遂に雄英高校勤務初日である。現在俺は廊下で特に目的もなくぶらぶらしている。
しかし高校なのにヒーロースーツ着用ありとはなんともチグハグな印象が歪めない。空間とあってないぜ。自由な校風とはいうが、流石にここまで吹っ切れてるのも珍しくないか?
「ま、と言っても入学初日だし新入生はオリエンテーションだけだからやる事ないけど」
時計を見るとそろそろオリエンテーション開始の時間だ、行くか。
はー、かったるい。こういう日って大体オリエンテーションみたいな行事で一日潰れるけど、ま、社会に出る時の洗礼みたいなもんだよな。あくびを堪えるのは必至だ。
「おい」
「んえあ?」
そこにはイレイザーヘッドさんがいた。寝袋ミノムシの状態で。
それがデフォなの?
オリエンテーションもそれで行く気?
「オリエンテーションは一応予定として組み込まれてはいるが、参加は自由だ。それで俺は不参加。俺の担当するA組も参加には含まれていない。後お前もな」
「ゑ?!」
思わず変な声が出た。
「お前がこの雄英に勤める資格があるか、俺なりにテストする。来い。ちなみに拒否権はねぇぞ?校長もこの一件は認可してる」
「え?あ!おお?」
イレイザーさんは驚く俺をそのままに先へ進む。
「俺は生徒を呼び寄せてくる。お前は先に校庭で待機してろ」
イレイザーさんは振り向かずにそう言った。そしておれは理解が追いつかず置いていかれた。
「えー…………」
「……ここでいいんだよな?」
おれは言われた通り校庭にいた。側には仮装敵として登場したロボがいるが、今回は敵としてプログラムされていないので大人しい。
「入学初日から雄英に振り回されてんなー新入生。俺もだけど。やべーよ振り回されんのは慣れてるけど、振り回す側に回んだろ?上手く出来っかな?」
『I know』
「やかましい」
そんな事をやっているとやがてイレイザーさんが来た。
「よし、やっぱり来てたか」
「やっぱりって何ですかやっぱりって」
「下らない話は合理的じゃねぇ。さっさと本題にてもらう。お前、個性把握テストはしたことあるか?」
「ん?あー、やりましたよ。入学してすぐに」
そういえばやったなそんなの。
まさか……
「それを今日やる」
「まじすか?」
「当然だ。ヒーローになるからには無駄な時間は極力削いでいく。そうとなればオリエンテーションなんぞ非合理の極みだ」
「ま……それは同意します」
まじでオリエンテーションの校長の話ってテンプレレベルで長いんだよな。俺あんなベタに話長いオリエンテーションあったんだって感動すら覚えたよ。
「それでだ。このテストはお前も参加してもらう」
「……なーる」
「わかった様だな」
「求められる数値は?」
「各種目一位の記録を大幅に上回ってもらう。長座体前屈は除くがな」
なるほどな……シンプルなスペック勝負なら負ける気はないけど、久々に本格的に個性使うからな……力んで記録が伸びないとか洒落になんない。
「分かりました。ちなみに生徒にはなんて説明しとくんですか?」
「それは俺に任せろ。お前に理由に考えさせるよりはいい」
イレイザーさんは振り向かずにそう答えた。まぁこの人が考えるんだから変なことは言わないでしょ。
「おい、来たぞ。そろそろ構えとけ」
「うっす」
向こうからぞろぞろと生徒が来た。軽く柔軟しとこ。
突如として言い渡された個性把握テスト。まだまだOFAを使いこなせない僕にとっては難題もいいとこだ。だけどそんな事はお構いなしに話は進んでいく。しかも最下位は除籍という厳しいペナルティもある。どうにかしないと……
「あの!ひとつ質問があるのですが!!」
「ん?なんだ?」
そうやって悶々としていると隣の飯田君が手をまっすぐ上げて担任の先生に質問を投げかけた。
「先生がこの場にいるのは分かるのですが一体何故エフォート非常勤講師もこの場にいるのでしょうか?」
「おえ?」
一瞬みんなが『よく言った』と考えているのが分かった。実を言うと僕もちょっと感じてはいたけど当たり前のように居るから触れづらかった。
「あれ?俺のこと伝えてなかったの?」
「それについては今から説明する。こいつは要は指標みたいなもんだ。プロヒーローの個性の使い方なりなんなりを学ぶいい機会だろ」
学んでる暇なんてない。
そう言いたいけど今はそれを考える時間も惜しい。
「なるほど!ではエフォート非常勤講師もこのテストに参加されると言うことでよろしいのでしょうか!?」
「ま、そう言うこと。初めましてがこんな状況で申し訳ないけど、これから三年間宜しく……中には今日だけになっちゃう人もいそうだけど」
エフォートさんの呟いた一言にみんなの緊張感が戻る。
そしてまた先生が計測用のボールを持ってきた。
「よし、取り敢えずお前も投げてみろ」
「条件は生徒と同じでいいんだよね?」
「いいからさっさと投げろ」
「はいはい」
そう言ってエフォートさんはボールを持って縁の中に入った。何度かボールを手元で弄る。
「エフォートってあたし初めて見た!すごいかっこいいね!」
「え?そ、そうだね!!」
そばに麗日さんが来て観戦を続ける。
たしかにエフォートは僕が本格的にヒーローのニュースを集め始めた頃にはもうメディアから引退したヒーローで、僕も活動当時の映像は見たことがあんまりない。多分僕たちの世代だと丁度あのニュースが最後くらいだと思う。
そこから単純計算で数年単位のブランクがエフォートにはある。かっちゃんの記録はそうそう越えられないと思うんだけど……
「すー……」
そう思っているとエフォートが深呼吸を始める。それと同時にみんなも息を潜めた。
「……ふっ!」
吐いて、投げた。
音が響く。
かっちゃんの時よりは静かだけど、それでもよく響く低い音が聞こえた。静かな土埃が薄く舞い上がった。
ピピ。
どこからか機会的な音が鳴った。音源は担任の持ってた計測器だ。
「…………鈍ってはねぇようだな」
そこには『4937.3m』と表示されていた。
「よ、4900って……ほぼ5キロの距離飛ばしたのかよ!」
「やべー!とんでもねー!さっきの記録の7倍って!」
「プロヒーローすげー!」
みんなその異次元の記録に驚きを隠せずにいる。身体強化の個性だったとしてもかなりの記録だ。今の僕でも全力を出して出せるレベルじゃない……。
「ま、これは個性と競技が上手く噛み合った結果だな。むしろこのステージにおいてこいつはほぼ無敵と言っていいかもしれん。よし、追加でもうひとつサービスしてやろう。こいつの出す記録を1種目でも超えることができたら、除籍処分になったとしても免除してやろう」
「「「!!!???」」」
「おい、聞いてないんだけど?」
「今思いついたからな」
「合理的じゃねぇ」
先生同士で軽く言い合いをしてるけどそれどころじゃない!それに特にエフォートもあまり気にしてない所を見るに、かなり自信がある?
「そんで、次は何すればいいんですか?」
「第一種目は50m走だ。準備につけ」
「あれ?ボール投げじゃないの?」
「あれは
「なーる。そんじゃ、みんなー、次50m走らしいから準備したほうが良いよー」
さっさと二人は先に行ってしまう。慌てて僕らも後を追う。
「やっぱ本当だったんだな……エフォートの雄英就任」
「確かにそうだな。オールマイトの後ってものあってイマイチ印象に残んなかったけど、やっぱすげーことだよなコレ?」
「オイラとしては女ヒーローの方が良かった」
「だが、先の投擲は凄まじかったぞ。それこそオールマイトレベルの力が無ければ狙えんだろう」
「増強型の個性って事は分かってたけどよー、アレはレベルちげーだろ?」
僕のそばでそんな会話が聞こえてきた。みんな自信があるのか余裕が少し見える。
「残念だったな爆豪?記録越えられてよ?」
「うるっせぇ!次は勝つ!」
うひゃあ!今のかっちゃんに話しかけるなんてさすが雄英!とんでもないよ!
「……なぁおい?正直さ、聞きたくね?あの話?」
「いやいや流石にまずいだろそれは」
「でも気になるよな」
そんな会話も聞こえた。みんな気になるけど、どこか触れない様にしているらしい。けど、好奇心は抑えられない様だ。
「さて、それじゃあ最初測定は俺からだけど、並走する人はいる?」
「では!僭越ながら僕が立候補してもよろしいでしょうか!!」
「おお、君か……見た感じスピード特化ってところかな?」
「はい!プロヒーローの面目をつぶす様で申し訳ないですが、全力で行かせてもらいます!!」
「そのイキで来ないと、多分
50m走にエフォートがスタンバイすると、その並走に飯田くんが立候補する。おそらく飯田くんの個性はあの足のエンジンみたいな機関からの超スピードがメインらしいし、コレは可能性があるかも……。
だけどエフォートは一切気にした様子はない。そしてスタートの体制に入る。クラウチングスタートだ。
「流石に厳しいんじゃねぇのか?スピード勝負は?」
「確かにパワー勝負だと増強系の個性はかなり有利だけど、こういう別の勝負だと難しいんじゃない?」
クラスメイトからそんな話が聞こえる。だけどどうしてだろう。そんな気が全く起きない。
「そんじゃ構えろ」
そう言って先生と計測用のロボが配置につく。
ロボットの目が光る。
『ready……』
『…………go!』
「「!!!!」」
ほぼ同時に二人とも走り出した。
だけどやっぱり飯田くんの方が早く……あれ?
気がついたらエフォートが先にゴールしていた。
そのタイムは……。
「エフォート、2秒86。飯田天哉、3秒04。エフォートの勝ちだな」
「な!?」
「ふぅー、一か八かだったけど、上手くいったな」
「ど、どうして……」
その記録は驚異的だった。
飯田くんは予想通りといえば聞こえは悪いけど、十全に早かったはずだ。けど……
「ありゃ走るっていうよりかは飛んでるだろ?」
誰かがそう言った。そう、エフォートは走ると言うより幅跳びみたいに飛んで50mを走り切った、いや飛び切ったんだ。あまりにも型破りな方法で、スピード特化に勝った。
「おれは君みたいに何かに特化した個性じゃない。だからこそ、そう言った特化型に対しての対策は常に考えてる。ヒーローはいつだってアウェーで戦うんだ。負けたからってそれを言い訳にはできない。そう言うもんなんだよ、ヒーローって、常に
エフォートは特に誰に言うわけでもなくつぶやく様にそう言った。みんな口を挟めず、空気は完全にエフォートのものだった。
「そう言う世界に君達は入ってきたんだ。だからこそ俺は全力で
その風格は、引退してもなお、ヒーローとしての本質を忘れていない、紛れもない本物の風格だった。
段々エフォートのキャラがブレブレで心配……
そして分かったことがある。
ヒロアカはヘイト作品にするにはいい子が多すぎる……
この作品にヒロインはいる?いる場合はどちらかを答えて下さい
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いらない
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いる(雄英生徒)
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いる(プロヒーロー)