遊戯王 RAIL_WARRIORS:Re   作:マグロ兄貴

7 / 9
第6話 決闘伴走車

 

 

 

 

瀬人「うわああああァァァァ!貴様らァァァァ!!離せ!その薄汚い手を離せェェェェェ!!!」

 

「会長!お気を確かに!!」

 

「何事だ!?」

 

「会長が...瀬人会長が突然暴れだして!」

 

瀬奈「おじい...様?」

 

 

幼い瀬奈の前で白髪の老人が複数のスーツの男に取り囲まれている。

 

彼女の祖父、海馬瀬人だ。

 

 

取り囲むのは海馬コーポレーションの幹部役員たち。

 

暴れる海馬瀬人を押さえ付けながらもなだめるように声をかける。

 

 

「落ち着いてください!」

 

瀬人「落ち着いていられるかァァァァ!!!!こんなところで...こんな惨めな敗北があってたまるかァァァァ!!!!」

 

「いったいなんの事です!?」

 

「まさか会長、先日のシュレイダー社の吸収合併にご不満が...」

 

瀬人「黙れェ!そんなことは関係ない!このまま...偽りの玉座に居座り続けるなら死んだ方がマシだ!!」

 

 

海馬は役員たちを突き飛ばすと、よろよろとおぼつかない足取りで窓へ近づく。

 

 

「会長!馬鹿げたことはやめてください!ここ何階だと思ってるんですか!」

 

「お孫さんも見てるんですよ!」

 

瀬奈「やめて!!おじい様!!」

 

 

役員たちに加勢するように幼い瀬奈も海馬の足元にしがみつく。

 

 

瀬人「瀬奈...!」

 

 

瀬奈の声に海馬の動きが止まる。

 

 

瀬奈「お願い、おじい様......死んじゃ嫌だよ...」

 

 

ボロボロと涙を流す瀬奈を見る、海馬は膝をついて瀬奈を抱きしめる。

 

 

瀬人「瀬奈...」

 

瀬奈「お願い......ずっと、ずっと一緒にいて...」

 

 

 

 

 

瀬奈「おじい様!!!!」

 

 

瀬奈は声を張り上げベッドから飛び起きる。

 

枕元の時計は5時半を示していた。

 

おもわず目を擦ると涙目になっている。

 

 

瀬奈「......懐かしい夢を見ていた気がするわ」

 

 

寝起きで頭が働いていない状態であったが、ベッドから降りて身につけていた寝間着と下着を全て脱ぎ去る。

 

 

瀬奈「汗びっしょり......」

 

 

瀬奈はシャワールームへと入り汗を流す。

 

温かいお湯に打たれて夢で見た景色がフラッシュバックする。

 

 

瀬奈(おじい様...)

 

 

シャワーを終えた瀬奈はテキパキと身支度を済ませる。

 

キッチンのパンを1枚食べながら、冷蔵庫から牛乳を取り出しコップにそそぐ。

 

充電していたデュエルディスクのタブレットを操作しテレビを見る。

 

これがおおよその朝のルーティン。

 

 

『…...であり、箱根や江ノ島の観光に多大な影響が出始めています。

 

帝国鉄道が小田急電鉄を買収したことにより、全路線での旅客営業が停止。地域住民からも多くの批判が飛び交う現状。

 

しかしながら観光庁の羽賀長官、鉄道局の竜崎局長はこうした帝国鉄道の横暴とも取れる行動に一切言及はしておりません』

 

 

瀬奈「くだらないニュースね...」

 

 

ふぅん、と鼻で笑いながらタブレット画面を消す。

 

 

瀬奈「まだまだ駄目ね、日本の鉄道は...」

 

そうして玄関を出る瀬奈。

 

家の前には秘書の堀川が車を用意して待っていた。

 

 

堀川「おはようございます、瀬奈様」

 

瀬奈「おはよう堀川、待たせちゃったわね」

 

堀川「ほっほ、年寄りは待つことに慣れておりますので」

 

 

堀川は車の後部座席の扉を開く。

 

 

瀬奈「ありがとう」

 

 

瀬奈が乗り込むと堀川は扉を閉め、運転席に乗り込む。

 

 

堀川「では参ります」

 

瀬奈「頼むわ」

 

 

瀬奈が乗った車が海馬旅客鉄道の本社がある新宿へ向けて出発した。

 

 

 

 

それから約3時間後...

 

所変わり、ここは満員電車の中。

 

如月瀬奈から呼び出された遊大は、上野から新宿へ向けてKC山手線へ乗車していた。

 

 

※KC…海馬旅客鉄道の略称。

 

 

しかし、先日のナリヤ監禁騒動&職質デュエルの影響か。遊大は寝不足だった。

 

周りの乗客もお構い無しに大あくびをする。

 

なお今日のことに関してはすでに如月瀬奈が根回ししていた為か、すんなり学校を休むことが出来た。

 

当然ながら当事者ではないナリヤは除外されている。

 

 

遊大(今頃アイツ悔しがってるだろうなぁ…。しっかし面倒な事になった)

 

 

そんな遊大が想定外だったことがある、引率の教師が1人付き添うことになっていたのだ。

 

 

遊大「くそ…。なんで来るんだよ…」

 

未来「学年主任なんですから当然です」

 

 

天上院未来、彼女もまた如月瀬奈の指示で呼ばれていた。

 

 

遊大「これじゃただの校外学習じゃねえかよ…」

 

未来「校外学習ですけど何か?」

 

遊大「はあ…」

 

 

すると直接脳内に語りかけるように、光姫の声が響く。

 

 

光姫『遊大、不機嫌をあまり顔に出すものでは無いぞ。このまま大人しくしておくのじゃ。そうでないと、中止になって連れ返されてしまうかもしれんぞ?』

 

遊大(お前はそういう経験あるのかよ)

 

光姫『ある』

 

遊大「えー…」

 

 

思わず口に出してしまう。

 

 

未来「何が『えー』なんです?」

 

遊大「いえ、なんでもないっす…」

 

 

何事も無かったかのように目を逸らして誤魔化す。

 

 

遊大(くそー…)

 

 

 

 

しばらくして新宿駅へ到着する2人。駅のホームへ降りると電車の中とは比べ物にならない人混みが立ちはだかる。

 

 

遊大「うげえ…」

 

未来「離れたら迷子になりますからね」

 

遊大「ガキ扱いすんな!」

 

 

 

 

新宿駅は登る高架階段の場所を間違えると全く別の出口へと誘導される。

 

他の道から迂回する方法は無い、別の出口へ向かうにはホームに戻らなければならない。

 

間違えて改札を出れば、地獄を見ることになる。

 

しかも朝のラッシュ時間、来た道を戻ることすら苦行と化すのだ。

 

 

遊大「欠陥だろ、この駅…」

 

 

改札を出て数分ほど歩いた頃、海馬旅客鉄道の本社ビルに辿り着いた。

 

道中は常に人混み、ビジネスマンたちの荒波に揉まれた遊大はげんなりしている。

 

 

遊大「なんかもう疲れた…」

 

未来「バカなこと言わないの、行くわよ!」

 

 

 

 

ビルの入口からエントランスへ入ると、遊治郎の姿があった。

 

普段の制服ではなくスーツを着ている。

 

 

遊治郎「やあ遊大くん」

 

遊大「よお、おっさん」

 

未来「こら!ちゃんと挨拶しなさい!」

 

遊治郎「ああ、良いんですよ。いつもこんな感じなんで…あなたは?」

 

未来「あ!申し遅れました、私はデュエルアカデミア上野校で中等部3年の学年主任を務めている天上院未来と申します」

 

遊治郎「これはどうも、大崎駅で駅長をしている天馬と申します」

 

 

2人は互いの名刺を交換する。

 

 

遊大「んでおっさん、女社長はどこにいるんだ?」

 

遊治郎「それが、どうやら先に準備を始めるとかで会社にはいないみたいだ」

 

遊大「はぁ!?アイツが来いって言ったんじゃねえか!」

 

未来「こら!大声出さないの!」

 

遊次郎「まあまあ…。受付の人に聞いたら、今こっちに迎えの人が向かってるみたいだよ」

 

 

そう遊治郎が話したタイミングで、スーツを着た白髪の男性が近づいてくる。

 

 

「天馬遊治郎様、真藤遊大様とアカデミアの引率の先生ですね?お待ちしておりました」

 

遊治郎「来たみたいだよ、おはようございます」

 

遊大「うっす」

 

未来「今日はよろしくお願いします」

 

 

白髪の男性は深深とお辞儀をする。

 

 

「こちらこそ、よろしくお願いします。

 

申し遅れました。私は如月瀬奈様、瀬斗様の秘書をしております『堀川』と申します。以後お見知り置きを」

 

 

堀川と名乗る男は遊大達に優しく微笑む。

 

 

堀川「社長がお待ちです、どうぞこちらへ」

 

 

堀川に案内されるまま、遊大たちは建物の外へと連れ出される。

 

 

未来「とても礼儀正しい人ね、あなたも見習いなさい」

 

遊大「へいへい」

 

 

鬱陶しそうに遊大は返事を返す。

 

 

遊大「それより、ビルから出ちまっていいのか?じいさん」

 

未来「こら!」

 

堀川「ホッホッホ。良いんですよ、私めの事は好きに呼んでいただいて」

 

未来「申し訳ございません」

 

堀川「あくまで待ち合わせ場所としてエントランスにお待ち頂いたのです。社長は『地下実験線』のホームでお待ちですよ」

 

 

堀川はビルを出てすぐ近くの雑居ビルに皆を案内する。

 

エレベーターに乗り込むと、堀川は専用の操作キーを使って地下へ移動させる。

 

エレベーターの窓越しには無機質なコンクリートの壁が映るだけ。

 

1分もしないでエレベーターは地下のエリアへ到着した。

 

 

 

 

[海馬旅客鉄道:地下実験線]

 

 

堀川が先に降りてエレベーターのボタンを押す。

 

 

堀川「どうぞお降り下さい」

 

 

遊大たちはエレベーターを降りる、そこはわずかな照明の明かりしかない細い通路。

 

両サイドには不規則の間隔にいくつもの扉がある、作業用の工具やヘルメットなども壁に掛けてある。

 

 

遊大「なんだか、いかにも秘密の場所って感じだな」

 

遊治郎「私もここに来るのは初めてだよ」

 

堀川「皆様、どうぞこちらを着用願います。安全第一でございますので」

 

 

堀川はそう言い、全員にヘルメットを渡す。遊大たちは言われるがままヘルメットを装着した。

 

 

堀川「では、引き続きご案内いたします。どうぞこちらへ」

 

 

堀川に案内され、薄暗い通路を先に進む。エレベーターを降りた時点で見えてはいたが、奥の部屋から光が漏れている。

 

堀川がその奥の部屋の扉を開いて振り返る。

 

 

堀川「どうぞお入りください」

 

 

 

 

遊大「な、なんじゃこのデカい部屋は…」

 

 

通された部屋はかなり広い部屋。天井まで何十mもある巨大な空間。

 

多くの照明機器によって部屋全体が明るく照らされている。

 

その中心には一編成の列車が止まっていた。

 

それは遊治郎が遊大とのデュエルにて使用した車両、583系特急列車だ。

 

 

遊治郎「あれは583系、なぜこんなところに…」

 

瀬奈「私が用意させたのよ」

 

 

車両の一番前、乗務員室の扉から如月瀬奈が降りてくる。

 

先日会った時とは違い、動きやすい青いジャージ姿にヘルメットを被っている。

 

 

遊大「よお社長、来てやったぜ」

 

瀬奈「来たわね、真藤遊大。

 

あなたのおかげで出張中も気がかりだったわ。私が社長になってから一度も負け知らずだった海馬旅客鉄道が、たかが嘱託社員の学生に2度も敗北するなんてね」

 

遊大「1人目の奴、大したこと無かったぜ?もっと鍛え上げないとアンタの戦力になんかならんだろうよ。まさかこの俺をスカウトでもするつもりか?」

 

瀬奈「その、まさかよ。

 

アナタにはこれから海馬旅客鉄道の為に働いてもらうわ。受け取りなさい!」

 

 

そう言って1枚のカードを遊大へと投げた。

 

デュエルモンスターズのカードではない、硬いプラスチックで作られたカード。

 

そこには真藤遊大の名と社員番号、生年月日全てが記されている。

 

 

遊大「冗談がここまで来ると笑えるぜ」

 

瀬奈「すでに瞳鉄道の月人社長には伝えてあるわ、あなたはもう瞳鉄道の人間ではない。今後は我が社の人間よ」

 

未来「ちょ…ちょっと待ってください!彼はまだ学生ですよ!」

 

 

未来が慌てて2人の会話に割って入る。

 

 

瀬奈「天上院先生でしたっけ、私はあくまで彼に『内定』を与えただけよ?まだ学業が終わっていない段階で就労はさせないわ」

 

未来「そうじゃなくって、彼だって選ぶ権利もあるし親御さんだって…」

 

瀬奈「はったり?それとも無知なの?彼に親御さんなんていないわ」

 

未来「え…?何言ってるのよ、彼は里親のお父様が」

 

遊大「あー、そういや言い忘れてたっけ。入学式の前日に死んだんだわ。ショックを受けたまま申告してなかった」

 

未来「ええ!?」

 

遊治郎「さすがにそれは無いだろう...」

 

 

遊治郎と未来は驚きと落胆の表情で遊大を見る。

 

 

遊大「んな事言ったってしょーがねーだろ」

 

瀬奈「そういう事よ、あとは本人の意思次第」

 

遊治郎(本当、うちの社長は無茶苦茶だなぁ…)

 

遊大「ま、ありがたく受け取っておくぜ。俺がその時まで『生きていたら』就職してやらぁ」

 

遊治郎「…!」

 

瀬奈「その言葉、忘れないでおくわ。

 

さてと、それじゃあ本題に移るわね。みんな着いてきて」

 

 

瀬奈に案内され、583系電車の停車しているホームへ移動する。

 

全8両編成の最後尾、そこだけ何故か違う車両が連結されていた。

 

明らかにこの車両とミスマッチする青い客車だ。

 

 

遊大「鉄道オタクじゃない俺でも分かるぜ、これ違う電車の一部だろ」

 

瀬奈「一部というか客車だけど」

 

遊治郎「これは『12系客車』ですね、旧国鉄から譲渡されたものでしたよね」

 

瀬奈「正解よ、今も地方では現役で使われている由緒正しい旅客用車両ね。乗ってみてくれるかしら?」

 

遊治郎「分かりました」

 

 

遊治郎が12系客車に乗り込む、すると…

 

遊治郎「えっ!?」

 

慌てふためくように辺りを見渡し、急いで客車から降りる。

 

 

遊治郎「な…なんですかコレ!?」

 

遊大「どうしたんだよおっさん」

 

瀬奈「ふっふっふ、その反応こそ私の求めていたものよ。真藤遊大、貴方も乗りなさい」

 

遊大「何がふっふっふだよ、このスットコドッコイが…」

 

 

そう言いながら遊大は12系客車に乗り込む。

 

その異変は客室内に入った瞬間訪れた。

 

 

遊大「なっ…!!」

 

 

乗り込んだ瞬間、周囲の壁が無くなり床と座席だけしか無くなった。

 

周りを見渡すと外の景色が丸見えだ。

 

 

遊大「なんだこりゃ…」

 

瀬奈「その客車には『ソリッドビジョンシステム』が組み込まれているの。車内にいる時は壁が取り払われたかのように見えるのよ。逆に外からは普通の客車にしか見えない」

 

遊大「そんな事も出来んのかよ、ソリッドビジョンって。つーかなんの為にこんな機能が…?」

 

瀬奈「いずれ分かるわ、それよりも一度座席を組み替えるから車両の真ん中辺りで立ってなさい」

 

遊大「はぁ」

 

言われた通り、遊大は車両の真ん中に立つ。

 

それを確認した瀬奈はタブレット型のデュエルディスクを操作する。すると座席が自動で動き出し、2人がけのクロスシートから横に並ぶロングシートへと並び変わる。

 

 

瀬奈「これでOKね、そろそろお相手も到着する頃だろうし」

 

遊大「お相手?」

 

瀬奈「そうね、じゃあ改めて今日何をするのか教えるわ。

 

まず1つ、このソリッドビジョンシステムを搭載した12系客車。通称『決闘伴走車(ばんそうしゃ)』の走行テスト。

 

正常にデュエルが出来るのか、他の列車と併結運転中の接続相性などを測定するわ。

 

そして2つ、真藤遊大自身の実力を確認する」

 

遊大「俺かよ!」

 

瀬奈「当たり前じゃない、うちの社員を2人も屠ったデュエリストの実力…。是非この目で見てみたいじゃない?」

 

 

そう瀬奈が言ったタイミングで、館内放送が流れる。

 

 

『まもなく2番線に列車がまいります、黄色い線の内側に下がってお待ちください』

 

 

暗闇のトンネルの向こう側から、入線する列車の前照灯の光が差す。

 

 

 

未来「今度は何…?」

 

 

瀬奈「今日のスペシャルゲストよ、あなた達2人の対戦相手...」

 

 

トンネルから入線してきた列車の姿がはっきりと見える。

 

先頭の部分が少し丸みを帯びた赤い電車。

 

全長8両にも及ぶ編成の列車が、遊治郎の583系電車の停止するホームの向かい側である隣の線路へゆっくりと入線し停止した。

 

バタンと運転室の扉が開き、1人の男が降りてくる。

 

運転士にあるまじき長髪、それを後ろに束ねている。

 

 

??「へえ...懐かしい顔が居たもんだ」

 

降りてきた男は遊治郎の前に立ち、ニヤニヤと笑う。

 

 

??「お久しぶりです、先輩」

 

遊治郎「君は...清次(せいじ)君か!!」

 

清次「ええ、10年前はお世話になりました」

 

遊大「知り合いなのか、おっさん」

 

遊治郎「前の職場の後輩だよ、その時はまだ新卒だったけど...」

 

清次「あの頃は随分しごかれましたっけね。見たところ...だいぶ老け込んじまったようですが」

 

遊治郎「色々あってね、でも元気そうで何よりだ」

 

清次「ハッ!よしてくれよ!」

 

 

清次は嘲笑うかのように手を払う。

 

 

清次「あんたからそんな言葉が出てくるなんて、本当にどうにかなっちまったんだな!!冗談きついぜ!!」

 

遊大「あ”ァ”!?てめえ何ふざけたことぬかしてんだ!何もおかしなこと言ってねえだろ!」

 

清次「うるせえクソガキ、だいたいなんでてめえみたいな奴が立ち入り禁止の場所にいるんだ?」

 

瀬奈「私が招いたのよ、あなたの対戦相手としてね」

 

清次「へえ、社長さんが...。だが悪いな、てめえみてえなクソガキは『アウト・オブ・眼中』だ。頼まれたってデュエルはしねえ」

 

遊大「んだとゴラァ!」

 

未来「だからやめなさいったら!」

 

瀬奈「お静かに!」

 

 

瀬奈が一喝する。

 

 

瀬奈「これは京浜急行の社長と合意の上で行われる試験走行よ。あなたに拒否権は無いわ、川原清次」

 

清次「そうは言ってもよぉ社長さん、俺のデッキならこんなクソガキ一瞬で蹴散らして終わっちまうぜ?そしたら試験もクソもねえだろ」

 

瀬奈「そうね、だからあなた達にはこちらで用意したデッキを使って貰うわ。堀川」

 

堀川「かしこまりました、お2人ともこちらをお受け取りください」

 

 

堀川は遊大と清次にそれぞれデッキを渡す。

 

その瞬間、遊大は体に電流でも走ったかのような衝撃を受ける。

 

 

遊大「うわっ!!」

 

 

あまりの衝撃に驚いた遊大はデッキをばら蒔いてしまう。

 

 

清次「おいおい、そんなんで大丈夫なのか?」

 

 

清次はヘラヘラと笑いながらデッキを確認する。

 

 

清次「ふむ...なるほど、特に尖ったコンセプトも無いグッドスタッフって所だな」

 

遊治郎「大丈夫かい?」

 

 

遊治郎はカードを拾い集め遊大に渡す。

 

 

遊大「わりいな...」

 

 

しかし、再びデッキを受け取った瞬間から遊大は重苦しい空気を感じた。

 

 

遊大「くそが...なんだっつーんだよ...」

 

瀬奈「へえ...」

 

 

そんな様子を瀬奈はニヤニヤと眺めている。

 

 

遊大(あの女...何か仕込んでやがるな)

 

光姫『遊大、そのデッキ何か変じゃぞ。普通じゃない力が取り憑いておる』

 

遊大(普通じゃない力だと?)

 

光姫『うまくは言えん、けどこのデッキは誰かに監視されている...そんな気がするのじゃ』

 

遊大(それなら十中八九、あの女社長だろうよ...)

 

 

 

 

その後、もろもろのチェックが終わり遊治郎と清次はそれぞれの列車の運転台に乗り込む。

 

遊大は最後尾の車両である決闘伴走車に乗車し、デッキをデュエルディスクにセットした。

 

 

瀬奈「先生はどうします、一緒に見学しますか?」

 

未来「私はここで待たせてもらいます、正直なところ電車でデュエルなんて危険なことを生徒にさせたくないのですが…」

 

瀬奈「それに関してはご心配なく。運転は我が社のベテラン運転士が行いますし、そもそもこのデュエルはアカデミアの校長先生とも協議の上で決定されています。

 

あなたがどう思おうともこのデュエルは決行されるのよ」

 

 

瀬奈は語気を強めて未来へ言うと、遊大の乗る決闘伴走車へ乗り込んだ。

 

 

遊大「社長さんよ、こっちは準備OKだぜ」

 

瀬奈「わかったわ、そのデッキの使い方は大丈夫かしら?」

 

遊大「ごちゃごちゃしててよく分かんねえよ、でもなんとなくでなら回せるかもな」

 

瀬奈「ふふ、精々頑張んなさい」

 

 

そう言うと瀬奈はデュエルディスクに声をかける。その声はそれぞれの列車の運転台にいる2人の運転士に向けられた。

 

 

瀬奈「そちらも準備出来たかしら?」

 

遊治郎『準備完了です』

 

清次『いつでもいいぜ』

 

瀬奈「では、運転士2名に最終確認を行う。

 

本件は決闘伴走車の走行テスト。運転士では無い者が鉄道車両に乗車しデュエルを行う未来を想定した実験である。

 

各車両は出発信号を確認後、地下実験線を出て山手線へ進入。『回送』扱いとして池袋駅手前まで移動し、連絡線を通り瞳鉄道の池袋線へ入線。

 

入線して最初の信号にて停車、カウントダウンが0になったらデュエル開始とする。以上」

 

 

瀬奈が一通り説明し追えると同時に、発車ベルが地下実験線のホームに響き渡る。

 

 

瀬奈「さあ始まるわ、まさか緊張なんてしてないわよね?」

 

遊大「ないね、俺は俺のデュエルをするだけだ」

 

光姫『がんばるのじゃ!遊大!』

 

 

発車ベルが止み、ゆっくりと列車が動き出す。

 

隣のホームにいた清次の運転する京急2100形電車も、遊治郎の583系に合わせて発車する。

 

長い地下区間を走行し、トンネルを抜けて地上に出て山手線の区間と合流するとあっという間に池袋駅手前まで到着する。

 

ゆっくりと減速しながら連絡線へ入り、再びトンネルに入る。短い地下区間を通過し再度地上へ。

 

2列車は駅のホームもない線路上でブレーキをかけ停止する。信号が赤になったからだ。

 

 

瀬奈「こちら如月瀬奈、瞳鉄道運転指令は応答せよ」

 

 

瀬奈がデュエルディスクに声をかけると、相手側から声が帰ってくる。

 

 

指令『こちら瞳鉄道指令、どうぞ』

 

瀬奈「本線上に走行する列車は無いわね?」

 

指令『瞳池袋線は池袋から所沢までの区間で終日運休の為、走行する車両はありません』

 

瀬奈「了解した、では運転士2名に告ぐ。あなた達の目の前にある信号が青になったらデュエル開始よ」

 

遊治郎『分かりました』

 

清次『おう』

 

瀬奈「真藤遊大、こちらの車両のデュエリストはあなたよ。手札をドローしておきなさい」

 

遊大「言われなくともやっとるわい」

 

 

遊大はすでに5枚の手札を手にしていた。

 

 

遊大(しかしなんだってんだ、このデッキ…。テーマはバラバラ、能力を持たない上級モンスターも複数投入されている。

 

こんなデッキで、何を見極めるってんだよ)

 

 

運転指令『5秒前!

 

4!

 

3!

 

2!

 

1!』

 

 

遊大「ライディングデュエル!!」

清次『アクセラレーション!!』

 

 

《決闘(DUEL):池袋~所沢》

 

 

 

遊大「行くぜ!俺のターン!!」

 

 

 

 

NEXT:第7話 切り札たち

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。