遊戯王 RAIL_WARRIORS:Re   作:マグロ兄貴

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第3話 無法

[アカデミア上野寮:204号室]

 

 

デュエルアカデミア上野校の生徒が暮らす寮は二階建てで、遊大は2階の204号室に住んでいる。

 

部屋の窓からは朝日が眩しく射し込んでおり、小鳥がさえずりを奏でる声が心地よく響いていた。

 

今日は平日、当然登校日であるが遊大は始業の時間になっても部屋のベッドに転がっていた。

 

とどのつまりサボりだ。

 

 

遊大「眠い…」

 

 

眠気に抗うことなく開きかけた目を閉じる。

 

しかし…

 

ドンドンドン!と部屋の扉を叩く音が響き女性教諭の声がした。

 

 

「開けなさい!真藤遊大!とっくに授業始まってるわよ!」

 

 

その声の主は学年主任の教師である

『天上院未来(てんじょういんみらい)』。

 

耳をつんざくような高い声で怒鳴り散らすも、遊大はものともせず寝返りを打つ。

 

 

遊大「たく、うるせえなぁ…」

 

 

未だにドンドンと扉を叩く音を無視して着替えを済ませる。

 

私服はほとんど無いので、学ランに赤いチェック柄のシャツを羽織るだけ。

 

そして窓を開けてロープを下ろし、ゆっくりと壁に足をつけて1階へと降りる。

 

下ろしたロープは再び巻き取り、近くの茂みに隠した。

 

 

遊大「さて、いつもの店行くか…」

 

 

こうして遊大は学年主任の天上院教諭に出会うことなく寮の外へと脱出したのだ。

 

 

 

 

[カードショップ:実家]

 

 

遊大はうつらうつらとなりながらも辿り着いたのは行きつけのカードショップ。名前は『実家』。

 

実家のような安心感、というコンセプトとは店長が言うものの外装・内装はともに普通のカードショップだ。

 

 

遊大「ちーっす」

 

利府「おお遊大、またサボりか」

 

遊大「そんなところだ、奥の部屋で寝かしてくれ」

 

 

彼が店長の『利府孝宏(りふたかひろ)』。店の常連は利府さん、もしくは店長と呼ぶ。

 

 

利府「それにしても、最近は『アレ』がうるさくてかなわんよ。地元民としちゃあ穏便に済まして欲しいもんだが」

 

遊大「アレ?」

 

 

店長が指を指す先、そこには店の外を歩くプラカードを持った集団がいた。

 

おおよそ20人くらいだろうか、彼らは遊大が店に入るまで反対側の歩道をずっと一緒に歩いていたから存在には気づいていた。

 

しかし、なんの集団なのかまでは気に止めていなかった。興味が無かったからだ。

 

 

利府「お前どうせテレビでニュースとか見てないだろ?」

 

遊大「うちの寮にそんなもんねえよ」

 

利府「そいつは悪かったな、詫びついでに教えてやるよ。

 

今、ここ上野の街で『反帝国鉄道組合』っていう団体が活動してるのは知ってるよな?」

 

遊大「ああ、拡声器とか使って演説してる奴らな。駅前で何度か見た事あるぜ」

 

利府「彼らは、帝国鉄道が上野から大宮までの区間を無遠慮に列車を走らせてることに怒ってるんだ。

 

夜中でもお構いなく騒音や煙を撒き散らして、沿線住民は迷惑している。それで帝国鉄道に、夜くらいは列車を走らせないようにと訴えてるのが『反帝国鉄道組合』だ」

 

遊大「ふーん」

 

利府「ふーんってお前なぁ…。自分の住んでる街のことくらい知っておけって」

 

遊大「悪ぃ、眠くてそれどころじゃねえや」

 

 

遊大はおおあくびをしながら店の裏の奥の部屋へと入っていった。

 

 

利府「やれやれ、こうやって部屋を貸してしまう辺り…俺ってまだまだ甘いなぁ」

 

 

 

 

[大崎駅:駅長室]

 

 

所変わり、場所は大崎駅。

 

遊治郎は昨日のデュエルで敗北した事で本社に呼び出されることになり、憂鬱になっていた。

 

 

遊治郎「あれだけ大口叩いて負けたんだから、しょうがないよなぁ…」

 

 

すると、コンコン!と部屋をノックする音がする。

 

 

遊治郎「どうぞ」

 

藤崎「失礼します、駅長…」

 

 

それは昨日の決闘乗務当番者でありながら遊治郎同様に敗北した藤崎だ。

 

 

藤崎「あの、昨日はすいませんでした…。本当は自分の当番だったのに…」

 

遊治郎「気にするな、それに私が出向いたのは相手のご指名もあった訳だからな」

 

藤崎「でも、自分は…」

 

遊治郎「まあ罪の意識が晴れないなら、私が本社に行く時に藤崎も付いてきたらいい。直接社長に謝ろう。それに合わせて勤務表も作り替えておくから」

 

藤崎「分かりました、失礼します」

 

 

そう言って藤崎は部屋を出ていった。

 

 

遊治郎「何言ってんだかね…。1人じゃ寂しいから巻き込んでしまった…」

 

 

部下を巻き込んだ罪悪感に、遊治郎は大きくため息をついた。

 

 

遊治郎「はぁ……」

 

 

 

 

 

[カードショップ:実家]

 

 

再び場所は実家。(無論カードショップの名前である)

 

 

遊大は奥の休憩スペースで横になっていたが、店の方から騒がしい声がした為に目を覚ます。

 

 

遊大「ったく、何事だよ…」

 

 

 

 

遊大が店のほうへと出向くと、利府店長が誰かと話をしていた。

 

それは遊大も顔見知りの肉屋と八百屋の店主の親父さん達だ。

 

 

肉屋「利府さん!俺たちもう黙ってらんねえよ!」

 

八百屋「一緒に文句言いに行こうぜ!」

 

利府「し、しかし…あまり事を騒ぎ立ててもねぇ…」

 

遊大「なんかあったんすか?」

 

 

その会話に遊大も加わると、肉屋と八百屋の店主は遊大にも語り始める。

 

 

肉屋「おお遊大じゃねえか!聞いてくれよ!今朝方ここらの歩道を歩いていった『反帝国鉄道連合』の奴らが、勝手に店先に張り紙をしていったんだ!

 

しかも迷惑なことに、ガムテープで何重にも張り付けやがって!剥がした痕がベトベトだ!」

 

 

肉屋の親父はボロボロの張り紙を遊大に手渡す。

 

そこには…

 

 

遊大「なになに…?

 

『高速走行反対』『夜は静かに』『騒音迷惑』…まあ言いたい事は分かるがなぁ。

 

何より人の店に勝手に貼るのは非常識だろ」

 

八百屋「お、さすが坊主!こんな中坊のが常識弁えてるのにあの馬鹿どもと来たら!」

 

利府「まあそうだな、一応注意だけしに行くか。この時間は上野駅の遊歩道で活動しているはずだ」

 

遊大「俺も行くぜ」

 

利府「いや良いよ、あとは大人がやるから」

 

 

その言葉に遊大はムッとする。

 

 

遊大「良いだろ減るもんじゃあるまいし。それに反帝国鉄道連合って奴らの事も少し気になるしな」

 

肉屋「社会勉強ってか?勤勉だなぁ」

 

八百屋「学校はサボりがちなのにな」

 

遊大「ほっとけ!」

 

 

 

こうして遊大と利府店長たち4人は上野駅へと向かうのだった。

 

 

 

 

[大崎駅:駅長室]

 

 

お昼休憩も終わって、黙々と雑務をこなしていた遊治郎の元に一本の電話が入る。

 

デスクの上の電話の受話器を上げると、それは上野駅の駅長からだ。

 

遊治郎「はい、こちら大崎駅駅長室です」

 

駅長「どうも天馬駅長、上野駅の駅長ですが…お忙しいところ申し訳ない。1つお願いがありまして」

 

遊治郎「どうなさいました?」

 

駅長「先日本社に頼んでおいた資料が、どうやら間違ってそちらに届いたようで…。人を向かわせますので渡して貰えませんか?」

 

遊治郎「ああ、確かに身に覚えのない封書が届いてました。せっかくですので私が向かいましょう」

 

駅長「そんな、わざわざ天馬駅長が出向かずとも…」

 

遊治郎「いえいえ、私も上野方面に用がありますのでその際に伺いましょう」

 

駅長「であれば、お言葉に甘えさせてもらいましょう。よろしくお願いいたします」

 

遊治郎「ええ、では後ほど」

 

 

通話を終えガチャン!と受話器を戻す。

 

 

遊治郎「はぁ…」

 

 

遊治郎は再びため息をつく。

 

上野に用がある、などと電話では言ったがそんな用などは無い。

 

落ち込んで仕事が身に入らない、少し外に出て気晴らしがしたかっただけの嘘なのだ。

 

 

遊治郎「行くか…」

 

 

遊大は荷物をまとめ、駅長室を出て事務室にいる部下へ顔を出す。

 

 

遊治郎「みんなすまない、上野駅へ用が出来たので持ち場を離れる。何かあったら電話してくれ」

 

 

 

中野「おお気をつけてな」

 

 

その言葉に中野は手を上げて返事をした。

 

 

遊治郎「頼りになります、先輩」

 

中野「あいよ、あとは任せろ」

 

 

こうして偶然にも、遊治郎は上野駅へと目指すのだった。

 

 

 

 

 

[上野駅:鍵型オブジェ前]

 

 

遊大と利府店長たち4人は、上野駅の歩道橋に立つオレンジ色のオブジェの前に来ている。

 

4人の目の前には例の反帝国鉄道組合に所属していると思われる2人のオバチャンとの睨み合いが続いていた。

 

 

八百屋「だーかーら!勝手に人の店に張り紙を貼るのはやめてくれないか!迷惑なんだ!」

 

 

八百屋の親父がそう言うと、すかさずオバチャンが切り返す。

 

 

オバチャン1「なんだい!いい歳した大人がよって集って怒鳴り散らして!」

 

オバチャン2「そうよそうよ!こう言うのなんて言うか知ってる!?恐喝って言うのよ!!」

 

 

負けじとキーキー騒ぐオバチャン2人に対し呆れながらも遊大が口を開く。

 

 

遊大「あんたらさぁ、人の敷地に勝手に張り紙したら犯罪になるんだぞ。あんたらのなさんとする事は分かるが、他人の迷惑にならないよう…」

 

 

そう言いかけたその時…

 

 

オバチャン2「おだまり!!子供のくせに大人の会話に入ってくるんじゃない!」

 

 

2人目のオバチャンがピシャリと会話を妨げ、遊大をビンタした。

 

 

八百屋「何も子供に手を上げることは無いだろ!」

 

 

八百屋の親父は言い返すも、時すでに遅し。

 

子供だからと話を遮ったオバチャン、子供だからと擁護する八百屋の親父。

 

遊大にとって子供だからと不必要に過保護にされるのも、ましてや子供だからと対話を拒否するのも、不愉快以外の何物でもない。

 

 

遊大「………ーな…」

 

オバチャン2「なんだい!文句があるならハッキリ言いなクソガキ!」

 

遊大「痛えって言ってんだよクソババアァァ!」

 

 

遊大は思いっきり拳を握りしめ、オバチャン2の顔面めがけてぶち込んだ。

 

メキョッ!という不可解な音と共に、後方に立つオブジェに背中から叩きつけられた。

 

 

オバチャン2「ぐえええええェェェ!!」

 

 

まるでモンスターの鳴き声と思ってしまうような声をあげてオバチャンは地面に倒れる。

 

 

オバチャン1「や、やってくれたわね…!」

 

遊大「ガキだからなんだよ、あんまり舐めてるとぶっ飛ばすぞ!!」

 

 

遊大はオバチャンの胸ぐらを掴んで頭突きをお見舞する。

 

 

オバチャン1「ぎゃっ!?」

 

 

オバチャンはそのまま尻もちをついてしまう。

 

 

八百屋「お、おいおい…さすがにやり過ぎじゃないか」

 

遊大「お前もだァ!」

 

 

止めようとした八百屋の親父は、遊大に体当たりされ後ろ向きに倒れる。

 

 

八百屋「カハァ!!!」

 

利府「そうだった、あいつを子供扱いしたら駄目だったんだ…」

 

オバチャン1「よ、良くもやってくれたわね!こうなったら先生にお願いするしかないよ。

 

先生!せんせーーい!!」

 

 

オバチャンが先生と呼ばれる人物を大声で呼ぶ。

 

するとオブジェの上からすぐに返事が飛んできた。

 

 

??「はーーーい!!」

 

 

そしてソイツはオブジェから飛び降り、遊大たちの目の前に降り立った。

 

いかにもインテリ風のメガネをかけた男が、クイッとメガネを触りながら話し始める。

 

 

金田「どうも、ご紹介に預かりました弁護士の『金田(かねだ)』と申します。

 

反帝国鉄道組合の顧問弁護士をしております」

 

 

そう言い金田は遊大たち4人に俊敏な動きで接近し、その手に自身の名刺を握らせた。

 

 

遊大「んで、弁護士の先生が何だっつーんだ。示談でも取り繕うってか?」

 

金田「ハッ!ご冗談を…。訴えるんですよ、あなた方を恐喝と暴行の罪でね」

 

遊大「何言ってやがる、先にちょっかい出したのはてめえらだろうが」

 

肉屋「そ、そうだぞ!お前らが勝手に人の店に…」

 

金田「シャラップ!そんな事は問題ではないんですよ。問題なのは、あなた方がご婦人たちに暴行を加えた揺るぎない証拠があるという事です」

 

オバチャン1「そうだそうだー!」

 

 

そう言いながら金田はデジカメをちらちらと遊大へ見せつける。

 

 

遊大「つまり、さっきのやり取りは全部撮影してあるって事かよ」

 

金田「その通り、示談で済ませるなんて生易しい真似はさせません。法廷に引きずり出して有罪判決を受けてもらいます!」

 

利府「そんな!彼は…あ」

 

遊大「なんだよ店長、俺が…何?」

 

 

ギロリと遊大は利府を睨みつける。

 

 

利府「なんでもないよ!(あっぶねぇ…)」

 

遊大「まあいい、てめえの言い分は分かった。なら俺は『この街のルール』に乗っ取って戦うぜ」

 

金田「ほう、それはつまり…?」

 

遊大「俺とデュエルしろ、俺が勝ったら訴訟の件は取り下げ。そんで今後一切は勝手に店に張り紙を貼らないと連合に周知させること」

 

金田「ふっふっふ、駄目です」

 

遊大「なにィ!?決闘を断るってのか!」

 

金田「勘違いされては困りますね、確かに『海馬コーポレーション指定特区』である上野では適用されますが、法律が絡む事柄は『決闘書士』がいなければデュエルそのものが成立しません」

 

遊大「なんだその『決闘書士』って…」

 

金田「説明しましょう、簡単に言えば『決闘の立会人』です。

 

しかし普通の立会人とは違いデュエルの記録と結果報告を国の定めた機関へ報告しなければならないのです。

 

残念ですが私は『決闘書士』の資格を持っていないのでデュエルそのものが成立しないのです」

 

遊大「そんな…!店長、今の話って本当なのか!」

 

利府「ああ…。前に俺も土地を賭けて不動産とデュエルした事がある。確かに立ち会ってたよ、決闘書士の人…」

 

遊大「くそっ!」

 

金田「ふっふっふ、残念でしたね…」

 

 

落胆する遊大、周りにいる利府店長や肉屋と八百屋の親父達も為す術もないと頭を抱えた。

 

 

その時である。

 

 

 

???「ではそのデュエル、私が立ち会いましょう」

 

 

1人の男が金田へと声をかけた。

 

 

金田「な、なんですかあなたは…。これは我々の問題です、引っ込んでいただきましょうか」

 

 

???「そうはいかない、彼は私の親戚の子でね。ここで見過ごしたとあっちゃあ兄弟に顔向け出来ない」

 

 

それは、先日遊大がデュエルをけしかけた相手である遊治郎だった。

 

 

遊大「おっさん!なんで…!」

 

遊治郎「まあ待ちなさい、あなたが弁護士の金田さんだね」

 

金田「なぜ私の名前を…!!」

 

遊治郎「落としましたよ、名刺」

 

 

遊治郎は手に持っていた名刺を金田へと手渡す。

 

 

金田「ど、どうも…。だがしかし、決闘書士の資格をお持ちでなければ立会人は出来ませんよ?」

 

遊治郎「勿論、これが証明書です」

 

 

遊治郎はデュエルディスクを起動し『決闘書士資格者』のページをモニターに開いて金田に見せる。

 

 

金田「ぐ、ぐぬぬ…!」

 

遊大「さあ、これでデュエルを断ることは出来ないぜ」

 

遊治郎「お覚悟を」

 

金田「ふ、ふふ…ふふふはははは!!

良いでしょう、私と相手したことを後悔させて差し上げましょう!」

 

利府「おいおい!本気か遊大!」

 

遊大「ああ、何よりおっさんがお膳立てしてくれたんだ。乗るしかねえだろ、このビッグウェーブによォ!」

 

遊治郎「それでは、両名とも位置へ!」

 

 

遊大と金田はそれぞれ遊治郎を中心に、2m程度の位置まで離れる。

 

 

遊治郎「これより、決闘書士の立会にてデュエルを行う!」

 

金田「先行は譲りますよ」

 

遊大「後悔すんじゃねえぞ」

 

遊治郎「それでは、始め!」

 

 

遊大・金田

「「デュエル!!」」

 

 

《TURN1》

 

 

遊大「俺のターン!まずは手札から【創造の代行者ヴィーナス】を召喚!」

 

 

創造の代行者ヴィーナス

☆☆☆☆ ATK.1600

 

 

遊大「ヴィーナスの効果発動!ライフを1500支払って、デッキから【神聖なる球体】を3体特殊召喚する!」

 

 

神聖なる球体×3

☆☆ ATK.500

 

遊大

LP.8000→6500

 

 

 

遊大「行くぜ!俺は神聖なる球体3体をリンクマーカーにセット!

 

リンク召喚!現れろ!

【天空神騎士ロードパーシアス】!」

 

 

天空神騎士ロードパーシアス

LINK3 ↙↓↘ ATK.2400

 

 

遊大「ロードパーシアスの効果発動!手札を1枚墓地に送り、デッキから【天空の聖域】を手札に加える。そのまま発動!」

 

手札→墓地:強烈なはたき落とし

 

 

天空の聖域

フィールド魔法カード

 

 

遊大「最後にカードを2枚伏せてターンエンド」

 

 

 

《TURN2》

 

 

金田「私のターン、ドロー!残念ですがあなたはこのデュエルにおいて裁かれる運命にある!

 

私は手札の【ジャッジ・ロイヤー】を召喚!」

 

 

ジャッジ・ロイヤー

☆☆☆☆ ATK.1500

 

 

金田「ジャッジ・ロイヤーの効果発動!デッキから【ジャッジ】カードを1枚手札に加える。私が加えるのは魔法カード【ジャッジ!戦闘破壊罪】!」

 

遊大「名前からして戦闘破壊に対応した魔法カードって所か…」

 

金田「さらに手札の【ジャッジ・ディフェンデント】と【ミセス・ジャッジ】の効果発動!これらはフィールドにジャッジモンスターが存在すれば特殊召喚出来るのです!」

 

 

ジャッジ・ディフェンデント

☆☆☆ ATK.500

 

ミセス・ジャッジ

☆☆☆☆☆☆ ATK.2000

 

 

遊大「ちっ…わらわらと湧いてきやがって」

 

金田「まだまだ!続いて【ジャッジ・ディフェンデント】の効果発動!このモンスター以外のジャッジモンスターを対象にし、そのモンスターと同じレベルにする!

 

私は【ミセス・ジャッジ】を選択し、ディフェンデントのレベルを6にする!」

 

 

ジャッジ・ディフェンデント

☆☆☆☆→☆☆☆☆☆☆

 

 

肉屋「レベル6のモンスターが2体!」

 

八百屋「来るぞ遊大!」

 

金田「外野は黙っていることです!

 

私はレベル6となったジャッジ・ディフェンデントとミセス・ジャッジの2体でオーバーレイネットワークを構築!

 

エクシーズ召喚!現れろランク6!

【ジャッジ・プロセキューター】!!」

 

 

ジャッジ・プロセキューター

★★★★★★ ATK.2600

 

 

遊大「エクシーズモンスター…!」

 

金田「プロセキューターのオーバーレイユニットを1つ取り除き、その効果でデッキから【ジャッジ!誘発罪】をフィールドにセットする!」

 

利府「くっ!さすが最近テーマ強化の入ったジャッジデッキ、怒涛のサーチ能力だな…」

 

金田「さて、これで私のフィールドにはロイヤー(弁護士)とプロセキューター(検事)が揃った。ならばこれより法廷を開廷する!

 

フィールド魔法!【決闘大法廷】を発動!」

 

 

決闘大法廷

フィールド魔法カード

 

 

金田「決闘大法廷の発動処理として、この裁判に必要不可欠な存在。裁判長たる【ジャッジ・マン】を特殊召喚する!」

 

 

ジャッジ・マン

☆☆☆☆☆☆ ATK.2200

 

 

金田「この効果で特殊召喚されたジャッジ・マンは戦闘で破壊されず相手の効果を受けない!」

 

遊大「なんだと!?くっそ厄介な…!」

 

遊治郎(なるほど、効果を受けない能力はデュエルモンスターズにおいて最も耐性の強い能力。

 

それに《ジャッジ》のテーマは遊大くんのカウンターデッキとも似た性質を持つ。どちらか先に動いた方が不利になるな…)

 

 

すると、ソリッドビジョンに投影されたジャッジ・マンがコンコンッ!と木槌を鳴らす。

 

 

 

ジャッジ・マン「これより、被告人『真藤遊大』の審理を開廷します」

 

金田「弁護側、準備完了しております」

 

遊大「ただのバニラモンスターが、戦闘破壊と効果を受けない耐性が付くだけで面倒になるとはな…」

 

金田「くっくっく、バトルです!私は【ジャッジ・プロセキューター】で【創造の代行者ヴィーナス】を攻撃!」

 

 

プロセキューターが代行者ヴィーナスへ指を突きつけると突風が吹き荒れ、ヴィーナスは上空へ巻き上げられ破壊されてしまう。

 

 

遊大「くそっ、だが【天空の聖域】が発動していることで戦闘ダメージは受けないぜ。

 

そしてこのタイミングで【天空神騎士ロードパーシアス】の効果発動!

 

リンク先のヴィーナスが墓地へ送られた事で、墓地のヴィーナスを除外してそれよりレベルの高い天使族モンスターを手札から特殊召喚できる!

 

現れろ!【天空聖騎士アークパーシアス】!」

 

 

天空聖騎士アークパーシアス

☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ATK.2800

 

 

遊大「攻撃力2800は簡単に越えられまい!」

 

金田「なるほど、困りましたね。私は以降のバトルをせずに手札からカードを2枚伏せてターンエンド」

 

 

《TURN3》

 

 

遊大「俺のターン、ドロー!俺は【天空神騎士ロードパーシアス】の効果発動!

 

手札を1枚墓地へ送り、デッキから【神秘の代行者アース】を手札に加える!そのまま召喚!」

 

手札→墓地:天空の宝札

 

 

神秘の代行者アース

☆☆ ATK.1000

 

 

金田「分かってはいましたが、代行者テーマを中心にしたビートダウンって所ですかな」

 

遊大「俺はアースの効果でデッキから【マスター・ヒュペリオン】を手札に加える」

 

金田「くっくっく、さあ来るがいい!」

 

遊大「俺はフィールドのアースを除外して【マスター・ヒュペリオン】を特殊召喚!来い!相棒!」

 

 

遊大の号令で、太陽の神が降臨する。

 

熱き思いを拳に灯しフィールドに降り立つ姿は神々しさと威厳を兼ね備えていた。

 

 

マスター・ヒュペリオン

☆☆☆☆☆☆☆☆ ATK.2700

 

遊大「行くぜバトルだ!アークパーシアスで【ジャッジ・プロセキューター】を攻撃!」

 

金田「グッ!受けましょう…!」

 

 

金田

LP.8000→7800

 

 

遊大「よし!アークパーシアスの効果発動だ!戦闘ダメージを与えた時、デッキからカウンター罠を手札に加えるぜ!」

 

金田「異議あり!!」

 

遊大「な、なんだと…?」

 

金田「私は伏せていた速攻魔法【ジャッジ!戦闘破壊罪】を適用してもらう!

 

自分フィールドのモンスターが戦闘で破壊された時、その相手モンスターの攻守どちらかの数値分のダメージを相手に与える!

 

私は当然、アークパーシアスの攻撃力を選択!」

 

 

遊大

LP.6500→3700

 

 

遊大「かなりのダメージを食らっちまったか…」

 

金田「まだです!この効果で対象となったモンスターはデッキに戻る!傍聴席(デッキ)へと帰りたまえ!」

 

遊大「なんだと!?」

 

ジャッジ・マン「退廷を命じます!」

 

 

コンコンッ!とジャッジ・マンが木槌を鳴らすと、アークパーシアスは光の粒子となって消滅。

 

カードはデッキへと返された。

 

 

遊大「なんつー強さだ…。だがな、アークパーシアスの効果が無くなったわけじゃねえ。

 

俺はデッキから【神の宣告】を手札に加えるぜ」

 

金田「一連の効果解決が処理された、このタイミングで【ジャッジ・ロイヤー】の効果発動!」

 

遊大「まだあるのか!?」

 

金田「ジャッジ・ロイヤーは【ジャッジ】魔法・罠カードが発動した場合、相手フィールドのカードを1枚選んで破壊できる。

 

破壊するのはお前だ!マスター・ヒュペリオン!」

 

ヒュペリオン「グオオオオオォォォォ!!」

 

 

マスター・ヒュペリオンは攻撃することも効果を発動することもなくフィールドで爆発、破壊されてしまった。

 

 

遊大「クソ!よくもヒュペリオンを!絶対許さねえ…!ぶっ飛ばしてやる!」

 

金田「くっくっく、そんな世迷い言を…」

 

遊大「だったら証明してやるよ、続けて天空神騎士ロードパーシアスで【ジャッジ・ロイヤー】を攻撃!」

 

金田「良いでしょう!そのまま受けて立ちます!」

 

 

金田

LP.7800→6900

 

 

遊大「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

 

《TURN4》

 

 

金田「私のターン、ドロー!

 

さて、そろそろ決着と行きましょうか」

 

遊大「やれるもんならやってみな」

 

金田「では、まずはフィールド魔法【決闘大法廷】の効果発動!手札を1枚捨てることでデッキから【ジャッジ・ロイヤー】を手札に加える」

 

遊大「…!!アイツはジャッジカードをサーチできるモンスターか」

 

金田「ほう、どうやら飲み込みが早いようですね。勿論使いますとも!【ジャッジ・ロイヤー】を召喚!」

 

 

ジャッジ・ロイヤー

☆☆☆☆ ATK.1500

 

 

金田「効果発動!デッキから【ジャッジ】カードを手札に加える!」

 

遊大「カウンタートラップ発動!!

【神の宣告】!ライフを半分支払い相手の魔法・罠・モンスター効果を無効にして破壊する!!」

 

 

遊大

LP.6500→3250

 

 

金田「確かに通常召喚権を行使したタイミングでの効果無効・破壊はもっとも効率が良く相手の逆転の芽を摘むやり方。

 

しかし今、あなたが相手をしているのは『弁護士』なのですよ」

 

遊大「だったらなんだ」

 

金田「それくらい想定内だと言うことですよ!

 

私はそのカウンター罠の解決後に異議を申し立てる!

 

【ジャッジ!効果無効罪】を適用してもらう!自身の扱うカードの発動が無効にされた時、相手のライフを半分にする!」

 

遊大「何ィ!?」

 

金田「つまりあなたは、神の宣告に加えてさらにライフを半減しなくてはならない!」

 

 

遊大

LP.3250→1625

 

 

 

利府「まずいぞ…こんなにライフが減ってしまうとは」

 

八百屋「つーかこんな細分化されたライフ数値を見るのは初めてだぜ…」

 

金田「まだ終わらない!追加効果としてあなたの魔法・罠カードを全て破壊する!!」

 

遊治郎(遊大くんのフィールドには【天空の聖域】と2枚の伏せカード…。もしかしたら片方は…)

 

遊大「トラップ発動!【低劣な壺】!

セットされている自身のカウンター罠カードを墓地へ送り、1枚ドローしたあと500ライフを回復する!

 

俺が墓地へ送るのは【神の警告】!」

 

 

遊大

LP.1625→2125

 

 

金田「わずかに生き長らえましたか…。非常に残念ですがこのターン中あなたの受けるダメージは0になってしまいます。

 

まあ、どっちにせよ私のモンスターではアークパーシアスに及びません。ターンエンドです」

 

 

《TURN5》

 

 

遊治郎(やはり【低劣な壺】か…)

 

遊大(コイツを引けたはいいが、ただ出したところで決着はつかない)

 

遊治郎(もし何がなんでも勝ちに行くつもりなら…)

 

遊大(なんとしてでもフィールドをこじ開ける!)

 

遊治郎(なんて、考えているのだろう…)

 

遊大「俺の…ターン!!!!」

 

 

遊大はドローしたカードを確認し、にやりと笑った。

 

 

金田「ふ…。圧倒的な不利な盤面、君の状況はよく理解出来る。絶対に逆転出来ない、そう思っているのだろう?ならば潔くサレンダーしてみるかね」

 

遊大「いいや違う、俺の勝ちだ」

 

金田「何っ!?」

 

遊治郎(ハッタリじゃない、彼は本当に勝つつもりでいる。しかしどうやって…)

 

遊大「俺はロードパーシアスの効果発動!手札を1枚捨てることで、デッキから【神秘の代行者アース】を手札に加える」

 

 

手札→墓地:禁じられた聖槍

 

 

遊大「そして俺は手札の【天空の使者ゼラディアス】の効果発動!デッキから【天空の聖域】を手札に加えてそのまま発動!」

 

 

天空の聖域

フィールド魔法カード

 

 

金田「残念でしたね。すでにロードパーシアスの効果は発動済み、天空の聖域発動中であれば天使族モンスターを制限なく手札に加えられたものを…」

 

遊大「そんなもん今は関係ない!手札から【神秘の代行者アース】を通常召喚!」

 

 

神秘の代行者アース

☆☆ ATK.1000

 

 

遊大「そして再び俺の元へ帰ってこい!【マスター・ヒュペリオン】!墓地にある神秘の代行者ヴィーナスを除外して特殊召喚だァ!」

 

 

マスター・ヒュペリオン

☆☆☆☆☆☆☆☆ ATK.2700

 

 

金田「ふっふっふ、当然あなたのしようとしている事は想定済みですよ。マスター・ヒュペリオンの効果を使い私のフィールドのカードを破壊するつもりでしょう。

 

だが!私には戦闘破壊や効果無効に対抗する以外にも、『効果破壊』に対応したジャッジ魔法カードが存在するのです!

 

迂闊に能力を発動すれば、マスター・ヒュペリオンは先程と同様に破壊され墓地へ送られるでしょう。

 

くっくっく!さぁどうする!!」

 

遊大「………ふ。」

 

金田「な、何がおかしい…!」

 

遊大「嘘だな」

 

金田「な…!なぜそう言いきれる!」

 

遊大「『自らカードのテキストを話す』『長ったらしい説明をして時間を稼ぐ』。そして何より『落ち着きがない』。これだけ不審な行動が多くて本当だと思うか?」

 

金田「な……!!」

 

遊大「あんたが伏せているのは、あんたのターンでしか効果が及ばない【ジャッジ!誘発罪】だ!

 

ならマスター・ヒュペリオンで破壊するのは【決闘大法廷】!!」

 

金田「うおおおおぉぉぉ!!法廷がァァァァ!!!!崩れ落ちるぅぅぅぅ!!」

 

遊大「そして一切の耐性が失われた【ジャッジ・マン】を破壊する!!」

 

 

マスター・ヒュペリオンの拳に炎が灯る、その拳でジャッジ・マンの顔面へと殴りつける。

 

 

ジャッジ・マン「ぬううぅぅぅぅ!!閉廷!閉廷ぃぃィィ!!」

 

 

金田「くそっ!このままでは…!」

 

遊大「アンタに逆転のチャンスは無い!俺はマスター・ヒュペリオンと神秘の代行者アースをリンクマーカーにセット!

 

現れろ!リンク2!

【失落の堕天使】!!」

 

 

失落の堕天使

LINK2 ↙↘ ATK.1600

 

 

遊大「これで俺の【墓地には天使族のモンスターが4体】になった」

 

金田「そ…その詠唱はまさか…!!」

 

遊大「赤き翼の大天使よ。

 

その大いなる力を持って全てを屈服せよ!

 

現れろ!【大天使クリスティア】!!」

 

 

その巨大な天使は赤き翼をはためかせてフィールドに降臨する。

 

 

大天使クリスティア

☆☆☆☆☆☆☆☆ ATK.2800

 

 

その際、光の球体を1つ生み出したかと思うとそれを遊大の手札へと渡した。

 

 

遊大「クリスティアが自身の効果で特殊召喚に成功した時、墓地の天使族モンスターを手札に戻すことが出来る。

 

俺が戻したのは【マスター・ヒュペリオン】。だがお前にとどめを刺すだけなら出す必要は無い。攻撃宣言までにお前が対処出来ないのなら、一斉攻撃を仕掛けるだけだ!

 

さあ、俺はメインフェイズの終了を宣言しバトルフェイズに移行する!そのあいだにてめえは何か宣言するカードはあるのか!」

 

金田「ぐ…ぐぬぬぬぅぅぅ!!い、いいぃぃぃぃ異議なしぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」

 

 

金田は金切り声のように叫ぶ。

 

 

遊大「チェックメイトだ!俺のモンスターでダイレクトアタック!!」

 

金田「ぎゃああああァァァァァァァァァァァァ!!」

 

 

金田

LP.6900→0

 

 

 

 

遊大「俺の勝ちだ。約束通り訴訟は取り消し、勝手な張り紙も許さん。文句なんて言わせねえぞ」

 

遊治郎「待つんだ遊大くん、まだ1勝だ」

 

遊大「……は?」

 

遊治郎「決闘書士が立ち会うデュエルは『2勝先取』が原則。つまり弁護士の先生は2戦目を行うか、投了を宣告出来る」

 

遊大「なんだよそりゃ!聞いてねえぞ!」

 

遊治郎「確かに言わなかった、だが君なら2戦目だって負けることは無いだろう。もし2戦目があればどうかだけどね」

 

 

遊治郎は金田へ向き直る。

 

 

遊治郎「いかがしますか?2戦目か、投了か」

 

金田「そんなものは決まっている!2戦目を…!」

 

 

??「その勝負!待った!!」

 

 

すると、金田の発言を遮るように1人の中年の男が息を切らして走ってきた。

 

 

??「はぁ…はぁ…その勝負!投了する!」

 

遊大「なっ!?投了だと!?」

 

遊治郎「失礼ですがあなたは?」

 

組合長「私は『反帝国鉄道組合』の組合長です。先程、あなた方のことをこちらのご婦人から聞きましてね」

 

 

組合長が振り返ると後方には20数名の組合員が整列しており、その先頭には警官に付き添われた先程のオバチャン2人が弱々しく項垂れていた。

 

 

 

組合長「金田さん、勝手なことをして貰っちゃ困ります!関係無い人を巻き込んだり、ましてやウチの組合員に悪いことを吹き込んだり!もううんざりなんです!」

 

金田「そんな!私はただ…!!」

 

組合長「現時点を持って、あなたとの契約を打ち切らせて頂きます!勿論、あなたが所属している弁護士事務所にも苦情を入れます。覚悟しておいてください!」

 

 

そう叱責する組合長は般若の如く怒りに満ちた表情で、金田は怯えながらもプルプルと足を震わせ立ち上がる。

 

 

金田「わ、分かりました…。あなた達、これで終わりと思わないことですね…はは………ははははははははは!!!!」

 

 

金田はヨロヨロと広場から出ていった。

 

そんな金田を見送った組合長が遊大と遊治郎、そして利府店長たちに向き直り頭を下げる。

 

 

組合長「本当に申し訳ございませんでした、私の監督不行き届きです」

 

 

先程のオバチャンや金田と違い、誠実な姿勢を見せられた肉屋と八百屋の親父は怒りを忘れてたじろぐ。

 

 

肉屋「ま…まあなんだ、今度からひと言声をかけてくれや」

 

八百屋「そうそう、黙って貼るのは良くないって事よ」

 

組合長「全組合員に周知させます、大変ご迷惑をおかけしました…」

 

利府「でも良かった、アンタがまともな人で…。みんな、あぁなのかと思っちゃったよ」

 

組合長「組織が大きくなるにつれ過激な人も集まっています、面談など繰り返してはいるのですが…」

 

遊治郎「どこも管理職は大変って

事か…」

 

遊大「で、どうなんだよ八百屋と肉屋の親父。これで良かったのか?」

 

肉屋「ああ、これで良かったよ」

 

八百屋「組合長さんも誠実な人のようで安心したし」

 

利府「お手柄だったな遊大、それと…あなたもありがとうございました」

 

遊治郎「いえいえ、偶然通りかかったものですから」

 

利府「そう言えば遊大くんとはご親戚なんですか?」

 

遊大「あんなもん嘘に決まってんだろ」

 

利府「え…?」

 

遊治郎「ああでも言わないと『外野は引っ込んでろ』って言われかねなかったですから」

 

利府「じゃあなんで助けてくれたんですか?」

 

遊治郎「それは…そうですねぇ」

 

遊大「おっさん、今回は借りとくぜ。必ず返す」

 

遊治郎「なぁに気にする事はない。こんな事で『ライバル』が減るのは好ましくない」

 

遊大「言ってくれるじゃねえか」

 

遊治郎「今のところ1勝1敗、次の時まで腕を磨いておくとするよ」

 

遊大「おうよ、次会う時は『敵』だ」

 

遊治郎「それでは皆さん、失礼します」

 

 

遊治郎は遊大たちに挨拶をし、上野駅の中へと入っていった。

 

 

八百屋「なぁ、この前遊大が線路走ってたけど…あの人って確か…」

 

肉屋「そう言えばあの人、鉄道会社の制服着てたな…」

 

利府「なるほどね、『ライバル』というか遊大にとっての『目標』って所か」

 

遊大「あのおっさんは、最初こそは俺をガキ扱いしやがった。

 

だが2回目は違った、1人のデュエリストとして俺と戦ってくれた。いくら仕事とはいえ俺はまだ学生の俺を警察に突き出すことだって出来たはずだ。

 

だがおっさんはそうしなかった、勝つことは出来たがそれも俺一人の力じゃねえしな」

 

 

そう言ってデッキからカードを1枚取り出す。

 

【冥王竜ヴァンダルギオン】のカードだ。

 

 

遊大「あの時出会ったドラゴンが俺にくれたこのカード、いったい何なんだろう…」

 

利府「冥王竜ヴァンダルギオンか、もう50年以上前に出たカードだから希少価値が付いててもおかしくない代物だが…そうも使用痕が残ってると3桁もいかんだろうな」

 

遊大「おい、勝手に査定すんなよ」

 

八百屋「何はともあれ一件落着、とっとと帰ろう」

 

肉屋「あ!やべえ、うちのカミさんに何も言わないで出てきたから怒ってるかも!」

 

利府「おいおい、『ひと言声をかけない』からだぞ?」

 

八百屋「はっはっは!ちげえねえや!」

 

 

すると、そこへ…

 

 

遊治郎「あのォ!すいませぇん!」

 

 

遊治郎は再び走ってやって来たのだ。

 

 

遊大「おっさん、どうしたんだ?」

 

遊治郎「ゆ…遊大くん!この辺に私のカバンが落ちていなかったかい!?」

 

遊大「いや、確か手ぶらだったような…」

 

利府「ええ、我々の所へ来た時には何もお持ちじゃなかったですね」

 

遊治郎「という事は…まさか…!!」

 

 

遊治郎はデュエルディスクを起動しネットへ接続、すぐに乗ってきた列車の時刻表を調べる。

 

 

遊治郎「私が乗ってきたのは京浜東北線の南浦和行き、この列車の番号は………よし!これで現在地が…桜木町!?

 

マズイ…このままでは大船まで行ってしまう!皆さん、すいませんが失礼します!!」

 

遊大「お、おう…」

 

利府「お気をつけて…」

 

 

そして再び遊治郎は上野駅の中へと走って戻って行った。

 

 

 

利府「相当大事なものが入っていたんだろうね、カバンに」

 

遊大「店長、大船ってどこだ?」

 

利府「大船(おおふな)は神奈川県だよ、京浜東北線だと終点の駅じゃなかったか」

 

遊大「どれぐらい遠いんだ?」

 

利府「確か遊大は横浜駅は行ったことあったな、それよりずっと先だよ」

 

遊大「おっさん、今から取りに行くのか。社会人って大変なんだな……」

 

利府「その通りだ、お前も今のうちに学生生活をエンジョイしとけよ」

 

遊大「……いや、必要ねえよ。俺は…」

 

利府「どうしたんだい?」

 

遊大「なんでもねえよ」

 

 

遊大は口に出さないが心の中で本音を漏らす。

 

 

遊大(必要ねえよ、学生生活なんて…)

 

 

 

 

 

[瞳電気鉄道本社:社長室]

 

 

夕方、日が落ち始める頃。

 

ナリヤは父親に呼び出され、瞳電気鉄道の社長室へと来ている。

 

育ての父である『瞳月人(ひとみつきひと)』は、お茶を淹れてナリヤの座っている来客用の席へと持ってきた。

 

 

月人「はいナリヤ、お茶が入ったよ」

 

ナリヤ「ありがとう。ねえ父さん…話って何?」

 

 

恐る恐るナリヤは質問すると、月人は神妙な顔で語る。

 

 

月人「実はナリヤにとっては良くない話だ。『童実野第二中学校』の不良がこっちの街へ出没するようになったらしい」

 

ナリヤ「まさか…あいつらが…!」

 

月人「まだ決まった訳じゃないが、お前をいじめた連中ではない保証も無い。知り合いの刑事に頼んでお前を警備してもらおうと思うんだが、どうだい?」

 

ナリヤ「………」

 

 

ナリヤはすぐに返事を出せずにいた。無理を言って転校して貰ったのに、頼ってばかりいるのが情けなかったのだ。

 

 

ナリヤ「いや、大丈夫です。今は寮で暮らしているので、さすがに学校の敷地まで奴らは入って来れないでしょう」

 

月人「しかし、どこか出かけた時にバッタリ会うかもしれない。それでも良いのかい?」

 

ナリヤ「父さんに迷惑ばっかり掛けられないよ…。自分のことは自分でなんとかしてみたいんだ」

 

月人「…分かった、でも危なくなったら助けを呼ぶんだぞ。私じゃなくてもいい、友達に連絡するんだ。

 

そうだ、遊大くんなら話を分かってくれるはずだ!」

 

ナリヤ「……そうですね…」

 

月人「何か、不満でも?」

 

ナリヤ「そうじゃないんです、遊大ももしかしたら…今の自分の地位を目当てで近づいてきた人間なんじゃないかって…。普段の振る舞いを見ていればそんな事は有り得ないって、はっきり分かるのに…」

 

月人「良いかいナリヤ、遊大くんのことを信じなさい。そうしたら遊大くんだって答えてくれるさ。

 

それに彼を運転士として迎え入れたのは私だ、私の目に狂いは無い」

 

ナリヤ「そうだと…良いですね…」

 

 

 

 






夜。

遊大は寮の自室のベッドで横になっていた。

不思議と目が冴える。

枕元の電気スタンドの明かりは、先程まで組み直していたデッキを照らす。差し替えた数枚のカードが開いたままのストレージボックスからはみ出していた。

中々寝付けないのは今に始まったことではない。

そういう時、『彼ら』は語らう。

誰にも言えない秘密、内に秘めたる『魂』と…。



『眠れぬのか?』


それは直接脳内へ語りかける。


『無理もない、大変な1日じゃったものな』



遊大「……」


それに対して遊大は返事をする事なく掛け布団を頭まで潜る。


『今が一番楽しい時じゃろ?』


遊大「関係ねえよ…」


『昼にも言っておったな、強がるでない』


遊大「強がらず弱音を吐いたら変わるのか?」


『……それは』


遊大「冗談だ、寝るぞ」


『おやすみ…なのじゃ…』



遊大は腕をのばして電気スタンドのスイッチを切る。


そして掛け布団を目一杯引いて頭が埋まるまで潜った。



遊大(あと、1年か…)



自然とまぶたが下がる、暗闇となった部屋の中で意識は薄れていった。



NEXT:第4話 マブダチ
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