「ついに……届いた……」
今、目の前に、雄英からの封筒が入っていた。
入試の結果は散々だった。仮想敵は一体も倒せなかったし最後に至っては0Pを倒して終了。一点も稼げずに終わってしまった。
オールマイトには申しわけが立たない。あんなにレクチャーしてくれたのにその思いに報いることができなかった。
お母さんにも無理を言って献立を作ってくれたのにも申し訳ないし、必死に僕を励ましてくれた。そうだ、そういえば僕の自主トレーニングを手伝ってくれたあのお兄さんにも申し訳ないな。せっかく応援してくれたのに。
これからどうしよう……いや、それよりも今は入試結果だ。これを受け入れるところからだ!まだ不合格って決まった訳じゃ……
「ええーい、ままよ!」
そう言って僕は封筒を力一杯破った。すると中から円盤みたいなものがあってそこから液晶画面が映し出される。
「わーたーしーが!雄英高校に来たー!!」
ドアップの顔のオールマイトがいた。毎日見てたけど流石にアップとなると画風の違いがわかる……って違う違うそうじゃない!!
「な、なんでオールマイトが……」
『ゲスト出演じゃあないぞ!実は、今年から私が雄英の教師として就任することになった!そのお披露目といったところで……え、なに?後が押してるって?分かったよ全く!』
画面端で撮影スタッフさんと思われる人の腕が見える。なんかジェスチャーでオールマイトにサイン送ってるけど、今はそれどころじゃない。
『さて、緑谷くん。君の成績についてだ。筆記は出来ていたとしても、実戦での成績についてだが……当然ながらゼロ。当然不合格だ』
「……!!」
改めて現実を突きつけられる。認めたくなかったけど、やっぱりそうなんだ。分かっちゃいたけど……
ーーー悔しい。
『だが、そんな君にもう一つお知らせがある!!』
「え?」
その声に僕は顔を上げる。
そこには校門前で僕に話しかけた女の子だった。
その子は僕にポイントを譲ってあげたいと言ってきた。
『ーーと、このように言っている。緑谷くん!これは君の行動故の結果だ!君が起こした行動は人を動かした!!しかし、残念ながらこの相談は受け入れられないし、受け入れる必要もない!……なぜなら』
手に力が籠る。
そんなまさかとは思う。
しかし、その一挙手一投足に僕は目が離せない。
『我々が見ていたものはヴィランポイントのみにあらず!ヒーロー大前提である救助ポイントも、評価の対象に含まれるのだよ!!!』
画面にはたくさんの人影が数字を掲げていた。その合計得点は……
『レスキューポイント60点!!つまり……!!
合格だってさ。来いよ、緑谷少年。ここが、君のヒーローアカデミアさ』
「……………………っやったーーーーーーー!!!!!」
涙が止まらない。あの行動は無意味じゃなかった。そう思えただけでもうれしいのに、それを雄英が認めてくれたのが何よりも誇らしかった。僕は拳を突き上げて大声を上げて喜んだ。
『…………さて、これで終わりとして締めたいんだが、もう一つ入学する君にお知らせがある』
「へ?」
てっきりそのまま終わるのかと思っていた映像が途切れず、オールマイトが先ほどとは打って変わってフレンドリーな砕けた口調に変わる。
『実はもう一人、この雄英で教鞭をふるう事になったヒーローがいる。次はそのヒーローからのご挨拶だ。それじゃあ任せたよ』
「も、もう一人ヒーローが雄英に?」
僕は急いで椅子に座り直す。そのまま映像を見続けていると、オールマイトが立ち去り、そこには黒いヘルメットを被ったスーツの人がいた。あのヘルメットって……。
『えー、どうもこんにちは、もしくはこんばんわ。この度雄英に非常勤講師として勤める事になりました、エフォートと言います。オールマイトの後でいささか力不足な事は否めませんが、それでも自分が出来る限り、皆さんをサポートしていけたらなと思います。入学してくる皆さま、よろしくお願いいたします』
やっぱりエフォートだ。
ヒーロー業界史上最低の事件と言われてるあの事件に関わったヒーロー……もう今では活動はしてないって聞いたことあるのに、なんで……。
僕は合格したことの嬉しさもありつつ、突然出てきた失踪したと言われているヒーローの雄英就任に困惑を隠せなかった。
「はいOKです!撮影終了!!」
「ありがとうねみんな!」
現在オレは雄英の撮影ルームにてオールマイトさんと一緒に合格生向けのムービーを録画している。しかもオールマイトきっての希望で合格生ごとに別撮りで撮影しているため、撮影時間もバラバラだ。
それは別にいい。そういった真摯な対応は学生側にも嬉しいだろうし、何よりオールマイトから個人への合格通知だ。人によっては家宝ものだろう。
だがしかし……バリエーションが無い。
オールマイトさんは撮影慣れしてるからかポンポンポンポン別のフレーズが出て全く同じ様な動画になっていないが、オレの方は最初はなんとか真似しようと頑張ったが、結局諦めて同じフレーズを話すことになった。メディア慣れがこう言ったところで出てくるとは……そしてようやく最後の撮影が終わりクランクアップと言った状況だ。
「ふー……お疲れ様でした。オールマイトさん」
「おや!エフォートくん!いやなに、君もお疲れ様!慣れない撮影で疲れたろう!」
こういう気遣いがナチュラルに出来るあたりがトップって事なのかなー。オレに出来っかな?
「まー、正直慣れないってのはありましたけど、こっから先を考えればこんなもんそこまでのものじゃ無いですよ」
「んー……君は少し気負いすぎだと思うがね?……あの事件は君だけが責任を負うものではなかった。僕はそう思っているよ」
「……そういっていただけるだけでも嬉しいですよ」
少しばかり視線を外す。あの事件の責任は確かに俺のせいではないかもしれない。
しかしそれは言ってしまってはダメなのだ。
オールマイトが言ってしまってはダメなのだ。
関与したものが言ってしまってはダメなのだ。
これだけは譲れないのである。
「うーん、そうだ!エフォート君、少しばかり時間を貰えないかな?実はもう少し話したいことがあってね?」
「…………はい?」
その誘いは急であった。
「…………これが今の私だ。雄英に勤める関係上、君には打ち明けておいたほうが良いと思ってね。安心してくれたまえ、校長に許可はとってある」
その真実は残酷であった。
目の前にはオールマイトがいたはずだった。
しかし今現在目の前にいる男性はオールマイトとはかけ離れた見た目をしたヒョロガリの男性だった。所々面影はあるが、それでもオールマイトと予備知識なしで見極めるのは難しい。というか無理に近いだろう。
「……マジすか」
「うむ。これが現実だ。今の私の1日の活動時間は4時間もない。最近少しばかり無茶をしてか、さらに時間は短くなってきている」
「……当然メディアには」
「言っていないさ。これを知っているのは雄英に勤める教師陣のヒーローと校長以外の極僅かな人間だけさ」
「……まだ俺には隠せたんじゃないですか?」
オールマイトの主張に俺は疑問を投げかけた。自分がまだオールマイトの信用足りえる人物か判断は付けられない筈だ。
「君はそういった暴露などはしない人間だろう?それに、これは私の信頼の証と受け取ってくれて構わない。それだけ君という人物を頼りにしているという事さ。エフォート君」
その言葉に俺は息を詰まらせる。
……信頼か、重いな。責任重大だ。
「……分かりましたよ。それは受け取ります。ま、分ってるとは思いますけどおいそれと生徒にばれる様な事はしないで下さいよ?俺も隠すのには協力します」
「……ありがとう」
その言ってオールマイトは元々のフォームに戻り、部屋を出ていった。
大変だなぁ、あの人も。平和の象徴としての責任かな。
「……平和の象徴の引退か。現実味を帯びてきたな」
俺が昔なんとなく想像した未来。
『オールマイトの引退』。それがまさかこんなにも近づいていたとは。
まぁ見た目の年齢を考えれば妥当だが、どことなく避けてきた現実をこうも突きつけられるとは。
「……重いなぁ」
心に思っていたことが遂に口から溢れた。
「オールマイト!」
「だれそれ!!」
泣きながらそう言ってきた緑谷少年に被せる様にそう叫んだ。少し喉が切れてしまったな。
「嘘!オールマイト!?どこどこ!?」
「リピートアフターミー!人違いでした!!」
「人違いでした!!」
急いで緑谷少年にそう言うよう催促することで事なきを得た。
「さて、取りあえず……雄英入学おめでとう一応言っておくが私は試験の採点には関与していないぞ。君そう言うの嫌うタイプだろう?」
「あ、ありがとうございます!……でも」
「ん?」
「まだまだOFAは使えそうになれません。たった一回使っただけでボロボロです」
まずは彼の労いからだが、どうにも気にしている様だな。
「まぁ初めて個性を使うんだ。上手く使いこなせる事自体が稀だし、気にすることはないよ。今の君はコップに水を表面張力限界まで入れて耐えている様なもの。今はまだゼロか100かだが、いつかは自在に使いこなせる様になるさ。この様にね」
そう言って私は体を膨張させて空き缶を握りつぶす。これくらいのパフォーマンスは緑谷少年も出来る様にしないとね。
「なるほど……あ、そうだ!オールマイト!一つ聞きたい事があるんですけど」
「?……なんだい?」
「あの……エフォートって本当に雄英に就任するんですか?」
やはり来たか。
「もちろんさ。すでに公式の手続きは行なっているし、日程も組まれている。当然ヒーロー科の授業に参加するから君も彼から教わることはあるだろうね」
「やっぱり……」
緑谷少年の顔を見ると、少しばかり何か引っかかるものがある様だ。個人的には気にしないで触れ合ってほしいのだが……
「すごいです……!」
「ん?」
と思ったら少し様子が違うな?
「デビュー当時はオールマイトの再来って言われてたあのエフォートですよね!!事務所を持たず事件を解決してもその報酬金を被害者のケアに回したって言う完全な善意によるヒーロー活動をしたって言うあの!!」
「……そうだね。そのエフォート君だ」
目が輝かせているが、私にはわかる。彼は今必死に私に気を遣ってくれている。触れてはいけない話題であると言うことは何と無く分かっていたのだが、咄嗟に出てしまったのだろう。必死に取り繕っている。
「報酬金を全部被害者に回したからビルボードチャートには載った経歴はないけど、それがなければ確実に20代前半で10位以内は確実って言われてましたよね!?それに相棒に当時電撃移籍で世間を沸かせたあの……」
「緑谷少年、無理に話を合わせなくてもいい。実際、どう思っているんだい?彼の雄英就任について」
「……っ!!」
普段はヒーローのことになると熱心に舌が回る彼が口を紡いだ。図星か。
「……正直何でだろうとは思ってます。あの事件はそれなりに世間から批判を喰らいましたし、今でもエフォートに対するアンチは結構いるはずです……」
「それでも雄英は彼を招き入れた。それはなぜだと思う?」
「え、えっと……」
私の質問に緑谷少年は答えられずにいた。まぁ、少し難しかったかもしれないが。
「答えは簡単。彼はヒーローとして正しい行いをし続けてきたからさ。だからこそ、彼は雄英に招かれた。そのヒーローとしてのあり方は君達にとって学べるものが多いと考えたからさ」
「…………なるほど」
「事実、彼の相棒はその姿に感銘を受けて移籍したからね。プロヒーローですら影響を受けるんだ。その姿を3年間見ることになる君達が影響を受けないわけがない。最初はそう簡単ではないかもしれないが……彼を信用してくれ。コレはオールマイトとしてではない。一人の彼の同業者としての頼みだ」
「……はい!」
「よし、いい返事だ!ではそろそろ帰るとしよう」
緑谷少年は強く頷いた。
そう言って私は『オールマイト』に戻り、緑谷少年の前を走る。
こういう風に若人の道標になり続け、最後は全てを次世代へと託して我々は役目を終えるのだ。
「んん……渋いね」
「??」
私の独り言を聞き取れなかったのか、緑谷少年は小首を傾げていた。
そうだ、帰りにコンビニで祝いのスイーツでも買ってあげようかね。
この作品にヒロインはいる?いる場合はどちらかを答えて下さい
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いらない
-
いる(雄英生徒)
-
いる(プロヒーロー)