ティルフィング。
持ち主の願いを叶える魔剣、それが私のキラーズ。
叶えられる願いは3つまで。
持ち主が誰かなんて言うまでもない。
彼はきっと世界の平和を強く願っている。
だけど。
アルマス達と共に平和を取り戻した今は?
平和以外で彼が望むものに心当たりはなかった。
彼の願い事は何だろう?
知る必要がある。
その願いを、叶えさせないために。
「レーヴァ、もうお昼ですよ」
「ん……、ティル?」
レーヴァが眠そうに目を擦りながら、体を起こした。
「どうしたの?何か予定あったっけ…‥?」
「ごめんなさい、レーヴァの顔が見たくなって」
「……寝顔で我慢して」
そう言ったものの、レーヴァは嫌そうな顔をしなかった。
レーヴァはディスラプターズのリーダーだ。
メンバーは個性的で、まとめることに苦労してるらしい。
ヘレナのイタズラに困ってるだとか。
カリスの奔放さに振り回されてばかりだとか。
あと、ソロモンの感性が理解できないとか。
そんな他愛もないことを話して過ごした。
「レーヴァには居場所ができたんですね」
「ティルだって……。ずっとマスター達と過ごしてるじゃない」
「…………え?」
「ティルの居場所はマスターの隣でしょ?」
「え、と…………」
答えられなかった。だってその居場所は……。
「おーい、レヴァ!マスターが来たぜ!」
「お邪魔するよ」
「!!」
突然の来客に心臓が跳ねる。
赤くなっていく顔を見られたくなくて俯いてしまう。
「久しぶり、ティルフィング」
「は、はい。お久しぶりです……」
上手く受け答えできただろうか?
「レーヴァテイン、今日は機嫌が良さそうだね」
「そうかもね」
気になって親友を横目でチラッと見てみる。
レーヴァは私を見てクスクスと笑っていた。
たまらなく恥ずかしかった。
「も、もう!用事を思い出したので帰ります!!」
羞恥に堪えきれず、私はその場を逃げ去った。
「レーヴァはイジワルです……」
ディスラプターズのアジトを少し離れた所、空に浮いて、ひとりごちる。
いまだに顔が熱い。
「マスターは何の用事で……?」
私とマスターはここ数ヶ月間会ってなかった。
新生ラグナロク王国の女王に推挙されてからというものの忙しい毎日を送っている、というのが表向きの理由。
実際にはとある事情で、私は彼から距離を置いている。
私の交友関係は狭い。
慕ってくれる国民は多いものの、友人となると極小数だ。
マスターの傍には居られない。
ギルとは依然気まずいまま。
気兼ねなく話せるのはレーヴァだけ。
……とはいえ、顔を見るなり出て行くのは流石に失礼だったと思う。
そんなことを考えていると、アジトからマスターが出てきた。
「……謝らないと」
マスターに声をかけようとしたその時、彼に駆け寄るアルマスの姿が目に入る。
彼女は自然に彼の隣へ並び立つ。
ーーーーーーティルの居場所はマスターの隣でしょ?
「……違います」
もうそこは、私の居場所じゃない。
楽しそうに話すアルマスとマスターを無言のままに見送る。
胸の奥がチクリと痛んだ気がした。
彼の事がずっと好きだった。
平和の為に天上世界で一緒に旅をした。
彼の隣はとても居心地が良くて、気がつけば男性として意識し始めていた。
地上世界を悪魔から奪還した。
その為に、キル姫全員を地上世界へ転送するという無茶を彼はやってのけた。
誰かの為に体を張れる、そんな彼に憧れた。
ユグドラシルを守るために地上世界へ残った私は、彼と別れることになった。
何年、何十年、何百年。
本当は寂しかった。
会えない時間が長くなる程、想いは募っていく。
そして、この世界で彼と再会した。
アルマス達と旅をしてる時は、他のことを考える余裕なんてなかったけど。
平和を取り戻した今となっては、マトモに顔を見ることさえできない。
ーーー好き。
ーーーーーー大好き。
彼への好意は膨らんでいくばかり。
それがたまらなく苦しい。でも、
彼の隣は、もう私の居場所じゃない。
ティルフィング。
持ち主の願いを叶える魔剣、それが私のキラーズ。
叶えられる願いは3つまで。
持ち主が誰かなんて言うまでもない。
既に願いは2つ叶えられている。
天上世界と地上世界を救うこと。
残る願いはあと1つ。
彼の願い事は何だろう?
知る必要がある。
その願いを、叶えさせないために。
3つの願いを叶えた時、魔剣ティルフィングは持ち主の命を奪うのだから。
「はぁ……」
もう日は傾きかけていた。
膝を抱えて宙に浮き、物思いにふける。
彼の傍にいて、私のキラーズが3つめの願いを叶えてしまったら。
マスターは命を落としてしまう。
傍にいちゃいけない。
分かってるけど。
「…………マスター」
会いたい。傷ついてほしくない。
求めて欲しい。傍にいちゃダメ。
……マスターが私を選んでくれるなら。
そう考える自分の勝手さに嫌気が差す。
もうマスターの隣にはアルマスがいる。でも、
「……そんなの、嫌です」
何百年も前から育んできたこの気持ちを、簡単に諦めることは出来なかった。
瞳から涙が溢れそうになる。
「ティルフィング、さん……?」
誰かに呼びかけられ、急いで袖で目元を拭う。
振り返るとそこにいたのは、
「…………ギル?」
かつて私がナディアだった頃に、親しくしていた男の子だった。
「えっと、今日はトレイセーマとの会談でしたよね、お疲れ様です」
ギルはラグナロク王国の外交官として毎日頑張ってくれている。
「はは、ありがとうございます……。それよりティルフィングさん、こんなところでどうしたんですか?」
「それは……」
他の人に話すようなことじゃない。
そう思って、話を濁そうと考えたけど。
「やっぱり俺じゃ力になれませんか?」
「いえ、そんなことは……」
私の考えはギルに見透かされていた。
「アルマス達と旅をしてた頃は、足を引っ張ることが多くて……」
「外交官を務めてる今でも失敗することはあるけど、それでも色んな国の癖の強い斬ル姫達と話してきたんです。だから……」
「ギル……」
私がティルフィングとなってから、ずっとギルとは気まずいままだった。
それでもギルは困ってる私を見て、声をかけてくれた。
「ギルは優しいですね」
「へ?」
弟のように接していたギルの成長が嬉しくて微笑む。
ギルは照れて、頭をガシガシと掻いていた。
「と、とにかく!」
「困ってることがあるなら、せめて話し相手ぐらいは務めさせてください!」
ギルの真っ直ぐな気持ちが嬉しかった。
ギルにならこの悩みを打ち明けてもいいかな、と思えた。
「……私には、好きな人がいるんです」
「マスターでしょ」
「…………」
「ど、どうしてギルが知ってるんですか?」
「いや、俺がっていうか……。多分皆分かってます」
あまりの恥ずかしさに顔を手で覆う。
「あ、いや、大丈夫ですよ!昨日今日とかの話じゃなくて、とっくの昔に知れ渡ってたことなんで!」
「それはちっとも大丈夫じゃありません……」
ギルのフォロー(という名の追い討ち)が胸に刺さる。
「ティルフィングさんは何であいつのことをそんなに……?」
「……ずっと前から、あの人のことを見てきたんです」
何百年も前から。
「少し、長い話になります」
天上世界でのこと。
地上世界でのこと。
この世界でのこと。
そして、私のキラーズのこと。
ギルは、私の話を最後まで聞いてくれた。
「……すみません。俺には、ティルフィングさんがどうするべきか分からないです」
「いえ、ギルが話を聞いてくれたおかげで少し楽になりました」
ギルが話しかけてくれなかったら、きっと私は塞ぎ込んでいたままだったから。
「……俺には、何が正しいかは分からないけど、でも」
「俺がもしマスターの立場なら、独りで抱え込んで欲しくないって思います」
「……え?」
マスターの立場?
「もー!!ギル遅い!!」
「げ!モラベガのこと忘れてた!」
「えっと……」
確か今日のトレイセーマとの会談では、モラベガにギルの護衛を頼んでいた。
「トレイセーマの帰りにティルフィングさんを見かけたから、待って貰ってたんです」
もう既に日は落ちている。
モラベガは結構な時間ギルのことを待っていたハズだ。
「ギル、行ってあげてください」
「で、でも……」
「また今度話を聞かせてください。今日みたいに、私がナディアだった頃のように」
「は、はい!」
嬉しそうに手を振り、モラベガのもとへ戻るギルを見送る。
「ありがとう、ギル」
ーーー独りで抱え込んで欲しくないって思います。
私は、自分のことばかりでマスターのことを考えてなかった。
彼に打ち明けないといけない。
これは私の問題だけど。
私だけの問題ではなく、私と彼の問題なのだから。
「会いたい……」
そんな私の願いは、神様に聞こえていたのかもしれない。
「ティルフィング!」
最愛の人の声が耳に届いた。
息を切らしながらティルフィングのもとへ駆けていく。
「ハァっ、ハァっ!や、やっと見つけた……」
「ま、マスター?どうしたんですか?」
「ハァっ……君を探してたんだけど……、ハァっ…、どこを探しても、中々見つからなくて」
その言葉に彼女は目を丸くした。
「もしかして国中を走り回ってたんですか?」
「どうしても君と話したいことがあったから」
「……アルマスは?」
「ラグナロク王国を出るときは護衛としてついて貰ってるけど、今日は先に戻って貰ったよ。あまり他の人には聞かせたくない話だから」
「……はい」
そう答えたティルフィングの表情は暗かった。
僕の考えていることに、彼女は気づいているのだろう。
「僕を避けてるのは、ティルフィングのキラーズが関係してるのかな」
「やっぱりお見通しだったんですね」
「付き合いが長いからね」
ティルフィングは、僕を避けてることを否定しなかった。
「私のキラーズのことはマスターもご存知ですよね?」
「持ち主の願いを3つまで叶える剣、だよね」
「そして3つめの願いを叶えた時、持ち主は命を落とすと言われています」
ティルフィングにかけられた呪い。
「マスターは天上世界と地上世界を救うために、願いを既に2つ叶えています」
それが本当なら、残る願いはあと1つ。
「もし3つめの願いが叶ってしまったら、マスターは……」
「……そっか」
彼女は、ずっと悩んでくれたのだろう。
「話してくれて、ありがとう」
「……マスター」
よく見ると、彼女の目元は少し赤くなっている。
「…………」
許せなかった。
何もしてこなかった自分の不甲斐なさを。
「ティルフィング」
だから僕は決意した。
「行きたい場所があるんだ」
もうこれ以上、君の表情を曇らせたくはないから。
「ま、マスター!?」
彼女の手を取り、僕はある場所へと向かった。
「ここは……」
「うん、展望台だよ」
マスターと一緒に備え付けられたベンチへ座る。
「わぁ……」
雲一つない夜空には、幾つもの星が瞬いていた。
「ラグナロク王国にこんな場所があったんですね」
星空に向けて手を伸ばしてみる。
「いつか、君と二人でこの夜空を眺めたいと思ってた」
「そ、それは、私をデートに誘うつもりだったと思ってもいいんですか……?」
「うん。……初めてデートをしたときのこと、覚えてる?」
「も、勿論です!」
それは天上世界で旅をしてた頃の思い出。
「剣の特訓に明け暮れていた私を、街に連れ出してくれました」
洋服を試着したり、買い物をしたり、2人でお茶をしたり。
「皆で海に行ったりもして」
適当な理由をつけて、アナタを1人占めして。
「バレンタインにチョコレートをくれたこともあったよね」
「う……」
徹夜でチョコレート作りに励んだこともあった。
「料理が苦手だったなんて知らなかったな」
「そ、そのことは忘れてください」
アナタの前だと、私は普通の女の子でいられた。
それだけで、もう満足だ。
やっぱり私は、どうしようもない程に彼が好きで。
だからこそ傷ついてほしくないと想えるから。
「……マスター、お願いをしてもいいですか?」
「……うん」
例え、マスターの傍に居られないとしても。
マスターが誰を選んでも。
「また、私を連れ出して……」
こうして時々話してくれるなら、私は……
「今日みたいに、話をして貰えませんか?」
「そんなことでいいの?」
「はい、私にはもったいないくらいです」
「こうして私を普通の女の子として見てくれるのは、マスターだけですから」
これでアナタを諦めることができる。
「ティルフィング……」
マスターと正反対の方の夜空を眺める。
泣いてる姿を見られたくなかった。
「……綺麗な星空ですね」
「うん、月が綺麗だね」
ーーーえ?
マスターが呟いた言葉の意図を理解できず、彼の方へ振り向く。
彼は夜空ではなく、私を見つめていて。
「ん……!」
気がつけば、唇を奪われていた。
優しく触れ合うだけのキス。
「ま、マスター……?」
唇を離したマスターは、私の頬に伝っていた涙を指先で拭った。
「……僕は、君を普通の女の子として見ることなんてできない」
「僕にとって、君は特別だから」
彼と触れ合った場所が熱い。心臓がうるさい。
「で、でも、私が傍にいると、マスターは!」
「僕の願い事はずっと前から叶ってたんだ。3つの願いを叶えても、こうして僕はここにいる」
だから、もう心配しなくていいんだ、と彼は告げた。
「マスターの願い事って……」
「君と、その、両想いになれたらなって……。僕の自惚れじゃなければだけど」
もう堪えきれなかった。
嬉しくて、ホッとして、幸せで。
「自惚れな訳っ、ありません……」
「何百年も前から、ずっと、ずっと好きでした!」
優しく抱きしめられ、彼の腕の中で涙を零し続けた。
数十分程して。泣き止んだ私は、彼に寄り添い再び夜空を眺めていた。
「……マスターは大胆ですね」
「うっ、ご、ごめん……」
「ち、違うんです!その、キスされたことを咎めてる訳じゃありません!」
「3つめの願いを叶えて、もし何かあったらどうするつもりだったんですか……?」
私がナディアだった頃、ティファレトは「願いを3つ叶えた時何が起こるか分からない」と言っていた。
「考えてなかったな……、3つめの願いは地上世界を救うことだったから」
「え?そ、それって……」
「君と両想いになれたらなっていうのは、1つめの願いなんだ」
それが本当なら、
「ま、マスターはずっと前から」
「うん、君のことがす……」
「私の気持ちを知ってたんですか…!」
「あ、あ~~……」
マスターの目が泳いだのを私は見逃さなかった。
「ごめん、天上世界にいた頃に……。エロースに相談したら、きっと両想いだって教えて貰って」
「も、もうあの子は……」
「ま、まあ、良かれと思って教えてくれたんだと思うよ」
「それは、分かってますけど……」
納得がいかない。自分だけ何百年もヤキモキしてたと思うと尚更。
「マスターはエロースのことを庇うんですね」
「え、えーっと…、どうしたら許してくれるかな…‥?」
だから、これぐらいのワガママは許してほしい。
「……私のこと、ティルって呼んでください。それと」
彼の首に腕を回して顔を寄せていく。
「ん……」
愛しい人と唇を重ねた。
「……ティル」
「ん!んぅ……」
背中に手を回され、きつく抱き締められながら互いに何度も唇を求め合った。
今夜のことを忘れないように。
彼の腕の中で幸せに浸った。
マスターと手を繋いで、帰路につく。
「えっと、私達って恋人同士になったんですよね……?」
「そうだよ。……どうしたの?」
「こうしていると、恋人同士というより親子という感じがしてしまって……」
今は自分の身長が恨めしい。
女性として、彼に意識して貰えるかも心配になってくる。
「僕には、今も昔も君が魅力的に見えるけどな」
「あ、ありがとうございます……」
そんな不安を彼は吹き飛ばしてくれた。
「……でも、もしティルが恋人になった実感が湧かないっていうなら」
「恋人同士でしかできないことを、これから沢山していきたいな」
恋人同士ですることを想像して、顔が熱くなる。
「あ、あの……」
「ま、マスターさえ、良ければ……」
俯いて、蚊の鳴くような声で呟いた。
もしかしたら、今夜は眠れないかもしれない。
ーーーーーー
ーーー
「ティル……」
「ん……、マスター?」
「違うわ……」
目を覚ますと、レーヴァが私の寝顔を覗き込んでいた。
「あ、あれ…………?」
もしかして、さっきまでのことは……夢?
「マスターなら、さっきまでティルの横で一緒に寝てたわよ……」
「そ、そうですか……」
昨日のことが夢じゃなかったことにホッとする。時計を見るともうお昼を回っていた。
「……あ!」
親友にとんでもないところを見られたことに今更気づく。
「あ、あの!ま、マスターと一緒に寝てたのは!」
「マスターから聞いたわ。恋人になったって」
ちゃんとマスターが弁明してくれてたみたいだ。
「ティルに手を出したのかと思って、最初は思わずビンタしそうになったわ……」
「…………」
昨夜のことを思い出し、顔を赤らめてしまう。
それがいけなかった。
レーヴァはすぐに察してしまった。
「グーで殴るべきだったみたいね……」
「ち、違うんです!私はこんな身体のままですし、最後まではしてません!」
「ふふっ……」
優しく笑みを浮かべた親友を見て、からかわれてたのだと遅れて理解する。
「最近のレーヴァはイジワルです」
「私が寝室に入った時、マスターがティルの額にキスしてたわよ」
「も、もう!」
恥ずかしさに堪えられず、毛布を頭から被る。
「ティル、ごめんってば」
「もう苛めたりしませんか……?」
「うん、約束する」
そう言ってるレーヴァはまだクスクスと笑ってるようなので、抵抗の意味も示すために毛布からちょっぴりだけ顔を出す。
「今日はコマンドキラーズの動向の報告に来たんだけど、ティルが珍しく寝坊してるって聞いたから様子を見に来たの」
「……レーヴァ、面白がってませんか?」
「最初は心配してたんだけどね……。ティルが寝込んでるところなんて、今まで見たことがなかったから」
実際は寝込んでた訳ではなく、朝まで寝かせて貰えなかっただけ……とは言えない。
ずっとベッドにいるのも悪いので、レーヴァに断り着替えを済ませた。
「もうちょっと、かな……」
「……?」
「こっちの話。……そういえば」
「ティル、この間私に会いに来た時、本当は何か相談したいことがあったんじゃないの?」
「……レーヴァには敵いませんね」
もしかしたら、それが今日私に会いに来てくれた本当の理由なのかもしれない。
「レーヴァは、私のキラーズについてどう思いますか?」
「……願い事を叶えるんだっけ?」
「そうです」
「…………」
レーヴァは悩んでいるというより、質問の意図が分からないといった感じだった。
「ティルには悪いけど、どうも思わないわ……」
「私のキラーズはレーヴァテインだけど、世界を9回焼き尽くせる力なんて出せた試しはないし……。ティルのキラーズの力で願い事が叶ったなんて思ってない」
「天上世界も地上世界も、この世界だって。皆で勝ち取った平和だから」
「それに、キラーズが何であってもティルはティルだし」
「レーヴァらしいですね」
素敵な親友を持てたことに感謝した。
「おーいレヴァ!マスターが戻ってきたぜ!」
「もう、待たせすぎ……。それじゃ私は帰るから」
「また遊びにいってもいいですか?」
「……うん、またね」
レヴァはティルフィングに甘いよなー、うるさい……と小言を言い合ってレーヴァ達は帰っていった。
レーヴァと入れ替わりでマスターが寝室に入ってくる。
「おはよう、ティル」
「おはようございます、もうお昼ですけどね」
「「…………」」
会話が続かず、何となく見つめあってしまう。
「何だか照れくさいね」
「そうですね」
でも、決して気まずい訳ではなくて。
「ティル、目を閉じて……」
「は、はい……」
目を閉じて、顎を上げる。
きっと、この時が一番幸せを感じられると、そう思っていたのだけれど。
「…………?」
いつまで経っても、待ち望んだ感覚は訪れなかった。
「もう目を開けていいよ」
そういって、マスターは私の手に何かを握らせた。
「これは……」
目を開けると、掌の中には指輪が光っていた。
よく見ると、自分の首にはネックレスが掛けられていて。
そのネックレスに指輪が通されていた。
「指輪のサイズは、身体が元に戻ったら合うように作って貰ったんだ」
「それまではネックレスとして使ってくれたら嬉しいな」
…………ズルい。
昨日、これ以上ないくらい幸せだと思っていたのに。
「もし、その時が来なかったら……?」
「変わらないよ。ずっと傍にいる。だから」
ネックレスに通された指輪を、両手で優しく握りしめる。
「僕と結婚してほしい」
マスターと出会って、私は泣き虫になったのかもしれない。
「……はい!」
涙を瞳いっぱいに溜めながら、彼と歩む道を笑顔で選んだ。
いろんなことがあった。
天上世界でのこと。
地上世界でのこと。
この世界でのこと。
数え切れない程の困難と、幾つもの試練に心が折れそうになることもあった。
でも、辛い時には必ずアナタが傍に居てくれた。
挫けそうな時には必ずアナタが支えてくれた。
誰よりも、何よりも信じてくれた。
ティルフィング。
持ち主の願いを叶える魔剣、それが私のキラーズ。
でも、関係ない。
斬ル姫ティルフィングではなくティルとして、彼は私自身を見てくれるから。
「ティル!」
愛しい人の声が耳に届く。
名前を呼ばれただけで嬉しいと思ってしまうのは、惚れた弱味なのかもしれない。
好き、大好き。
心の中でそう呟く。
「ーーー」
彼の名を呼ぶ。
アナタも同じことを考えてくれてたら嬉しいな。
幸せはここにある。
胸元で指輪が優しく輝いていた。
Fin
最後まで読んで頂きありがとうございました!
アンケート機能テスト どのキャラの話が一番良かったですか?
-
アルマス
-
ティルフィング
-
アロンダイト
-
レーヴァテイン