せっかく貞操観念逆転世界へ来たのに貞操観念逆転していない幼なじみに女の子との出会いを潰されている   作:耳野笑

6 / 10
 前回のあらすじ!


 ナミネが緊急クエストでいない間、あなたはアルバイト先で探偵のシャルルと出会う!

 年上で経験豊富そうなシャルルを高嶺の花だと感じたのも束の間、彼女が年齢=彼氏いない歴であるという秘密を知ってしまう!

 一方、あなたは近頃ストーカー被害に悩んでいた! あなたはそれを口実にシャルルと同棲し、順調に彼女と距離を詰める! 

 そして遂に卒業式を迎える寸前、ナミネのファインプレーによって、シャルルがあなたのストーカーであると判明! シャルルは制裁された!

 そして、ナミネがいない間女性に手を出さないという約束を破ったあなたは、目に光のないナミネによって監禁されてしまう!


 果たしてあなたは、おっぱいが大きくて可愛い女の子とイチャラブするというビッグドリームを叶えることが出来るのか⁉



第6話 男性不信こじらせ系ボクっ娘天才魔法使い・アリシア

 あなたはナミネの部屋のベッドに縛り付けられていた。

 

 あなたは大の字の形で拘束され、手枷と足枷を嵌められ、鎖でベッドの支柱に繋がれている。逃げ出すことはおろか、立ち上がることすらできない。

 

「ねえ、○○。私、言ったよね? 私がいない間に、女に手を出したら許さないって。なのに、なにやってたのかなあ?」

 

 あなたの上に、ナミネが仁王立ちする。彼女は可愛らしいもこもこの寝巻きを着ているのに、あなたは死霊と対峙しているような冷気を感じた。

 

 ナミネの瞳には、光がなかった。――憎悪、怨念、殺意。ありとあらゆる負の感情を詰め込んでかき混ぜたような闇色の双眸に見下ろされる。

 

「な、ナミネ! 話を聞いてほしいんだ!」

 

「なに?」

 

「僕、ストーカー被害に悩んでたんだよ! 殺害予告までされて、怖くなっちゃって……だから、一番身近にいる大人の人を頼っただけなんだよ!」

 

 必死に弁明するあなた。しかし、ナミネは冷たい眼差しを向けてくる。

 

「○○、ストーカーくらいなら撃退できるでしょ?」

 

「……」

 

「神様から剣術チートもらってるじゃない。S級並みに強いんだから、ストーカーなんて怖くもなんともないでしょ?」

 

「…………」

 

「あの探偵、胸大きかったもんね? チャンスだと思ったんでしょ? 下心丸出しで、ここぞとばかりにストーカーを口実にして同棲してたんでしょ?」

 

「……………………」

 

 図星だった。マジでひとつも言い返せなかった。

 

「じゃあ、お仕置きの時間だよ。――硬鞭に穿たれよ(フロッグラーヴェ)

 

 ナミネの手に、マイクケーブル程の長い鞭が握られる。ナミネがそれを握ると、みしみしと音を立ててしなり、その硬質さがよく分かる。

 

「ひッ……⁉ ちょ、待っ――」

 

 黒光りする鞭が、勢いよく閃く。

 

「いっぎゃあああああああああああああああああああ!」

 

 痛烈な一撃が、あなたの脇腹を打った。

 

「あほっ!」

 

「ぎゃあッ!」

 

「変態!」

 

「あぎゃあッ!」

 

「童貞!」

 

「いぎいッ!」

 

 繰り返し、何度も何度も、あなたは鞭を打たれた。SM用の柔い鞭ではない。馬体に打ち付けるのすら躊躇われるような、恐ろしく硬い鞭である。

 

 全身がジンジンと痛む。服の下は真っ赤になっているだろう。

 

「も、もうやめて……!」

 

 あなたは涙目になりながら、ナミネを見上げる。ナミネはそんなあなたの姿を見て、目を細め、嗜虐的に口端を吊り上げた。

 

「だーめ♡ 私が傷付いた分、○○もいっぱい痛めつけてあげるから♡」

 

「うぎゃあああああああああああああああああああああああッ!」

 

 あなたへの殴打は何時間も続いた。そして、ナミネも疲れてきたのか、鞭を放って、あなたの上に座り込む。「騎○位みたい」と思ったが、言ったら絶対殺されるので飲み込んだ。

 

 ナミネの尻があなたの腰に乗り、彼女の脚もあなたの体を挟むようにぎゅっと締められる。しかし、残念なことに、女性らしい柔らかさのようなものは微塵も感じられなかった。

 

「反省できた? ○○?」

 

 ナミネの真っ暗な瞳に見下ろされる。しかし、あなたは恐れず、ナミネを見詰める。

 

「ねえ、ナミネ。僕、考えたことがあるんだ」

 

「なに?」

 

「ナミネがこの世界の男性と恋愛するのって、しんどいと思う。男性はみんな、守られる立場だと思ってるし、恋愛に対して受け身でもいいし、自分が女性を選ぶ側って意識でいるから」

 

「そう、だね。ほんと、この世界の男ってそんなのばっかりだよ。だから、私の恋愛観に沿う男って、○○しか――」

 

「だから、ナミネが彼氏作るの手伝うよ!」

 

「…………は?」

 

 ナミネはぽかんとして、何を言われたのか分からない様子で首を傾げる。

 

「君にとって元の世界の価値観を持つ僕は、そこそこ大切なんだと思う。ましてそれが幼なじみなら、ずっと一緒にいたいって思うのも分かるよ。僕の、勘違いじゃなければ、だけど……」

 

 あなたは少し顔を赤らめる。言っていることが恥ずかしすぎて、身体が変に熱を持つ。

 これで『え、別に思ってないけど』とか言われたら泣くしかない。

 

「うん……そうだよ。合ってるよ。なのに、なんで彼氏云々なんて話になるの?」

 

「僕に彼女ができて、他人みたいになっちゃうのが嫌なんだよね? なら、ナミネにも彼氏ができれば、ナミネも寂しい思いしないし、僕もおっぱいが大きい女の子とニャンニャンできる! みんな幸せハッピーエンドだよ!」

 

 あなたはドヤ顔で胸を張る。これは完璧に決まった――と内心で自分を讃えるあなたを、ナミネは怒気に満ち満ちた顔で見下ろす。

 彼女は無言のまま、あなたの腕に手を伸ばした。

 

「あの、ナミネ? なんで僕の腕を握って……あの、ねえ、僕の腕はそっちには曲がらなぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!」

 

 *

 

 翌日。

 あなたは変わらず拘束されたままだった。ナミネにボコされたせいで、全身が痛む。本当に怒っているらしく、魔法で回復すらしてくれなかった。

 

「あ、あの……ナミネ? 僕いつまでこのままなの……?」

 

 ベッドに腰掛けているナミネが、首を傾げる。

 

「うん? 死ぬまでだよ?」

 

「は!?!?!?!?」

 

「逃がすわけないじゃん。○○は一生このまま、私といるの」

 

「えっ……ちょっ、冗談だよね⁉ 流石にもう二度と外へ出られないなんてあんまりだよ!」

 

 反駁するあなたに、ナミネが近付く。吐息がかかりそうな距離。女の子の甘い匂いが香り、一瞬胸がときめく。

 しかし、その目は、真っ黒に濁りきっていた。あなたは、冷えた手で心臓を鷲掴みにされているような感覚に陥る。

 

 ナミネはにっこりと、憤怒の宿る笑みを浮かべる。

 

「裏切り者に拝める朝日なんて、ないよ?」

 

 ――あ、だめだ。本気だこれ。

 

 一瞬で悟った。悟ってしまった。もう、逃げられない。このまま、この部屋で、一生を終えることになる。

 

 いや、きっと、チャンスは何度もあった。ナミネに従って一緒に異世界生活を楽しむか、ナミネを振り切って女の子と駆け落ちすることはできた筈だった。

 しかし、もう、前回がラストチャンスだったのだ。

 

 いい加減ナミネの逆鱗に触れて触れて触れまくったあなたは、ナミネから、一生逃がさないという最終宣告を突き付けられた。

 

「は、ははっ……」

 

 あなたは乾いた笑いを漏らす。

 かくして、おっぱいが大きくて可愛い女の子とイチャラブするというビッグドリームは、叶えられることなく終わった――かと思われた寸前、ドアノッカーの音が響いた。

 

「ナミネ、いる? アリシアだよ。例の薬、届けに来たよ」

 

 玄関から声が聞こえる。来客のようだった。

 

(ん……? 薬って、もしかして……?)

 

 思い出されるのは、ナミネのノートに書かれていた○○監禁計画。

 

 ――魔女(キルケ―)の薬で、○○を洗脳する。

 

(あ、終わった……。僕、薬漬けにされて、逃げることも考えられなくなるんだ……)

 

「ちょっと待っててね、○○。すぐ戻ってくるから」

 

 ナミネが来客を出迎えに行った。

 

 あなたは天井を見上げる。玄関の方から、ナミネと薬師の話す声が聞こえてくる。どうやら、薬師も女性らしい。

 

(いや、待てよ? もしかしたら、今大声で叫んで薬師に助けを求めれば、なんとかしてくれるのでは? 薬師がナミネの共犯なら終わりだけど……どの道何もしなくても終わりなんだ! やるしかない!)

 

 あなたは覚悟を決め、大きく息を吸い込んだ。

 

「だれかああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ! 助けてええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!」

 

 思いっきり、全力で叫んだ。

 

「ナミネ、ちょっとお邪魔するね!」

 

「待って! アリシア!」

 

 廊下をドタドタと走る足音と、女性二人の声が近付いてくる。そして、あなたがいる部屋の扉が、勢いよく開かれた。

 

「えっ……⁉」

 

 女の子が、鎖で縛り付けられているあなたを見て絶句する。

 

「……っ!?」

 

 一方で、あなたもその女の子を見て固まった。

 

 世界の極地に降る新雪のような、透き通った白髪。その美しさは冷涼な空気感を醸しつつも、三つ編みにしてお団子状にまとめた髪型――俗にいうフレンチクルーラーにされており、愛らしい可憐さを生んでいる。

 ぱっちりとした瑠璃色の瞳が、あなたを見つめる。低い背に、童顔なのも相まって、お人形さんのような可愛らしさがある。

 

 そして、何よりも目を惹くのが――綿のベストと、だぼっとした白衣の上からでもはっきりと分かるほど豊かなおっぱいだった。

 

「だ、大丈夫⁉」

 

 薬師の女の子が、あなたへと駆け寄る。ナミネは扉の辺りで苦い顔をしていた。

 

「――無垢なる翼は荊棘に縛められず(ネル・カラムウィッチ・イオフリューゲル)!」

 

 薬師の女の子が、白手袋に包まれた両手を鎖にかざし、詠唱を唱える。瞬間、あなたを縛る鎖がバキン!と断たれ、手枷足枷も割れ落ちた。

 

 自由になるや否や、あなたは薬師の女の子へがばっと抱き着いた。

 

「うわああああああああああああああああああん! ありがとう! 本当にありがとう!」

 

「わっ!? えっ、ちょっ、だめ! お願いだから離れ――」

 

「ありがとう! 大好き! 僕の白馬のお姫様!」

 

「えぇえええええええええええええええっ!?」

 

 白髪の女の子は慌てながら、あなたに抱き着かれたまま驚いて固まっている。

 

「なにしてるの、○○……? ねえ、なんで私の目の前で、他の女を抱きしめてるの……?」

 

 暗黒大魔神ナミネが、闇の覇気を放つ。瞳は相変わらず地獄の釜の底で怨嗟を煮込んだようにどろどろとした怒りを宿している。

 たちまち部屋に殺気が立ち込め、一触即発の空気となった。

 

 しかし、薬師の女の子もさるもの。S級のナミネと相対して尚怯えることなく、鋭い眼差しを彼女へと射返す。

 

「ナミネ、説明してもらっていいかな? この男の人に、何をしてたの?」

 

「別に、ちょっとそういうプレイをしてただけだから。ね? そうだよね、○○?」

 

 ナミネの冷酷な圧に、あなたはビクッと震える。認めろ、口裏を合わせなければ殺す――と言いたげな瞳が、あなたを射抜く。

 

「大丈夫、ボクがいるから。だから、正直に話してほしいな」

 

 薬師の女の子が、優しくあなたに言葉を掛ける。あなたは、彼女を全面的に信じて、覚悟を決めた。

 

「ナミネに監禁されてましたあ!」

 

「ちょっ、違くて――」

 

「違わない! あの貧乳大魔神にめちゃくちゃ鞭で打たれましたあ!」

 

「だれが貧乳大魔神よ⁉ まだ打たれたりないんだ……! ――硬鞭に穿たれよ(フロッグラーヴェ)!」

 

 ナミネが額に青筋を浮かべて、黒い鞭を召喚する。しかし、薬師の女の子は、そんなナミネの姿を見て、剣呑に顔をしかめた。

 

「そう……残念だよ、ナミネ。ボク、友達だと思ってたんだけどな」

 

「待ってアリシア! 私も友達だと思ってるから! そいつは私の――」

 

「――勇猛なる翼は鳥籠に縛められず(ネル・フォルケージ・ブレイフリューゲル)!」

 

 白髪の女の子があなたを抱える。次の瞬間、女の子の身体が、金色の鱗粉のような光を帯びる。瞬間、あなたはぶわっと体が持ち上げられるような浮遊感に襲われた。

 

「へっ……⁉」

 

 浮いていた。あなたをお姫様(王子様)抱っこする女の子ごと、浮遊していた。

 

「さようなら! ナミネ!」

 

「ちょっと! アリシア!」

 

 ナミネの制止を無視し、白髪の女の子は窓へと突っ込んだ。ガシャン!とガラスが割れ、そのまま外へと飛び出す。しかし、女の子もあなたも落下することなく、むしろ徐々に高度を上げて飛んでいく。

 

「すごい……!」

 

 風魔法か、それとも彼女に固有の技術か、とにかく、あなたと女の子は空を飛んでいた。

 

「ご、ごめんね……! 抱えられ方には不満があると思うけど、ちょっとだけ我慢してて!」

 

「え、いや、ぜんぜんないよ!!!!!!」

 

 あなたは今、白髪の女の子にお姫様(王子様)抱っこされている姿勢である。

 つまり、今あなたの目と鼻の先に、豊かな双丘の左乳がある。本当に、女の子の柔らかさの象徴そのままの形にベストが膨らんでいる。

 

(でっっっっっっっっっっっっっっっっか!)

 

 あなたは認識を改める。――双丘なんてレベルではない。これは、巨峰である。

 男を惑わす魔性の柔肉が、今目の前にある。揉みたい。揉みたい!揉みたい!!!

 

 しかし、流石にこの超高度で高速飛行中に姿勢を変えるのは危険である。というか、貞操観念が逆転しているとはいえ、普通に変態だと思われて落とされかねない。

 

 あなたは必死で、血涙を流しながら耐える。

 そもそも、お姫様(王子様)抱っこというもの自体、もう少し頭部を低くすれば、授乳の姿勢になる。こんな()世界の男が憧れる史上最高峰に肉感的なおっぱいを前に、ほぼ授乳状態で耐え続けろというのが酷な話だ。

 

 あなたが理性と本能の綱引きをし続け、もう間もなく負けそうになったころ、女の子は地面に着陸した。

 そこは、王都だった。巨大な箱型の建物の前に降りる。

 

「ふぅ……ここまで来れば大丈夫かな」

 

 あなたは無事に下ろされる。もの凄い自分との闘いのせいで忘れていたが、ナミネによる監禁から命からがら脱するという、人生の懸かった局面であることを思い出した。

 

 あなたは真面目な顔で、女の子と向かい合う。

 

「助けてくれてありがとう。僕は○○。Eランク冒険者だよ」

 

「ボクはアリシア。えっと、一応Sランク冒険者だよ」

 

「Sランク!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

「う、うん」

 

「Sランクって、この国に5人しかいない、あのSランク!?」

 

「うん。あのSランクだよ」

 

「国から称号を与えられる、あのSランク!?」

 

「うん。一応、ボクは『魔女(キルケ―)』って呼ばれてるの。ボクには過ぎた称号だけど……」

 

「あっ……!」

 

 魔女(キルケ―)。例の監禁計画に書かれていた名称である。

 

 思えば、あなたの繋がれていた鎖にも枷にも、ナミネによる魔法的な強化が施されていた。それを秒で破壊したアリシアが、ただものであるはずがなかった。

 加えて、S級の『奏者(アマデウス)』相手でも立ち向かえる実力。疑いの余地なく、アリシアはS級だった。

 

「凄い……本当に白馬のお姫様だ……!」

 

「んぐっ……! そ、そんなことない、よ……」

 

 アリシアは照れて顔を赤くし、斜め下に視線を逸らす。髪と同じく、初雪のように真っ白な肌なので、紅潮するとはっきり分かってしまう。

 

「あの、そ、それはともかく、中にどうぞ。ボクも、話したい事あるから……」

 

「うん、お邪魔するね」

 

 *

 

 この建物は、アリシアの工房のようだった。

 

 あなたは、五分ほど廊下で待っているよう指示された。

 

 アリシアが部屋に入るなり、どしゃんがしゃん!と凄まじい音が聞こえてきた。

 何事かと、扉をほんの少し開けて覗き見る。アリシアが必死に部屋を掃除していた。「うぅ……! 男の子が来るって分かってればもっと綺麗にしておいたのに……!」と涙声で忙しなく動いていた。

 

 あなたはそっと扉を閉めて、廊下で待つ。

 

 そして五分後、アリシアがおずおずと扉を開けた。

 

「ど、どうぞ……」

 

「お邪魔します」

 

 あなたとアリシアは、実験卓を挟んで座った。ぱっちりとした瑠璃色の瞳を、真っ直ぐ見つめる。しかし、アリシアはすぐに目を逸らしてしまった。

 

「じゃあ改めて。アリシア、僕をナミネから救ってくれて、本当にありがとう」

 

「あ、うん。どういたしまして。あの、聞いていいのか分からないけど、○○……さん、は――」

 

「呼び捨てでいいよ?」

 

「えっ⁉」

 

 アリシアが愕然とする。驚きと、若干の非難を込めた視線を向けられるが、またすぐ視線を逸らされてしまう。

 

「そんなの無理! 恐れ多いよ!」

 

「歳もそんなに離れてなさそうだし、そもそも僕の方が恐れ多いよ。E級冒険者とS級冒険者なんだし。アリシアが僕にだけさん付けって変だよ」

 

「う、うぅ……じゃあ、そのっ、○○……って呼ぶね……?」

 

 アリシアは顔を赤くして、控え目にあなたの名前を呼んだ。

 

「うん、ありがとう。アリシア」

 

「ッ……! は、はい!」

 

 アリシアはピーン!と背筋を伸ばして返事をした。

 

「あ、あの、それで……○○とナミネの関係って……?」

 

「幼なじみ、だよ。昔は仲良かったんだけど、今は不仲で……その、あんな有り様になっちゃった」

 

「そ、そう、なんだね。いろいろ大変、だね……」

 

 どれくらい深刻に受け止めたのか、アリシアは沈痛な面持ちを浮かべる。ただ、やっぱり目は合わない。

 

「そういえば、アリシアの話って?」

 

「あ、うん! あの、その前にひとつお願いがあるんだけど、いいかな?」

 

「うん、いいよ」

 

 アリシアは白手袋を外し、右手を差し出した。

 

「確認したいことがあるから、ボクと握手してもらえないかな?」

 

「え、うん」

 

 あなたはアリシアの手を握る。氷像のようにひんやりとした、小さな手だった。しかし、手を握ってわずか数秒、アリシアの手を始めとして、顔が赤くなっていく。

 

 手を繋ぎながら、アリシアはちらちらとあなたを見ている。せっかくなので、あなたは左手も彼女の手に重ね、両手で包み込むように触れる。

 

「っ……⁉」

 

「アリシア、手、綺麗だね」

 

 あなたは左手で、アリシアの指をつつーとなぞった。

 

「んにゃあっ!?」

 

 アリシアの目が勢いよく泳ぐ。照れくさいのか、もじもじと体を動かし、落ち着かない様子だった。

 

「あ……も、もう、大丈夫、です……!」

 

「そっか、残念。もっと繋いでたかったな」

 

「むぅ……」

 

 アリシアは怪訝な顔をしている。

 

 あなたは冷や汗をかく。流石に、調子に乗り過ぎただろうか。貞操観念逆転世界に来てからというもの、ボディタッチを拒まれないどころか喜ばれることが多かった。

 しかし、誰しもがそうとは限らない。普通に嫌がられてしまう可能性を忘れていた。

 

「えっと、話っていうのは、ボクの病気のことなの」

 

「病気?」

 

「うん。ボクは、男性アレルギーなの」

 

 アリシアは、ひどく辛そうな顔をしていた。あなたはその病気を知らないが、その病気のカミングアウトは、それくらい深刻なものなのだろう。ということが察せられる。

 

「ごめん、男性アレルギーって、どんな病気なの?」

 

「あ、えっと、説明不足でごめんね。男性アレルギーっていうのは、男性に触れると発疹が起きたり、腹痛や吐き気、喀血や呼吸困難を起こしたりする病気だよ。酷い症状だと、死に至ることもあるの」

 

「えっ」

 

 あなたは青ざめた。血の気が引いた。あなたはあろうことか、さっきアリシアに抱き着いてしまった。

 

「だ、大丈夫なの⁉」

 

「あ、うん。ボクもヤバいなって思ったんだけど、なぜか平気だったよ。こんなの初めてで、びっくりしてる」

 

 アリシアは戸惑いの表情を浮かべながらも、ぐいっと身を乗り出す。

 

「何か、男性アレルギーを治療する手がかりが見つかるかもしれないの! だから、その、よ、よければだけど、ボクの実験に協力してもらえないかな!」

 

「もちろん! アリシアは命の恩人だからね! 僕にできることなら、なんでもするよ!」

 

「……な、なんでも?」

 

 アリシアがごくりと唾を飲み込む音が聞こえた。心なしか、色艶に濡れた瑠璃色の瞳が、あなたを見上げている。

 

「あ、えっと、よ、よろしくね。あの、それで、凄く言いづらいんだけど、○○って宿の当て、ある……?」

 

「ないんだよね……。普段使ってた宿は、ナミネに知られてるから無理だし……王都の宿って高いもんね……。仕方ないから、野宿するよ」

 

「だ、だめだよ! 王都の夜は冷え込むから、風邪ひいちゃうよ!」

 

「でも……」

 

 あなたは、ちらっちらっと、アリシアを見る。このまま「じゃあボクの家に泊っていってよ!」という展開を期待しながら。

 

「な、ならボクが実験のお礼として宿代も払うから、どこかの宿に泊まってよ。それじゃだめかな?」

 

「え……そこまでお世話になっていいのかな? ただでさえ命の恩人なのに、宿代まで払わせるなんて……(むぅ……ガードが硬い……)」

 

「いいんだよ。ボク、お金ならいっぱいあるから、気にしないで!」

 

 あなたは沈黙する。

 

 ダメだ、それでは距離が詰められない。あの超重量級おっぱいを揉むチャンスが永遠に訪れない。

 ダメ元でも、攻めるしかない。

 

 あなたは哀願するような表情で、アリシアを見つめる。

 

「アリシア、流石にお金まで払ってもらうのは悪いから、この工房に住ませてほしいな。屋根裏とか物置部屋とかでもいいから」

 

「……えっ」

 

 アリシアが面食らって、視線を泳がせる。彼女は戸惑い、机上の手をもじもじと動かしている。

 

 あなたは彼女の手に、自分の手を覆うように重ねた。

 

「……ッ⁉」

 

「お願い、アリシア。だめ、かな?」

 

 あなたはうるうると目を潤ませ、上目遣いでアリシアを見つめる。

 

 しかし、期待したようなリアクションはなかった。

 アリシアは半眼になる。失望を宿した、冷めた目であなたを睥睨する。

 

「……薄々感じてたけど、今確信に変わったよ。○○、詐欺師だよね?」

 

「へっ⁉ 詐欺師!?」

 

 予想だにしない言葉に、あなたは驚く。

 

「そうだよ! ボクに近付いて、いっぱいお金貢がせるつもりなんでしょ! そんな魂胆分かってるんだからね!」

 

「え、ちょっ、違うよ!」

 

「違わない! 絶体絶命のところを助けられたから恩を感じてるのかなって思ったけど、それでもおかしい! いきなり大好きとか言ってくるし! いきなり抱き着いてくるし! しかも恩人とはいえ初対面の女の家に、男性がホイホイ泊まろうとする? そんな訳ないでしょ! この財産狙いの嘘つき男!」

 

 アリシアは完全に頭に血が上り、かんかんに怒っていた。控えめで物腰穏やかな彼女の豹変っぷりに、あなたは目を丸くする。

 

 アリシアはきっとあなたを睨み、びしっと指を突き付けながら、確信の籠もった大声で結論を告げる。

 

「そして! なにより! ボクみたいなキモい処女にこんな好意的な美少年なんていない! はい論破! ボクの勝ち!」

 

「それは違うよ!」

 

 あなたは黙っていられず、強い語気で反論する。

 

「アリシアは可愛い! 一目見て目が離せなくなったよ!」

 

「それボクのお金騙し取った結婚詐欺師にも言われたよ! もう騙されないよ! 学習したから! 残念だったね!」

 

「えっ、そんなことあったの……?」

 

「あったよ! いっぱいあったよ! あの壺とか絵画とか見てよ!」

 

 アリシアが指差した先、部屋の隅に、壺、絵画、ナイトテーブルといった高級品が山積みになっている。

 

「あれがどうしたの?」

 

「全部ナンパされた相手に買わされたものだよ!」

 

「えぇ…………」

 

「男性アレルギーだから男性の友達すらいないし、男の人と話せるだけでも嬉しくて……ホイホイついていった結果がこのザマだよ!」

 

 アリシアはキレ散らかしながらも涙目になっていた。

 

「な、なんで捨てないの……?」

 

「いや、その、万が一あれを買わせた男の人がお金に困ってボクの所に来た時、『あっ、捨ててないんだ。大切にしてくれてるんだ……』ってワンチャン思ってくれるかもだから……ははっ、バカだよね。笑っていいよ……」

 

 アリシアは悲しそうに、自虐的な、乾いた笑いを漏らした。ひどく疲れ切った、生気のない表情だった。

 

「お金なら掃いて捨てるほどあるから損してもいいけど、これ以上男の人に入れ込んで裏切られるのは、嫌なの。だから、ごめんなさい。一緒には住みたくありません」

 

 アリシアは頭を下げた。もともと背丈の小さい彼女だが、より小さな姿に見えて、もの悲しかった。

 

 それでも、あなたは引き下がらない。『男性』という圧倒的アドバンテージを貰っておきながら、この程度の恋の障害で簡単に引いてはいけない。

 だから、諦めない。

 

「アリシアは可愛いよ! 透き通るような白髪も、あどけない顔立ちも、お人形さんみたいに可愛い!」

 

「それ三人目のナンパ師にも言われたよ」

 

「アリシアは大切な人なんだよ! 僕を助けてくれた恩返しをさせてほしい!」

 

「七人目の結婚詐欺師も同じこと言ってた」

 

「ぐうッ……!」

 

 ガードが硬すぎる。というか、これまで男性に騙されてきた過去が、強力な鎧となって彼女を覆っている。

 

 こうなったら、奥の手を出すしかない。他の男にはない、あなただけの必殺技を。

 

「アリシア! きっと、君は、僕の運命の相手なんだよ! 男性アレルギーなのに触れても平気なの、僕だけなんでしょ!」

 

 アリシアの瞳が揺れる。怒りと不信の渦巻いていた瑠璃色の瞳に、初めて動揺が現れる。

 

「で、でも……! 男なんて……!」

 

 アリシアは苦し気につぶやいた。

 

 あなたは実験卓を回り込んで、アリシアの隣に移動する。彼女は警戒して後ずさるが、あなたは更に距離を詰める。そして、彼女の手を取る。白磁のような、綺麗な手である。

 

「僕は、絶対に君を裏切らない。どうか、お傍に置かせてください」

 

 あなたは、アリシアの手の甲に口づけした。

 

 あなたが顔を上げると、アリシアは瞳を潤ませながら、噴火しそうなくらい真っ赤に赤面していた。

 

「あ、いっ、ひゃっ……! にゃ、にゃにをっ……!」

 

 アリシアはろれつが回らず、面白いようにどもっている。

 

 正直、あなたもかなり恥ずかしかった。体が熱くなる。耳まで真っ赤になりながら、それでもアリシアへと迫る。

 

「だめ、かな?」

 

 あなたは今度こそ、上目遣いでとどめを刺す。

 

「~~~~~~~~ッ! …………いい、よ……」

 

 アリシアは唇を噛みながらも、悔し気に、こくんと頷いた。

 

「ホント⁉ やった! ありがとう、アリシア!」

 

「で、でも! ちょっとでも高級品売りつけようとしたり、結婚を匂わせてお金貢がせたりしようとしたら、ぐるぐる巻きにしてナミネのところに送り付けるからね!」

 

「絶対にしないから安心して! だからナミネだけは本当に勘弁して!」

 

 かくして、あなたはアリシアの工房に住ませてもらうことに成功した。

 

 *

 

 アリシアは魔法に長けた冒険者であり、その才能を活かして色々な薬を作っているようだった。

 

「ごめん! 今日の午後お客さんが取りに来る薬作らないといけないの! 本当は早く○○の身体検査して、男性アレルギーの治療研究したいんだけど、ちょっと待っててもらえる?」

 

「なにか手伝えることある?」

 

「えっと、じゃあ、その木の実を砕いて、そっちの粉末と混ぜ合わせてほしいな」

 

 アリシアは実験卓に向かって何かの調合をしている。そして、あなたはすぐ隣の作業台で、大きなすり鉢とすりこぎ棒を使い、木の実を砕いていく。

 

 作業台は、実験卓より一段低い。しかも、あなたは力をこめて木の実をすり潰すため、自然と上半身が前傾する。

 つまり――アリシアから見て、あなたの胸元がかなり際どく覗き見える状態になる。

 

「……」

 

 アリシアが、時々あなたの胸へ視線をやってくる。バレるのが怖いのか、本当におっかなびっくり、といった様子である。あなたが体勢を戻し、次の木の実と粉末に手を伸ばすと、アリシアはびくっとなった。

 

 あなたが作業を再開する。すると、アリシアはホッとして、調合をしつつ――やっぱり、あなたの胸をちらちら見ている。

 

「むっ……! くぅっ……!」

 

 しかし、角度的に乳首のちょっと上までしか見えないのだろう。アリシアはもどかしくなってきたのか、だんだんチラ見する頻度が増えてきた。

 

「あー、ちょっと、やり辛いから、立って作業しようかな~」

 

 アリシアは遂に、わざとらしい言い訳をしながら立ち上がった。あなたは作業に集中している風を装っているため、アリシアの姿は見えない。

 

 しかし、分かる。あなたの胸に、火傷しそうな程の熱視線が注がれている。アリシアは角度的にバレないのをいいことに、思いっきり胸元をガン見している。

 

(うわあ……元の世界で、女性は胸や足への視線に気づいてるっていうけど、こういうことなんだ……。すごい、はっきり分かる……)

 

 あるいは、アリシアが分かりやす過ぎるのかもしれないが、はっきりと熱と粘度を帯びた性的な視線を感じられた。

 

「終わったよ、アリシア」

 

 あなたは黙々と作業を進め、仕事を終わらせた。

 

「あ、うん、ありがとう……」

 

 どうやら満足いくところまでは見えなかったらしく、アリシアは悔し気な顔をしていた。

 

 *

 

「じゃあ、身体検査、始めるね?」

 

 アリシアも調合を終え、遂に身体検査が始まる。これの結果次第では、男性アレルギー治療薬の開発が大きく進む、重要な検査である。

 

 あなたは寝台の上で横になる。硬い寝台と、白い天井。どこか病院の診察室のような雰囲気がある。

 ちなみに、検査の邪魔にならないよう下着は予め脱いであり、今は安い麻布の服のみを着ている状態である。

 

「ちょっと身体に触るけど、やましい気持ちとか一切ないから、誤解しないでね?」

 

 アリシアが不安そうな表情を浮かべる。満員電車ですぐ近くに女子高生がいるため痴漢冤罪を恐れる中年男性のような、弱弱しい自己防衛感のある雰囲気だった。

 

 あなたは素直に頷く。さっき胸ガン見してましたよね?とは言わないでおいてあげた。

 

 アリシアが、長い銅線を十本近く手に持つ。その先端にはいずれも、電極パッドのような楕円形の布製パッドが付いている。

 

「嫌だと思うけど、服、めくってもらっていい? 胸の下くらいまで」

 

「う、うん」

 

 あなたは服をまくり、あばらの半ばくらいまで肌をさらした。

 

 アリシアの目の色が変わる。

 

 さっきまでの「ボクは無罪です」と言いたげな雰囲気はどこへ行ったのか、鼻の下を伸ばしてちらちらとあなたのヘソを見ている。

 

 あなたの腹部は、冒険者業によって鍛えられている。引き締まった、硬い腹筋。普段は服と下着に覆われ、世の女性は決して見ることの叶わないヘソ。

 まさしく、女を惑わすためだけに生まれたような、天性の肉体。

 

 アリシアはぎこちなく、震える手で、布製パッドをあなたの身体に貼っていく。

 初めに、腕と首に二枚ずつ。

 

 次に、下腹部。脇腹。ヘソの上。と、徐々に上の部位へと上がっていく。アリシアの手はぶるぶると震え、あなたの身体に触れる度、尋常でない熱を帯びていることが分かる。

 

 無理もない。と思った。元の世界で例えるなら、最高に男好きする肉感的な身体の女性が、自分から服をまくりあげて身体を委ねているところに、自分が検査のため電極パッドを貼るためべたべたと触り放題の状況。

 極限の緊張と興奮で真っ赤になっても仕方ない場面だろう。

 

 そして、残るパッドは二枚。もっと際どい所に貼るしかない二枚である。

 

「はっ……はあっ……! む、胸にも貼らないといけないから、そ、そのっ、服の中、手、突っ込んでもいい……?」

 

「えっ」

 

「はあッ……! はあッ……! こ、これは、研究だから……! 多くのアレルギー患者を救うために必要な研究だから……!」

 

 アリシアは興奮状態のまま、検査の必要性を説く。その様子に、あなたは既視感を覚えた。

 あ、これ、あれだ。「ここを揉むとリンパの流れが良くなるんですよ~」とか言いながら女性の敏感な部分に触るマッサージ系のAVだ。

 

「だ、駄目だよっ……嫌がっちゃ……! ちゃんと検査しないと終われないからねっ……?」

 

「う、うんっ……」

 

 あなたはめくった服の裾を自分で持ち上げ、身体との間に隙間を作る。

 

 アリシアが寝台に乗り、あなたの上に跨る。そしてアリシアは恐る恐る、しかし確かな期待と興奮の籠もった手を、その中に突っ込んだ。

 

「んひゃっ……!」

 

 パッドがあなたの両胸に貼られる。しかし、乳首があるせいで、パッドが胸板に密着せず、少し浮いた状態になってしまう。

 

「はあッ……! はあッ……! ごめんねッ! 我慢してねッ……!」

 

「ひゃあっ!」

 

 アリシアの手が、あなたの両胸にあてがわれ、パッドを押しつけて貼るために抑えつけられる。

 

「すっごいいい匂いするぅ! はあッはあッ! ふうッ! ふうッ! ふぅうッッッッッ!」

 

 アリシアは猛牛のごとく、ありえない頻度で荒い息を吐いている。ただでさえ人形のように大きい目がギンッギンに見開かれて血走っており、顔は真っ赤に紅潮し、今にも飛び掛からんばかりの獣のようだった。

 

 男性アレルギーということは、男性に指一本触れられない人生だったはずである。つまり、アリシアは確実に処女である。処女が、初めて異性の両胸に、パッド越しとはいえ触れているのだ。

 発情しない、わけがなかった。

 

「か、勘違いしないでねっ! ちゃんと貼らなきゃ、検査できないからっ!」

 

「んっ、ひゃっ、ひゃあっ!」

 

 アリシアの手は何度も何度もあなたの胸を圧迫し、乳首とパッドの僅かな隙間を埋めようとする。

 ここまでしてもあなたが抵抗しないことで調子に乗ったのか、アリシアの人差し指が、あなたの両乳首に当てられる。パッドの隙間を埋めるという名目の元、乳首をぐりぐりっ♡と押し潰す。

 

「んひゃああああああッ!」

 

 あなたは女の子のような悲鳴を上げる。

 

 されるがまま。こっちはアリシアに何もできないのに、検査という名目を盾に、安全圏から身体を好き放題されているという状況に、不満が湧き起こる。

 

 いい加減、一言言ってやろうと思ったその瞬間、ドアノッカーの音が響いた。

 例の、午後に薬を取りに来るというお客さんだろう。

 

「あっ………………。ごめん、行ってくるね」

 

 アリシアは我に返り、真顔になった。検査機を起動した後、薬を持って、慌ただしく玄関へ駆けていった。

 

 やがて、玄関扉が締める音が響く。お客さんは帰ったはずなのに、アリシアはなかなか戻ってこない。ついに、ピーという音とともに、検査機も動きを止めた。

 

「お、おまたせ……」

 

 アリシアが戻って来た。

 

「検査、終わったみたいだよ」

 

「あ、そうだね……」

 

 アリシアはやけに大人しかった。しかし、どことなく幸せそうというか、軽い倦怠感と脱力感を纏っているように見える。

 いや、というか、来客が帰った後、戻ってくるのが不自然に遅かった。

 

 確実に、裏で自分を慰めてきたのだろう。

 

 あなたは起き上がり、アリシアへと尋ねる。

 

「アリシアって、男性のこと苦手、なんだよね……?」

 

「もちろんだよ! 男の人に興味なんてないよ! これっぽっちも!」

 

「嘘つくな! 『すっごいいい匂いするぅ! はあッはあッ!』とか言ってたくせに!」

 

「う、嘘じゃないもん! 本当に男の人なんて興味ないもん! 失礼じゃないかな! そういうのセクハラだよ!」

 

「この人ヤッバ!!!!!!!!!!!」

 

 *

 

 夜。あなたは目を覚まし、トイレに行った。

 

「あ、あれ? 僕の部屋どこだっけ?」

 

 しかしその帰り、自分の部屋がどれか分からなくなってしまった。長い廊下に同じデザインの扉がいくつも並んでいるため、判別できない。

 

「確かここだったような……?」

 

 あなたは大体の勘で扉を開けた。

 

「えっ」

 

「あっ」

 

 アリシアがいた。しかも、ベッドの上で、壁に背を預け、M字開脚のまま自分の下半身へと手を伸ばしていた。

 半ば布団をかぶっているので肝心な部分までは見えなかったが、顔は熟れたリンゴのように真っ赤で、心なしか息も上がっている。

 

 明らかに、オ○ニーの真っ最中だった。

 

「ご、ごめんね……」

 

 あなたはそっと扉を閉じた。

 

「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」

 

 工房に、アリシアの悲鳴が響き渡った。

 

 *

 

「うぅっ……ぐすっ……!」

 

 翌朝。朝食の時間なのでアリシアの部屋を訪れると、彼女は三角座りをして泣いていた。

 

 目許が腫れている。新雪のように白い髪は、今は解かれている。フレンチクルーラーの髪を解くと、可憐さより美しさが際立って、女神のように綺麗だった。

 

「ごめんね、アリシア。部屋間違えて入っちゃって。本当にごめん」

 

 アリシアは死んだ魚のような目であなたを見る。

 

「はっ、ははっ……わ、笑いなよ……。男が嫌い、男なんて信じない、とか言いながら、本当は異性の身体に興奮してオ○ニーしてるのがバレた処女を、思う存分笑いなよ……」

 

「え、いや、それは分かってたけど……」

 

「え⁉ な、なんで⁉」

 

「誤魔化せてると思ってたの⁉」

 

 アリシアは本気で驚いていた。

 

「製薬の作業中ずっと僕の胸ガン見してたし、検査の準備中もいやらしい手付きで触ってきてたじゃん」

 

「ば、バレてたの⁉ 完璧に誤魔化せてると思ってたのに!」

 

「無理あるでしょ⁉ 僕どんだけ鈍いと思われてるの⁉」

 

 アリシアはがっくりと項垂れた。

 

「あぁ……もう、男なんて……男なんてぇ……! もうやだぁ……! 男なんて大っ嫌い……! うぅ……! うわあああああああああああああああああああああああああああん!」

 

 そして、アリシアはギャン泣きし始めた。女児のようにわんわん喚きながら、大粒の涙をこぼしている。

 

「あ、アリシア……」

 

 アリシアは、苦しそうだった。

 

 元の世界でも、女性に相手にされない男性が、女性に対する不満や怒り、憎しみを募らせて、女性嫌悪を抱くという現象は珍しくなかった。

 特にアリシアは、男性アレルギーという体質や、男に騙されて貢がされたという過去もあり、より一層その男性嫌悪に拍車を掛けることになった。

 

 しかし、本当は男に触れたかったのだろう。

 元の世界の男性がそうであったように、思春期から青年期にかけての女性は底のない性欲を抱く。

 アレルギーのせいで指一本触れることは叶わないけど、本心では男の体に触りたいし、どエロいこともしたいのだろう。

 

 それでも、できない。叶わない。

 そんな悶々とした半生を送り、男に対する嫌悪と肉欲を沸々と募らせていった結果誕生してしまったのが、このモンスター処女なのだ。

 

「アリシア」

 

 あなたはベッドに乗り、アリシアを抱きしめた。

 

「えっ……?」

 

「苦しかったよね。今まで、よく頑張って耐えてきたね。偉いよ、アリシア」

 

 あなたは娘を慰める父親のように、アリシアの頭を撫でた。アリシアの辛さや寂しさを少しでも除けるように、彼女の体を抱きしめる。

 

「うぅ……な、なんで……? キモいでしょ……こんな女……」

 

「全くキモくない。年頃の女の子が、男の子の体に興味を持つのは当然だよ。むしろ健全だから、気にすることじゃないよ」

 

「でも……ボク、男が嫌いなのに……」

 

「いいんだよ。でも、男が全員悪い訳じゃないから、ちょっとずつ好きになってほしいな。僕も、アリシアに好きになってもらえるよう頑張るから」

 

 アリシアの瞳がじっと見つめてくる。瑠璃色の瞳が、恋慕のような、陶酔のような、色艶のある熱っぽさを帯びている。

 

「いいの……? ボク、○○と一緒に暮らしていいの?」

 

「うん、僕はアリシアと一緒にいたい」

 

「え、えっちな目で見るよ……?」

 

「どんとこいだよ」

 

「ほ、ホントにいいんだよね……? 許可もらったからね……?」

 

「うん、いいよ」

 

 あなたは胸を張った。アリシアは吹っ切れたのか、それとも納得いったのか、どこか爽やかな表情で立ち上がった。

 

 アリシアはドアノブに手を掛けた。そして半身で振り返って、凛々しい顔で一言――。

 

「○○をオカズにオ○ニーしてくる」

 

「いいんだよわざわざ言わなくて!!!!!」

 

 *

 

 夜。あなたはアリシアと食卓を囲んでいる。

 

「えっ⁉ アリシアって魔法学園の先生やってるの⁉」

 

「うん。ボク、冒険者業の傍ら、学園で教授もやってるの。毎週、月、火、水曜の三日間だけなんだけどね」

 

 魔法学園とは、王都にある魔法使い専門の学園である。

 アリシアはS級冒険者でありながら、魔法学園の教授でもあった。どうやら、お金に余裕があるというのは本当らしかった。

 

「アリシアって若いよね? 教授ってそんな簡単になれるの? アリシアが特別なだけ?」

 

「自分で言うのも恥ずかしいけど……ボクが特別なだけ、かな。才能を認められて、学園を卒業すると同時に特任教授として迎えられたの」

 

「ホントにすごいね⁉ やっぱりアリシアって天才なんだ!」

 

「そ、そんなおべっかで気分を良くするほど簡単じゃないからね!」

 

 アリシアはぷいっと顔を背ける。やっぱり『まだ信用してないです』という態度だった。

 

「え~本心なんだけどなあ。僕のことを助けてくれた時も、あんなに颯爽とさらってくれたし。すっごい胸がドキドキしたよ」

 

「んぐっ……そ、そう、……。いや、信じない、けど……」

 

 アリシアは頬を桜色に染めて、うつむきながら、もぐもぐとご飯を食べる。真に受けていいのかよくないのか葛藤しているようで、彼女の表情には迷いがあった。

 

「教授ってことは生徒に魔法教えてるんだよね? 大変?」

 

「大変というか……死にたくなるよ」

 

 アリシアは、生気のない真っ黒な瞳になった。

 

「えっ、な、なんで?」

 

「美男美女カップルの生徒たちに『先生ってカレシいるんですか~?』とか聞かれて何も答えられない惨めさ、想像できる?」

 

「うわっ……」

 

 元の世界で、年齢=彼女いない歴の男性教師が、カレシ持ちの女生徒から「先生カノジョいるの笑? ていうかいたことある笑? もしかして童貞だったり~笑」なんて言われた日には、耐え難い惨めさに襲われるだろう。

 

 自分より何歳も年下の生徒たちが、年相応に恋人とイチャラブして、青春を謳歌しているのに、自分はその幸せそうな姿を眺め、ひとり嫉妬に身を焦がすだけ。

 うん。死ねる。絶対病む。

 

「しかも同僚からは『アリシアにカレシできたら、私教授辞めるわ笑』とか煽られるし……。あいつらだって……! たまたま学生時代に男と付き合えただけで今はカレシいないくせにっ……! そんなんでマウント取らないでよ……!」

 

 アリシアがダークモードになってしまった。うつむいたまま、死んだ目でぶつぶつと呪詛を唱えている。

 

「と、ところでアリシア! 男性アレルギーの治療薬開発はどう? なにか進展はあった?」

 

「え、ああうん。あったよ。○○の体質を検査したおかげで、男性アレルギーを引き起こす原因物質が分かったの。だから、それへの免疫を作る特効薬を開発すれば、男性アレルギーは治療できると思う」

 

「どれくらい掛かるの?」

 

「三ヶ月もあればできそうだよ」

 

「えっ⁉ すごい!」

 

「うん、本当に凄いことだよ。○○のおかげだよ。これで、ボクも、他のアレルギー患者も救われる。本当にありがとう、○○」

 

「う、ううん。僕は何もしてないけど……でも、どういたしまして」

 

 アリシアは本当に嬉しそうだった。ここ最近暗い顔ばかりだったが、今だけは瞳に力強い希望を宿していた。

 

 *

 

 翌朝。

 あなたはなかなか起きてこないアリシアを起こしに、彼女の部屋を訪れた。

 

 しかし、扉越しに何度呼び掛けても返事はない。今日は月曜なので、このままだとアリシアは出勤時間に間に合わず遅刻してしまう。

 

「アリシア~? 入るよ~?」

 

 扉を開けて入る。

 アリシアはぐっすり眠っていた。相変わらず、神秘さすら灯す美しい白髪である。童顔と相まって、神々しさと可憐さの調和した、奇跡のように可愛い寝顔である。

 

「おーいアリシア」

 

 あなたはアリシアの肩を揺さぶる。アリシアは「うーん……」と呻きながら、半目を開けてあなたを見つめる。

 

「いただきまぁす……」

 

「へっ?」

 

 アリシアは寝ぼけたままあなたの服をまくり上げ、あなたの左乳首にしゃぶりついた。

 

「んむっ……ちゅぅううっ……おいしい……すきぃ……」

 

「ちょ、アリシア!?」

 

 あなたは思わず大声を上げ、アリシアの肩をタップした。それでアリシアの意識が覚醒したのか、彼女は我に返り、ぱちぱちと瞬きをした。

 

「ちゅぅううううううううううううううううっ!」

 

「いやなんでもう一回吸ったの!?!?!?!?!?!?」

 

 乳首吸い妖怪アリシアの肩を掴んで引き離す。しかし、アリシアは超然とした表情をしていた。

 

「いやもうどうせ捕まるなら思う存分吸ってやろうと思って」

 

「ヤケにならないで! 突き出さないから!」

 

「えっ…………?」

 

 アリシアが愕然とする。ぱっちりとした瑠璃色の瞳があなたを見上げる。

 

「それより、ほら、学園に行かなきゃでしょ? そろそろ起きて朝ごはん食べよう?」

 

「ま、マジ? これ許されるの? ド犯罪だよ?」

 

「いいよ」

 

「○○頭おかしいんじゃないの?」

 

「流石にアリシアから正気を疑われるのは心外だよ!!!!!」

 

 *

 

 アリシアは先に出勤した。あなたは軽く家事を済ませた後、王都のギルドに行ってクエストを受けようかと思ったところで――。

 

「あ、アリシアお弁当忘れてるじゃん」

 

 今朝の乳首吸い事件のせいで慌てていたのか、アリシアはお弁当を忘れていた。

 なので、届けてあげることにした。

 

 そして、三十分後、あなたは王都の魔法学園まで来た。守衛に事情を説明すると、守衛同伴なら職員室まで行ってもよいと許可してもらえた。

 

 あなたは職員室に入る。そこには、アリシアを初めとして、大勢の教授がいた。

 

 あなたの入室により、ざわっ!と職員室内が騒めき立つ。突然絶世の黒髪美少年が現れたことで、女性職員たちはみんな驚愕していた。

 

「うぇっ!? ○○、どうしてここに⁉」

 

「アリシア、お弁当忘れてたよ。はい、どうぞ」

 

「あっ、ありがとう、○○。わざわざ届けに来てくれて!」

 

 ざわわわわわわっ!と職員室が騒然となる。アリシアの近くに座っていた女性教授たちが、アリシアに詰め寄る。

 

「ど、どういうことよアリシア! なんでこんな美男子が貴女のお弁当を届けに来てるのよ!」

 

「えっ……えっと、なんというか……」

 

 アリシアは返答に困っていた。なので、あなたが代わりに応えることにした。

 

「僕とアリシアが同棲してるからですよ」

 

「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ⁉」

 

 地鳴りのように、女性職員たちの絶叫が轟いた。

 

「あ、アリシア!? なにかの冗談よね⁉」

 

「そ、そうよ! アリシアがこんなカッコいいカレシと同棲なんてあり得ないわ! 嘘なんでしょ! ねえ! そうって言ってよ!」

 

「えっと、ボクと彼が同棲してるのはホントだよ! あ~あ~! 困ったなあ~! バレちゃったか~!」

 

 アリシアは得意げに、鼻が高そうに、めっっっっっちゃニヤニヤしていた。

 一方、女性職員たちは皆世界の終わりのような目をしている。

 

「アリシアの裏切り者ぉ……!」

 

「嘘……! アリシアだけは絶対仲間だと思ってたのにぃ……!」

 

「あー。なんか、こう……死のうかなあ……?」

 

「あっ学園長~! アリシアにカレシできたので、本日付けで教授辞めま~す! 今までお世話になりました~!」

 

 阿鼻叫喚の大地獄だった。

 

 あなたはちょっとアリシアに花を持たせてあげようと思って、彼女に一歩近づき、ほっぺにキスをした。

 

「お仕事頑張ってね。アリシア」

 

「……ッ⁉ う、うん! またね! ○○!」

 

 アリシアは最高に上機嫌で、喜色満面ニッコニコだった。彼女はあなたを笑顔で見送り、どや顔で周囲の女性職員たちを眺めている。

 

 楽しそうで何よりだった。

 

 *

 

 それから何日か経った夜のこと。

 

 あなたはなんとなく、早めに風呂を出た。そして、廊下を歩いて自分の部屋へ向かう。

 

「僕の部屋は、壁から七つ目……っと」

 

 以前のオ○ニーバレ事件のようなことが起きないよう、あなたはしっかり自分の部屋を確認してから入室するようにしていた。

 

 ガチャリと扉を開く。

 

「えっ」

 

「えぇ……」

 

 アリシアがあなたのベッドで、あなたの枕に顔を埋めながら、オ○ニーしていた。

 

「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」

 

「なんで悲鳴上げられるの⁉ 被害者こっちだよ!!!」

 

 アリシアは素早く衣服を整え、床に土下座した。

 

「ごめんなさい。つ、つい魔が差して……」

 

「う、うん……」

 

 流石にあなたも、苦笑いすることしかできなかった。アリシアは顔を上げ、しょんぼりとした表情であなたを見つめる。

 

「い、言いたいことがあるならハッキリ言いなよ……」

 

「アリシアいつ見てもオ○ニーしてるね」

 

「ホントにハッキリ言わないでよ! 建前があるでしょ建前が!」

 

「そう言われても……」

 

 なぜか強気に出てくるアリシアに困惑するあなた。アリシアは正座したまま、どこか非難するような目で見てくる。

 

 流石に、そろそろ一言注意しておかなければ。

 

「アリシア、男の人への性欲こじらせてるのは分かるけど、むっつりスケベも度が過ぎるよ」

 

「ひどい! どうしてそんなこというの⁉」

 

「胸に手を当てて考えてみなよ!」

 

「えっ⁉ 触っていいの⁉」

 

「自分のだよ!!!!!!!!!!!!!」

 

 *

 

 さらにまた別の日。

 

「制服デートがしたいです!」

 

 アリシアは真剣な顔で、そう頼み込んで来た。

 

「制服デート?」

 

「うん。人生で一度でもいいから、魔法学園の制服を着て男の子と街を歩いてみたかったの。○○、お願い!」

 

「あ、もしかして、青春時代を取り戻したい的な?」

 

「うっ……まあ、はっきり言っちゃうとそう、です……。お願い! 夢だったの! 一回だけでいいから付き合って!」

 

 アリシアは胸の前で手を組んで懇願してくる。真冬の海のような瑠璃色の瞳には、めらめらとした意思が燃えていた。

 

「いいけど、僕は魔法学園の卒業生じゃないから、制服なんて持ってないよ?」

 

「あ、大丈夫だよ。ボクが持ってるから」

 

 アリシアはそういうと、紙袋の中から男子生徒用の制服を取り出した。

 

「なんで持ってるの……?」

 

「いつか男の子と制服デートする時のために買っておいたの」

 

「そ、そう……」

 

 さらっと言ったが、なかなかヤバい。元の世界で、男性教師が女子生徒用制服を持っていたらと考えると、まあまあな問題である。

 

「じゃあ、着替えてくるね」

 

 あなたは制服を受け取り、自分の部屋に戻って着替えを済ませた。

 そして、あなたは工房の前で、アリシアを待つ。

 

「おまたせ、○○」

 

「……ッ⁉」

 

 現れたアリシアを見た瞬間、あなたに衝撃が走った。

 

 清潔感のある真っ白なシャツと、浅い紫(アイリス)を基調としたブレザーの上に、濃い紫(ブルー・マジック)のケープを羽織っている。肩の部分に黄金の校章があしらわれており、異国情緒あふれる服装である。

 下は膝まで届くか届かないかという丈のスカートで、肌色の生足が目に眩しい。

 

 何より目を惹くのは、白いシャツとブレザーを押して大きく膨らんだ胸元。女の子の柔らかさがそのまま押し出された、ふくよかな巨峰。

 

(えっっっっっっっっっっっっっっっっっっろ! でっっっっっっっっっっっっっっっっか!)

 

 露出などほとんどない、王都魔法学園の指定制服。勉学以外の目的を想定していない筈の制服が、肉感的な女の子の体に纏われることで、どうしようもないほど蠱惑的で官能に訴えてくる。

 

 若い女の子が、制服を着ている。

 

 ただ、それだけで、結局一番性的なのだ。ビキニやバニーガールのような、『エロ』を主目的とした格好より、ただの制服が最も情欲を煽るのである。

 

 もし元の世界で、この姿のアリシアが街を歩けば、十人の男のうち七人が振り向き、二人が声を掛け、一人は理性すら失って飛び掛かるだろう。

 それ程までに、アリシアの制服姿は、暴力的で煽情的だった。

 

「可愛いね……アリシア……好き……」

 

「えっ……あ、ありがとう……。○○もカッコイイよ。こんな美少年とデートできるなんて、夢みたい……」

 

 アリシアもあなたを見て、陶然としていた。瑠璃色の瞳がキラキラと輝き、あなたの姿をつむじから爪先からまでじっくりと見詰めている。

 

「じゃあ、行こうか」

 

 あなたとアリシアは、王都の主要街道を歩く。若者に人気のスイーツ店や、サーカスや演劇などの舞台、撞球やバーなどの複合娯楽施設などが立ち並んでいる。

 

 道行くアリシアは、気分が良さそうだった。ただ歩いているだけなのに、ニッコニコで幸せそうにしていた。

 

「あ~ホントに夢みたい……いまボク、男の人と制服デートしてるんだあ……」

 

 アリシアは陶然と、夢見心地でそう呟いた。あなたはもっと喜ばせたいと思った。

 

 勇気を出す。あなたは隣を歩くアリシアの手を、ぎゅっと握った。

 

「!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

 アリシアの目が見開かれる。病的なほどに日焼けしていない肌が真っ赤に染まり、面白いように目が泳ぎ出す。

 

「い、いいの……⁉」

 

「デートだからね」

 

「あ、やば、最高……死にそう……」

 

 アリシアも手を絡めてきて、あなたとアリシアは恋人繋ぎで街を歩く。道行く女性たちが、すんごい嫉妬と憎悪の籠もった目であなたたちを見ている。

 

「あぁ……ボク、この視線知ってる……。普段、ボクが道行くカップルに向けてる視線だ……」

 

「あはは、気持ちは分かるよ」

 

 あなたとアリシアはカフェに入ったり、ナインボールで遊んだりした。

 

 その後、町を歩いていたあなたは、あるお店を発見する。同時に、あなたの脳内に、悪いアイデアがひらめいた。

 

「ねえ、アリシア、このお店入ろうよ」

 

「えっ⁉ こ、ここって……」

 

 男性用ランジェリーショップである。別に女性の入店が禁止されている訳ではないが、心理的に入りづらい場所である。

 

「いや、ボクは外で待ってるよ。なんか捕まりそうだし……」

 

「カップルにしか見えないから大丈夫だよ」

 

「で、でも……「いいから行こうよ? ね?」

 

 尻込みするアリシアを、あなたはさりげなく引っ張っていく。手を繋いでいるのが、思わぬ形で功を奏した。

 

 店内に入る。当然、男性用の下着が陳列されている。

 

「アリシアはどんな下着が好き?」

 

「え゛っ……⁉ ど、どんなって……⁉」

 

 アリシアはきょどりだす。あわあわと慌てて、周りを見回している。どんな回答をすればドン引きされないか、必死で考えている様子だった。

 

「こ、これとか、どうかな……?」

 

 恥ずかしがる女児のように、アリシアはひどく小さな声で、上下セットの白いTシャツとパンツを差し出した。

 

 無難は無難である。確かに、これなら普段使いもできるだろう。しかし、そんな平凡なリアクションを見たいわけではないのである。

 あなたの心の中の悪魔が、もっとアリシアを辱めろと命じてくる。

 

「聞き方変えるね? アリシアは僕に、どういう下着着てほしい?」

 

「ぶふぅうッ⁉」

 

 アリシアが噴き出した。顔を真っ赤にして、ぱくぱくと口を開いている。

 

「な、なに、言って……⁉」

 

「アリシアにはいつもお世話になってるし、僕、アリシアの選んだ下着着てあげるよ? ほら、正直になりなよ?」

 

「う、うぐぅっ……! こ、これと、あとこれも……着てほしい……!」

 

 アリシアが選んだのは、黒いレースのパンツと、ワインレッドのパンツの二枚だった。

 

 アリシアは爛々と期待のこもった瞳で、じいっとあなたを見つめている。

 

 あなたは、パンツを持ったままのアリシアに近付き、耳元に唇を寄せて囁いた。

 

「ふふっ笑。アリシアのえっち。本気にしちゃったんだ笑」

 

 瞬間、アリシアが沸騰し、頭から白煙を噴き出した。顔はマグマのように赤く、瑠璃色の瞳はうるうると涙目になっている。

 

「え、い、今の、冗談だったの……? ご、ごめっ……「ふふっごめん、嘘だよ。ちゃんと着てあげる。アリシアが可愛いから意地悪しちゃった」

 

 あなたはアリシアに囁き、おまけにふぅ~っ♡と吐息を吹き込んだ。

 

「ぴえ゛ッ……!」

 

 アリシアが再噴火し、完全にオーバーヒートして動かなくなる。

 

 あなたは流し目で嗜虐的な笑みを浮かべながら、パンツを持って会計しに行った。

 

 *

 

 あなたは、人生初の制服デートを満喫できた上、アリシアのどエロすぎる制服姿を目の当たりにして、テンションが上がっていた。

 

 あなたの頭の中の悪魔は止まらない。男性経験の少ないアリシアを思う存分からかって弄びたいという欲望が、際限なくあふれ出してくる。

 

「ちょっと着替えてくるね」

 

 あなたは自分の部屋に戻り、紙袋からパンツを取り出した。そして、下着だけを黒いレースのパンツに穿き替えた。

 

「お邪魔するね、アリシア」

 

「うん、どう、ぞ……?」

 

 あなたはアリシアの部屋を訪れた。アリシアは既に部屋着に着替えている。

 

「あ、あれ? 着替えてくるんじゃなかったの?」

 

「うん。着替えてきたよ」

 

「え、で、でも――「下着だけ、アリシアの選んでくれたやつに変えてきたんだ」

 

 アリシアがピシッと固まる。

 あなたはベルトを緩め、ぎりぎり見えるか見えないかのところまでズボンを下げる。

 

「ほら、黒いパンツと赤いパンツ、どっち穿いてるでしょうか?」

 

 ごくり、と生唾を飲み込む音がした。アリシアの目はギンッギンに見開かれ、あなたの下腹部を凝視している。

 

「そ、そんなの……分かんない、よ……」

 

 あなたはそのまま、アリシアのベッドに寝転がる。瞬間、アリシアは驚愕して、その場に立ち尽くしたまま固まる。

 

「あれあれ? なんで固まっちゃったのかな?」

 

 経験がないことを異性から煽られるという恥辱を、童貞のあなたはよく知っている。

 しかし、調子に乗ったあなたは、アリシアを慮って寄り添ってあげたいという優しさよりも、アリシアの痴態を煽りたいという欲が勝った。

 

「ふふっ笑 男がベッドに寝転ぶだけで、何も言えなくなっちゃうんだ笑 可愛いね、アリシア笑」

 

 アリシアの額に青筋が浮かぶ。拳を強く握り締め、爆発しそうな程の憤りに身を焦がしているのが分かる。

 

「……うぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぃいっ! さぞかし楽しいだろうだねえ! こんな処女を弄ぶのは! ボクだって黒髪美少年だったら処女をからかって遊ぶよ!」

 

 アリシアは瑠璃色の瞳に涙を滲ませ、怒りに表情を歪ませながらあなたを睨む。

 

「ごめんね。めっちゃ楽しい。アリシア、面白いね」

 

 ぶちっ!と何かが切れる音がした。アリシアの雰囲気が変わる。シャレになる怒りから、シャレにならない激怒へとボルテージが上がったのが、肌で分かる。

 

 まずい、やりすぎた。あなたは慌てて立ち上がろうとした、その瞬間――アリシアの手が閃き、あなたの腕に痛みが走った。

 

「……ッ⁉ え、あ、なに、これ……⁉」

 

 起き上がれない。身体に力が入らない。

 アリシアは静かな憤怒を湛えたまま、動けないあなたを見下ろす。その手には、空の注射器が握られていた。

 

「筋弛緩剤だよ。一時間くらいは、まともに動けないと思うよ」

 

「えっ、な、なんで……」

 

「ふふっ……」

 

 アリシアは笑った。その瞳に、妖しい光を灯して。

 

「今なら、ナミネの気持ち分かるよ。こんな幼なじみがいたら、監禁して分からせたくもなるよ」

 

「ちょっ、それは駄目っ! 監禁、ダメ、ゼッタイ!」

 

「うるさい! この性悪びっち!」

 

 アリシアがあなたの上に跨ってくる。柔らかなおっぱいが、どたぷんっ♡と勢いよく揺れた。

 

「ふ、ふふっ……。これは、復讐だよ……。今までボクを一度も尊重してこなかった『男』への、復讐……。ボクをバカにして弄んだ男を、めちゃくちゃにしてやる……!」

 

 お人形さんのような瑠璃色の瞳が血走って、普段の愛らしさや可憐さは微塵もなく、今にもあなたに食らいつきそうな程ギンッギンに見開かれていた。

 

 ああ、これから、メスの強さを知らず愚かにもからかった罰として、めちゃくちゃに犯されるのだ。

 ついに、この時が来たのだ。長年捨て損ねた童貞を、やっと捨てられ――。

 

 アリシアが、あなたの服の裾をめくりあげ、お腹に触れた。

 

愚昧なる牡犬に、淫具の首輪を(ラブリースレイヴ・スチューフント)

 

 瞬間、あなたのへそ下に、ピンクの紋様が浮かび上がる。

 

 あなたの身体の奥から、猛烈な熱が込み上げる。空気が甘い。アリシアの、女の子特有の柔らかい香りを吸い込むと、蕩けるように意識がまどろむ。

 アリシアの人差し指があなたの淫紋をつつーっ♡となぞると、背骨を貫通するような気持ちよさが走って、あなたは嬌声を上げた。

 

「な、なに、これっ……?」

 

「奴隷契約の淫紋だよ。古代の王様が、男を従わせるときに使った、古い魔法なの。この状態で術者とセックスすると、被術者は二度と他の女とセックスできなくなるし、全部の命令に逆らえなくなっちゃうの」

 

「え゛っ」

 

「もちろん、最初の命令は『二度とこの工房から出るな』で、二つ目の命令は『一生ボクだけを愛して、いちゃらぶセックスすることだけに幸福を感じろ』だよ」

 

「……ッ⁉」

 

 やばい。マジでやばい。からかいすぎた。流石に奴隷契約で一生監禁コースはシャレになっていない。

 

「ご、ごめん! やりすぎたよ! お願いだから許して! アリシア!」

 

「ふふっ……だーめ♡ 監禁して薬で洗脳して分からせてあげるから♡」

 

「それ先月ナミネがやってたやつ!!! 帰ってきて白馬のお姫様! カムバーック!!!」

 

 あなたは叫ぶが、その肩をがっしりと掴まれて動きを封じられる。

 

 アリシアのフレンチクルーラーの髪がほどけ、さらさらの美しい髪があなたの頬に垂れた。間近に、アリシアの綺麗な顔がある。興奮した猛牛のような熱い吐息が、浴びせられるようにあなたの顔へかかる。

 

 その瞳に、爛々と肉欲が光る。

 そこに、かつてあなたを颯爽と救い出した凛々しい女性はいない。ただ性欲を剥き出しにしてあなたを食べることしか考えていないケダモノである。

 

「ほらっ♡ がんばって抵抗しなよ♡ 人権なくなっちゃうよ♡?」

 

「いやっ! やめてっ! 謝るからっ! ごめんなさいっ!」

 

「あはっ♡ 終わっちゃえ♡ 人生終わっちゃえ♡ 散々見下してた処女に奴隷契約結ばされて、二度と逆らえないカラダになっちゃえ♡」

 

「やだっ……! やだあっ……!」

 

「じゃあ、本番だよ♡ 人権終了童貞喪失セックス、いっぱい楽しんでね♡ ○○♡」

 

 アリシアの手が、あなたのシャツのボタンを乱暴に弾き飛ばした。

 

 遂に、年貢(どうてい)の納め時か――と観念した、その瞬間。

 

業火に灼かれて灰となれ(フレアパッショナート)!」

 

 窓ガラスを突き破り、火炎と共に何者かが部屋に飛び込んできた。

 

 栗色の髪。くるみ色の瞳。小さな背丈に、あどけない顔立ち。――あなたの天敵にして、たった一人の幼なじみ。

 

「ナミネ!」

 

「ごめん、遅くなって。アリシアの工房の場所分かんなくて……」

 

 ナミネは燃え盛る炎を纏い、アリシアを睨む。

 

「○○を返して」

 

「やだよ。○○はボクのものだもん。今からイチャラブ制服えっちするんだもん。出てってよ」

 

「……一応聞いておくけど、合意の上?」

 

「ど、奴隷契約は合意の上じゃないよ! 助けてナミネ!」

 

 あなたはナミネに助けを求めた。半分くらいは自業自得だが、それでも人権を捨てることまでは同意していない。

 

 ナミネは嘆息し、改めてアリシアを鋭い視線で見遣る。

 

「アリシア、外出てよ。決着つけたいから」

 

「いいよ。ボクと○○の愛の巣を壊されたら困るもん。外で戦おう」

 

 ナミネとアリシアが壊れた窓から外へ飛び出す。アリシアは翼の魔法で空を飛び、ナミネも浮遊の魔法で宙に浮いていた。

 

 あなたは窓際まで這って行き、空を見上げる。

 

 中空で、二人のS級冒険者が向かい合う。『奏者(アマデウス)』と『魔女(キルケ―)』。この国の誇る最強格の魔法使いが、雌雄を決しようとしていた。

 

死の行進曲/戦乙女の黙示録より(ブリュンヒルデスマーチ)!」

 

地より天へ、神撃つ雷樹は生い育つ(アウア・エウア/ディベルドンナーガウル)!」

 

 初撃から、互いに全力。

 

 ナミネが瘴気を、アリシアが雷撃を放った。闇の奔流と蒼い稲光が激突し、爆ぜるような極光が王都を白く染める。

 

 その余波がまだ冷めやらぬ内、二撃目三撃目の爆発音が轟く。空に、炎が、雷が、光が、闇が、氷が、目まぐるしく駆ける。

 

「もう○○はボクのだもん! ナミネみたいな絶壁女に監禁されるよりボクと一緒に過ごす方が幸せなの!」

 

「誰が絶壁女よ! 男と話すだけできょどる癖に性欲だけは一丁前で年中発情してる根暗女より私の方が良いに決まってるでしょ!」

 

 氷炎、大熱線、颱風、暴風雨、閃光、大爆発。ありとあらゆる災害が、王都上空で爆ぜる。

 

 口汚く悪罵し合う内容にさえ目を瞑れば、神々の黄昏(ラグナロク)のごとく。神の戦争のような、人智を超えた大規模な魔法の応酬が繰り広げられる。

 

 互いに全霊の魔法を撃ち尽くし、魔力も体力も残りわずか。もう、次の一撃が限界。S級同士の長い戦いも幕引きとなる。

 

 アリシアが掌を天高く掲げた。そして、勢いよくナミネへと振り下ろす。

 

天より地へ、炎の剣は人代の終焉を告げる(エウア・アウア/スルトフレアアオフブルム)!」

 

 灼熱が吹き荒れ、空が深紅に燃える。火山噴火のごとき大火炎がナミネへと迫る。

 

万象無に帰す不日の月光(サイレンス・ムーンライト)!」

 

 ナミネの手から、極大の光線が走る。大火炎と激突し、爆発と爆音を世界に轟かせた。

 

「――ッ!」

 

 煙が晴れると、ボロボロの二人が相対していた。もう、攻撃のための魔力は残っていない。滞空するのに精一杯の状態である。

 

「ナミネぇえええええええええええッ!」

 

 アリシアが翼をはためかせ、ナミネに突っ込む。その手には、注射器が握られている。最後の最後に取っておいた隠し玉。恐らくは、筋弛緩剤か何かの薬物だろう。

 

 ダメだ。これは、ナミネの負けだ。あなたはそう悟った――。

 

「届かないよ、アリシア」

 

「えッ……⁉」

 

 注射器がナミネに刺さる寸前――ナミネがアリシアの腕を掴むと、アリシアの身体がぐるんと一回転して、真っ逆さまに地面へ落ちた。

 

(な、投げ飛ばした……⁉ 非力なナミネが……⁉)

 

 ナミネはアリシアを追って地面に降りた。あなたも窓枠に寄りかかって立ち上がり、地面を見下ろす。そこにあった光景は――。

 

「私の勝ちだよ。アリシア」

 

「ぐッ……」

 

 アリシアを組み伏せ、注射器を奪ってアリシアの首に突き付けたナミネの姿だった。

 アリシアは愕然として、ナミネを仰ぎ見る。

 

「うそ……なんで……」

 

「私たち魔法職は、魔力が切れたら戦えない。だから、ちょっとだけ体術も鍛えておいたの。……どっかの浮気者を懲らしめるためにもね」

 

 ナミネはアリシアの腕を掴んで、再び浮遊する。そして、あなたのいる部屋まで飛んできて、アリシアを床へ放り投げた。

 

「さて、いろいろ聞きたいことはあるけど……」

 

 ナミネはあなたに近寄る。そして、淫紋をまじまじと見ながら頬を引きつらせる。

 

「うわっ、えぐっ……マジで奴隷契約の淫紋じゃない……」

 

「う、うん……危ないところだったよ。助けてくれてありがとう、ナミネ」

 

「ふんっ! このバカ! 安易に女誘ってるから本気にされるの! もっと、こう、良い距離感の女にしとけばいいのに……!」

 

「そ、そうだね。反省するよ……ごめんなさい……」

 

 あなたはしょんぼりと項垂れた。ナミネが助けに来てくれなかったら、マジで人権を失うところだった。

 

「あと、私も、ごめんね……? 監禁するとか、冷静じゃなかった……。許して、○○……」

 

 ナミネは悲し気な瞳をしていた。申し訳なさに顔が歪み、くるみ色の瞳は切望に潤んでいる。

 その姿に、あなたも少しだけ、心を揺さぶられた。

 

「その……本当に一生監禁されるのは嫌だけど、それくらい離れるのが寂しいって思ってもらえて……その、嬉しかった、よ……」

 

「~~~ッ⁉ ……ば、ばかっ……」

 

 あなたは顔を赤くする。大喧嘩の末に本心を伝えたせいか、ひどく照れくさくて、でも、どこか温かった。

 ナミネも頬を紅潮させ、耳まで真っ赤になりながらも、口角が上がっている。

 

「ちょっと!!!!!! 意味わかんないよ! なんでいい感じになってるの!」

 

 アリシアは恨めしそうな目で、あなたとナミネを睨みながら叫ぶ。

 

「ふざけないでよ! 幼なじみとかズルいよ! どうせ帰ったら仲直りラブラブセックスするんでしょ! ああああああああああああああああああああ自分で言ってて脳が破壊されるううううううううううううううううううッ!」

 

 アリシアが発狂してのたうち回った。かと思ったら、急に静かになって、ぼろぼろと大粒の涙をこぼしながらあなたを見つめる。

 

「やだよぉ……行かないでよぉ……」

 

「うっ……」

 

「童貞ちょうだいよぉ……」

 

「いや、流石に一生奴隷はちょっと……」

 

 小動物のように潤む瑠璃色の瞳に、あなたの心が揺れる。

 

 そう。問題なのは、奴隷契約だけである。それさえなければ、ちゃんとお付き合いしたいくらい魅力的な女性なのだ。

 

「ねえナミネ、僕とアリシアが恋人になるのは許してくれないよね?」

 

「うん」

 

「最悪セフレとかは……「電気椅子100時間と指全部なくなっちゃうの、どっちがいい♡?」

 

「ごめんなさいなんでもないです!!!!!!!!!!!!」

 

 無理そうだった。アリシアを諦めるのは血涙が出そうなくらい惜しいが、命の方が惜しい。

 

 あなたはナミネと共に、アリシアの部屋を出て、ドアを閉める。直前にアリシアへと声を掛けた。

 

「そ、その……アリシア、もうすぐ男性アレルギーの治療薬完成するんだし、その後頑張ってカレシ作ってね……」

 

「うわあああああああああああああああああああああああああん! うらぎりものぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 号泣するアリシアを残し、ドアを閉める。直後、ナミネが脱力してあなたへと倒れ込んだ。

 

「な、ナミネ⁉」

 

「もう無理、動けない。一歩も動けない。送っていって……」

 

 ナミネは疲労困憊だった。魔力を使い切るまで戦い、精魂尽き果てていた。その表情もげっそりとして衰弱している。

 

 あなたはナミネをお姫様抱っこした。

 

「ぅえっ⁉ ちょ、この抱え方なの⁉ おんぶじゃなくて!?」

 

「え、あっ、そっち!? いや、普通そっちだよね! ごめん!」

 

 慌てて抱え直そうとするあなた。しかし、ナミネががっしりとあなたの首をロックした。

 

「べ、別に嫌とは言ってないでしょ! ほら、さっさと歩いて!」

 

「え、そ、そう……」

 

 あなたはナミネをお姫様抱っこしたまま、ナミネの家へと向かった。

 道中、ナミネはずっと頬を桜色に染めたまま、どこか満足そうに微笑んでいた。

 

 *

 

 ナミネの家に戻ってくる。疲れ切ったナミネを彼女のベッドまで運んで寝かせる。

 

「もう大丈夫?」

 

「うん、ありがとう……助かった……」

 

 ナミネはいつになくしおらしい。こんな小動物のような姿は、滅多に見れない。しかし、あなたもどこか気まずくて、優しいくるみ色の瞳から目を逸らした。

 

「うん……?」

 

 テーブルの上に、薬品のビンが箱詰めにされている。恐らく、初めてアリシアと会ったあの日、彼女が持ってきた薬なのだろう。

 

「そういえば、結局なんの薬注文したの?」

 

「あっ、ちょ……⁉」

 

 あなたはビンを一本手に取った。

 

 そのラベルには――『貧乳でしか興奮できなくなる薬』と書かれていた。

 

「……ご、ごめんね。ナミネ」

 

「~~~~~~~~~~~ッ!」

 

 ナミネが赤鬼のように顔を赤くし、怒りに表情を歪ませながら立ち上がった。

 

「え、ちょ、疲れて動けなかったんじゃ……⁉ ていうか、これは僕悪くないよね⁉ ちょ、来ないで、待っぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!」

 




 『あなた』

 性別:男性
 種族:ヒューマン
 職業:冒険者(Eランク)
 備考:おっぱいが大好き


 『ナミネ』

 性別:女性
 種族:ヒューマン
 職業:冒険者(Sランク)――【奏者】
 備考:


 『モモ』

 性別:女性
 種族:ヒューマン
 職業:冒険者(Cランク)
 備考:巨乳


 『マリン』

 性別:女性
 種族:ウンディーネ
 職業:冒険者(Fランク)
 備考:たわわ


 『リーゼロッテ』

 性別:女性
 種族:ヒューマン
 職業:冒険者(Sランク)――【剣聖】
 備考:ぼいんぼいん


 『ユンユン』

 性別:女性
 種族:獣人
 職業:中華店店長
 備考:たゆんたゆん


 『シャルル』

 性別:女性
 種族:ヒューマン
 職業:探偵
 備考:豊満


 『アリシア』

 性別:女性
 種族:ヒューマン
 職業:冒険者(Sランク)――【魔女】
 備考:巨峰
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。