詩織が目を覚ますと、異常な倦怠感に悩まされていた。
「うぅ…」
唸り声をあげる。
周期と体調的に、気分が和らいだり、
マシになったりすることは、欠片だってありはしない。
このまま一切動きたくはない。寝たい、一心だった。
その痛みが、去ろうとするまでは、異常に時間がかかる。
時刻は朝の七時半。すぐ手が届く範囲に、ポーチを置いてあった。
緩慢な動きでそれを手に取り、中を探る。すぐにそれを掴み取った。
しかし、何もなかった。
「…最悪」
「詩織?」
と、タイミングよく、風太郎が詩織の元へ。
「あぁ…」
言葉ですらない唸り声が止まらないのは、ただでさえ、最悪な気分が、
その更に下まで落ちて行ったから。
床に落ちてから、更に抉ってめり込んでいる。
底の底まで落ちた気持ちは、億劫どころか、
こんな痛みと気分の悪さで、一体何を学べるというのか。
唯一の救いは、まだ、比較的…本当に、比較的に痛みが軽いことだけ。
頭痛はすれど、猛烈な吐き気は襲ってきてはいない。
この後、悪化しないとも言い難いけれど、今ならば手を打てる。
好転しないとはいえ、動かないといけない。
風太郎に頼むしかない。詩織は、そう考えるのだった。
「ふ、風太郎くん…」
「詩織!ど、どうしたの!?」
「み、水!水が欲しい…!」
「わかった!」
詩織を襲っているのが、
数年前から、月に一度訪れる、女の子の日。
とはいえ、詩織の女の子の日は、非常に厄介。
ともあれ、水を持ってきた、風太郎は、
床に寝そべっている、詩織を優しく抱き起こすと、
そのままベッドへと座らせる。
詩織が机近くを指差すと、そちらに顔を向けてから、
お腹をさすってくれる。
「具合が悪そうだね。今日は休む?」
「うん…」
「わかった」
風太郎は詩織の部屋から出た。
風太郎の母が朝食を作り、詩織に問いかける。
「朝ごはん、食べる?」
「ううん」
首を横に。本当は食べた方が良いのだろうけれど、
どうにも食欲が出ない。
「豆乳でココア淹れてあげるから」
「ありがとう…」
キッチンの椅子に座って、ため息一つ。
温かい豆乳ココアをちびちびと飲む。砂糖はあまり入っていない、
純ココアだけれども、豆乳自体の甘みが合わさって飲みやすい。
「なんとか、なる…かな」
ぼそり、呟いたのは、若干の不安。
詩織のそれは、月経困難症という線引きの中に入ってしまうほど。
普段はピルと痛み止めを併用することでコントロールしている。
だから、多少の辛さはあるが、生活に問題はなかった。
ココアを飲み終わり、いつの間にか机に置いてくれていた常温の水で、
分けて貰った痛み止めを流し込む。
普段とは違い、お腹を温めたり、
豆乳ココアを飲んで気持ちを楽になったりしたから、
寝起きよりかはマシにはなった。
一日ならなんとかなるだろう、と心を決めた。
詩織は軽めの生理に見舞われており、
その後、学校を休んで産婦人科に行った。