第0話 出会い
新宿駅、そこは通称『大迷宮』と呼ばれている…。
多くの人間が利用するものの、正確な場所へ到達出来る者は普段から利用する者のみに限られる。
初めてこの駅を訪れる者のほとんどは正しい出口へ出ることは叶わない。
ある者は繁華街へ、ある者はデパートへ、ある者は目的地ではない別の改札口へ誘われる。
そんな新宿駅も、終電も過ぎた後はホストやキャバクラのキャッチが屯し浮浪者が寝床を求めてさ迷う。
そんな時間に、2人の少年は新宿駅を訪れていた。
本来なら入ることが許されない駅舎の中に。
※
遊大「本当にこんな所にいるのか…」
ぶつくさと文句を言いながら、フェンスを乗り越え線路の上へと遊大は降り立つ。
どうしても会わなければならない人物と接触する為だ。
遊大「ここから上がれそうだな」
遊大はホームの端にある階段を見つけホームの上へと登る。
するとそこには、遊大と同じ学ランを着ている少年が1人立っていた。
物音に気付いた少年は遊大へと向き直る。
???「おや?…やあ、初めましてだね」
遊大「ああ、面と向かって話すのは初めてだな。俺は…」
遊大はホームに佇むその少年に接近し、声をかける。
男はすぐさまに口を開いた。
???「真藤遊大(まとうゆうだい)、だろ?」
遊大「…ああ」
???「アカデミア上野校中等部3年、成績優秀であるのにも関わらず無断欠席や他校の生徒との喧嘩で不良のレッテルを貼られている」
遊大「随分詳しいじゃねえか、まあ他校の生徒と喧嘩してるって部分は詳しく知らない奴らが勝手に着色しただけだ。俺はただの気分屋さ、好きな時に授業に出て好きな時に行かない。ただそれだけだ」
???「そういう所だよ、君はもっと自分が有名人だと自覚したほうが良いね」
遊大「その言葉、そっくり返させてもらうぜ」
???「ふぅん?」
遊大「瞳成哉(ひとみなりや)。私鉄大手である瞳鉄道社長の息子、世間知らずのお坊ちゃんって所か」
ナリヤ「うーん、世間知らずのお坊ちゃんか。それこそ着色された誤った知識だよ」
遊大「なんだと?」
ナリヤ「僕は父さんと血の繋がりは無い、養子として迎えてもらったんだ。詳しくは分かんないけど、僕の両親に恩があるとかで快く受け入れて貰えた。それなりに甘やかしてもらって来たのは事実だけどね」
遊大「てことは、それなりに勝手が言えるわけだな」
ナリヤ「そうだけど、そもそも不良くんが僕になんの用?」
遊大「単刀直入に言う、俺を『奴』と戦わせろ。『ライディングデュエル』でな」
ナリヤ「話が全く読めないけど、どういう事だい?」
遊大「俺はある男に負けた、だが奴は仕事を盾に俺との戦いを避け続けている」
ナリヤ「ふむふむ」
遊大「だったら、てめえの仕事に俺が首を突っ込むまでよ」
ナリヤ「その抽象的に物言うのやめない?聞き苦しいんだけど」
遊大「うるせえ!とにかくだ、俺とデュエルしろ!俺が勝ったら、軌道上で俺が戦えるようにお前の親父に説得しろ!」
ナリヤ「やだね」
遊大「何ィ!?」
ナリヤ「突然現れたかと思えばこんな話とはねぇ、そんな一方的な要求に『はい分かりました』って首を縦に振ると思うかい?」
遊大「なら、俺が負けた時の処遇を今からお前が考えろ」
ナリヤ「そうだねぇ、じゃあ…」
そう言うとナリヤは遊大のほうへ向き直り、デッキをシャッフルしてデュエルディスクにセットする。
ナリヤ「戦いながら考えるとするよ」
ナリヤの不気味な笑顔が、夜の月の光で照らされる。
遊大「面白い、後悔すんなよ」
ナリヤ「そっちこそ」
遊大・ナリヤ「「デュエル!!」」
[TURN1]
遊大「俺のターン!俺は手札から【創造の代行者ヴィーナス】を召喚!」
創造の代行者ヴィーナス
☆☆☆ ATK.1600
遊大「こいつの効果は、ライフを500ポイント支払うたびに、デッキから【神聖なる球体】を特殊召喚できる。当然3体を特殊召喚だ!」
神聖なる球体×3体
☆☆ ATK.500
遊大LP
8000→6500
遊大「さらに、俺は呼び出した3体の球体をリンクマーカーにセット!」
ナリヤ「ふ〜ん」
遊大「現れろ!天空を駆けるサーキット!
リンク3!【天空神騎士ロード・パーシアス】!!」
天空神騎士ロード・パーシアス
LINK3 ↙↓↘ ATK.2400
遊大「パーシアスの効果発動だ。手札を1枚捨て、デッキから『天空の聖域』またはテキストに『天空の聖域』を含むカードを1枚選び、手札に加える。俺が加えるのは【天空の聖域】だ。そしてそのまま発動する」
天空の聖域
フィールド魔法
遊大「手札のカードを2枚伏せてターンエンドだ…ん?おい待てコラ」
ナリヤ「どうしたんだい?」
遊大「てめえ、なんだその手札。ふざけてんのか?」
遊大は気付く、いつの間にかナリヤの手札の枚数が増えているのだ。
ナリヤ「ああ、これね。僕は君がヴィーナスの効果を発動する時に、【増殖するG】の効果を発動していたんだ。これで君が特殊召喚したモンスターの数だけドロー出来る。合計4体のモンスターを特殊召喚してくれたみたいだから、僕は4枚ドローして、手札は8枚だ」
遊大「ふざけんな!だったら発動タイミングで宣言しやがれ!」
ナリヤ「ふざけてなんかいないさ。カードの発動に対するチェーンの確認は、君のデュエルディスクが教えてくれただろ?それをスキップして読まなかったのは君の責任だ」
遊大「くっ!」
ナリヤ「そう焦らないでよ、デュエルはまだ始まったばかりなんだから」
そして、ナリヤはデッキに手をかける。
[TURN2]
ナリヤ「僕のターン、ドロー!よし」
遊大「何を始める気だ…」
ナリヤ「僕は手札から【ゲーム・マスター】を召喚!」
そのモンスターはピエロのお面を被った半霊体の生物。上半身はスーツを着た人間のようだが下半身は子供の描いたおばけのような姿だ。
そしてその手には大きめの本が握られている。
ゲーム・マスター
☆ ATK.0
遊大「レベル1のザコか、まあただのザコをフィールドで野ざらしにするはずが無い。何かあるはずだ」
ナリヤ「その通り、やはり君は他の人とは違うね。モンスターのレベルや攻撃力だけを見て強弱を測る愚かな人間とは違う」
遊大「なんだ、その物言いは。まるでてめえが神様にでもなったかのようだな」
ナリヤ「そう、僕がこのカードを出した時点でこのデュエルは僕の物だ」
遊大「面白いじゃねえか、なら見せてもらおうか」
ナリヤ「ふふふ、僕はゲーム・マスターの効果発動!ダイスを振って、その出た目に応じて効果を適用する!運命のダイスロール!!」
出目は『4』。
ナリヤ「これで僕は手札から、モンスターを特殊召喚する!いでよ!名状しがたき世界の探索者どもよ!」
その呼び掛けに応じてフィールドに3体のモンスターが並ぶ、どれも普通の人間のような姿をしておりモンスターと呼ぶのがはばかられる。
服装はどれも現代チック。会社員のようなスーツ姿の男、学生服を着た青年、メガネをかけた老人。
ソリッドビジョンではあるはずなのに、本物の人間がそこに現れて各人が困惑しているかの表情を浮かべているのが不気味である。
現世の探索者
☆☆☆☆ ATK.1800
異界の探索者
☆☆☆ ATK.1500
迷宮の探索者
☆☆ ATK.800
遊大「わらわらと出てきやがったか。しかしこのモンスター…まるで人間じゃねえか…」
ナリヤ「まだ終わらないよ。現世の探索者は特殊召喚に成功した時、デッキから『探索者』モンスターを1体、効果を無効にして特殊召喚できる!現れろ!【調律の探索者】!!
無機質な目をしたバイオリン奏者のような人型のモンスターが現れ、旋律を奏でる。
調律の探索者
☆ ATK.500
遊大「これでフィールド全てのモンスターゾーンを埋めやがったか…」
ナリヤ「さらに【異界の探索者】の効果発動!『探索者』をテキストに含むカードをデッキから手札に加える。僕が加えるのは永続魔法【ルール・ブック】!そしてそのまま発動!!」
ルール・ブック
永続魔法
ナリヤ「ルール・ブックは1ターンに一度、ダイスを振って出た目に応じて効果を適用する。再び、運命のダイスロール!!」
出目は『1』。
ナリヤ「よし、大当たりだ!これで僕はライフを2000回復し、デッキから2枚ドローする!いやぁ儲けた儲けた」
ナリヤLP
8000→10000
遊大「なんだありゃあ!博打だからってなんでもありかよ!」
ナリヤ「それじゃあ、僕は【異界の探索者】と【調律の探索者】をリンクマーカーにセット!現れろ!名状し難きサーキット!
リンク2!【外神幻影ナイアルラ・ヴォイド】!!」
現れたのは円錐型で軟体の人型モンスター、だが遊大はその存在に既視感を覚えさせた。
遊大「なんだこいつ…。そっくりってレベルじゃないぞ」
そう、ナリヤが召喚したナイアルラ・ヴォイドの顔。厳密には胴体の中心部なのだが、目の前にいるデュエリスト『ナリヤ』ととても酷似した顔のような痣があるなのだ。
だがそれは顔ではない、目や口が動くことも無い。
遊大「気味が悪いぜ…」
外神幻影ナイアルラ・ヴォイド
LINK2 ↙↘ ATK.1500
ナリヤ「ナイアルラ・ヴォイドのリンク先にあるゲーム・マスターと迷宮の探索者は、戦闘で破壊されず、戦闘で発生するダメージを相手に押し付けられるようになった」
遊大「何!?」
ナリヤ「つまり、そういう事さ。僕はゲーム・マスターでロード・パーシアスを攻撃!2400のダメージを受けてもらうよ!」
遊大「なんてな、こっちのフィールドには天空の聖域が貼られている。戦闘ダメージは…」
遊大LP
6500→4100
遊大「何ィ!?ダメージが通っただと!」
ナリヤ「ナイアルラ・ヴォイドはフィールド魔法を無力化するのさ。存在はしているが物言わぬ居城に過ぎない。続けて迷宮の探索者で攻撃!」
遊大LP
4100→2500
遊大「チィ!だが、ナイアルラ・ヴォイドそのものの攻撃力は1500。代行者ヴィーナスにすら攻撃力は及ばない。さっさとバトルフェイズを終了するんだな!」
ナリヤ「それはどうかな」
遊大「なんだと…?」
ナリヤ「ナイアルラ・ヴォイドは、相手フィールドのモンスター1体につき、攻撃力を1000ポイントアップする!よって攻撃力は3500!!」
遊大「嘘だろォ!?」
ナリヤ「さて、どちらを攻撃するか…。すでに神聖なる球体はデッキから消え失せた。ならヴィーナスはただの木偶の坊同然。だったら、ターン事にサーチを繰り返すそいつには消えてもらおう!ロード・パーシアスへ攻撃だ!ナイアルラ・ヴォイド!!」
遊大LP
2500→1400
遊大「ぐああああああ!!」
ナリヤ「さて、これでバトルフェイズは終了。カードを2枚伏せてターンエンドだ」
遊大「この野郎…散々好き勝手暴れたはずなのに、手札が減ってねえ…」
ナリヤ「そ、これでピッタリ6枚だ」
遊大「どうやら、俺の認識が甘かったようだな。ここから本気で行かせてもらう!!」
[TURN3]
遊大「俺のターン、ドロー!!
へっ!来やがったな相棒!」
ナリヤ「どうやらエースモンスターのご登場かな?」
遊大「ああ、見せてやるよ!俺はフィールドの代行者ヴィーナスを除外することで、このモンスターを呼び出す!!現れろ!!【マスター・ヒュペリオン】!!」
そのモンスターが現れる瞬間、新宿駅から発せられた神々しい光が夜の街を照らす。
まるで太陽が昇ったかのようだ、夜の街を歩く大人たちはそう思ったとか…思わなかったとか…。その真偽は定かではない。
ただ、間違いなく言える事がある。
奴こそ『太陽』そのものだ。
マスター・ヒュペリオン
☆☆☆☆☆☆☆☆ ATK.2700
遊大「マスター・ヒュペリオンの効果発動!墓地の球体を除外し、相手フィールドのカードを1枚破壊する!まずはお前だ!ゲーム・マスター!!」
ナリヤ「お見事、確かにゲーム・マスターは戦闘では破壊されない。だから効果で破壊した。けど、彼は破壊された時にも効果を発動する。僕はダイスの出目の『2』を宣言する!これよりダイスを振り、宣言した出目が出たら、君のフィールドのカードは全て破壊される!!」
遊大「何だと!?」
ナリヤ「さあ、運命のダイスロール!」
出目は、3。
ナリヤ「残念だ、破壊効果は発動しない。ではフィールドに【ゲーム・マスター】を特殊召喚させてもらうよ」
遊大「ちょっと待て!!なんで戻ってくるんだよ!」
ナリヤ「あれぇ?言ってなかったかい?出目が外れた時、ゲーム・マスターは墓地から復活するんだよ」
遊大「さっきそんな説明してねえだろうが!」
ナリヤ「でもデュエルディスクで確認出来るよね、こっちのカードのテキスト。それくらいそっちで確認してくれないと」
遊大「こんの野郎…。だが、不発に終わったなら仕方ねえ。マスター・ヒュペリオンは『天空の聖域』がある限り、この効果を2回行える。ゲーム・マスターが無理ならナイアルラ・ヴォイドを破壊する!!」
ナリヤ「他にも厄介なカードはいるけど、本当に良いのかい?」
遊大「構わねえ、ナイアルラ・ヴォイドを破壊する!!
プロミネンス・インパクトォォォ!!!」
ヒュペリオンから放たれた巨大な炎の球体が、ナイアルラ・ヴォイドへと降下し焼き尽くす。
その様はまるで、何人もの人間の悲鳴が重なり合うような鳴き声を発して消滅した。
遊大「不気味な野郎だぜ…」
ナリヤ「だがこれで、ナイアルラ・ヴォイドの真の姿が現れる」
遊大「あ?」
ナリヤ「僕は、破壊され墓地に送られたナイアルラ・ヴォイドの効果発動!!このモンスター1体で、オーバーレイネットワークを構築!」
遊大「はぁ!?!?」
ナリヤ「外なる神よ、偽りの肉体と魂を喰らい顕現せよ!!
這いよる混沌!!【外神ナイアルラ】!!!」
現れたそれは、なんとも名状し難い生物。
太い触手をうねらせ、わずかに円錐状に体を保っているがいくつもの目や口が継ぎ接ぎに付いている。
化け物、ただ見ただけではそうとしか思えない。見ているのも苦痛を伴う。怖いもの知らずの遊大でも、このデュエルモンスターにおいて初めて恐怖を覚える。
外神ナイアルラ
★★★★ ATK.0
遊大「こ、攻撃力0…。大した事ねえな…」
ナリヤ「それは、どうかな」
遊大「ま、まだ何かあんのかよ…」
ナリヤ「ナイアルラ・ヴォイドの効果で呼び出された外神ナイアルラの攻撃力は4000になる」
外神ナイアルラ
ATK.0→4000
遊大「マジかよ…」
ナリヤ「さあ、これでフィナーレだ。罠カード発動【SANチェック】。これは相手のターンに自分がモンスターを特殊召喚した時に発動出来る。僕がダイスを振って、出た目に応じて効果が発動する」
遊大「な、何が起きるんだ…」
ナリヤ「さあ、ダイスの女神次第だろうねぇ。そしてこれこそ最後のダイスロールだ!!」
出目は、6。
ナリヤ「この出目による効果は、次の僕のターン終了まで君のモンスター全ての攻撃力は0になり、君の全てのカード効果が無効になる」
遊大「攻撃力0に…効果無効…!」
ナリヤ「そして、このターンを強制終了させる」
遊大「な!…強制終了だとォ!!」
ナリヤ「まあ、このカードは限られた条件でしか使えないし、デメリットも大きいから使いたくなかったんだ。でも、君に勝つにはそれ相応の『賭け』が必要だと思ってね」
遊大「てめえ…」
[TURN4]
ナリヤ「僕のターンだ、ドロー。こんな夜遅くにお疲れ様だよ、遊大くん。僕は外神ナイアルラで、マスター・ヒュペリオンを攻撃!!」
ナイアルラのうねった触手がマスター・ヒュペリオンの体を巻き付け、握り潰して粉砕した。
遊大「うわああああああ!!」
遊大LP1400→0
※
遊大「けっ、俺の負けだ…」
遊大は不貞腐れながら近くにあった自販機を蹴る。当たりどころが悪かったのか、ボコボコと音を立ててジュースの缶が自販機から溢れ出てくる。
遊大「ラッキー」
遊大はコーラの缶を拾い、飲み始める。
ナリヤ「なんか拍子抜けだな、その伏せカードはなんだったのさ」
遊大「【パーシアスの神域】と【神の居城ヴァルハラ】だ」
ナリヤ「あぁ、お得意のトラップ戦法は出来なかった訳だね」
遊大「仕方ねえんだ、カウンター罠が引けなきゃ負けだからな」
そう言いながら、遊大は飲み干したコーラの缶をゴミ箱へ投げ入れる。
遊大「そんじゃあな、邪魔した」
ナリヤ「ちょっと待ってくれ、僕が勝ったんだから僕の言う事を聞いてもらうよ」
遊大「ちっ、忘れてなかったか…煮るなり焼くなり好きにしやがれ」
ナリヤ「それじゃあ、君には『瞳鉄道のスポンサーが付く』ってのはどうだい?」
遊大「…は?」
ナリヤ「普通の方法ではその人に勝負を挑む事が出来ない。そりゃそうだろうね、鉄道員なら仕事が優先。しかし、仕事中でもデュエルを拒む事が出来ないタイミングがある。それこそ『決闘列車(デュエルトレイン)』」
遊大「なんで俺の戦いたい相手が鉄道員だと分かった」
ナリヤ「君が言ったんじゃないか、『軌道上で戦えるよう手配しろ』って」
遊大「その一言だけですぐに理解するとはな」
ナリヤ「甘く見ないでよ、こう見えて僕は『鉄』なんだ。今日だってここに来たのは臨時列車が通過するって情報を聞いたからなんだ。ほら来た!」
ナリヤが嬉しそうに指を指す方向を見ると、赤い電気機関車が見たことのない白い電車を牽引している。
遊大「ありゃなんだ?白い電車なんて珍しい色だな、青いラインが入ってるみたいだが」
ナリヤ「海馬旅客鉄道が事業を進めようとしている『東海道新幹線計画』の試作機。仮名称は『タイプzero』。いやあ感動だなー!」
先ほどのデュエルの時とは打って変わって饒舌に語り始めるナリヤに遊大は不安を覚える。
遊大「おい、そのままさっきの話をすっぽり忘れたりすんなよな…」
ナリヤ「大丈夫だって!父さんには僕から伝えておくよ。なんなら明日の夜、帰宅ラッシュの時間にぶつけてやろうじゃないか」
遊大「ほお、そりゃ魅力的な提案じゃねえか。虚ろな目をした社畜共の困惑する顔が見物だぜ」
ナリヤ「まあ代わりに発生する『遅延証明証』はあとで『換金』出来るから、彼らにとって不利益な事だけでは無いさ」
遊大「頼んだぜ、ナリヤ」
ナリヤ「勘違いされちゃあ困るよ。これは僕が勝った報酬として、君には瞳鉄道の為に働いてもらうんだ」
遊大「ああ、だがあのおっさんと戦える舞台を用意してくれたんだ。礼を言うぜ」
ナリヤ「今度は、ちゃんと本気の戦いを見せてくれよ」
遊大「望むところだぜ。俺とお前の出会いはまさに0、いまそこで引っ張られている電車と同じ。ついに初めの1歩を踏み出す時だ…!」
そして、その翌日の夜。
時刻は18時を過ぎる頃。
駅のホームには仕事帰りの利用客が溢れかえり、我先にと電車に乗り込もうとひしめき合う。
駅員が乗客を押し込み、ようやっと閉まったドア。次の駅へ向けて発車する列車が突如緊急停止する。
当然、どよめく車内。息苦しさと疲労によりイライラがつのり、怒号が飛び交う地獄絵図。
その列車の横を、別の列車が猛スピードで通過していく。
列車種別を示す電光表示には、次の文字が表示されていた。
『決闘(DUEL):横浜・大船方面』
この夜、後に伝説と語り継がれるデュエルの立会人となる事を乗客やホームにて次の列車を待つ利用客…そして鉄道員たちは知る由もない。
NEXT:第1話【決闘乗務】