちょっと……」
「そこをなんとかぁ! 腕相撲だけでも!」
「あは〜。お時間です〜。次の方どうぞ〜」
筋骨隆々のマッチョな大剣使いさんを、聖職者さんが微笑みの圧力で引き剝がす。こういうとき、美人の笑顔は強い。
「勇者さん。次の方は、パワーファイターとして知られている格闘家さんです。現役の冒険者の中で、一対一の格闘戦なら右に出る者はいないと言われているほどなんですよ。今大会の優勝候補の一人です」
「これはこれは」
「会えてうれしいぜ! 勇者様! 噂に聞いてるよりも随分細い優男だなぁ! メシはちゃんと食ってんのか!?」
「はい! 食べてます!」
「いいねえ! そっちの赤髪の嬢ちゃんの食いっぷりをあんたも見習った方がいい!」
「あは〜。次の方に移ります〜」
筋骨隆々なマッチョの格闘家さんは、赤髪ちゃんと話して赤髪ちゃんに手を振って去っていった。こういうとき、赤髪ちゃんの朗らかさは強い。これ、おれがいる意味あった?
「勇者さん。この方は、その剛腕で名声を勇名を轟かせている、拳法家さんです。現役の冒険者の中で、最もモンスターの討伐に尽力していると評判の人格者なんですよ。今大会の優勝候補の一人です」
「いやはや、はじめまして」
「……お会いできて、うれしい」
「どうも」
「…………」
「…………?」
「あは〜。お時間です。ありがとうございました〜」
筋骨隆々なマッチョの拳法家さんはほとんど無言のままおれをじっとりと見詰めると、何かに満足したかのようにしきりに頷いて去っていった。
「ていうか、さっきから筋肉質な人多くない? 流行ってる?」
「現役の冒険者で鍛えていない人間の方が少ないんだから、それはそうでしょう?」
「まあ、そうか……」
「よかったですね。次の方は女性ですよ」
「ひひひっ……お初にお目にかかります。勇者様ぁ……ワタクシ、あなたにお会いするために、はるばるシーザァルトまでやってまいりました」
「え。あ、はい。ありがとうございます」
筋肉三連発のあとに、なんか一番ヤバそうな女の人がきた。なんで?
賢者ちゃんに目配せをすると、ちょっといやそうな顔で解説が入る。
「えー、こちらの方は……人形使いとして知られている魔導師さんです。腕は確かと言われているのですが、あまり表舞台に立つことを好まず、黒い噂も絶えません。今大会の優勝候補の一人です」
紹介が直接的過ぎるだろ。
ほんとに見た目通りにヤバい人きちゃったよ。
賢者ちゃん以上にフードを目深に被った人形使いさんは、シルエットがわかりづらい身体をうねうねと蠢かせている。
「純白の賢者様にもそのように覚えていただいているなんて……ワタクシの身に余る光栄です! ところで勇者様、一つお願いを申し上げてもよろしいでしょうか?」
「え。なんでしょう?」
「その……髪の毛を、一本。いただきたくて」
「何に使うんですか?」
「…………ひひっ」
「何に使うんですか!?」
「あは〜。不審者さんはお断りです〜」
人形使いさんは、そのまま笑顔の聖職者さんに引き剝がされて去っていった。
やっぱり魔法使いって変なヤツしかいないんじゃないか?
「ひさしいな、勇者。何年振りになるか?」
などと考えていたら。
いい加減初対面の相手に愛想笑いを維持するのが厳しくなってきたそのタイミングで、ようやく昔の知り合いがやってきた。
「おお! 弓王のおっさん! 懐かしいな!」
「そのこそばゆい呼び名はやめてくれ……と言いたいが、今のお主の状態ではそれも仕方ないか」
魔法使いが多いということで、今まで挨拶はしても、握手を交わすのは避けていたのだが。
昔馴染みなら、そんな気構えの必要はない。懐かしいヒゲ面のおっさんと、おれはがっしりと握手を交わした。
赤髪ちゃんが、めずらしいものを見たように食事の手を止める。
「お知り合いですか。勇者さん」
「うん。昔、弓の扱いが知りたくて少しだけ弟子入りしたことがある。こう見えて『弓王』なんて大層な呼ばれ方をするくらいには、凄腕のベテランだよ」
「がっはっは! こう見えて、は余計だぞクソボウズ。ま、おまえがでっかくなったように儂も歳を食ったから仕方ないがな」
歳を喰った、なんて自虐を会話に織り交ぜているわりには、このおっさん、まだまだ元気そうだし、背筋も伸びている。出会ったころにぎりぎり四十代だったはずなので、もう五十は超えてるはずだが、それでも現役なのはさすがというべきだろう。
「めずらしい……勇者さんの昔の知り合いなのに、ちゃんと男の人です……!」
「どういう意味かな赤髪ちゃん」
「そのままの意味だろうボウズ! 美女ばかり仲間に引き入れとるからそうなるのだ!」
赤髪ちゃんに疑わしい目を向けられているおれがおもしろいのか。弓王のおっさんは笑いながらおれの背中をバンバンと叩いた。なんか、ノリがひさしぶりに会った親戚のおじさんみたいな感じで腹立つな……親戚いないからほんとにこういう感じなのかわからないけど。
「で、おっさんも最強の魔法使い目指してわざわざシーザァルトに来たわけ? もう良い歳なんだし、もともと弓って分野で十分最強なんだからこんな大会にこだわる必要はないでしょ」
「何を言うか! 最強ってのはいくつになっても男のロマンだろう!? 儂は生涯現役でおるつもりだしな! 様々な魔法使いと手合わせできるとなれば、願ってもない機会よ!」
「よく言うよほんと」
口だけはなにやらかっこいいことを言っているが、この弓王のおっさんは、ロマンを追い求めるタイプではなく、徹底的な現実主義者である。豪放磊落に見えて金勘定にはうるさいし、細かい拘りも多い。師匠っぽいタイプに見えて、賢者ちゃんや死霊術師さん寄りの思考で動いている感じなので、おれも出会った当初はそのギャップにやられたものだ。
まあ、射手は全体を見て指示を出したり、援護のタイミングを見極めたりと、常に視野の広さと状況判断能力が求められるポジションなので。長年弓を撃って生き残っているというのは、そういう性分であるという証明でもある気がする。
「ま、お主の見立て通り、今回は仕事の一環でやってきたという方が正しい」
「というと?」
「儂が今、雇われているパーティーの頭がこの大会に参加するのだ。お主にも、ぜひ顔を合わせておいてほしいと思ってな」
弓王のおっさんが、手を挙げたその瞬間。
それまで整然と並んでいた列が、まるで何かに道を開けるように。蜘蛛の子を散らしたように、左右に割れた。
その男になら、順番を譲っても構わない、と。そう感じさせるだけの雰囲気。
彼がいるのであれば、自分はまず身を引くべきだろう、と。そう考えさせる眼光。
冒険者にしては長い金髪と、いかにも貴族趣味なマントと鎧の派手な装いは、会場のどこに彼がいても目をひくだろう。
なんというか総じて……めちゃくちゃ雰囲気がある男だった。
「では、昔馴染みの儂から紹介させてもらおう。儂が現在所属するパーティーのリーダー……現代における『冒険者最強』が、コイツだ」
「はじめまして、勇者殿。我がパーティーの柱である『弓王』から、あなたを紹介いただき、こうして拝謁の名誉を賜ること。大変うれしく思います」
完璧な所作の、深い一礼。
仮にも『最強』と呼ばれているほどの冒険者が、こんな大衆の面前で。おれに対して、そこまで頭を下げて礼を尽くしてくれた。
好意的、と取るべきか。
それとも、下げた顔から表情が伺えないことを警戒するべきか。
いずれにせよ、弓王のおっさんが下についている、という客観的な事実もある。
「どうぞ、よろしく」
「こちらこそ」
油断のならない男だ、とおれは思った。
◇
勇者が魔王を倒したあと。
魔王という絶対的な世界の危機が去り、黒輝の勇者という英雄が第一線から退いた世界で、着実に活躍を重ね、名声を得てきた魔法使いたちがいる。
巨竜の尾すらも切り落とした怪力の大刃。暴剣。ジオ・バートラム。
百の格闘大会を制し、獣の王と呼ばれるに至った爪牙の凶拳。獣王。ガルシア・アロン。
徒手空拳と魔法を巧みに組み合わせ、魔獣を討つことを極めた希代の格闘家。鉄壊拳。ディートハルト・バルサザール。
数多の違法魔術結社を潰し、時には取り込んで勢力を拡大し続ける、魔導の異端。無限人形。アミュダ・ナサニエル。
魔術全盛の遠距離戦闘に疑問を呈し、弓という武器の歴史を紡ぎ続ける、史上最高の射手。弓王。カルロ・モーガン。
シャナの言葉に、偽りはない。
全員が優勝候補。あるいは全員が、最強の可能性に手を掛ける魔法使い。
しかし、そんな彼らよりも、明確に一つ上。
あるいは黒輝の勇者の全盛に並び得るのではないか、と。そんな名声を轟かせる冒険者が、たった一人だけ存在する。
曰く、彼が振るう剣は、空を駆けるワイバーンすら焼き焦がす。
曰く、彼が構える盾は、巨竜のブレスすら弾き、味方を守る。
曰く、彼の声音は、共に戦うすべての人間に、勇気を授ける。
勇猛の貴公子。未踏を超える者。新時代。
人々は彼を、畏怖と尊敬を込めて、現役最強の冒険者と呼ぶ。
ミック・メル・エギュチーク。
勇者を前にしても、彼の涼やかな微笑には欠片ほどの動揺も見られない。
しかし。
貴族出身でありながら、一介の平民と変わらない立場まで身を落とし、己の身一つから最強と呼ばれる地位まで登り詰めた彼は、おそらくすべての大会参加者の中で──
(うおおお! やったあああ! 本物の勇者だああああ!)
──最も勇者を敬愛する冒険者である。
多分名前をあんまり覚えなくても問題ない新キャラのみなさん
ジオ・バートラム
マッチョの大剣使いさん。通り名は『暴剣』のバートラム。活発なガキンチョがぶんぶん木の枝を振り回していたらそのまま大きくなって大成したタイプ。魔法を剣戟に取り入れるスタイル。脳筋。
ガルシア・アロン
マッチョの格闘家さん。異名は『獣王』。格闘大会にたくさん出て賞金とかで食ってるタイプのマッチョ。かわいい女の子が好き。魔法による身体変化に格闘を組み合わせるスタイルを好む。脳筋。
ディートハルト・バルサザール
マッチョの拳法家さん。通り名は『鉄壊拳』。魔獣を討伐しまくって知名度を上げていったタイプで、上のガルシアさんとは対照的に、対人戦闘はそこまで好まない。素手で躊躇なくモンスターで殴りかかるスタイルな上に、無口で何を考えてるのかわからないので周囲からこわがられている。勇者くんにもアツい視線を向けていた。ホモォ……? 脳筋。
アミュダ・ナサニエル
笑い声が特徴的なタイプのド陰キャ黒髪お姉さん。通り名は『無限人形』。色々やってたら色々な組織に目をつけられて絡まれ、いつの間にか裏社会で一定の地位を得ていた変な人。勇者のことは普通に尊敬してるし好きらしい。砂岩系の魔術が得意で、搦手と物量戦を好む。
カルロ・モーガン
ベテラン冒険者おじいちゃん。勇者の昔の知り合いにしてはめずらしく、ちゃんと男。弓王と呼ばれ、畏怖される弓術の生き字引。普通にめっちゃ強い。
騎士ちゃんと二人旅をしていた最初期に「おれも遠距離攻撃できた方がいいし弓でも習ってみるかぁ〜?」と考えた勇者が弟子入り、勧誘していたこともある凄腕。まだ駆け出しだった勇者に、戦闘技術以外にも冒険者の心得的なことをたくさん教えてくれたが「魔王を倒して世界を救う」という勇者の夢物語には付き合ってくれなかったリアリストおじさん。とはいえ、特に仲が悪いというわけではなく、ムムやグレアムと並び、勇者が無条件に尊敬している歳上の一人。
シャナの師匠であるハーミアが魔術理論とその教育機関を完成させ、多くの魔導師を世に送り出した結果、魔術砲撃を遠距離戦の主体とする考えが一般化。魔獣の討伐においてもまず魔導師が遠距離支援を行い、近接職が距離を詰めてトドメを刺す……という流れが基本になった結果、衰退しかけていた『弓矢』という武器の運用に革命を起こした、まあまあすごい人。使う魔法はとても地味。
ミック・メル・エギュチーク
冒険者最強と呼ばれる勇者のオタク。