フランスのパリにある「パリ北駅」。
『ユーロスター』と呼ばれるドーバー海峡を海底トンネルで越え、フランスとイギリスを結ぶ特急列車が存在する。
このパリ北駅はその発着駅。
ホームには他にも何編成もの列車が待機している。
巨大な駅であるにも関わらず、ホームに並ぶガス灯の明かりが天井まで明るく照らしている。
そのユーロスターに海馬コーポレーションの若社長『如月瀬奈』と、元社長であり現在は会長の『モクバ』が乗車しており、出発を待っていた。
モクバ「どうだい瀬奈、楽しんで貰えているかい?」
このパリ北駅に来るまでも、いくつもの乗り物を乗り継いできた。だがそれらは瀬奈にとって前座に過ぎない。
瀬奈「楽しむ?いいえ、ここからが本番よ」
モクバの問いかけに瀬奈はニヤリと笑う。
瀬奈「日本という島国では、山岳地帯が多く用地確保が難しい。ユーロスター並の高速鉄道は現実的では無いもの。だから、こうやって直接拝みに来たのよ」
モクバ「兄様…いや、君の祖父の遺言に縛られなくてもいいんだぞ?俺が代わりに事業を進めたっていい」
瀬奈「いえ、それには及ばないわ叔父様。私の手で日本の鉄道を1つにする、それはお爺様の遺言とか関係無い。単純な理由、私が鉄道を好きだから」
モクバ「それならば、良いんだが…」
すると、瀬奈のデュエルディスクに着信が入る。
それは、弟の瀬斗からだ。
瀬奈「私よ」
瀬斗「姉様、大変なことになった。瞳鉄道からデュエルを申し込まれ当務の運転士は敗北、先方の要請で別の運転士が続けて相手をしている」
瀬奈「瞳鉄道?あのたぬき親父…また何か変なこと考えてるわね。
それで?2人目の運転士に勝算はあるのかしら」
瀬斗「実力は申し分無いはずだ、元京浜急行の運転士のようだから」
瀬奈「ふぅん、京浜急行…。2人は今どの辺に?」
瀬斗「もうすぐ大崎駅に差し掛かる」
瀬奈「なら京浜東北線へフィールドを移しなさい」
瀬斗「えっ。京浜東北線へ?」
瀬奈「ライバル会社に見せつけてやるのよ、私達の実力を。同時に食ってかかってきた生意気なガキにも社会の厳しさを教えてやりなさい」
瀬斗「分かった、すぐに手配する…ん?どうして対戦相手が子供だとわか」
瀬奈は言葉を返すまでもなく通話を切った。
モクバ「どうしたんだ?瀬斗は」
瀬奈「これよ」
瀬奈はデュエルディスクを操作し、いま日本の首都で行われていたデュエルの様子を映像で見せる。
そこには、特急列車を追いかけるDボードの少年が写っていた。
真藤遊大と天馬遊治郎だ。
モクバ「嘘だろ、こんな子供が…」
瀬奈「悪いけど、臨時とはいえ今は瀬斗が責任者なんだからアンタでなんとかしなさい」
モクバ「まあ、瀬斗にとっては良い勉強になるだろう」
尊大な態度の瀬奈にモクバは苦笑いで誤魔化した。
※
数分後、発車のベルが鳴り響き、ユーロスターはゆっくりと動き出す。
パリの街並みを駆け抜け、しばらくすると田園風景が車窓を彩る。
レンガ造りの家や風車など、日本ではまず見られない建築物が車窓から流れていく。
瀬奈「とても綺麗ね」
モクバ「そうだな、この国ならではの光景だろう」
??「ちょいと。そこのお二人さん」
モクバ「おや、どうかされましたか」
そこへ現れたのは1人の老齢の女性。ニコニコとは呼び難い、どちらかと言うならばニタニタに近い微笑み2人へ頭を下げる。
瀬奈「あなたは確か『橘電気鉄道』の『サツキ会長』。お久しぶりです、お元気でしたか?」
2人の前に現れたサツキと名乗る女性、過去に自らの保有する鉄道会社の経営権を海馬旅客鉄道へ全て委託していた。
現在は海馬旅客鉄道に籍を置きお目付け役としての役割へ移っている。
そんな彼女が示し合わせた訳も無く、偶然にも同じ列車に乗り合わせていた。
サツキ「お陰様であなたに仕事を任せてからは時間が出来たものだから、船で世界旅行をしていたのさ。こんな風に羽を伸ばすなんて何年ぶりかしらね」
モクバ「ユーロスターで、これからイギリス観光ですかな?」
サツキ「いいえ、私の乗ってきた船はロンドンに停泊していてね。パリの観光にユーロスターで昨日来ていたのよ、これから船に戻るのさ」
瀬奈「ではロンドンまでご一緒しましょう、話し相手は多い方が良いわ」
サツキ「ええ。しかしアンタ、なんだか年寄りみたいな事を言うね」
モクバ「ハッハッハ!だそうだぞ、社長」
瀬奈「もう…。叔父様ったら、フフ」
※
海底トンネルへ差し掛かった頃、瀬奈は視線を感じ始める。
瀬奈「何かしら…」
モクバ「どうした瀬奈」
気づかうモクバの言葉に瀬奈は首を振る。
瀬奈「なんでもないわ、ちょっと化粧室に」
サツキ「我慢は毒だよ、おゆき」
瀬奈の隣に座っていたサツキは、ゆっくりと席を立つ。
瀬奈「ごめんなさい、戻ったら通路側で良いわ。サツキ会長は窓側へ座ってください」
サツキ「そうさせてもらうわ」
瀬奈は通路を見渡し、何事もないかのようにゆっくりと外通路へと歩いていく。
※
客席から外通路へと出た瀬奈は化粧室へと入ろうとする。
すると、鏡越しに背後から覆面の男が近付いてくるのが見えた。その手には拳銃が握られている。
瀬奈「背後からレディを襲おうなんて、英国紳士の風上にも置けないわね」
瀬奈は振り返り、鋭い目付きで睨みつける。
男「残念だが俺はイギリス人じゃない」
男は堂々と瀬奈の前に立ちはだかる。覆面越しでも瀬奈は気づいていた、その男の目が怒りに燃えていることに…。
男「俺の親父はなぁ、てめえのジジイのせいで破滅に追い込まれた!『青眼の白龍』を奪われたせいでな!
会社は破産、家族もバラバラ。気が狂いそうになるほどの借金地獄!それなのにてめえは!
海馬瀬人の血を引くガキどもがのうのうと生きてるなんてよォ!許してたまるかよォォォ!!」
男は叫びながら拳銃を瀬奈に向ける。
その動きに勘づいた瀬奈は瞬時に拳銃の撃鉄へカードを差し込む。
男「何ィ!?」
煌々たる逆転の女神
☆☆☆☆☆☆
ATK.1800
瀬奈「観賞用のレアカードに傷がついたわ!」
瀬奈は拳銃を蹴り落とし、男の横腹に蹴りを入れる。
そして、うずくまる男に拾い上げた拳銃を男に向けて突きつけた。
瀬奈「私を殺したいのなら、カードで殺しなさい」
そして、一発。バァン!と威嚇射撃。
男のこめかみを弾丸がギリギリで避けるが、恐怖のあまり気絶してしまった。
???「あらあら、お盛んね」
その時、辺りにフワッと香水の匂いが漂う。
???「いけませんわ、レディがそんな物騒なモノを手にしては」
瀬奈「マリィ、あなたもこの列車に…?」
瀬奈の前に現れたのは、褐色の肌と長い金髪が特徴の女性。
名は『マリィ』。幼い頃から瀬奈が慕う姉のような存在だ。
瀬奈「この男は私のブルーアイズを狙って襲ってきたのよ、そもそも実物は手元に無いのを知らなかったみたいだけど」
マリィ「あらあら、悪い人でしたのね」
瀬奈「でなければ一般人に暴行するはずないでしょ?」
マリィ「まあ、それはその通りですわ」
瀬奈「そう言うあなたはどうしてここに?」
マリィ「それはぁ…」
すると、マリィの後ろから黒服の男が2人現れる。
瀬奈は彼らがマリィのボディーガードかと思ったが、その考えは間違いであるとすぐに判明する。
マリィ「おそらく、あなたと同じ理由ですわ」
黒服の男は、デュエルディスクを構えてこう告げた。
黒服1「貴様、如月瀬奈だな。こんなところで出くわすとは…」
黒服2「丁度いい、『マリィ・イシュタール』共々片付けてやる」
宣戦布告する2人の男に瀬奈は呆れてため息をつく。
瀬奈「ハァ…あなたも大変ね」
マリィ「ごめんなさいね、巻き込んでしまって」
瀬奈「構わないわ」
そして、瀬奈とマリィもデュエルディスクを起動する。
瀬奈「安心しなさい、逃げも隠れもしないわ。ただ、場所が悪いわね…一番後ろの車両まで付いてきなさい」
瀬奈はマリィの手を引いて、通路を駆け出す。
マリィ「あぁん!まるで王子様ね!」
瀬奈「馬鹿言わない!」
黒服の男達は無言でその後ろを追いかけた。
※
ユーロスター最後尾の車両、幸いにも乗客は1人もいない。
すでに海峡トンネルへ侵入したユーロスターの車窓は、暗闇しか写さない。
瀬奈とマリィは黒服の男2人と向かい合い、デュエルディスクからカードをドローする。
黒服1「タッグデュエルか、面白い」
瀬奈「ルールは分かってるわね?最初のターンプレイヤーのみが攻撃宣言は出来ない、後攻1ターン目からバトルフェイズに入れる」
黒服2「バカにしないで貰おうか」
マリィ「ごめんなさいねぇ瀬奈、面倒な事になって」
瀬奈「すぐにケリをつけるわ」
黒服1「行くぞ!」
瀬奈・マリィVS黒服1・黒服2
「「「「デュエル!!!!」」」」
《瀬奈:TURN1》
瀬奈「私のターン!私は手札の魔法カード《希望の転生》を発動!
このカードの効果で手札を2枚墓地へ送り、2ターン後のスタンバイフェイズにデッキからモンスターを手札に加えられるわ」
希望の転生
通常魔法
手札→墓地
《青眼の白龍》
《太古の白石》
瀬奈「私は手札を1枚伏せてターンエンド、この時墓地へ送られた《太古の白石》によってデッキからこのモンスターを呼び出す!
いでよ!我が最強のしもべ!
《青 眼 の 白 龍》!!!!」
瀬奈の号令によってフィールドに青眼の白龍が特殊召喚される。
車内に現れたブルーアイズは狭苦しい列車の天井をなぎ払い、破損した屋根の上から黒服の男たちを見下ろす。
青眼の白龍
☆☆☆☆☆☆☆☆
ATK.3000
青眼の白龍が天井を破壊すると同時に列車の外、つまりトンネルの中の冷気が瀬奈や黒服達のいる車両内に入り込む。
黒服2「な…なんだこのモンスター!?実体化して列車をぶっ壊しやがった!」
黒服1「落ち着け、おおかた海馬コーポレーションが開発している新型デュエルディスクって所だろ。
本当にモンスターが実体化しているかのように見せているだけのソリッドビジョン、それが周りの情景も巻き込むようになっただけだ。
ま、面白い見世物だが…しょせんその程度の子供騙し。デュエルの腕とは全く関係ない!」
瀬奈「言ってくれるじゃないの」
黒服1「調子に乗るなよ小娘。お前が『海馬瀬人』の血を引いてブルーアイズを受継いだところで、お前は海馬瀬人ではない!」
《黒服1:TURN1》
黒服「俺のターン、ドロー!俺は手札から《深夜急行騎士ナイトエクスプレスナイト》を召喚!
こいつはレベル10のモンスターだが攻守0でリリース無しでの通常召喚が可能だ」
深夜急行騎士ナイトエクスプレスナイト
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ATK.0
マリィ「攻守0のモンスターを残すだけで話が終わるはずありませんわね…」
黒服1「その通り、続けて手札の《重機貨列車デリックレーン》の効果発動!地属性・機械族モンスターが召喚に成功した時、こいつを手札から特殊召喚出来る!」
重機貨列車デリックレーン
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ATK.2800
瀬奈「レベル10のモンスターが2体…!」
マリィ「来ますわ瀬奈…!」
黒服1「俺はフィールドのナイトエクスプレスナイトとデリックレーンの2体で、オーバーレイネットワークを構築!
エクシーズ召喚!現れろランク10!
《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》!」
ユーロスターの走る軌道に併走する形で、巨大な砲台を持った戦車にも似た巨大な列車が出現する。
超弩級砲塔列車
グスタフ・マックス
★★★★★★★★★★
ATK.3000
黒服1「グスタフ・マックスの効果発動!貴様らに2000のダメージを与える!」
瀬奈&マリィ
LP.8000→6000
マリィ「あらあら…」
黒服「さらにグスタフ・マックスによって墓地に送られた素材のデリックレーンの効果発動!
貴様のブルーアイズを破壊する!」
ソリッドビジョンに現れたデリックレーンの機体が、ブルーアイズの体にクレーンの鉤爪で貫く。
黒服2「よっしゃァ!ざまあみやがれ!」
黒服1「思った通り、海馬瀬人なら何がなんでもブルーアイズを守っただろうが…。てめえにゃ無理のようだな。
バトルだ!グスタフ・マックスでダイレクトアタック!」
瀬奈「トラップ発動!
《聖なるバリア-ミラーフォース-》!」
黒服1「何ィ!?」
瀬奈「言わなくても分かるわね?相手の攻撃表示モンスターを全て破壊するわ!」
ミラーフォースの輝きがグスタフ・マックスの機体を貫き木っ端微塵に爆破する。
黒服1「おのれ…」
瀬奈「驚いたわね、伏せカードを警戒すること無く攻撃を仕掛けるなんて…」
黒服1「ふ、まあいい…これはまだ準備段階だからな。俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」
《マリィ:TURN2》
マリィ「わたくしのターン、ドロー!わたくしは手札の《ツイン・ツイスター》を発動しますわ」
黒服1「何!?」
マリィ「手札を一枚捨てて魔法・罠カードを2枚破壊しますわ」
手札→墓地
リアクター・スライム
黒服2「何やってんだよ!」
黒服1「うるさい黙ってろ!ただでやられる訳にはイカン!伏せていたトラップを発動!《エクシーズ・リボーン》!
墓地の《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》を復活させ、このカード自身をオーバーレイユニットとして加える!」
再びグスタフ・マックスが併走する軌道上に出現する。
しかし伏せられていたもう1枚のカードはツイン・ツイスターの効果で破壊される。
墓地→緊急ダイヤ
マリィ「あらぁ?またモンスターが戻ってまいりましたわ」
黒服1「これで簡単には突破出来ねえぞ」
マリィ「ならもう一度消えていただきますわ」
黒服1「なんだと?」
マリィ「わたくしは手札より《聖刻竜トフェニドラゴン》の効果発動。
御相手のフィールドにモンスターが存在する場合、特殊召喚出来ますのよ」
聖刻竜トフェニドラゴン
☆☆☆☆☆☆
ATK.2100
黒服2「だが2100ぽっちじゃあグスタフ・マックスは超えられねえ、そうだろ相棒?」
黒服1「…いや、これはマズイ!」
黒服の男の1人は状況を理解し、表情を強ばらせる。
マリィ「お気づきになりまして?なら遠慮は要りませんわね。続けて手札の《聖刻竜シユウドラゴン》の効果発動。
フィールドのトフェニドラゴンをリリースして特殊召喚いたしますわ」
聖刻竜シユウドラゴン
☆☆☆☆☆☆
ATK.2200
黒服2「特殊召喚したモンスターをリリースして、もう一度特殊召喚だと?」
黒服1「それが《聖刻竜》の戦術だ、仲間をリリースして新たなドラゴンを呼ぶ。そしてリリースされたドラゴンも…」
マリィ「その通り、リリースされたトフェニドラゴンの効果発動。
デッキから通常モンスターのドラゴンを特殊召喚いたしますわ。《ラブラドライドラゴン》を特殊召喚!この効果で呼び出したドラゴンの攻守は0になりますの」
ラブラドライドラゴン
☆☆☆☆☆☆
ATK.0
瀬奈「そっちの理解力の悪い黒服でも、ここまで来れば何が起きるか分かるわね?」
黒服2「レベル6のモンスターが2体…まさか!」
マリィ「ええ、そのまさかですわ。
聖刻竜シユウ ドラゴンとラブラドライドラゴンの2体でオーバーレイ!
エクシーズ召喚!現れなさいランク6!
《セイクリッド・トレミスM7》!」
セイクリッド・トレミスM7
★★★★★★
ATK.2700
マリィ「トレミスM7の効果発動、オーバーレイユニットを1つ取り除きグスタフ・マックスをEXデッキに戻ってもらいます」
黒服2「エクシーズモンスターは手札に戻らない、実質完全な除去…!」
黒服1「迂闊だった…。ツイン・ツイスターで破壊されることを恐れてエクシーズ・リボーンを発動してしまった…」
マリィ「カードをあえて使わせる、それも戦術でしてよ。
さあバトルフェイズです!セイクリッド・トレミスM7でダイレクトアタック!ですわ!」
黒服1&2
LP.8000→5300
黒服2「ひいいィィィ!!」
黒服1「くっ!ついにダイレクトアタックを受けちまった…」
マリィ「残る手札2枚を伏せてターンエンドですわ」
《黒服2:TURN2》
黒服2「俺のターン、ドローだ!ドイツもコイツも馬鹿にしやがって…ぶっ潰してやる!
俺は手札からフィールド魔法《転回操車》を発動!」
転回操車
フィールド魔法
黒服2「続けて《深夜急行騎士ナイトエクスプレスナイト》を通常召喚!」
深夜急行騎士ナイトエクスプレスナイト
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ATK.0
瀬奈「最初の奴と同じね」
黒服2「しかし今回は違う。フィールド魔法《転回操車》の効果発動!
レベル10の地属性機械族モンスターが召喚に成功した時、デッキの地属性レベル4機械族のモンスターを特殊召喚する!さらにこの効果で呼び出したモンスターのレベルは10になる!
現れろ!《無頼特急バトレイン》!」
無頼特急バトレイン
☆☆☆☆
↓
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ATK.1800
黒服2「俺はナイトエクスプレスナイトとバトレインでオーバーレイ!
《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》をエクシーズ召喚!効果で2000のダメージを受けてもらうぜ!」
超弩級砲塔列車グスタフ・マックス
★★★★★★★★★★
ATK.3000
瀬奈・マリィ
LP.6000→4000
黒服2「さらにグスタフ・マックスでセイクリッド・トレミスM7を攻撃!
転回操車の効果で戦闘ダメージは与えられねえが、その能力を次のターンに使われたら面倒なんでな!消えてもらうぜ!」
グスタフ・マックスの砲撃でトレミスM7は粉砕する。
マリィ「そう、あなたはそうするしかありませんの」
黒服2「なんだと?」
マリィ「おかげで可愛い後輩に花を持たせてあげられそうですわ」
黒服2「何を言ってるかサッパリだぜ、コイツの頭の中お花畑か?」
黒服1「馬鹿言うな、奴は途方もないレベルのデュエリストだぞ?用心するに越したことはない」
黒服2「おっとそうだった、俺はカードを3枚伏せてターンエンドだ」
《瀬奈:TURN3》
瀬奈「私のターン、ドロー!そしてスタンバイフェイズに最初のターン発動していた《希望の転生》の効果を適用する。
その効果でデッキからモンスターを1枚手札に加える。私が加えるのは《オベリスクの巨神兵》!!」
黒服1&2「「オベリスクゥゥゥゥ!?」」
瀬奈「驚いているところ悪いけど、その邪魔な伏せカードには消滅してもらうわ。魔法発動!《ハーピィの羽根帚》!」
羽根帚の一振から放たれる豪風によって黒服たちのセットカードは全て破壊される。
墓地→
奈落の落とし穴
神の警告
バウンド・リターン
黒服2「お、俺のセットした除去カードがァァァァァァ!!!」
マリィ「瀬奈、わたくしのカードを使いなさい」
瀬奈「勿論そうさせてもらうわ。私はマリィの伏せた魔法カード《死者蘇生》を発動!
墓地に眠る《リアクター・スライム》を復活!!」
リアクター・スライム
☆☆☆☆
ATK.500
黒服1「あれは確か、ツイン・ツイスターのコストで墓地へ送られたカード…!」
瀬奈「まだよ!墓地の《太古の白石》の効果発動!墓地から《青眼の白龍》を1体手札に戻す。
こうして戻した青眼の白龍を公開することで手札の《青眼の亜白龍》を特殊召喚するわ!」
青眼の亜白龍
☆☆☆☆☆☆☆☆
ATK.3000
黒服2「な…なんだあのモンスター!?」
黒服1「見たことの無いブルーアイズだと!?」
瀬奈「当然よ、お爺様はこのカードをこれまで一般に流通させてないもの。青眼の亜白龍の効果発動!グスタフ・マックスを破壊するわ!
滅 び の バ ー ン ・ ス ト リ ー ム ! ! 」
青眼の亜白龍から放たれた光のブレスがグスタフ・マックスの機体を玉砕する。
そしてその爆風はその場にいるもの達に襲いかかる。
黒服2「うわああああァァァァァ!!」
黒服1「これがソリッドビジョンだと言うのか!?」
瀬奈「これで邪魔はいなくなったわ。リアクター・スライムの効果発動!自分フィールドに《スライムモンスター・トークン》を2体特殊召喚する!」
スライムモンスター・トークン
☆ ×2
ATK.500
瀬奈「これで準備は整ったわね」
黒服2「ま…まさか…!!」
黒服1「あのモンスターが…!!」
瀬奈「モンスターじゃないわ。
《神》よ!
私はリアクター・スライムとスライムモンスター・トークン2体、合計3体のモンスターを生け贄に捧げ…
《オベリスクの巨神兵》を降臨させる!」
その瞬間、列車はドーバー海峡を超えトンネルを出る。
すぐそばに見える海から陽の光が反射して車内を明るく照らす。
同時に海面が大きく揺れたかと思うと、巨大な物体が轟音と共に現れる。
大地を揺らし海を割る。
その姿はまさに《神》そのもの。
オベリスクの巨神兵
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ATK.4000
黒服2「あ…あああ…ぁぁ……」
黒服1「おい!しっかりしろ!」
瀬奈「バトルよ、オベリスクの巨神兵でダイレクトアタック!
ゴッド・ハンド・クラッシャー!!」
黒服1「くそっ!やられてたまるかよォ!墓地のトラップ発動!《バウンド・リターン》!
こいつは相手の元々の攻撃力の中で1番高い奴と同じ数値の守備力を得て特殊召喚できる!
つまりこいつの守備力は4000!オベリスクの巨神兵では倒すことは出来ない!」
マリィ「瀬奈、もう1枚の伏せカードを使って。それでこのデュエルは終わるわ」
瀬奈「これで最後よ!
トラップ発動!《神の鏡》!
自分フィールドの『幻神獣族』以外のモンスターを全て除外することで、デッキからモンスターを1体墓地へ送る。そのモンスターの攻撃力を加算し、効果をオベリスクへ与える!
私が墓地へ送るのは《ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン》!」
オベリスクの巨神兵
ATK.4000→8000
黒服1「攻撃力8000…だがいくら攻撃力を上げても守備表示モンスターにはダメージを与えることは出来ないぜ」
瀬奈「カオスMAXは守備表示モンスターへ攻撃した場合、その守備力を超えた攻撃力の『倍』の数値のダメージを与える」
黒服1「守備貫通に倍のダメージだと…!」
瀬奈「とどめよ!!カオスMAXの力を受けたオベリスクの巨神兵の攻撃!!!!
ゴッド・MAX・クラッシャー!!!!」
オベリスクの青白く光る拳が黒服の男達に降り掛かる。
黒服1「う…うわああああァァァァァァ!!!!」
黒服1&2
LP.5300→0
オベリスクの拳が黒服の男達にユーロスターの車両ごと打ち込まれる。
その衝撃で車体の屋根部分が吹き飛ぶ。
だが瀬奈がソリッドビジョンを解除すると壊れた車体が何事も無かったかのように元通りになる。
瀬奈「さすがにソリッドビジョンとはいえ、神の一撃は刺激がキツいわ」
黒服1「あ……ああ…ぁぁ……」
あまりの恐怖に黒服の男は放心状態になっていた。
マリィ「さすがですわ瀬奈、わたくしのカードも完璧に使いこなしてましたわ」
瀬奈「全米チャンピオンから褒められてもねぇ…」
マリィ「この者たちはどうしましょう?」
瀬奈「ロンドンに着いたら警察に突き出してやるわ」
マリィ「じゃあ眠ってるあいだに動けなくしてしまいましょう」
こうして瀬奈とマリィは、気絶する黒服の2人を座席に座らせたのちに身動きが取れないようロープで縛り付けた。
※
[セント・パンクラシュ駅]
ユーロスターはイギリス・ロンドンへと入り終点の駅へと到着した。
瀬奈の通報で到着していたスコットランドヤード(ロンドン警察)の警官に黒服の男2人、ついでに瀬奈を襲った謎の男は突き出され連行されていった。
ホッとした瀬奈たちはホームのベンチに座って落ち着いていた。
瀬奈「もー、こんなところまで変な奴らに絡まれるなんて…」
モクバ「無事で良かったよ、しかしなんでマリィも列車に乗ってたんだ?」
マリィ「ふふっ、お仕事の内容はおおやけには出来ませんわ」
モクバ「仕事なら仕方あるまい」
サツキ「いやぁ良いもん見せてもらったよ。《双幻神》のオベリスク、スケールが別格だねえ」
サツキはケラケラと笑いながら席を立つ。
モクバ「サツキ会長、船までお見送りいたしましょうか?」
サツキ「いやいい、駅の前で連れが待ってるからねぇ」
瀬奈「あまりお話出来なくてすみません」
サツキ「良いってことよ、あたしゃ偶然居合わせただけさね」
マリィ「サツキ様、またどこかで」
サツキ「イシュタール家のお嬢さんも元気でね」
そう言いながらサツキは改札口へと歩いていった。
モクバ「じゃあ我々も予約していたホテルへと向かうか」
瀬奈「もぉ疲れたわ、ゆっくり席に座って車窓を眺めていたかったのに…」
マリィ「わたくしもご一緒してよろしくて?」
瀬奈「良いけど予約してあるの?」
マリィ「顔パスでなんとかなりますわ」
モクバ「恐ろしいほどの権力だな…」
すると、瀬奈のデュエルディスクに着信が入る。
相手は弟の瀬斗からだ。
瀬奈「私よ」
瀬斗「姉様、その…とても言い難いんだけど…」
この時、瀬奈とモクバは初めて知ることとなる。
海馬旅客鉄道の社員2名、たった1人の少年によって敗北した事を。
『鉄道局発足』から10年、海馬旅客鉄道は初の敗北を経験することとなる。
※
数時間後、ロンドンの港。
豪華客船に戻っていたサツキは、ある男と夕食を食べていた。
???「まじやべぇ!超うめえ!この料理!」
サツキ「静かになさい、みっともないよ。アサヒ」
彼の名はアサヒ。この旅行で、サツキと共に旅行しているうちの1人だ。
サツキ「アンタたちの家系とは長い付き合いだけど、アンタの祖父の月光も父親の日光も落ち着いた男だってのに…比べてアンタはいっつも騒々しいね」
アサヒ「だってマジうめえんだもん!なんて料理だ?」
サツキ「ああもう、フィッシュアンドチップスくらいではしゃぐなクソガキ!」
アサヒ「あ、そうそう」
アサヒは怒鳴られたにも関わらず、ケロッとした表情で足元に置いておいたアルミ製のアタッシュケースを取り出す。
アサヒ「これだろ、サツキちゃんの欲しがってたデッキ」
サツキ「そうそう、ちゃんと覚えていたようだね」
アサヒ「大変だったぜ、マジで。うちの会社の…それも創始者の別荘の中からこれだけ探すの超大変だったんだぜ。マジで」
サツキ「37、38…ちゃんと40枚あるね」
サツキはパラパラとデッキを確認する。
アサヒ「そのデッキ、一応海馬コーポレーションのデータベースに登録されてるから使えるけど…あんまり変な事に使わないでくれよ」
サツキ「変なこと?」
アサヒ「そのデッキはうちの創始者が興味本位でやべえ組織と関わった時に見た【異形の存在】から着想を得て作ったカードらしいけど、やべえ力が秘められてるって噂なんだ」
サツキ「ただの噂だろ。そもそも、そんな噂を誰が話してたのさ」
アサヒ「俺のじいちゃんだよ、それと叔父ちゃん。じいちゃんの弟にあたる人が言ってたんだ
『ペガサス・J・クロフォード』は、カードに命を吹き込む」
だから、そのカードも命を持ってるらしいよ。マジで」
サツキ「ふぅん」
サツキは興味なさげに、1枚のカードをデュエルディスクにセットする。
すると、すぐそばに召喚したモンスターのソリッドビジョンが出現する。
アサヒ「うわっ!やべえってマジで!」
それは、2メートルもあるだろう彫刻の石像。
辛うじて人型だが、その両手はまるで何かに掴みかからんとしているようなポーズを取っている。
サツキ「不気味だけど、愛嬌はあるじゃないか」
サツキがカードを外すと、ソリッドビジョンも消えた。
アサヒ「なんかなぁ、このデッキのカードどれもビジュアルが気味悪いんだよ。サツキちゃんのセンスおかしいって」
サツキ「ありがたく頂いておくよ」
アサヒ「って聞いてねーし!マジ勘弁だからな!悪用しないでくれよ!マジで!」
こうして、2人の騒がしい食事の時間が過ぎていった。
※
一方、日本では海馬旅客鉄道の運転士が謎の少年によって2連敗という前代未聞の事件に沸いていた。
その情報は物凄いスピードで広まり、同業他社の運転士たちの耳にも届いていた。
《京浜急行:品川駅》
「見たか京一、あのニュース…」
京一と呼ばれた男は、デュエルディスクのタッチパネルをスライドさせ速報ニュースの記事を読んでいた。
京一「先輩が負けたんだろ、ちょうどその記事を読んでいた。それに乗務の最中、横を通り過ぎていったからな」
「有り得ねえよ、あの人があんなガキに負けるなんて…」
京一「あの人も、変わっちまったんだ。だからこそ俺達が気を引きしめないといけねえ。『小田急』の連中のように足元をすくわれる」
※
《帝国鉄道:海老名車庫》
薄暗い車庫の中、パソコンのモニター前で、2人の作業服の男がゲラゲラと笑っていた。
見ていたのは、やはり海馬旅客鉄道の敗北の記事だ。
「ざまあねえぜ!中坊くらいのガキに大人が2連敗かよ!」
「これで海馬旅客鉄道の程度が知れたってもんだぜ、いずれアイツらも『帝国』に引き込まれる。そうだろう!?新入りよォ!」
声高々に、遠くのほうで作業していた男に声をかける。
興味はないとでも言いたげに、振り返る事はしない。
ただ、その男はボソリとこう呟いた。
??「雑魚だったろ、相手…」
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《海馬旅客鉄道:大崎駅》
そして、敗北した運転士が所属している大崎駅には利用客からのクレームが相次いだ。
帰宅困難となった利用客が、窓口前に押し寄せた。
「てめえらが負けるとは何事だ!!」
「ただでさえ電車が遅れてるのに、払い戻した金も無くなったじゃねえか!」
「もっとデュエルの腕上げろ!」
その言葉に対して窓口前に立つ駅員たちは、こう言葉を続けるしかなかった。
「申し訳ございませんでした」
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再び、場所はイギリスのロンドン。
瀬奈、モクバ、マリィの3人が宿泊しているホテル。
3人はモクバの部屋に集まり、小さなテーブルに向かい合うよう席に着いた。
瀬奈「これが、奴らの付けていたバッジよ」
モクバ「これは…!!」
そこには、こう刻まれていた。
【帝国鉄道】
マリィ「帝国鉄道、それがわたくし達を襲った敵」
瀬奈「私ならいくらでも襲われる理由はある。けど、今回狙われたのはマリィ」
モクバ「マリィの仕事の背景から察するに、やはり奴らは【鉄道局の権限】を悪用していると考えられる」
マリィ「わたくしを襲おうとしたのも彼らにとって不都合があるから。ですもの」
瀬奈「どうやら、あなた1人だけの問題じゃ無くなったわね」
マリィ「ええ、早く見つけ出さないといけませんわ…」
※
《新宿駅:南改札口前》
あのデュエルの翌日。
昼の1時過ぎ、遊大とナリヤは授業をサボり新宿駅近くのファストフード店で話をしていた。
ナリヤ「いやぁ、すごいデュエルだったね。遊大」
遊大「おうよ、スカッとしたぜ。一応な…」
ナリヤ「おや?せっかく勝利したのに、何か不服そうな顔だね。何か、あったのかい?」
遊大「そりゃそうさ、あのおっさんとの戦いの前に負けてんだからな。お前に」
ナリヤ「普段はあんなに回ることは無いんだ、僕が勝ったのはたまたまさ」
遊大「よし、ならとっとと白星に返させてもらおうか。俺とデュエルしろナリヤ」
ナリヤ「え…?」
遊大「え?じゃねえよ、デュエルだよデュエル」
ナリヤ「いや、その…」
ナリヤは不安そうな表情を浮かべる。
ナリヤ「僕の事、変な奴だとか思わないの?」
遊大「思ってるよ」
ナリヤ「じゃあ、僕にはあまり関わらないほうが…」
遊大「バカ言ってんじゃねえよ。確かに鉄道の事になると暴走するみたいだが…。せっかく知り合えたんだ、この先もおっさんと戦う為にはお前の協力が必要になってくる。頼むぜダチ公!」
ナリヤ「僕が友達で良いの?」
遊大「なんでそんな不安そうな顔するんだよ、俺は確かにお前に負けて悔しくもあったが同時に尊敬してんだぜ?」
ナリヤ「そ、そんな僕なんて…!」
遊大「俺はお前を一目置いてんだから堂々としてろよ、そんで俺とデュエルしろ。俺はお前のテクニックをデュエルの中で盗むから覚悟しろよ」
ニヤリと笑う遊大の表情を見て、ナリヤの表情も明るくなる。
ナリヤ「うん!分かった!けど負けないよ」
遊大「言ったな?よし、行きつけのショップに案内してやるぜ。そこでデュエルだ!」
遊大とナリヤ、協力して得た物は勝利だけではなかったようだ。
対して遊治郎は、本社に呼び出されるまでの数日間。頭を悩ませることとなる…。
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