せっかく貞操観念逆転世界へ来たのに貞操観念逆転していない幼なじみに女の子との出会いを潰されている 作:耳野笑
中華店の店長・ユンユンとお近づきになるべくアルバイトを始めたあなた!
ユンユンに思わせぶりな態度やボディタッチをしている内、ユンユンが強く発情してしまう! あなたはここぞとばかりにユンユンを誘い、連れ込み宿に入る!
しかし、店からあなたを尾けていたナミネが突撃してくる! ユンユンに逃げられたあなたは、ナミネにボコされたのだった!
果たしてあなたは、おっぱいが大きくて可愛い女の子とイチャラブするというビッグドリームを叶えることが出来るのか⁉
Sランク冒険者5人が緊急クエストに召集されることになった。期間はおよそ二週間程である。
ナミネは纏めた荷物を持ち、ギルドが用意した馬車の前に立つ。
「ぐぬぬぬぬぬぅ……!」
ナミネが見送りに来たあなたを鋭く睨みつけている。一方のあなたは、晴れ晴れとした笑顔を浮かべていた。
「私がいない間に、女に手を出したら許さないから……!」
「しないって。もう痛い目に遭って学んだから」
「少しでも仲良くなったら潰す。Hなことしたら潰す。いい?」
「分かったよ」
あなたは苦笑いしながら頷く。
「じゃあ、気を付けてね? 無事で帰ってきてね?」
「それは平気。Sランクが5人もいるんだから」
ナミネが馬車に乗り込む。後ろ髪を引かれるように、その足取りは重い。扉が締められる直前、ナミネはあなたを睨みながら釘を差す。
「女に手を出したら、とびっきりの
「分かったってば。いってらっしゃい」
「……いってきます」
ナミネが不服そうな顔をしながらも、扉を閉めた。馬が前脚を高く上げ、パカラッパカラッと蹄の音を立てながら走り出す。
あなたは遠くなっていく馬車を見送り、やがて見えなくなったところで振り向き――。
「よし! ナンパしよう!!!!!!」
*
ギルドに入り、可愛い女の子に話し掛ける。しかし――。
「ひっ……⁉ 『
「す、すいません……お気持ちは嬉しいのですが他の人を当たってください……」
「ごめんなさい……! ナミネさんに殺されたくないんです……!」
ものの見事にフラれた。もう何度もナミネと一緒にいるところを見られたせいか、彼女と懇ろな仲であると思われているようだった。
前世で例えるなら、クラス1のヤンキーの彼女に話し掛けられて怯えるような感じだった。下手に関われば『なに俺のカノジョに手出してんだ?』案件になるため、無理もなかった。
結果、前世と同じレベルで、女の子に相手にされなかった。
「おのれナミネぇ……!」
あなたは一人でクエストに行き、一人で帰ってきた。
寂しかった。虚しかった。交わした会話は、受付嬢とのクエスト達成確認だけ。
一人ぼっちの帰路を歩く。星が綺麗だった。
「ナミネ……」
あなたはナミネの名を呟き、ハッとしてぶんぶんと首を振った。
(なにを寂しがってるんだ……! しかも初日でこれとか流石にない! 寂しくない! ぜんぜん寂しくない!!!)
あなたは少し早足で宿へと帰った。
*
翌日。
休日だが、あなたはギルドにやってきた。目的は、次のバイト先探しである。クエストボードの横に、アルバイト募集の掲示板がある。
あなたはちょうど良く休日だけ募集しているバイトを見付けた。
「探偵業助手……?」
勤務内容はほとんど雑務だった。そして、驚くほど時給が高かった。平均賃金の二倍はあろうかという好条件だった。
「行ってみようかな」
そして、あなたは指定された時間に、探偵事務所へとやってきた。
戸を叩く。「はーい」と声がして、内側から扉が開けられる。
「ようこ、そ――」
扉を開けた女性が目を見開き、固まった。
一方で、あなたも女性――主に胸部――を見て驚いていた。
「あ、すまない。アルバイト募集の貼り紙を見て来てくれた子かな?」
「はい、そうです」
「いや驚いたよ。腕っ節の強い女性が来るものと思っていたら、君のような若い好青年が来るとはね」
「あ、ありがとうございます……?」
女性に促され、探偵事務所に入る。
テーブル、ソファが二つ。その奥に、彼女専用と思しき文机が一つ。壁際には書類棚があって、色々な資料が入っていた。
ソファに座り、女性と向かい合う。
「改めて自己紹介をしようか。私はシャルル。探偵さ」
シャルルは美人だった。爽やかな若葉色の髪色。エメラルドのような、美しい翡翠色の瞳。
ヒューマンの女性にしてはやや高い上背。服装は探偵らしく、シャツの上にチェックのインバネスコートを着ており、膝丈程のベージュのスカートを穿いている。
落ち着いた態度と怜悧な眼差しは、知的で大人な女性の雰囲気を感じさせた。
そして、何より。他のすべてを差し置いて、圧倒的に目を引かれる部分が一点。
――シャツを押して激しく主張する豊満な胸。シャツの上からでも鷲掴めば指が沈みそうな、素晴らしく存在感のある双丘だった。
「○○です。好きです」
「えっ?」
「間違えました。○○です。冒険者です。アルバイト募集の貼り紙を見て来ました」
「ふむ。では――」
いくつか簡単な質問をされる。正直、あまり受かる気はしなかった。探偵といういかにも頭を使いそうな職業の助手、というのが難しそうだからである。
しかし、あなたの心は燃えていた。破格の高収入。という部分は最早どうでもいい。
何を置いても、この豊かなお姉さんとお近づきになりたい。
「最後に、何か質問や言いたいことがあればどうぞ」
「採用していただけたら、精一杯頑張ります。シャルルさんがしてほしいこと、なんでもします。ぜひとも貴女のために働かせてください」
なんでもします。という女心をくすぐるワードに加え、あなたはぐっと体を前傾させ、上目遣いで彼女に哀願する。
オトせると思った。しかし――。
「……ふむ、やる気は十分なようだね。では仮採用として、明日から働いてほしい。もちろん本採用にならなくても、仮採用期間中の給金は支払うよ」
シャルルは眉一つ動かさず、あっさりとした返答をした。
あなたは我に返った。急に恥ずかしくなって赤面する。
(恥ずかしい……! なに『なんでもします』って……黒歴史じゃん……!)
あなたはシャルルを見た。何もかも見透かしたような、涼し気な視線があなたに突き刺さる。
(というか、こんな綺麗で年上の人が男性経験少ない訳ないじゃん……相手にされなくて当たり前だよね……恥ずかしい……! 帰りたい……!)
「では早速だが、今日の仕事は浮気調査だ」
そして、あなたとシャルルは街へ出た。
調査対象の女性を尾行する。調査対象である女性は、浮気相手の男と腕を組みながら歓楽街を歩いている。明らかにクロだった。
二人組はあるカフェに入っていく。
その店舗を見たシャルルの表情が凍る。
「あの喫茶店はまずい……特に今日は……」
「どういう意味ですか?」
「あの喫茶店は少し変わった趣向でね。曜日によってお客さんへのサービスを変えているんだ。ある日はレディースデーで女性限定の料理があったり、ある日はファミリーデーで家族連れだと料金が安かったりする」
「今日は何の日なんですか?」
「……カップルデーさ」
「えっ」
シャルルは困ったような渋面を浮かべる。
「今店内にいるのはほとんどがカップルだろう。私が一人で入っていくと不自然だ。尾行がバレるかもしれない……」
「え? なら丁度いいじゃないですか。二人で入りましょうよ」
シャルルが気まずそうに目を逸らす。
「バイト初日に男性をカップルデーの店舗に連れ込むなど、あまりにもパワハラ且つセクハラだろう。流石に憚られるよ」
「いえ、仕事じゃないですか。気にしませんよ。行きましょう」
あなたは特にためらうこともなく喫茶店に入っていく。シャルルも一歩遅れて入店する。
「いらっしゃいませ! ただ今カップルデーで、カップルのお客様にのみ割引とジュースのサービスを行っております! お二人はカップルですか?」
「そういうわけでは――」
「はい。そうです」
あなたは頷いた。シャルルは目を丸くしてあなたを見る。
「では、カップル割引とサービスを提供させていただきますね! こちらの席にどうぞ!」
あなたは店員についていく。シャルルは入口で呆けたように立ち止まっていた。
あなたは振り向き、にこっと笑い掛ける。
「どうしたの? 行こうよ、シャルル」
「……あ、ああ。そうだね」
あなたとシャルルは席に着く。適当にコーヒーとパスタを注文し、料理を待つ。店員がいなくなるなり、シャルルは重く息を吐いた。
「驚いたよ。アドリブが下手ですまなかった」
「いえいえ。シャルルさん、冷静沈着な感じなので、びっくりしてる顔が見れて嬉しかったです」
「もしや、私は今、からかわれているのかい?」
「はい。もしかして、気に障りましたか?」
「そうではないが……あまりお姉さんをからかわないでくれたまえよ」
店員が料理を運んでくる。そして、サービスのジュースも置いていく。
「こちらはカップルサービスのジュースになります」
「「えっ」」
アイスが乗ったメロンソーダ(ハートマークのストロー付き)だった。
「いやはや……凄いね」
「飲みます?」
「セクハラで訴えられないかい?」
「大丈夫ですよ」
そう言いながらも、あなたの心臓はバクバク鳴っていた。このタイプのストローで一緒にジュースを飲む、という経験は初めてだった。
何度か前世でそういうカップルを見かけては、憧れと嫉妬を抱くことしかできなかった、超ド級の陽キャバカップルにしか許されない破格の幸福である。
あなたとシャルルはメロンソーダを飲む。同じグラスから飲んでいるので、当然顔が近付く。
エメラルドのような、美しい翡翠色の瞳がすぐそこにある。その輝きに吸い込まれて目が離せない。
「綺麗ですね」
「ああ、淡水の湖面のような緑色だね。アイスの甘さも丁度いい」
「あ、いえ、シャルルさんのことです」
シャルルがぱちくりと瞬きをする。
「……ありがとう。嬉しいよ」
シャルルは優雅に微笑んだ。余裕のある大人の女性、といった雰囲気だった。
その後、料理を食べつつ、調査対象たちの会話に耳を傾ける。内容は明らかに仲睦まじい男女のそれだった。堂々とあ~んまでしてた。
男女がカフェを出るのに続いて、あなたとシャルルも店を出る。隣を歩きながら、小声で会話する。
「夫子がいる身であれとはね」
「最低ですね……! 男の敵です……!」
あなたはあたかも男性代表みたいな顔をして、不倫女性を糾弾した。しかし、実際はあ~んしているのが妬ましかっただけである。
一応あなたも女性と二人で食事をしていた訳だが――。
(シャルルさん、そういうの好きじゃなさそうだしなあ……)
*
あなたとシャルルは事務所に戻ってきた。すっかり日も暮れて、外は真っ暗である。
「今日はありがとう。早速君のおかげで助かったよ」
「お役に立てて良かったです」
「それと、本当にすまなかった。カップルデーに喫茶店に連れ込んだのはセクハラと言われても仕方ない。意図したことではなかったのだが……」
シャルルは曇った表情で、申し訳なさそうにあなたを見る。
「いえ、仕事ですし。それに……僕は楽しかったですよ」
「……そうか。そうかい、君のような理解ある男性が助手に来てくれて助かったよ」
そんなやり取りをして、もうそろそろいい時間である。あなたは立ち上がる。
「お疲れさまでした。また明日」
「ああ、お疲れ様」
あなたは事務所を後にする。帰路を歩きながら、シャルルのことを考える。
(綺麗だし、おっぱいも大きいけど……流石に高嶺の花かなあ……)
恋愛経験も豊富そうで、とても『男性』というステータスだけでオトせる女性ではない。年齢差も考えれば相手にもされなさそうだった。
「あ、上着忘れてきた……」
あなたは上着を事務所に忘れてきたことに気付いた。引き返し、再び事務所に入ろうとしたところで――。
「なにあれなにあれなんなのあれぇえええええええええ!」
女性の絶叫じみた声が聞こえてきた。
あなたは恐る恐る、こっそりと事務所の戸を開ける。そこには、ソファへうつぶせになって足をバタバタとさせて暴れているシャルルの姿があった。
「なにあの美少年⁉ 心臓止まるかと思った!!!!!!」
あなたは唖然とした。ぽかんと口を開いて立ち尽くす。
「『なんでもします』って何!? 『行こうよ、シャルル』って何!? 『僕は楽しかったですよ』って何!? 流石にそういうことだよね⁉ ワンチャン感じていいよね⁉」
シャルルは叫び散らしたと思ったら、今度は急に静かになった。
「でも、あの感じ、絶対イケイケな男の子だよね……恋愛経験豊富なんだろうなあ……。バレてないかな……流石にX*1にもなって年齢=彼氏いない歴の処女ってキツいもんね……。嫌われたくない……嫌われたくないよ……」
あなたは雷に打たれたような衝撃を受けた。同時に、心臓が跳ね出す。
シャルルはのそりと起きだし――。
「はぁ……仕事、もど――」
あなたの姿を見て固まった。
「あ、えっ、え……」
「上着を忘れたので、取りに戻ってきました」
あなたは何気ない様子で、上着を回収する。
「あ、あのっ、い、いつから……今の、き、聞いた?」
シャルルの若葉色の髪が乱れ、翡翠色の瞳が涙目になってぐらぐらと揺れている。日焼けしていない白い肌が、羞恥で赤く染まる。頬も耳もリンゴのように真っ赤だった。
「今来たところなので……何か話してたんですか?」
「あ、いや、なんでもないんだ……。気を付けて帰りたまえ」
シャルルがホッとしたような表情を浮かべる。安堵したのか、優雅にカップを持ち、コーヒーを飲みだす。
「はい、それでは」
あなたは背を向け、ドアノブに手を掛けたところで急に振り向き――。
「なんちゃって。本当は『なにあれなにあれなんなのあれぇえええええええええ!』のところから全部聞いてました」
シャルルがカップを落とす。コーヒーがバシャアっとこぼれた。
「は、はは……ははは……」
シャルルが乾いた笑いを漏らした。綺麗な翡翠色の瞳は真っ黒に曇っている。今にも泣き出しそうなくらい悲愴な表情だった。
シャルルは絶望の面持ちのまま、すっと立ち上がる。
「ちょっと死んで来るよ。止めないでくれたまえ」
「待って待って待ってください!」
「嫌だ! 止めないでくれ! もう殺してくれたまえ!!!!!」
*
あなたはシャルルをなだめると、どうにか彼女は落ち着いた。シャルルはソファに座り、がっくりと項垂れ、この世の終わりのような表情を浮かべている。
「君は本当にお姉さんをからかうのが得意なようだね……。一度希望を与えてから地獄に叩き落とすとは、随分といい趣味をしているじゃないか……」
「ごめんなさい。好奇心に勝てませんでした」
「はは……好奇心は猫をも殺すというじゃないか……。いや、死んだのは私だが……」
シャルルは力ない声でつぶやく。あなたは向かいのソファに座って、彼女を正面から見つめる。
「余裕ある女の人だなあって思ってたんですけど、頑張ってそう振る舞ってたんですか?」
「聞くかい!? この瀕死の処女をまだ辱めるかい!?」
「気になっちゃって」
「ああそうだよ! ずっとドキドキしてたのに、経験ないってバレるのが嫌で平気なフリしてたのさ!」
シャルルは半ば自棄になったように叫び、真っ白に燃え尽きたように再び項垂れた。
「脈アリだと思ったんですか?」
「まだ聞くの⁉ 慈悲とかないの⁉」
「年齢=彼氏いない歴なんですか?」
「悪魔か何かなの⁉ もう許してよ!!!」
みるみるうちに、シャルルの瞳に涙が溜まっていく。情けなくて、恥ずかしくて、泣きそうになっているようだった。
しかし、あなたはこれまでになく真剣な顔になる。
「気持ち、よく分かります。僕も年齢=彼女いない歴の童貞ですから」
「え……?」
シャルルが目を見開く。
「そんな訳ないだろう。処女をからかって遊ぶのも大概にしたまえよ」
「これは本当です。天地神明に誓って、一切女の子との交際がない干からびた童貞です」
あなたはハッキリとそう言った。シャルルがあなたの表情に注目する。視線、声色、抑揚。シャルルが探偵として培った観察眼が、あなたは嘘をついていないと示していた。
「童貞……なの?」
「はい、童貞です」
童貞。
それは、あなたの価値観においては、恥ずべきものである。
生涯女性に相手にされなかったことの証左。男性としての魅力を欠いていることを示す、永遠の汚名にして十字架。
「だから、強がる気持ちとかすっごい分かります。この歳で恋人いたことないのキツすぎるし、誰にも言えないですし。異性からも白い目で見られて距離置かれるし、同性からもバカにされて見下されるし……しんどいですよね……」
あなたの涸れ切った表情を見て、シャルルは何とも言えない表情になる。
「そう、だね……。私もそうだよ。だけど……君は男性で、しかも黒髪の美少年だ。正直、それに劣等感を覚えるのはよく分からないね。童貞であることを恥じる態度も不自然というか……」
童貞。
それは、シャルルの価値観においては、尊ばれるべきものである。
未だ女性に穢されていないことの証左。男性としての清らかさを残したままであることを示す、永遠の純潔にして神秘性。
故に、それを恥じるあなたは、シャルルから見て奇妙に映った。
あなたは立ち上がり、シャルルの隣に座る。うつむく彼女の目を覗き込む。そして、小さく縮こまったシャルルを抱きしめた。
シャルルは目を見開く。
「なっ……○○君……⁉」
「僕は、貴女とお近づきになりたかったんです。本当です。一目見た時から綺麗な人だなって思いました。何が何でも助手として働きたいって思いました。貴方の本音を知った今でも……いえ、知った今だからこそ、シャルルさんとなら仲良くなれると思っています」
シャルルの表情が明るくなる。暗く黒く曇り続けていた瞳に希望が灯る。
「ホントに……? こんな私でも、まだ恋愛対象になるの? ワンチャンあるの……?」
「もちろんです。シャルルさんの方こそ、こんな男を相手にしてくれるんですか?」
「と、当然だろう! 君さえよければだが……」
あなたはシャルルをさらに強く抱きしめる。厚手のコート越しながら、胸板に感じる確かな温かさと重量があった。とんでもない質量だった。
「う……うぅ……」
シャルルは恐る恐るあなたの背に腕を回して、控え目に抱き締め返してきた。
「ありがとう……○○君……」
「こちらこそ、ありがとうございます。シャルルさん」
あなたは豊満なおっぱいの感触を胸に感じながら、心からの感謝をシャルルに伝えた。
抱き締め合ったまま、十数分が過ぎた。シャルルは全くあなたを放そうとしない。あなたは名残惜しさを感じながらも、抱擁をほどく。
「あっ……」
シャルルが声を漏らし、寂しげな顔をする。
「そ、そんな悲しそうな顔しないでください。僕も名残惜しいんですから」
「あ、ああ……すまない」
シャルルは謝りながらも、とても寂しそうな目をしていた。
「シャルルさん、もしよければ明日からもハグしていいですか?」
「えっ……⁉ い、いい、けど……」
「ありがとうございます! 嬉しいです!」
悲しみに包まれていたシャルルの表情が明るくなる。目に見えて瞳が輝いていた。
そして、あなたもウキウキで事務所を後にした。
「ん……?」
帰路の途中、あなたは背後から視線を感じた。しかも気配はあなたを追ってきている。
あなたは店の角を曲がり、そこで立ち止まって振り向いた。しかし、謎の追跡者が付いてくる様子はない。
「あれ……?」
やっぱり気のせいだったかも、と思った。しかし――。
「――ッ」
今度は路地の向こうから視線を感じた。
いる。
闇の向こうから、あなたをじっと見つめている。
あなたは全力で走った。通りの人に紛れて姿を隠し、路地を何度も折れた。
あなたは振り向く。今度は視線を感じない。撒いたようだった。
「ほっ……」
あなたは安堵して宿へ向かった。
*
翌日。あなたは事務所に出勤する。
「おはようございます。シャルルさん」
「おはよう、○○君」
「昨日のは、夢ではなかったんだね……」
「はい、もちろんです」
「こんな処女でも邪険にせず相手にしてくれる黒髪美男子がこの世に実在するとは思えず、自身の幻覚を疑っていたのだがね……」
「僕はちゃんと、ここにいますよ」
あなたはシャルルに抱き着いた。シャルルは耳まで真っ赤にしながらも、しっかりとあなたを抱き締め返す。
胸に当たる二つのお山がむにゅう♡ と潰れるのを感じる。ブラとシャツに隔たれて柔らかさはイマイチだが、重量と質量が圧倒的な存在感としてそこにあった。
(ああ……! 心から、このおっぱいに挟まれて果てたい……! このおっぱいに顔を埋めて窒息死したい……!)
シャルルは好きなだけ抱きしめさせてくれる。それも当然で、シャルルは男の子と手も繋いだことのない処女である。男性とのハグを自分から手放す理由など何処にもなかった。
あなたから抱擁をやめない限り、いつまででも抱きしめていられるような状態。思う存分幸せな時間を味わい、一旦腕を放す。
シャルルはどこか蕩けたような瞳であなたを見ている。意識が半ば天国へ行ってしまったような、恍惚とした表情だった。
まさしく、骨抜きにされている状態。あなたの背筋に奇妙な痺れが走った。
前世で例えるなら、一時間会って話すだけで大金を出さなければならないような、綺麗でおっぱいの大きい女性。そんな美女が、今あなたの抱擁に心を奪われている。
癖にさせたい。このハグをシャルルにとっての日常になるまで繰り返して、ハグなしでは生きていけなくさせたい。
そんな邪な感情がふつふつと込み上げてきた。
「そろそろ時間ですよね? 準備しましょうか」
「あ、ああ……そうだね……」
*
そして、今日の仕事も昨日と同じく浮気調査である。
あなたとシャルルは喫茶店の窓際の席で、隣り合って座っている。ちょうど向かいに調査対象の家があるので、絶好の監視スポットだった。
あなたはちらりとシャルルを見た。
白いシャツにインバネスコートを羽織った年上の女性。アンティーク風の喫茶店によく似合っていた。葉巻かブルドッグパイプでもあれば、もっと雰囲気も出ただろう。
あなたはさり気なくシャルルに椅子を寄せ、テーブルの下で彼女の手を握った。
「!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
シャルルは目を剥いてあなたを見る。翡翠色の瞳が飛び出そうなほど見開かれている。
「な、な、な……⁉ なんのつもりだい……⁉」
「シャルルさんが可愛くて」
シャルルの顔が紅潮する。日焼けしていない真っ白な肌なので、体温が上がると赤くなっているのがよく分かる。
「お、お姉さんをからかうのも程々にしたまえよ……! 曲がりなりにも仕事中なのだから……!」
「尾行中って、これくらいくっついた方が良いと思うんですよ。カップルが浮気調査してるとは思われないでしょうし」
「そ、そうかな……? で、でも……」
シャルルの目が面白いように泳ぐ。うっすら潤んだ瞳があっちを見たりこっちを見たりして、目が合わない。
シャルルは何かを言い掛けて、また止めてを繰り返して、ようやく控えめにあなたを見る。
あなたは察した。これは『あと一押し』を待っている顔だと。異性からの嬉しい提案に、恥ずかしさからつい反発してしまったが、本心ではもっと強く迫ってほしいというあの心理である。
故に、あなたはシャルルの期待に応えることにした。
「仕事のため、ですよ。ダメですか?」
はにかむあなた。シャルルは赤面しながらも、おほんと咳払いした。
「そ、そうだね。仕事のためだ。尾行の時に効果的か試してみよう」
あたかも『仕方なく要求を飲んだ女上司』の立場で頷くシャルル。
「昨日カップルデーの喫茶店に入るだけで、セクハラにならないか気にしてた人とは思えませんね……」
「覚えがないね」
シャルルは涼し気な面持ちを装い、コーヒーを飲む。あなたはシャルルのそんな態度に、少しからかいたくなる。
「僕は覚えてますよ。『なにあの美少年⁉ 心臓止まるかと思った!!!!!!』って足バタバタさせて叫んでた可愛い姿までバッチリ」
「うぐっ……!」
テーブルの下で、あなたの指をシャルルの指に絡める。
シャルルは燃えるような羞恥と、黒髪美少年と手を繋いでいるという気恥ずかしさで、熟れたリンゴのように顔を赤くする。
「寂しいな~。『ワンチャン感じていいよね⁉』とか言ってたのに、なんでそんなにそっけない態度なんですか?」
「わ、悪かったよ! 変に強がってごめんってば! 本当は凄い嬉しくてドキドキしてるって認めるからもういじめないで!」
結局、この日は調査対象に動きもなく、シャルルをからかって遊んでいるだけで終わった。
事務所に戻ってきたあなたとシャルルは、軽く来週末の予定を話して解散の流れになる。
「じゃあ、お別れのハグしましょうか」
「あ、ああ、そうだね」
シャルルは何気ない風を装っているが、ニヤニヤを抑えきれずに口角が上がっていた。昨日まではこんな素振りすらなかったので、本当に頑張って強がっていたことが分かる。
あなたはシャルルに近付き、彼女の背に腕を回す。ぎゅっと密着すると、脳に幸福感が分泌されて温かくなる。シャツのボタンに負担を掛けるほど豊満な胸が、あなたの胸板に触れて僅かにたゆんと潰れる。
シャルルは何も言わない。ただ、あなたに応えて控えめに抱擁を返すだけである。
相変わらず、シャルルからは離そうとしない。あなたを離すことを惜しんで、いつまでも抱きしめっぱなしである。
「じゃあ、これくらいで」
あなたが離れると、シャルルは寂しげな瞳をする。
「また来週の休日も来ます。それでは、また」
「ああ。またね、○○君」
あなたは後ろ髪を引かれる思いで事務所を後にした。
(これは……ホントにホントにマジでいけるのでは……⁉)
二重の意味で好感触だった。
行けるかもしれない。このまま押し切って、シャルルを人生初の恋人にできるかもしれない。そしてついでに、あの憎きナミネに『あ、僕カノジョできたんで』と言えるかもしれない。
あなたはニコニコ顔で帰路を歩く。
「――ッ⁉」
あなたは背後から視線を感じた。舐るような、粘着質な視線だった。
以前にも感じたものと同じ、謎の追跡者が今日もあなたを追っていた。
早歩きで角を曲がり、追跡者を待ち構える。しかし追跡者が路地に飛び込んでくることはなかった。
明らかに尾行慣れしていた。素人ではまるで捕まえられなさそうなやり方だった。
「……仕方ない、か」
あなたは全速力で街を走り、何度も路地を曲がった。視線を感じなくなる。流石にこのやり方なら撒けるらしかった。
「女の子のストーカーなら大歓迎なんだけどなあ」
前世で女の子に追いかけられた経験などない。たとえそれが犯罪だろうと、好意を寄せてくれるなら関係なくバッチコイだった。
*
平日がやってくる。あなたのテンションは低かった。探偵助手のアルバイトは休日限定なので、今日から五日間はシャルルに会えない。
退屈なクエストをこなし、あなたは宿に帰る。自室に戻ろうとしたところで――。
「あいたっ」
階段の踊り場で、フードを被った女性とぶつかった。
「あ、すみませ――」
急いでいるのか、女性は謝罪もせずに階段を降りる。二段飛ばしで降りていくので、豊かなおっぱいが弾む。
あっという間に走り去った女性。かなりの大きさだった。良いものが見れたと感謝するように、心の中で手を合わせておいた。
そして自室に戻り、いつも通り湯浴みをしようとしたところで――。
「えっ」
部屋の籠に入れておいたあなたのパンツが、一枚新品に変わっていた。勿論あなたが購入したわけではない。つまり――。
「誰かが僕の部屋に入って、パンツを盗んでいった……⁉」
おそらく下手人は、先ほどのフードを被った女性だろう。
「お、おうふ……」
言ってくれればあげるのに、という感じだった。
前世では女性に相手にされない男性が、女性の制服や下着を買い求めることがあった。
しかし、まさかあなた自身がそういった対象にされるとは考えてもいなかった。
「う~ん……」
あなたは取り敢えず湯浴みを済ませて、部屋に戻ってきた。そして、あるアイデアを思いついた。
あなたは筆を取り、メモ帳にメッセージを書いて、分かりやすく机上に置いておく。
『このメッセージを読んでいるあなたへ。貴女のことが気になっています。もし貴女が僕に好意を寄せている、ないし憎からず想ってくれているのであれば、貴女とお近づきになりたいです。お返事、待ってます』
この書き置きを残して出て行けば、自然とストーカーはこれを目にする。そして、返事をくれるはずである。
(窃盗もストーカーも関係ない! あの巨乳、揉もうと思わずして何が男か!)
そしてあなたは、胸の膨らみへの期待に胸を膨らませ、布団にもぐり、眠りについた。
*
「……」
フードを被った女性が目の前にいる。長い黒衣を羽織っているが、胸部だけは膨らんでいて、その豊かさが目に見えて分かる。
あなたは嫌な顔一つせず、歓迎するよというアピールも兼ねて腕を開いた。
そして、あなたの胸に女性が飛び込み、熱い抱擁を――。
「――えっ?」
熱い。
痛い。
「うっ、ああああああああああああああああッ!」
あなたの胸にナイフが突き刺さっていた。鮮烈な痛みが全身を駆ける。視界が真っ赤に染まり、あなたは痛みでのたうち回る。
「ぐっ……! あああッ!」
あなたは痛みを堪え、女性に背を向けて逃げ出そうとする。しかし直ぐに追いつかれ、仰向けに転がされる。
直ぐそこに、死がある。あなたの二度目の命を殺す女がいる。
間違いだった。やはりストーカーなどに関わるべきではなかったのだ。
「き、みは、一体……だれ、なんだ……」
女性が笑う。そして、フードを外す。
「なッ……⁉」
ボブカットの、穏やかな栗色の髪。くるみ色の大きな瞳。顔立ちは整っているが、不思議と印象に残らない平凡さがある女の子。
――ナミネだった。
「そん、なっ……どうしてっ……!」
「ふふっ……あははっ……! 言ったでしょ? 『女に手を出したら、とびっきりの
「う、そんな……」
ナミネがあなたに馬乗りになる。たわわな胸が弾む。
「なんで……おっぱいが……」
「実は私、着痩せする方なの。良かったね。最後に良いもの見れて」
ナミネがナイフを振りかぶる。
「さよなら、○○」
そして、凶刃があなたへと振り下ろされ――。
*
「はっ……!」
あなたは飛び起きた。
辺りを見回す。自分の部屋だった。胸にナイフも突き刺さっていない。
「ゆ、夢か……」
あなたはぐったりと倒れる。凄い冷や汗だった。まだ手が震えている。あまりのリアリティーで、恐怖と虚脱感に支配されていた。
「そ、そうだよね……。ナミネが帰ってくるの一週間後のはずだし。着痩せしてもAカップはAカップだし」
ないものはない。地上に太陽はなく、空に海水はない。自然の摂理と同じ、絶対の真実。――ナミネにおっぱいがあるなど有り得ない。
あなたはそう気づいて、胸を撫で下ろした。
「うん……?」
あなたは立ち上がり、机上にメモ用紙が置かれているのに気づいた。昨晩あなたが書いたものの隣に、裏向きのメモ用紙がある。
「ね、寝てる間にも入ったってこと……?」
あなたはもう一度体を検める。怪我はない。それもそうである。パンツを一枚だけ盗んでいき、替えの新品まで用意してくれる親切な犯人なのだ。
ドキドキしながらメモ用紙に手を伸ばす。
果たしてどんな返事なのか。
よければお友達になってください、だろうか。
それとも、ずっと前から好きでした、だろうか。
はたまた、あなたのことを愛しています、だろうか。
どんな返事でもいい。多少歪んだ愛情でも、それが好意であるならば――。
そして、メモ用紙をめくる。
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!」
朝っぱらから、宿にはあなたの絶叫が響き渡った。
*
あなたはクエストになど行かず、シャルルの事務所に駆け込んだ。ノックもせず扉を開け、勢いよくシャルルに抱き着く。
「わっ。○○君!? 今日は平日だけど、何故ここに⁉」
「わああああああああああああん! 助けて! 助けてシャルルさん!」
「ど、どうしたんだい!?」
あなたはシャルルに促されて、ソファに座った。もちろん、彼女には抱き着いたままである。
「ぐすっ……ううっ……!」
「落ち着いて。ゆっくり話してくれればいいさ」
シャルルは大人らしく、落ち着いた声色であなたを宥める。あなたは頭を撫でられ、ようやく落ち着きを取り戻した。
「じ、実は……」
部屋にあったメモ用紙を見せ、事のあらましを語る。
ここ数日ストーカーにつけ回されていること。部屋に入られ、パンツを盗まれたこと。そして、殺害予告をされたこと。
「災難だったね。怖かっただろう」
あなたはシャルルに頭を撫でられる。その手つきが優しくて、心が温まる。シャルルの綺麗な顔がすぐ傍にある。エメラルドの瞳は慈愛に満ちていて、優しくあなたを見詰めている。
「……この件、正式に事件として調査を依頼してもいいですか?」
「ああ、構わないよ。必ず犯人を突き止めてみせるさ」
こうして、思わぬ形で探偵事務所に事件が舞い込んだ。
そして、同時に、あなたは天才的なアイデアを閃いた。
「……シャルルさん」
「なんだい?」
「シャルルさんの事務所に泊ってもいいですか?」
シャルルが硬直する。目を見開き、口をパクパクと開閉している。
「あの宿で寝るの、怖い……です。シャルルさんの事務所に泊めてもらえませんか……?」
あなたは涙目+上目遣いのコンボでシャルルの心を揺さぶる。シャルルは目に見えて動揺しつつも、見定めるような目であなたを見詰める。
「しかし、男女が一つ屋根の下というのは……」
明らかに建前だった。シャルルの瞳の奥には、期待と喜びが爛々と輝いていた。あなたが懇願するのを聞きたがっている顔をしていた。
「おねがい、シャルルさん……」
あなたは羞恥心を堪えて、捨てられた子犬のように哀願する。体温が上がる。マジで恥ずかしかった。
「……分かったよ。事件解決までは泊まっていきたまえ」
シャルルはにっこにこで、満足げに頷く。幸せそうな表情で、口角が上がっていた。
悔しかった。ちょっと反撃したくなる。
「急に凄いマウント取ってくるじゃないですか……。『年齢=彼氏いない歴の処女ってキツいもんね……嫌われたくない……』とか言ってたのに」
「私の態度が全面的に悪かったのを認めるからどうか忘れてほしい!!!!!!」
*
そして、あなたとシャルルの同居生活が始まった。
もちろん寝る部屋は別々である。朝、あなたは身なりを整え、二人分の朝食を作り、シャルルの部屋にそ~っと入った。
シャルルがぐっすりと眠っている。小さな鼻、柔らかそうなほっぺ、発色のいい薄い唇。寝顔も綺麗だった。
あなたは布団をめくり、シャルルの隣にお邪魔する。そして、彼女の頬をつんつんと突いてみた。
「うぅん……うん……?」
シャルルが目覚める。直ぐに目が合う。シャルルは眠たげな眼で、ぱちぱちと何度か瞬き――。
「うわあ!?」
シャルルは思わず身を引いて飛び上がった。口がぱくぱくと動いている。爽やかな若葉色の長髪は癖がついて、ところどころ跳ねていた。
「な、な、なんてことしてるんだい君は……⁉」
「こっちの方が喜んでくれるかなって思いまして」
朝起きたら隣に美少女がいる、というのは元の世界の男子ならば垂涎のシチュエーションである。身に覚えがないパターンでも、あるパターンでも、どちらにせよ幸福感に満たされる。
あなたはそれを、こちらの世界でやってみたのである。
「嫌なら、明日からは普通に起こしますよ?」
「い、嫌ではないさ。光栄だよ、うん。ただ、君は良い歳の男性だ。襲われるかもしれないという危機意識はないのかい?」
「過去一度も人を殺したことのない人間が、何の心構えもなくいきなり殺人に踏み切れると思いますか?」
「ははあ……異性との性経験がない処女には襲う度胸もないと言いたいんだね? うん、真理だ。殺してくれ」
シャルルは途端に死んだ目になる。
「いや、そこまで言って……ますね。ごめんなさい」
あなたはシャルルに近付き、寝間着のままのシャルルを抱きしめる。
「あっ……」
「許してくれますか?」
「いや……そもそも怒ってはいないよ……」
シャルルもおずおずと抱きしめ返してくれる。寝起きだからか、シャルルの体温が高く、直に熱が伝わってくる。そして何より、ブラを付けていないので、寝間着一枚越しに温かく柔らかな感覚がむにゅう♡ っと潰れる。
「朝からシャルルさんと抱き合えるの、凄く幸せです」
「わ、私もさ……」
そして、いつもより長めに抱きしめ合って、同棲生活一日目が始まった。
*
平日なので、あなたは普通にクエストに向かう。シャルルは心配していたが、流石に働かないわけにはいかない。
適当に山間部の熊を退治し、街へと戻る。その最中、ふと自分の振る舞いを振り返る。
(……あれ? もしかしてこれ、僕の方がストーカーじゃない?)
不安だから一緒に暮らして、と女の人に同棲を迫り、朝からベッドに潜りこむ。少しずつ麻痺してきていたが、元の世界なら完全に犯罪である。
それが許されているのは、この世界における男性だから。
「はぁ……」
見慣れた通りに入る。あなたは無意識のうちに、人目を怖がりながら歩いていた。
例の視線は感じない。ただ、それでも尾けられているのではないか、見られているのではないか、という不安感が、蟠りとなって胸を塞ぐ。
帰路を急ぐ。無事に事務所に辿り着いた。
「ただいま、シャルルさん」
「おかえり、○○君」
シャルルは文机に向かい、忙しなく何かの書類を作っている。顔には疲労の色が見えた。
「おつかれですか?」
「ん、まあね……」
あなたは閃く。今こそ、前世界で『男が美少女から言われたいセリフTOP10』に入るあのセリフを言うチャンスだ。
あなたはシャルルの背後に回り、耳元に口を寄せて囁く。
「だいじょうぶ? おっぱい揉む?」
ピシィッ! とシャルルが硬直する。彼女はギギギと軋む機械のように首を回す。そして、信じられないものを見るような目で、あなたを見つめる。
「あ、あはは。びっくりしたよ。そういう冗談も面白いね」
「いえ、冗談じゃないですよ?」
あなたは服をまくりあげ、ギリギリ乳首が見えないところで止める。シャルルの澄んだ翡翠色の瞳が、ギンッギンに見開かれ、あなたの胸元を凝視する。
「……ごくり」
シャルルが唾を飲む。火傷しそうなくらいの熱視線が胸に注がれる。
「胸、触りたいですって言ってくれたら、触っても良いですよ?」
「……なっ⁉」
シャルルが驚き、そんな殺生なと言いたげな瞳で見上げてくる。
「そ、そんなの、言えるわけないじゃないか……!」
「言わないなら、触らせてあげませんよ? ほらほら、シャルルさん、どうします?」
「くっ……! ぐぅッ……!」
シャルルは、
故に、年下の男の子に弄ばれ、『おっぱいを揉ませてください』と懇願するのは、シャルルにとって大きく自尊心を損ねる屈辱であろうことは、手に取るように分かった。
シャルルは怜悧な顔を羞恥に歪ませ、エメラルドグリーンの瞳を涙に潤ませる。
「○○君の、胸、さ、さ、さ……触らせてくださいッ……!」
「はい、良く言えました。どうぞ」
あなたは鎖骨の辺りまで服をまくる。
シャルルは恥ずかしさと興奮で、今にも倒れそうなくらい赤面しながら、あなたの胸板へと手を伸ばす。
あなたの胸に、彼女のひんやりとした指が這う。シャルルはその硬さを堪能するように、何度も掌全体で思うさまあなたの両胸を撫で上げる。
「悔しいッ……! 悔しいよおッ……! マウント取られてるのに、おっぱいに抵抗できない無力な自分が情けないッ……!」
シャルルは涙を滲ませながらも、鼻息を荒くし、血走った眼であなたの両胸をガン見する。屈辱と幸福がない交ぜになったような顔をしていた。
年上で、冷静で、頭脳明晰で、自尊心の高い美人の女性が、あなたのおっぱいのためにプライドを捨てて屈従し、夢中になって胸をまさぐっている。
若草色の爽やかな長髪に、澄んだエメラルドグリーンの瞳。女神像をそのまま受肉させたような、美しく品のある顔立ち。日焼けのない白皙の肌と、高い上背に、豊満な肉体。
かつてあなたのいた世界なら、モデルとしてカンヌのレッドカーペットすら歩けたに違いない美女。
そんな美人ですら、この世界では、鼻息荒くあなたの胸を夢中でまさぐる処女なのである。
「はぁッ……はぁッ……!」
あなたは手持ち無沙汰の左手で、シャルルの頭を撫でる。さらさらの絹糸のような細い髪が、指の股を流れて心地よい。
「いいこいいこ。可愛いね、シャルル」
「あぺぁッ……!」
シャルルは謎の鳴き声を発し、鼻血を噴き出した。慌ててちり紙を鼻に詰めて血を止める。
シャルルは尚もはぁはぁと呼気を荒くし、辛抱堪らないといったように自身の胸を抑えている。
「今日はここまでにしておきましょうか」
あなたがまくり上げていた服を下ろしてシャルルから離れると、彼女は「あっ……」と寂しそうな声を漏らした。食事の半ばに大好物のエサを取り上げられた犬のような、ひどく悲し気で残念そうな顔をしていた。
あなたはシャルルの耳元に唇を寄せ、吐息を吹き込むようにささやく。
「次は、もっとすごいことしましょうね?」
「あぺッ……!」
シャルルは再び断末魔のような奇声を発し、鼻に詰めたちり紙を押し飛ばす勢いで鼻血を噴き出して、バタンと倒れた。
*
翌日。あなたは冒険者としてクエストに行き、シャルルは探偵としての仕事をこなした。ストーカーについての調査も、少しずつ進めてくれているようだった。
帰ってきて、夕食を食べて、一段落する。あなたとシャルルはソファに腰掛け、特に何をするでもなく過ごしていた。
「シャルルさん、愛してるゲームやりませんか?」
「聞いたことのない遊びだね。どんな内容なんだい?」
「交互に『愛してる』って言っていって、先に照れちゃった方の負けです。フレーズを変えたり、言葉を付け足したりするのもアリですよ」
「……ず、随分と卑俗なゲームだね」
「嫌ですか?」
「せっかくのお誘いだ。やってみるよ。手加減してくれると嬉しいけどね」
「じゃあ、先攻は貰いますね」
あなたは一呼吸置き、向かい合って座るシャルルの目をじっと見つめる。
「シャルルさん、愛してます」
「……っ」
シャルルの頬が紅潮し、翡翠の瞳がぐらぐらと揺れる。
「いや、照れちゃダメなんですよ?」
「い、今のは油断していたんだ! 心の準備もないままに安請け合いしてしまったんだ!」
「これ守備側で負ける人初めて見ました。基本攻撃側が照れて負けるものなんですけど」
「もう言わないでくれたまえ! これ以上お姉さんを辱めないでくれ!」
シャルルは赤面したまま、力なく項垂れた。
「三回勝負にしますか?」
「あ、ああ。そうしようか……」
「じゃあ、次はシャルルさんが先攻でどうぞ」
「そうだね」
シャルルは胸に手を当て、深呼吸して調子を整える。
あなたはワクワクしていた。シャルルは一度も自分から好意を表現してくれたことがない。ハグするときも必ずあなたからで、シャルルは受け身である。褒め言葉も、まだ経験豊富なお姉さんを装っていた時代にしか言われたことがない。
シャルルの表情が真剣味を帯びる。
「愛しているよ。○○君」
照れも迷いもない告白だった。あの演技をしていた頃と同じ、ずば抜けた強がりによるもの。一度このモードに入ってしまうと、並大抵のことでは崩せない。
恐らく、普通にやり合っても平行線になるだけだろう。
「じゃあ、次は僕の番ですね」
そう言いながら、あなたは立ち上がって、シャルルの隣に座る。腕が触れ合う真隣。あなたはバッとシャルルを抱きしめ、耳元に唇を寄せ――。
「愛してます。大好きですよ、シャルルさん」
「あばっ……あばばばばっ」
感電でもしたかのような声を出し、シャルルは小刻みに震える。見れば、耳まで赤くなっていた。抱擁をほどいて顔を見ると、リンゴのように真っ赤になっていて、目には薄く涙も滲んでいた。
「はい、僕の勝ちですね」
「ちょ、ちょっと待ちたまえ! ハグはずるいだろう!」
「別にルールで禁止されてませんよ?」
「むう……それもそうだが……」
シャルルは納得いかなそうに、半目になってあなたを見詰める。
「もう一回やります? 次は何されたいですか?」
「勝てる気がしないのだけど……」
シャルルは肩を落とす。年下の男の子に良いようにあしらわれる。というのは、年齢差と男女差も相まって、自尊心を傷つけられる中々耐え難い苦痛のようだった。
「ごめんなさい。意地悪でしたよね」
「いや、構わないさ。嬉しかったよ」
「そうですか? 僕もシャルルさんに『愛してる』って言ってもらえて嬉しかったです」
あなたとシャルルは笑う。シャルルはどこか脱力したような、恍惚とした目をしていた。
「自分の人生に、こんな日が来ると思っていなかったよ。本当に幸せだ。ありがとう」
「こちらこそ、ありがとうございます。シャルルさんに出逢えて、僕も幸せです」
あなたは確信を持って言える。――今、自分は恋愛している。
前世界では一度として、一瞬すらも叶わなかった夢。女の子と想い合い、惹かれ合い、心の距離が近付く感覚。
――本当に、過去イチ上手く行っている。
*
ナミネが緊急クエストに駆り出されてから、12日が経った。
つまり、あと2日でナミネが帰ってきてしまう。もしあの栗色の悪魔が戻ってくれば、人生初の恋人を作るビッグドリームが再びご破算にされてしまうだろう。
もう、決めに行くしかない。
本来なら、もっとゆっくり距離を縮めたかった。一度肉体関係を持てば、もうシャルルの初々しい反応は見れない。本音を言えば、男性免疫がない彼女ならではの痴態を、もう少し見たかった。
そう思うと、惜しい気持ちはある。しかし、そうも言っていられない。
――今夜、シャルルへ夜這いしにいく。
クエストからの帰路を、早足で歩く。過去にない程、心臓が跳ねていた。気分が昂って、自分が自分でないようだった。
事務所の前に辿り着く。いつも通り、扉を開けて入ろうとしたところで――。
「ひッ……⁉」
心臓すら止めるような零下の視線が、あなたの背に突き刺さった。尋常でない殺気だった。
あなたは慌てて事務所に入る。シャルルは文机で作業をしていた。
「お帰り――「シャルルさん!」
あなたは勢いよくシャルルに抱き着く。
「ど、どうしたんだい?」
「い、いま、いました。ストーカーが……すぐそこに、気配を感じたんです!」
「なに……? 待っていてくれたまえ、見に行って来よう」
シャルルは事務所を出て、辺りを見回す。しかし、直ぐに戻ってくる。
「不審な姿はなかったよ」
「そ、そうですか……もしかしたら、もういなくなったのかもしれませんね……」
あなたはぐったりとソファに体重を預ける。落ち着いてきて、ようやく本来自分が何をすべきかを思い出した。
(そうだ……ストーカーなんかに構ってる場合じゃない……!)
ちょうどよく、甘えやすい状況もできている。小さく息を吸って調子を整える。
「シャルルさん、あの……」
「うん? どうしたんだい?」
「今夜、僕と一緒に寝てくれませんか?」
シャルルの顔がピシッと強ばる。しかし、すぐに何かに気付いたようにハッとする。
「……あっ、ああ、そっか。うん、そうだよね。怖いもんね。一緒にいてほしいという意味でしかないだろう? まったく、私だったから良かったものの、勘違いしてしまうような言い方はよしてくれたまえ」
「勘違いじゃ、ないです」
あなたは攻める。
シャルルの翡翠色の瞳が大きく見開かれる。状況を理解したのか、激しく動揺し、呼吸も荒い。
「○○君、本当に……?」
「はい……。シャルルさん、今夜、一緒に卒業しましょう」
言った。言ってしまった。
「ふ、ふふっ……! も、もう、撤回は許さないからね! ぜ、絶対、絶対卒業させてもらうからね……!」
シャルルは余裕なく、あなたの肩を掴み、上気した顔を近付ける。鼻息は荒く、透き通るような翡翠色の瞳はギンギンに見開かれて血走っていた。
普段あれだけ冷静な彼女が、初体験を目前にした童貞のようにがっつく姿が、少し面白かった。
――その時、事務所の扉が叩かれた。
「むぅ。誰だい、こんな時に」
シャルルが扉を開く。そこに立っていたのは――。
「○○? こんなところで何してるの?」
ボブカットの、栗色の髪。くるみ色の大きな瞳。
幾度となくあなたの女の子との出会いを潰してきた諸悪の根源――ナミネだった。
「ナミネ⁉ な、なんで……⁉ あと2日は帰ってこない筈じゃ……?」
「クエスト、余裕過ぎて早く終わったの。で、こんな夜遅くに、こんなとこで何やってるの? ここ、探偵事務所だよね?」
「いや、えっと、その……」
あなたはナミネに一部始終を話した。ストーカー被害に遭っていること。パンツを盗まれたこと。そのストーカーは巨乳だったこと。
そして、それがきっかけでシャルルと同棲していること。
全てを話し終えると、ナミネは呆れたような表情を浮かべた。
「いや……○○、バカなの? そんなの、どう考えてもその人が犯人じゃん」
「えっ?」
シャルルは心外そうに眉をひそめる。腕を組み、たゆんっ♡と、豊かな胸を強調しながら、ナミネに相対する。
「なんの話かな、
「○○と貴女が初めて会った日に、ストーカー被害が始まったんでしょ? どう考えても一目惚れして、宿まで尾けてるじゃん。しかも、そのストーカーって素人の尾行技術じゃなくて、巨乳なんでしょ?」
ナミネは自信満々に、顎でシャルルを示す。
「いるじゃない、尾行に長けた巨乳の人。目の前に」
シャルルは険のある面持ちで、ナミネを睨む。
「証拠があるのかい?」
「それ犯人の台詞だけどね。事務所、検めるけど文句ある?」
「ないさ。だが、私は断じてストーカーなどではない。証拠など出てこないよ」
ナミネは本当に事務所に上がり、あちこち探し始める。確かにシャルルが犯人なら、証拠――あなたのパンツがある筈である。しかし、くまなく探しても証拠品は発見されなかった。
「ほら、見たまえ。私はストーカーなどではない」
「……そ、そうだよナミネ! シャルルさんは僕を助けてくれてるんだよ! ストーカーな訳ないじゃないか!」
「……ああ、なるほど」
ナミネは不機嫌そうにシャルルへと迫る。そして――勢いよく彼女のスカートを引き下げた。
「へっ?」
「……えっ?」
ずり下げられたスカートの下、隠されていた布地が露わになる。そこにあったのは、女性用の下着ではなく、なんの飾り気もない、あなたのパンツだった。
「……」
事務所が、重い沈黙に満たされる。
シャルルは沈痛な表情で立ち尽くしている。あなたは目の前の光景が信じられず、何も言えない。
「文句なく現行犯だけど、何か申し開きはある?」
ナミネがシャルルの前に仁王立ちする。
シャルルはうつむき、拳を握りしめて、訥々と話し出す。その表情は、ひどく沈痛で悲愴だった。
「運命だと、思ったんだ……。こんな年増の処女にも、優しく接してくれる奇跡の男の子だったんだ。もっと○○君に近付きたい。○○君のすべてが欲しいと、思ってしまったんだ……」
シャルルは決然とした凛々しい面持ちを浮かべ、パンツ丸出しの姿であなたを見据える。
「○○君。それでも、私を愛してくれるかい?」
ナミネが心底軽蔑しきった瞳を彼女に向け、次に、あなたを振り返る。
「やっちゃっていい?」
「…………どうぞ」
「――
鉄塊がシャルルに降り注ぐ。シャルルが押し潰されそうな程、みしみしと音を立てて床に押し付けられる。
「ああああああああああああああああああああああああああッ! 痛い痛い痛い痛い痛い! ごめんなさい許してぇえええええええええええええええええええええええええええええええええッ!」
*
結局、その場で探偵助手のバイトは打ち切りとなった。
深夜、あなたとナミネは街を歩く。寒々しい冷気のせいか、空がいっそう澄んでいるように見えた。星々がきらめいている。
「ナミネ。君がいなかったら、シャルルさんが犯人だって、一生気付けなかった。ありがとう」
「べ、別に。○○のためじゃないし。ただ、犯罪者を見過ごせなかっただけだから」
ナミネはそっぽを向く。少し顔が赤かった。
「で、あの人と同棲してたことについて、聞かせてもら――」
「いやあ! それにしても緊急クエストが終わるの早かったね! 流石はナミネだなあ!」
「え? ま、まあ、S級が5人もいれば余裕だったし。って、そうじゃなくて――」
「本当に良かった! ナミネが無事に帰ってきてくれて嬉しいよ! 遠いところから帰って来たばっかりだから疲れてるよね? お疲れ様!!!!!!」
「いや、全然平気だけど……。あ、買ってきたお土産あげるから、ウチ寄って行ってよ」
「ホント⁉ 嬉しい! ありがとうナミネ!!!!!!」
「あれ……? なんか、上手く誤魔化されてるような気が……まあ、いっか……」
「ほら! 早く行こうよ、ナミネ!」
あなたとナミネは、彼女の家に向かう。
――奇跡が起きた。
おっぱいが大きくて可愛い女の子とイチャラブしようとしたのに、初めてナミネのお仕置きを食らわなかった。
こんな世界線ある⁉ と叫びたくなるくらい珍しい展開に、あなたは心中で快哉を叫ぶ。
そして、あなたは久し振りにナミネの家を訪れた。
前回は緊張したが、今回は生存の喜びでハイになっているので平気だった。
「私の部屋で待っててよ」
ナミネの部屋に通される。女の子らしい部屋だった。
何か、ナミネの秘密を握れないかな~と考えて、ベッドの下をまさぐる。一冊のノートがあった。
「なんだろ、これ」
何気なくノートを開く。そこに書かれていたのは――。
○○監禁計画。
1、何かの口実を作って部屋に誘い込む。
2、鎖、手錠、足枷を使ってベッドに縛り付ける。ベッドの柱自体の素材も予め強化しておく。
3、
4、分からせる。
「……えっ、なに、これ……」
あなたは、ばさりとノートを落とした。
「あ~あ、見ちゃったんだ」
バッと振り向く。すぐ真後ろにナミネが立っていた。――その手には、手錠と足枷が握られている。
なにより、ナミネの瞳は、この世界の夜闇をすべてその双眸へと集めたようにどす黒く、肌を焼くような烈しい怒りに燃え、血も凍るような凛冽たる殺意に染まっていた。
「ねえ、○○。私、ちゃんと言ったよね? 女に手を出したら、とびっきりの
「ひぃッ……⁉」
「もう、これまでのお遊びはおしまい。本気で分からせるから。さあ、覚悟してね♡」
「いっ……いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!」
『あなた』
性別:男性
種族:ヒューマン
職業:冒険者(Eランク)
備考:おっぱいが大好き
『ナミネ』
性別:女性
種族:ヒューマン
職業:冒険者(Sランク)――【奏者】
備考:
『モモ』
性別:女性
種族:ヒューマン
職業:冒険者(Cランク)
備考:巨乳
『マリン』
性別:女性
種族:ウンディーネ
職業:冒険者(Fランク)
備考:たわわ
『リーゼロッテ』
性別:女性
種族:ヒューマン
職業:冒険者(Sランク)――【剣聖】
備考:ぼいんぼいん
『ユンユン』
性別:女性
種族:獣人
職業:中華店店長
備考:たゆんたゆん
『シャルル』
性別:女性
種族:ヒューマン
職業:探偵
備考:豊満