99点のヒーロー   作:極丸

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試験

『エフォート君。これは来年入学することが決まったヒーロー科の新入生だ。一応君にも目を通しておいて欲しい。ファイルを添付しておいたから確認を忘れずにね』

 

「試験までまだ時間あったよな……?」

 

 突然送られてきたメールにオレは少しばかり理解するのが遅れた。日課の運動終わりの酸素が足りない頭では理解が遅く、顔を洗って目を冴えさせた事でようやく本題に取り掛かる。電動歯ブラシに歯磨き粉をつけながら入学試験はまだ先のはずだったが、オレは送られてきたファイルを開く。

 

「あー、なるほど。推薦入試か」

 

 口に泡を溜めながらそう呟く。

 そこには推薦入学と記された4名の生徒の顔写真が映し出されていた。

 自分は一般入試一本だったので殆どどういう入試形式かは知らないが、推薦というくらいで貴重な入学枠を早期で決めてしまう当たり、この4名は優秀なんだろう。なんなら当時の俺より優秀まである。

 俺は電動歯ブラシのスイッチを切って口をゆすぐ。

 

「ペッ!……そういやウチの代の推薦って誰だったんだ?そういうの知らなかったし、最近同期の名前も聞かねーしな……ま、いっか。今は生徒の方だ」

 

 しかし、一非常勤講師にこんな重要な情報を教えていいのだろうか?一応は派遣社員みたいなもんだと思うし、踏み込んでいい領域はあると思うんだが……

 そう思いつつも、一度生徒の情報を整理し始める。2クラス合わせて40名弱を教えるんだ。急いで覚えないとな。

 

「えーっと、轟君に取陰さんに骨抜君、八百万さんか……」

 

 やっぱ推薦枠だけあって学業の方も優秀だ。みんな学年上位の中に入り込んでいる。しかも出身校を調べたところ……

 

「うお……ここの高校、偏差値やばいな!そんなかでトップクラスか……もう抜かれてんな」

 

 全員揃いも揃ってエリート街道まっしぐらな成績。特に八百万さんはその中でも抜きんでて勤勉さが滲み出ている。しかも育ちもよさげだ。

 

「いやいやいやそこじゃねぇって!脱線し過ぎたな……」

 

 セルフツッコミを入れる事で脱線を回避。 

 改めて4人のプロフィールを確認する。

 

「皆将来性良さげだなー……駄目だ月並みな言葉しか出てこねぇ。俺に教師は向いてねーな、うん」

 

 しかし、特に新しい発見もなく数分が経過した。そして俺はようやく決心をする。

 

「…………やっぱ見るしかねーか。個性」

 

 そう、それは肝心の個性の項目だ。ヒーローを志す者ならば避けて通れない道、個性。

 これは俺の個人的な感想だが、上位のヒーローは軒並み強力な個性に恵まれている場合が大きい。それは上に行けば行くほど顕著に出てくる。一位のオールマイトや二位のエンデヴァー、ベストジーニストやエッジショット、更に分かりやすい例で言うとドラゴンになれるリューキュウも他の個性と比べて、(言い方は悪いが)かなりの優良個性と言える。

 言ってしまえば俺もその部類に入るし、何とも言えないのだが、プロヒーローにおいて個性というものはヒーローとして成功するうえで欠かせない要素だと俺は考えている。

 究極的な結論を言ってしまえば、『()()()()()()()()()()()()()()()()()()』と言ってもいい。

 逆を言えば『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』とも言える。 

 つまりもう生まれの段階でヒーローとしての適性が大方決まってしまうのだ。

 競馬の血統みたいな考えで俺はあまり好きじゃないんだが、そういう業界であるのが事実。個性で人を見るのは好きじゃないんだが、公私混合は避けて、俺は個性の欄を見る。

 

「…………やっぱり強力だな」

 

 そこに込められた俺の感情は自分でもよく分かんなかった。だが、なんか出た。

 

「轟君は炎と氷、取陰さんは身体の分解、骨抜君は触れたものの軟体化と八百万さんは……ものの創造!?やばいな…」

 

 思った以上に強力な個性だ。汎用性も高いし、使いこなせばオリコンチャートは上位確実かもしれない。載ったことないから分からんけど。

 

「……ふー、落ち着けよオレ。個性は重要だが、メインじゃない。一番大事なのはそれを扱う生徒の方。あくまで個性は手段の一つ。忘れずに忘れずに」

 

 個性として生徒たちを見てしまいそうな自分を戒めるためにも一度リラックスタイムを取る。そして改めて生徒を見ていく。

 段々と自分が雄英に勤めるという現実が見えつつある。

 

 

 

 

 

 試験当日。オレは巨大なモニターがある部屋にいた。そこには雄英勤務のヒーローがいて、非常に気まずい。かに思えたが……

 

「久シブリダナエフォート。アレカラ調子ハドウダ」

「おいエフォート!お前久々にあったと思ったら挨拶も無しか?生意気なヤツだと思ってたが、数年で余計に拍車がかかってんじゃないのか?」

 

 かなりフレンドリーに接してきた。おかしい。オレの印象って結構悪めのはずだよな?なんでヒーローってこんなに友好的なの?後ブラドキングさん、オレそんなに生意気な態度とってましたっけ?

 

「えっと……とりあえずこれからここに勤める事になったんでよろしくお願いします……」

「おお、よろしく頼むぞ!俺のクラスも請け負うことはあるからそん時は頼んだぞ」

「は、はい……」

 

 ブラドキングさんの握手に応じる。ヒーローコスチュームと相まって圧がすごいんだよなこの人。エクトプラズムさんも独特の雰囲気があるからその間ってなると結構息苦しい。

 

「そ、そういえば毎年二組出来るって聞きますけど……一年の担任ってブラドキングさんと誰なんですか?」

「ん?ああ、聞いてないのか?イレイザーの奴だよ。アイツが新入生のもう一人の担任だ」

 

 その言葉を受けオレはあたりを見渡すが、どこにも見当たらない。

 

「え?……いなくないすか?」

「ここにいるぞ」

「うへあ!?」

 

 後ろから突然声がかかり肩を震わす。そこには寝袋に身を包んだイレイザーさんがいた。

 

「あ、いたんですか……」

「オレに気づけないとはお前も鈍ったな。数年のブランクはかなり大きいが、それでヒーロー科の授業が務まるか?」

「…………」

 

 前置きも無しにそう言われて、オレは黙り込む。今の状況じゃ何を言っても意味はないのが明白だ。だが、言えることだけでも言っておこう。

 

「俺が教師に適してないと思ったら切ってくれて構わないんで」

「言われずともそうするさ。非常勤で雇われてんだ。一定の実績は出して貰わねぇと困るんでな。だったらオレ一人で授業を回したほうが合理的だ」

「……相変わらずっすね」

「その方が合理的だからな」

 

 そう言ってイレイザーさんは寝袋で横になった。どうやらそこまで本格的にみるつもりはないらしい。

 

「……はー、緊張した」

「おいおい、まだ生徒も決まってない内からその調子で大丈夫か?」

「つい最近まで一般企業勤めだったんですよ?教育なんて初めてなんですから緊張もしますよ」

「無理トハ言ワナイ所ガオマエラシイ」

 

 隣でエクトプラズムさんがそんな事を言ったが、あえてリアクションはせずに試験開始の時間を待つ。エクトプラズムさんも聞かれてるのは本望ではないだろうから、とっとと忘れるためにも早く始まらないものか。

 

 

 

「お、始まった」

 

 マイクさんの唐突なコールと共に受験生全員が波の様に各試験会場へ走り出す。あの唐突なコールマイクさんになっても続いてたのか……アレは面食らうよな。

 

「今年モ対応デキタ生徒ハゼロカ」

「いや普通対応できませんって。あんなの」

「そう言いつつオマエは対応してただろ?」

「そうでしたっけ?集中してコールがされたからガムシャラで走っただけですよ。それにあまりに後ろに誰もいなかったんで止まって結局ほとんどみんなと同じになっちゃいましたし」

 

 そう言いながらオレは昔を思い返す。スタートと言われたから漠然とゴールに向かって行ったが、誰も来なかったのでちょっと焦ったのは今ではいい思い出だ。

 

「中々に今回は粒揃いだな。特にあそこの試験会場のやつなんかは圧倒的だ。救助などの行動はないが、仮想敵を手当たり次第に倒してポイントを伸ばしてる。戦闘能力だけがヒーローの全てじゃないが、それにしても凄まじい」

「ヒーローニシテハ荒々シイガナ……」

「どっちが敵か分かんない位に過激ですね?」

 

 そこには向かってくる仮想敵を手当たり次第に爆風と共に薙ぎ払う爆発頭の青年がいた。見たところ何らかの原理で手から爆発を起こせる個性かな?すごい戦闘向きの、()()()()()()ぴったりな個性だ。あの子は確実に合格でしょ。

 

「アノ試験会場ハ……マダ突出シタ生徒ハイナイナ。ダガ、ドノ確実ニポイントヲ稼イデイル。平均ポイントハ高イ所ヲ見ルニ、救助ポイント次第デハ多クノ合格生ガ出ルナ」

 

 そこはかなり生徒同士のポイントが拮抗していた。目立つのはメガネに七三分けの足の速い生徒だな。ポイントが少しだけ優勢だ。他の会場の戦績次第では合格出来るラインかも。他には……ん?

 

「あれ?少年?」

 

 そこには公園のそばかすの少年がいた。名前はわかんないけど焦り具合を見た感じポイントは少なめの様だ。となると考えられるのはーー

 

「ん?どうしたエフォート?なんか気になる生徒でもいたか?どいつだ?」

「んあ?ああ、いえ別に何でもないですよ。それにオレの目なんて節穴もいいとこですし」

「実戦試験ヲ一位デ合格シタオマエダ。誰カシライルンジャナイノカ?」

「いやー大したことないですって、あ、ほら、試験に集中しないと!」

「露骨に話題逸らしたな……まぁいいか。後で教えろよ」

「いやほんと何でもないですって」

 

 なんとか二人の追求を掻い潜り、オレは再び試験に集中する。

 

 

 

 残り時間わずか。俺の代と同じならそろそろアイツが出てくるタイミングだけど……

 

「あ、出た」

 

 試験会場に現れたそいつは高層ビルよりもはるかに高い図体を持って壮大なモーター音を鳴らして走り出した。0P仮想敵である。

 画面越しでも圧力が半端ない。受験生相手にやりすぎだとは思うが、これくらい過激にしないとふるい落としに掛けられないのかも知れないな。なんて他人事ながらに思う。

 

「今年もこれ採用してるんですね」

「これでヒーローとしての適性が見えるからな。人は危機に陥ると本性が見える。これはそう言った意味じゃ最適な方法だ」

「助ケルノカ逃ゲルノカ。コノ対応次第デヒーローヘノ道ガカナリ変ワル」

「現にお前もこの敵相手に止めるを選んで合格したんだしな」

「そういや……」

 

 思い出した。確か逃げる人ばっかだったから俺が何とかして止めようとしたんだった。結果、敵が生徒が向かってきたらギリギリオートで止まる仕組みだったから意味はなかったけど、その結果俺の救助ポイントがかなり上がったらしいし。って!やば!

 

「おい!受験生逃げ遅れてる奴いるぞ!いいのかよあのままで!」

「安心しろ。あくまで0P仮想敵は攻撃しない。被害が出る直前で止まる仕組みなのは知ってるだろ?」

「けど……っんっがああああ!!」

「落チ着ケ。ソレニソウ考エテイルノハオ前ダケジャナイヨウダ」

「え?」

 

 そう言われて見てみると、一人の生徒が仮想敵に向かっていった。ていうか……少年?!

 

 その人物が誰かわかった瞬間………………仮想敵が粉砕された。

 まじか。当時のオレでも倒せるかどうか分かんなかったぞ!?

 

「ほー!アレをぶっ壊すか?中々に肝が据わったやつだ!気に入ったな!」

「立チ向カウ生徒ハ何人カ居タガ、壊シタノハ久々ダナ」

「俺以上のポテンシャルですね……腕バッキバキだけど」

 

 よく見ると少年の腕が黒ずんで折れていた。腕に爆撃でも喰らったみたいな跡だ。その印象は間違いじゃない様で、事実少年はかなり痛がってる。

 

「ていうかあのままだと落ちるぞ!?」

「ダカラ落チ着ケ。対策ハシテアル……ソレニ」

「ああ、感化された奴がいる様だぞ」

「……おお」

 

 そこにはおかっぱの女子がいた。さっき逃げ遅れてた子だ。空中で浮遊した物体に乗っかって少年の落ちる軌道の途中で待ち構えていた。ひょっとして受け止める気か……って。

 

「なぜにビンタ?」

 

 助けて貰ってその仕打ちがこれ?報われねぇ……。

 いや、でも……減速してる?

 少年の落下スピードが女子にビンタされてから明らかに減速してる。これは何かスピード関係の個性か?発動条件は触れるとかなんかかな?

 

「にしたってビンタはないだろ?」

「咄嗟の判断にしては上出来だろ」

「彼女モ恐ラク合格ダナ」

 

 エクトプラズムさんの意見には同意できる。けどビンタに関しては何も無し?いや、オレが気にしいなだけかこれ?

 そして地面に到達して、少年が涙ながらに這いずりながらポイントを稼ごうとするが……。

 

『しゅーーーりょーーーー!!!』

 

 無慈悲にもタイムアップ。少年は絶望的な顔を浮かべた。

 まぁシステム知らない側からしたらそんな顔もするよな。見た感じ点数低いんだろうけど、救助ポイントで巻き返しはできそうだけど。

 

「さて、こっから救助ポイントの採点に入るとするか」

「何名カ有力ナ生徒ハ居タナ。教エ甲斐ガアル」

 

 二人はいそいそと席を立って別の部屋に移る。オレも仕事しねぇと。

 

 

 

 

 

 この後オールマイトとの雄英就任を生徒に告知しなきゃだし。

 

 

 




短編から連載に移行しました。

この作品にヒロインはいる?いる場合はどちらかを答えて下さい

  • いらない
  • いる(雄英生徒)
  • いる(プロヒーロー)
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